近年、どの業界でも人手不足が叫ばれている中で、人材確保のためには「働きがい」が重要であることに多くの企業が気づき始めています。

しかし、「働きがい」とは具体的に何を指し、どのようにすれば実現できるのか、明確に理解できていない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、「働きがい」の定義から「働きがいのある会社」が持つ特徴、そして従業員の「働きがい」を高める具体的な方法までを解説します。

従業員にとって魅力的な職場環境を作り出し、優秀な人材の定着を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。

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「働きがい」とは

「働きがい」とは、「働くことによって得られる心の満足度や価値、仕事に積極的に取り組もうとする意欲」を指します。

「働きやすさ」や「やりがい」との違い

「働きがい」という言葉は、「働きやすさ」や「やりがい」と混同されがちですが、それぞれ意味は若干異なります。

意味具体例
【働きやすさ】ストレスなく快適に働ける物理的・制度的な環境が整っている状態。従業員が不満を感じずに仕事に取り組むための「衛生要因」・業務を効率化する設備が整っている・柔軟な勤務形態(フレックスタイム制やテレワーク)を選択できる・良好な人間関係が保たれている
【やりがい】仕事そのものから得られる達成感や充実感。従業員の意欲を高める「動機付け要因」・業務を通じて自分自身の成長を感じられる・上司から成果を認められることに喜びを感じる・顧客からの感謝されると嬉しい

上記をふまえると、「働きがい」とは、「働きやすさ」という基盤の上に「やりがい」を感じられることで生まれる、総合的な心の満足度や仕事への意欲であるといえます。

したがって、従業員が真に「働きがい」を感じるためには、「働きやすさ」と「やりがい」のどちらか一方だけでは不十分であり、両方がバランスよく充実していることが重要なのです。

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「働きがい」は従業員の離職を防ぐカギ

近年、どの業界でも人手不足が深刻化する中で、「働きがい」があるかどうかが、従業員の離職を防ぐ上で重要な要素となっています。

株式会社日本能率協会総合研究所が、25歳から34歳の社会人男女(転職者が多い年齢層)を対象に実施した以下の調査結果からも、この傾向は明らかです。

今の会社で「転職を考えたことがない」理由転職を考えたことがあるが、「今の会社にとどまっている」理由
【やりがい重視】今の会社の今の仕事にやりがいを感じているから(26.9%)【働きやすさ重視】今の会社で柔軟な働き方ができるから(14.4%)
【働きやすさ重視】今の会社の勤務地に満足しているから(26.4%)【働きやすさ重視】今の会社の勤務地に満足しているから(14.1%)
【働きやすさ重視】今の会社の給与に納得しているから(22.9%)【働きやすさ重視】今の会社の給与に納得しているから(13.5%)

この結果を見ると、従業員に転職を思いとどまらせるため、あるいはそもそも転職を検討させないためには、「働きやすさ」と「やりがい」の両方が充実した、「働きがい」を感じられる環境を提供することが極めて重要であるといえます。

参考:

PR TIMES「【働きがい1万人調査】“働きやすさ(柔軟な働き方)”は、検討した転職を思い留まらせる “働きがい(仕事のやりがい)”は、転職を考えさせないカギ」

野村総合研究所(NRI)「働く人の満足度につながるのは「働きやすさ」よりも「働きがい」」

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「働きがいのある会社」の特徴とは

ハーバード・ビジネス・レビューの記事(以下、同記事)の情報**をもとに、「働きがいのある会社」によく見られる特徴を紹介します。

** 『フォーチュン』や『Inc.』などの米国の権威あるビジネス誌で、「働きがいのある会社」として毎年のように掲載されている企業を対象とした調査結果を紹介している

従業員に投資している

働きがいのある会社は、従業員への投資を惜しみません。

ここでいう「投資」には、金銭的なものだけでなく、従業員の心身の健康や個々の状況に合わせたサポートも含まれます。

  • 経済的な投資:従業員が経済的な不安なく、仕事に集中できる環境を整える(例:手厚い給与、充実した福利厚生)
  • 健康と幸福への投資:従業員の心と体の健康、そして人生全体の満足度を高めるために行う取り組み(例:フィットネスジムの利用補助、メンタルヘルス相談窓口の設置)
  • 個別ニーズへの投資:従業員の個別の状況に応じて、会社が柔軟にサポートを提供する(例:家族の看病が必要になった従業員に対し、臨時で特別休暇を付与する)

会社がこれらの投資を惜しまず行うと、従業員は「自分は会社に尊重され、大切にされている」と感じるようになります。

その結果、従業員は「会社にもっと貢献したい」という意欲を持って仕事に取り組むようになり、生産性の向上につながることが期待されます。

つまり、従業員に対して積極的に投資する姿勢そのものが、「働きがいのある職場」を作り出す大きな要因となるのです。

従業員の「天職」探しを支援している

働きがいのある会社では、従業員が自身の「天職」を見つける手助けをしています。ここでいう「天職」とは、従業員が「これこそが自分の本当にやりたかった仕事だ」と心から感じられるような仕事を指します。

従業員が天職を見つけられると、会社に来ることが楽しみになり、「この会社で働けて幸せだ」と感じるようになります。

このようなポジティブな感情は、結果として従業員がより一層仕事に打ち込む原動力となり、ひいては組織の生産性向上にもつながるのです。

同記事で紹介されている企業では、以下のような形で従業員の天職探しを支援しています。

  • リジェネロン製薬:研究者たちは、会社が決めたテーマだけでなく、「自分がもっとも興味を持ち、得意な分野」を自由に探求するよう推奨されている
  • インテュイティブ・リサーチ・アンド・テクノロジー:従業員は現在の担当業務にかかわらず、新しい商品やサービスのアイデアを企画書にまとめることができる。優れたアイデアであれば、会社から開発のための予算が用意され、さらにそのアイデアから生まれた利益の半分が支払われる
  • ピュア保険:従業員は年間1500ドル(約20万円)までの予算で、自分の好きな研究を自由に行うことができる

天職探しの具体的な方法は企業によってさまざまですが、共通しているのは、「従業員に対して、自分の好きなことや情熱を追求するチャンスを与えている」という点です。

従業員同士の絆を大切にしている

仕事は決して一人で完結するものではなく、従業員同士で協力し合うことが必要不可欠です。

働きがいのある会社はこのことを深く理解しており、従業員間の絆を深めるための取り組みを積極的に行っています。

同記事で紹介されている企業では、実際に以下のようなユニークな取り組みが実施されています。

  • バンブーHR:従業員は自分の誕生日を有給休暇として取得できる。一人ひとりの記念日を大切にする姿勢が、従業員間の温かい雰囲気を醸成する
  • インソムニアック・ゲームズ:一人目の子どもが生まれた従業員に対し、会社からベビー服やおもちゃなどがプレゼントされる。ライフイベントを共有し、喜びを分かち合うことで、より深い人間関係が築かれる
  • BAF:野球観戦や舞台鑑賞の費用を一部負担するほか、サッカーやボウリングなどのクラブ活動を奨励している。さらに、家族向けの大きなイベント(夏のキャンプ、ハロウィンパーティーなど)も開催し、従業員とその家族も巻き込んだ交流を促している

これらの事例から分かるように、働きがいのある会社は、従業員同士の絆こそが、チームがバラバラになるのを防ぐ最も効果的な方法であり、ひいてはチームが最高の成果を出すためには絶対に欠かせないものだと理解しています。

仕事だけでなく、プライベートな側面でも交流を深めることで信頼関係が構築され、より強固なチームワークが生まれるのです。

従業員に権限委譲を行っている

働きがいのある会社では、従業員への「権限委譲」が積極的に行われています。

権限委譲とは、簡潔にいえば、上司が従業員を信頼し、「この仕事はあなたに任せるから、自分で考えて進めてみてほしい」と、ある程度の裁量と自由を与えることを指します。

上司や会社から指示された通りに仕事を進めるだけでは、従業員は「やらされている」という受け身の姿勢になりがちです。

しかし、自分の仕事に裁量権が与えられることで、「自分がこの仕事を動かしている」という主体的な意識へと変化し、それが「働きがい」へとつながるのです。

同記事で紹介されている企業では、権限委譲のために以下のような取り組みを行っています。

  • SAS:会社は従業員に重要なプロジェクトを任せ、従業員が自分で考えて最善だと思うやり方で進めることを推奨している。もちろん、任せきりにして放置するわけではなく、困ったときには同僚や上司に相談できる体制も整えている。ある従業員は、「私たちは重要な仕事を任されているからこそ、顧客だけでなく同僚に対しても責任を感じている」と述べており、この環境が責任感とプロ意識を育んでいることがわかる
  • バンブーHR:従業員に能力以上のことに挑戦させる場合、失敗はどうしても避けられない。同社では、失敗を悪いことではなく、個人と組織が成長するために不可欠なものと捉えている。具体的には、「おっとっとメールボックス(Oops Email Box)」という仕組みがあり、社長を含むすべての従業員が、自分の失敗とその教訓、そして改善策を報告できるようになっている。これにより、失敗を恐れずに挑戦できる文化が醸成されている

上記のように裁量を与えられた従業員は、自分の仕事に対する当事者意識を強く持つようになり、「どうすればもっとよくできるか」「もっと効率的にするにはどうすればいいか」といったことを常に考え、自ら工夫するようになります。

その結果、従業員自身の成長につながるだけでなく、新しいアイデアやイノベーションが生まれ、最終的には会社全体の発展へとつながることが期待できます。

従業員の「自分らしさ」を尊重している

「働きがいのある会社」は、従業員が「自分らしく働く」ことを重視しています。

ここでいう「自分らしく働く」とは、単に自由な服装をしたり、好きな時間に働いたりすることだけではありません。

従業員が「自分の強みや情熱、価値観を仕事の中で存分に発揮できる」状態を指します。

同記事では、従業員の自分らしさを尊重している企業の事例として、以下の2社を紹介しています。

  • モトリーフール:「正直であること」を会社の大切な価値観としている。たとえば、服装規定は「親が恥ずかしいと思うような服は着てこない」以外にはほとんど制限がない。あらゆる規定の自由度が高く、従業員が意見を言う際にも、自分らしさを隠さずに表現できる文化が醸成されている
  • N2パブリッシング:従業員が自分の特技や創造性を仕事に結びつけることを奨励している。たとえば、メール室の責任者が得意なラップで会社のテーマソングを作成したり、グラフィックデザイン部の従業員がバンドを組んで社内イベントで演奏したりしている。また、編集部の部長は定例会議で会社に貢献した人やチームを表彰する際、メンバー全員のイラストを描いて、それぞれの貢献度を称賛するスピーチをしている

上記のような環境下では、従業員は「自分がどんな人間で、何を大切にしているのか」を仕事を通して表現できます。

仕事が単なるお金を稼ぐ手段ではなく、より深い目的や意味を持つものになるため、日々の仕事に充実感を感じやすくなり、それが結果的に働きがいへとつながるのです。

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「働きがいのある会社は「人」を中心とした文化を築いている」

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「働きがいのある会社」になるために

従業員にとって働きがいのある会社になるために意識すべきポイントを解説します。

従業員の声を反映させる

働きがいのある職場を実現するために、従業員の声を組織にうまく反映させることは重要です。

従業員が「自分の意見が会社から尊重されている」と感じられることは、仕事への満足度や主体性を高め、それが結果として「働きがい」にもつながると期待できます。

しかし、単に従業員から意見を聞くだけでは不十分です。「従業員から得られた意見をいかに活かすか」という点が多くの企業が直面する共通の課題であり、難しい部分でもあります。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、この課題および解決策を以下のようにまとめています。

課題解決策
【データの多さ】アンケートや面談などで従業員の意見は簡単に収集できるが、情報が多すぎたり、バラバラだったりすると、何が重要なのかわからなくなる情報を集める方法や担当部署を統一し、専門チームが分析することで、本当に必要な情報を見つけ出す
【信頼関係の欠如】従業員は「意見を言っても何も変わらない」と感じると、こちらが求めても話してくれなくなる実行する行動計画を見える化し、誰が責任を持つかを明確にする。定期的に進捗を共有し、「意見を言えば会社が変わる」という実感を持続させる
【根本原因の特定】従業員の表面的な不満を収集するにとどまり、根本的な解決にならない表面的な不満だけでなく、グループディスカッションなどを通じて問題の背景にある真の原因を探り出す
【意見の伝えにくさ】従業員が自分の評価が下がるのを恐れ、率直な意見を伝えにくい状態にある「匿名で回答できるか」「個人が特定されない形で扱われるか」を明確に説明する。AIなどの技術を使い、個人を特定せずに意見を要約・分析することも有効
【対立する意見への対応】従業員が出す意見の中には、相反するものが含まれることがある。また、会社として掲げる優先課題と対立する意見を出される場合もある「○○という意見もあれば、××という意見もあった」と開示したうえで、決定のプロセスを透明にし、「なぜその決断に至ったのか」「様々な意見がどのように考慮されたのか」を正直に伝える

仕事を商品として捉える

ハーバード・ビジネス・レビューの記事は、従業員の働きがいを高める方法の一つとして、「仕事を商品として捉える」ことを推奨しています。

我々が普段利用する商品やサービスは、消費者の悩みやニーズに沿って作られています。それと同様に、会社は社員が「毎日働きたい!」と心から思えるような仕事を「商品」として作り出そう、という考え方です。

仕事を商品と捉える考え方はまだ一般的ではありませんが、先進的な企業ではすでにこの取り組みを始めているといいます。

  • アサナ:退職する社員だけでなく、現在在籍中の社員にも定期的に満足度を尋ねている。商品の開発者が顧客の声を聞くように、社員のニーズを深く理解しようとしている
  • イーライリリー:顧客体験向上のためのツールを使い、社員が会社に入社してから退職するまでの道のり(エンプロイージャーニー)を可視化している。社員がどのような体験をしているかを客観的に把握し、改善点を見つけ出している
  • ショッピファイ:「フレックス報酬制度」を導入し、従業員が給与として株と現金を自由な比率で受け取れるようにしている。社員一人ひとりの多様なお金のニーズに応えようとする試み

上記のように、会社は従業員のスキルだけでなく、「何が求められているか」を深く理解し、それに合った仕事を設計していく必要があります。

また、上司は商品の開発者が顧客ニーズを聞き出すように、従業員の不満や要望を聞き出す役割が求められます。

参考:

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「従業員の声を組織にうまく反映させる方法」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「仕事の満足度を高めるためにプロダクトデザインの発想を応用する」

なぜ、従業員の離職サインを見逃してしまうのか?

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満足度調査だけでは見えない「働く動機」の揺らぎを捉えるには、AIによるマネジメントサポートが必要です。

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まとめ

「働きがいのある会社」の特徴や、従業員の「働きがい」を高める方法について解説しました。

「働きがい」とは、「働きやすさ」という強固な基盤の上に、「やりがい」という喜びが花開くことで生まれる、総合的な心の満足度と、仕事への意欲を指します。

どの業界でも人手不足が叫ばれている昨今、職場に「働きがい」があるかどうかは、従業員の離職を防ぎ、優秀な人材を惹きつけ続けるための重要なカギとなるでしょう。

本記事で紹介した内容を実践し、従業員にとって「働きがい」のある職場を作り出してください。それが、結果として従業員一人ひとりの成長を促し、ひいては組織全体の効果的な発展へとつながるはずです。

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