管理職は業務の負担や責任が重い分、本来であればやりがいも大きいポジションです。

しかし、中には管理職としての仕事にやりがいを感じられず、日々「つらい…」と感じながら働いている人もいるでしょう。

本記事では、管理職がやりがいを持って仕事に取り組むために、意識すべきポイントについて解説します。

現在仕事に対するやりがいを失いつつあり、少しでもポジティブな気持ちを取り戻したい管理職の方は、ぜひ参考にしてください。

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管理職のやりがいとは

管理職は一般社員に比べて業務の範囲が広く、責任も非常に重いポジションです。しかしその分、仕事にやりがいを感じながら取り組むことができれば、得られるものもより大きくなります。

以下は、エン・ジャパン株式会社が管理職を対象に実施した調査で、「管理職になって良かったこと」として挙げられた主な意見です(括弧内は回答者の割合)。

  • 自身の成長につながった(53%)
  • 自分の裁量で決められることが増えた(45%)
  • 部下・メンバーの成長など新しいやりがいにつながった(45%)
  • 会社・事業への貢献を強く感じられるようになった(27%)

この結果から、管理職の仕事には下記のようなやりがいがあるといえます。

  • 自己成長実感:管理職になると、一般社員では得られなかった経験やスキルが求められる。未知の課題に挑戦し、それを乗り越える過程で、自身の成長が強く促される
  • 裁量権の拡大:自身の判断や意思で物事を進められる機会が増えるため、自分の存在意義や役割をより大きく感じられる
  • 部下の成長支援:部下の育成は、管理職の重要な使命の一つ。部下が成長し、活躍する姿を見ることは、自身の努力や存在意義が実を結んだ証となり、大きな達成感につながる
  • 組織への貢献実感:自身の意思決定が組織全体に影響を与える立場にあるため、会社や事業への貢献を強く実感できる

参考:

エン・ジャパン株式会社「ビジネスパーソン4700人に聞いた「管理職への意向」調査」

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仕事にやりがいを感じられない管理職は多い

管理職がやりがいの大きいポジションであることはすでに説明した通りですが、すべての管理職が仕事にやりがいを感じているわけではありません。

以下は、株式会社タバネルが課長職を対象に実施した調査で、「(管理職としての)仕事にやりがいを感じているか」を尋ねた結果をまとめたものです。

仕事にやりがいを感じている回答割合
あてはまる/ややあてはまる約47%
あてはまらない/あまりあてはまらない約20%
どちらとも言えない約34%

この結果を見ると、管理職の仕事にやりがいを感じている人は約47%にとどまり、半数以上がやりがいを感じられないまま管理職を務めていることがわかります。

なぜ管理職の仕事にやりがいを感じられないかは人それぞれですが、一般的には以下のような要因が考えられます。

  • 業務過多:業務量が多く、長時間労働に陥りやすい
  • 責任に見合わない報酬:業務負担や責任の重さに見合うだけの給与が得られていない
  • 人間関係のストレス:上司と部下の板挟みになったり、それぞれの意見や要求に振り回されたりする機会が多く、精神的な負担が大きい

仕事にやりがいを持つ重要性

管理職の仕事にやりがいを感じているかどうかは、日々の業務へのモチベーションやパフォーマンスに大きく影響します。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、仕事にやりがいを感じ、ポジティブな気持ちで取り組んでいる人は、以下の要素によりよい影響が見られるとされています。

  • 創造性: 新しいアイデアが生まれやすくなったり、問題解決能力が向上したりする(ポジティブな感情の日は、創造性が50%以上も高まるという研究結果もある)
  • 生産性:集中力が高まり、効率的に業務を進められる
  • モチベーション: 内発的な動機付け(「自分がやりたいからやる」という、自分の内側から湧き上がる意欲)が促され、困難な課題にも積極的に取り組む意欲が湧く
  • 協調性:ポジティブな言動が周囲にもよい影響を与え、円滑な人間関係を築く助けとなる

逆に、仕事にやりがいを感じられない管理職の場合、モチベーションやパフォーマンスが低下しやすいだけでなく、嫌々仕事に取り組まなければならないストレスから、精神的な負担もより大きくなるでしょう。

参考:

ログミーBusiness「課長の53%が仕事にやりがいを感じられず… 実態調査から見る「負のスパイラル」を断ち切るヒント」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「知識労働者のモチベーション心理学」

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管理職が仕事にやりがいを感じるには

管理職がやりがいを感じながら仕事に取り組むために、心がけるべきポイントを解説します。

日常に変化を加える

仕事に熱意を持って取り組んでいたはずなのに、いつの間にかやりがいを感じられなくなってしまう。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、その原因の一つとして「習慣化」を挙げています。

お気に入りの香水でも、毎日使っているとその香りが感じにくくなるように、最初はやりがいを持って取り組んでいた仕事でも、慣れてくるとマンネリ化し、徐々にモチベーションが低下することがあります。

これは、高い目標を掲げて仕事に取り組んでいる人でも、十分に起こり得る現象です。

習慣化によってやりがいを失うのを防ぐためには、意識的に「変化」を日常に取り入れることが重要です。

同記事では、日常に変化を加えることで享受できるメリットとして、以下の5点を挙げています。

  • 学習意欲が湧く: 新しいことに挑戦したり、普段と違う環境に身を置いたりすると、人の脳は「学習モード」に入る(神経科学の研究では、人は何かを学んでいる時に最も幸せを感じることが示されている)
  • 幸福度が高まる:生活に変化を取り入れた人は、そうでない人と比べて幸福度が高い傾向にある(シカゴ大学の研究より)
  • 新たな視点が得られる:さまざまな角度から物事を捉えられるようになり、普段の仕事でもこれまで気づかなかった改善点に気づきやすくなる
  • ポジティブな側面を再発見できる:マンネリ化していた仕事や環境のよい点を再認識し、改めてその価値を感じられるようになる
  • パフォーマンスが向上する:これまでにない新たな視点を持つことで、より創造的で良い結果を生み出す可能性が高まる

管理職としての仕事がマンネリ化していると感じる人は、試しに以下のような変化を取り入れてみてはいかがでしょうか。

▼「変化」の例

  • 新しい領域の仕事を引き受ける
  • 新しいアイデアやツールを試す
  • 今まで知らなかった同僚と交流する
  • 新しいスキルや言語を学ぶ

ジョブクラフティングを行う

管理職の仕事に対するやりがいを高める方法として、ジョブクラフティングを行うことが効果的なケースもあります。

ジョブクラフティングとは、「自分の仕事の満足度を高めるために、自分自身で業務内容や働き方を見直し、再設計する」プロセスです。

これは厚生労働省も推奨している方法で、実際にさまざまな研究によって、ジョブクラフティングがワーク・エンゲージメント(仕事に対するポジティブな感情)を向上させ、精神的ストレスを低下させる効果があると報告されています。

一般的に、ジョブクラフティングは「作業」「人間関係」「認知」の3つの観点に着目して行われます(下表参照)。

観点具体例
【作業クラフティング】業務の内容や範囲、進め方を主体的に工夫することで、仕事を充実したものに変化させる・業務の効率化を図るために、新しいツールを導入したり、手順を見直したりする・必要性の低い業務をなくしたり、優先順位を見直したりする
【人間関係クラフティング】職場の人間関係に工夫を加え、より良い関係性を築くことで、仕事に対する満足度を高める・これまであまり接点のなかった人とも、積極的にコミュニケーションをとる・部下に感謝の気持ちを伝えるなど、ポジティブな交流を増やす
【認知クラフティング】自分自身の仕事に対する捉え方や考え方を変えることで、前向きに仕事に取り組めるようにする・自分の仕事が社会や顧客にどのような影響を与えているのか、その意義を再認識する・クレーム対応を「顧客の信頼を築くチャンス」として捉える

管理職の仕事に対するやりがいを失いつつある人は、数十分でも良いので一度仕事から離れる時間を取り、上記の観点から自身の仕事を見つめ直し、ジョブクラフティングを行ってみてはいかがでしょうか。

仕事以外に情熱を注げるものを持つ

仕事以外に情熱を注げるものを持つことで、管理職の仕事に対するやりがいも高まる可能性があります。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、仕事以外に熱中できるものを持つメリットとして、以下の3点を挙げています。

  • リスクの分散:熱中できるものが仕事しかなければ、仕事で失敗した際に精神的に立ち直りにくくなる。仕事以外で夢中になれる活動があれば、精神的なダメージを最小限に抑え、バランスの取れた自己肯定感を育むことができる
  • 心身のリフレッシュ:業務時間以外での活動は、ストレスを軽減し、エネルギーや創造性、ワーク・エンゲージメントを高める効果がある
  • その他多様な恩恵:新しいスキルが身についたり、これまでとは違う人たちと出会えたりと、さまざまな恩恵が得られる

以下は、仕事以外のものに情熱を見出すためのコツです。

  • 思考を変える:「情熱は仕事でしか追求できない」という固定観念を捨て、仕事以外の場所でも情熱を見つけることができると考える
  • 興味関心を掘り起こす:どんなことに興味があるのか、どんな活動に心が動かされるのか、自分自身に問いかけてみる
  • 新しいことに挑戦する:自分の価値観をもとに、仕事以外での新しい活動にチャレンジしてみる(例:地域のボランティア活動への参加)
  • オフの時間を明確にする:仕事から完全に離れて、別のことに集中できる時間を設ける

仕事以外の活動に情熱を注ぐことは、単なる気分転換にとどまらず、結果として仕事への向き合い方にもポジティブな変化をもたらすでしょう。

人間関係に投資する

管理職の仕事にやりがいを感じられなくなると、つい「仕事内容」に問題があると考えられがちです。

しかし、仕事の満足度には仕事内容だけでなく、「人間関係」も重要な役割を果たしています。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、自分自身の成長につながる人間関係に時間や労力を積極的に投資することで、たとえどんなに単調で地味な仕事であっても、やりがいや充実感を感じられるようになる可能性が高まるとのことです。

また、効果的な人間関係が築けている人は、その分他者からの学びの機会が多く、仕事のパフォーマンスが高い傾向にあるという研究結果も出ています。

以下は、同記事で提唱されている、仕事のやりがいを高める人間関係を築くための3つのポイントです。

  1. 「北極星」を明確にする:自分が仕事で何を信条とし、どんな能力を伸ばし、どんな強みを発揮したいのか、「北極星(目指すべき方向性)」をはっきりさせる。この「北極星」に近づけてくれる人、あるいは遠ざける人を見極めることで、関わるべき人間関係の優先順位が明確になる
  2. 時間配分を意識する:自分の価値観に合い、成長させてくれる人との関わりに積極的に時間を使う(例:何か新しいことに挑戦したいので、ポジティブで挑戦的な姿勢を持つ友人と頻繁に会う)
  3. 疲れる人間関係から身を守る:自分の時間を奪い、疲弊させる人から身を守る工夫をする(例:勤務時間外にも遠慮なく連絡してくる相手から身を守るため、職場を出たらメールや電話は一切チェックしないというルールを設ける)

質の高い人間関係を築き、維持することは、管理職としてのやりがいを再発見し、より充実したキャリアを築くうえで必要不可欠です。

参考:

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「仕事にやりがいを感じなくなった時、前向きな気持ちを取り戻す方法」

厚生労働省「「働きがい」をもって働ける環境の実現に向けた課題について」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「仕事以外に情熱を注げるとキャリアも私生活も充実する」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「仕事の幸福感を高めるには「人との関わり」に投資しよう」

従業員の離職に悩む管理職の方へ

「ただの可視化」で終わらないAI搭載のエンゲージメントサーベイで
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まとめ

管理職は業務の幅が広く、責任も大きい分、本来であれば非常にやりがいの大きいポジションです。しかし、残念ながらすべての管理職が仕事にやりがいを感じているわけではありません。

仕事にやりがいを感じられない状態が続くと、モチベーションやパフォーマンスが低下しやすくなるだけでなく、嫌々仕事に取り組まなければならないストレスから、精神的な負担もより大きくなってしまいます。

現在仕事に対するやりがいを失いつつあり、少しでもポジティブな気持ちを取り戻したい管理職の方は、ぜひ本記事で解説したポイントを実践してみてください。