形骸化した1on1、盛り上がらない気まずい時間、かみ合わない対話……。多くのマネージャーが一度は「この1on1、意味があるのか」と悩んだ経験があるのではないでしょうか。

今回は、月に10回ほど1on1を実施している管理職Aさんに、過去の1on1での苦い経験や、リアルな失敗談、またそこから得た学びについてお話を伺いました。

Aさんのプロフィール:
若手のうちからチームリーダーに抜擢され、現在は月に10回ほど1on1を行う現役マネージャー。かつては「1on1がうまくいかない」「対話が噛み合わない」と悩んだ経験を持ち、自身の「べき論」にとらわれていたことに気づく。信頼関係の構築や感情への寄り添いの重要性を学び、「1on1に正解はない」という柔軟なスタンスに転換。現在は、形式ではなく関係性に重点を置いた1on1の実践を通じて、部下の自律的成長を支援している。

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盛り上がらなかった1on1の記憶

ーこれまで管理職として数多くの1on1を実施されてきて、今振り返ると「失敗したな」と感じるご経験はありますか?

はい。もう昔の話になりますが、若手のころに初めてチームリーダーを任された時のことは、今でも苦い思い出として残っています。メンバーと1on1をする機会があったのですが、お互いに「何を話せばいいんだろう」という雰囲気で……。無理に話そうとしても全く盛り上がらず、「これはいったい何の時間なんだろう」と毎週感じていました。

ー盛り上がらなかった原因は、今振り返ると何だったのでしょうか?

一番の原因は、「メンバーが1on1をしたいと思っていなかった」ことだと思います。当時の私は、リーダーになったからには頑張らないと、と気負っていました。本を読んだり研修を受けたりして、「リーダーはメンバーの話をしっかり聞くべきだ」という知識をインプットしたんです。

そして、その「あるべき論」をそのままメンバーに当てはめて、形式通りの1on1をやろうとしていました。でも、メンバーが本当に求めていたのは、そんな形式的な面談ではありませんでした。もっと普段から雑談をするとか、人間的な関係性を築くとか、そういうことだったんだと思います。相手のニーズに応えず、自分の「べき論」を押し付けてしまっていたのが、失敗の原因でした。

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本音を引き出せない、気まずい時間

ー相手が1on1を求めていないと感じた時、どのような反応がありましたか?

すごく気を使われているな、と感じましたね。本音で話してくれている感覚がなく、当たり障りのない表面的な会話だけで時間が終わってしまうんです。

例えば、業務の進捗確認をした後に「最近どう?」と話を振っても、「まあ、ぼちぼちです」といった返事で、そこから全く話が深まらない。こちらが何とか会話を繋げようとしても、相手がそれ以上掘り下げようとしないのが伝わってきました。

ーそういった1on1を毎週されていたのですか?

はい、毎週です。なので、お互いにとって苦しい時間だったと思います。私も、毎晩シャワーを浴びながら「明日どうしよう……」と悩んでいましたから。本当に辛かったですね。

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話せる相手と、話せない相手の違いは「関係性の質」

ーチームには複数名メンバーがいたと思いますが、他のメンバーとも同じような雰囲気だったのでしょうか?

いえ、濃淡はありました。とても話しやすいメンバーもいれば、今お話ししたように、全くかみ合わないメンバーもいました。

ー話せるメンバーと話せないメンバー、その違いはどこにあったのでしょうか?

一言でいうと「信頼関係の質」だと思います。

話しやすかったのは、「従順な後輩タイプ」で、私のことをある程度信頼してくれていたメンバーです。一方で、関係構築に苦労したのは、私より社会人経験が長い中途入社のメンバーでした。

年齢は私より下でしたが、社会人としては先輩。そもそも信頼関係を十分に築けていない中で、「リーダーだから」という理由だけで1on1をしても、心を開いてくれるわけがありませんでした。

性格的な違いもありましたね。話しやすかった後輩は「こんなことで困っていて…」と素直に話してくれるタイプ。一方、難しかったメンバーは、あまり弱みを見せない、しっかり者タイプだったことも影響していたかもしれません。

ー相手からはどのような態度を感じましたか?

「この時間、別になくてもいいんだけどな」「それより自分の仕事に時間を使いたい」という雰囲気をひしひしと感じていました。ただ、会社の文化として1on1があるので、「仕方なく、当たり障りなく終わらせるか」というような……。お互いにその空気を察しながら毎週顔を合わせるのは、本当に苦しかったです。

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失敗から得た「1on1に正解はない」という考え方

ー当時、何か対策をして状況は改善しましたか?

100%うまくいったとは言えませんが、徐々に良くはなりました。当時、社内の人材開発担当の方にマネジメントの相談をする機会があり、そこで自分の状況を客観的に見つめ直すことができたんです。「本で読んだ『あるべき姿』をそのままやろうとしている自分」に気づき、相手に求められていることをやらないと意味がないんだ、と考えるようになりました。

ー今振り返って「もっとこうすれば良かった」と思うことはありますか?

シンプルに、「仲良くなる」ことにもっと時間をかければ良かったなと思います。飲みに行く、雑談を増やす、もっと自分のことを話して自己開示するなど、手段は何でもいいんです。リーダーだからといって変に構えず、もっと自然体で、一人の人間として関係性を築く努力を最初にすべきでした。当時は「リーダー業務を頑張らないと」という気持ちが空回りしていたな、と反省しています。

ーその経験を経て、現在の1on1に対する考え方ややり方はどのように変わりましたか?

「1on1に正解はない」と考えるようになりました。相手によって、あるいは同じ相手でもタイミングによって、話す内容や場の雰囲気は全く変わってきます。だから、ガチガチに構えすぎず、自然体でその時間を迎えることを大事にするようになりました。

もちろん、準備が不要というわけではありません。事前準備として、日々のコミュニケーションの中で「今どんなことに困っていそうか」「最近、調子が良さそうだな」といった相手の状態を常に把握し続けることが重要だと考えています。その上で、1on1の場ではまず相手に話したいことを委ね、話の流れの中でこちらから伝えたいフィードバックなどを話すようにしています。

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マネージャーが答えに窮した「想定外の相談」

ー上記以外で、これまでの1on1で、答えるのに困った質問や相談はありましたか?

「芸能活動をしたいんですけど、どうすればよいですか?」と相談された時は困りましたね(笑)。

リーダーとしては、メンバーのキャリア(Will)と会社の方向性をすり合わせるのが役割の一つだと考えていたので、「芸能活動」という選択肢が出てきた時に「どうすればいいんだ…」と。

最終的には本人の意思を尊重して応援するしかないと判断し、そのメンバーは今、実際に会社を辞めて芸能の道に進んでいます。結果として、その判断は間違っていなかったと思いますが、当時は後押ししていいものか、非常に悩みました。

ー他に困った相談内容はありますか?

昔は、特定の人や物事に対するヘイト、つまり愚痴や不満が出てきた時の対応に困っていました。相手の気持ちに寄り添うことは大切ですが、ただ同調して愚痴大会になるのは誰のためにもなりません。一方で、頭ごなしに否定するのも違う。そのバランスが難しかったですね。

ー愚痴や不満に対して、以前と今で対応は変わりましたか?

はい、大きく変わりました。

以前は、「それって具体的にどういうこと?」「いつ、そう感じたの?」と事実確認をしようとしていました。事実を特定して、解決すべき問題なら対応しよう、と考えていたんです。

でも今は、事実よりも「なぜ、そのように感じたのか」という感情の部分を深掘りするようにしています。「そう感じたんですね」と一度感情を受け止めた上で、「なんでそう感じたんでしょうね?」と一緒に考えていく。そうすると、相手が自分の中で感情を整理したり、「自分も一面しか見ていなかったかも」と冷静になったりすることが多いんです。こちらが解決策を提示するのではなく、問いかけを通じて、本人が自分で気持ちを消化していく手助けをするイメージです。

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まとめ

ー最後に、過去のご自身にアドバイスをするなら、どのようなアドバイスを送りますか?

「頭でっかちになるな」ということですね。

本を読んでインプットしたり、フレームワークを学んだりすることはもちろん大事です。でも、それをそのまま現場で使おうとすると、かつての私のように失敗します。

1on1は、あくまで「人と人との1対1の関係性」だということを忘れてはいけません。相手が今、何を求めているのか。この時間は、本当に相手のためになっているのか。それを常に考えることが重要です。

そして、その答えは1on1の時間の中だけで見つかるものではありません。日々の雑談や普段の仕事ぶりを含めたコミュニケーション全体で、相手との関係性をデザインしていく。特に、インプット熱心な人ほど、この視点を大切にしてほしいなと思います。

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1on1でお困りの方へ

今回の1on1の失敗談のように、部下の本音を引き出し、エンゲージメントを高めることは簡単ではなく、形式的な1on1では、本当の課題は見えてきません。

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