「最近部下に元気がなくて心配だ…」
このような悩みを持つ管理職も多いでしょう。
部下に元気がない理由は人それぞれ異なるため、まずはその原因を特定したうえで、状況に応じた適切な対処法を取ることが重要です。
本記事では、元気がない部下への対処法や、そもそも部下が元気をなくさないための予防策について解説します。部下が長く活き活きと働ける職場環境を作りたい方は、ぜひ参考にしてください。
部下に元気がない原因

部下に元気がない場合に、考えられる主な原因を紹介します。
仕事やプライベートで問題を抱えている
部下が普段より元気がない、あるいは意欲が低下しているように見える場合、その背景には仕事またはプライベートでの悩みや問題が原因となっている可能性があります。
▼悩み・問題の具体例
| 仕事上の悩み・問題 | ・自分の不手際で取引先を怒らせてしまった・自身の業績が伸び悩んでいる・同じチームの同僚との関係がうまくいっていない |
| プライベートの悩み・問題 | ・家族と喧嘩した・恋人に振られた・子どもにかかるお金について悩んでいる |
上記の通り、部下が抱える悩みや問題は多種多様であり、外見だけでその内容を判断することは難しいです。
したがって、部下に元気がないと感じたら、まずはその理由を尋ねることが重要です。
そのうえで、上司としてサポートすることで解決できそうな問題であれば、積極的に力を貸すべきといえます。
なお、部下が抱えるプライベートな問題についてはデリケートな内容が多く、また上司がすべてに介入するのは現実的ではありません。そのため、上司の配慮や軽いサポートで解決できる場合を除き、基本的には深入りしない方が無難でしょう。
仕事の負荷が高く疲れている

部下に元気がない、あるいは活気がないと感じる場合、仕事の負荷が高すぎることによる心身の疲労が原因である可能性も考えられます。
具体的には、以下のような状態が常態化すると、部下の心身に大きな負担がかかり、活力を失う原因となります。
- 長時間労働や残業の常態化:物理的な疲労が蓄積し、回復する時間が取れない
- 過大な業務量:締め切りに追われ、常にプレッシャーを感じている
- 高い難易度や責任:失敗できないという精神的な重圧が大きい
- 休憩や有給休暇の取得困難:リフレッシュの機会が少なく、ストレスが解消されない
疲労が蓄積すると集中力が低下し、ミスが増加します。さらに、モチベーションの低下を引き起こし、最終的には心身の健康を損なう事態にもつながりかねません。
部下に元気がないだけでなく、以下のような兆候が見られる場合は、それはメンタル不調に陥っているサインかもしれません。
- 遅刻や欠勤が増える
- 表情が暗くなる
- ミスが増えたり、作業効率が落ちる
- 睡眠不足、不眠になる
- 口数が減る
上記は、メドピア株式会社が産業医を対象とした調査の中で、とくに多く挙げられた意見です。部下にこれらの兆候が見られるときは、早急な対処が必要です。
また、事前の予防策として、部下の様子を日頃からよく観察し、業務量や労働時間に偏りがないかを確認することも重要です。もし偏りが見られる場合は、心身に不調をきたす前に、早い段階で仕事の負荷の調整を検討した方がよいでしょう。
仕事を辞めたがっている
部下に元気が見られない場合、退職を検討している、あるいはすでに決意しているサインかもしれません。
退職することが決まれば、会社への貢献意欲や昇進・評価への関心が薄れ、「どうせ辞めるから、最低限の業務をこなせばいいや」という心理状態になるため、結果として元気がなさそうに見えるのでしょう。
人事系メディア「アルムナビ」が社会人男女を対象に実施した調査によると、62.2%が「同僚が退職する際に、その人の辞め方に不快な思いをしたことがある」と回答しています。
そして、その具体的な理由として、27.2%もの人が「退職が決まってから仕事の手を抜くようになったから」と述べています。
この結果からも、退職が決まると仕事へのモチベーションが低下し、仕事の取り組み方や態度に変化が現れるのは、よくある傾向であることがわかります。
以上のことから、部下に元気がないときは「ちょっと疲れているだけだろう」「家族と喧嘩したのだろう」などと軽く見過ごさず、退職の兆候かもしれないと捉えて、早急に対処することが大切です。
参考:
PR TIMES「産業医500人に聞いた「従業員のメンタル不調の原因」、1位は長時間労働ではなく「上司との人間関係」」
アルムナビ「見送った側の社員が思う円満退職のコツをアンケート結果から考察」
元気がない部下への対処法

ハーバード・ビジネス・レビューの記事をもとに、元気がない部下に対して、上司がとるべき対処法について解説します。
思いやりを持って話を聞く
部下に元気がない場合、上司はまず思いやりと非難しない姿勢を持って話を聞くことが大切です。
部下の活力が失われている背景には、個人的な問題や職場への不満など、デリケートで話しにくい原因が隠れていることが多々あります。
もし上司が最初から責める姿勢で接すると、部下は心を閉ざし、本当の状況や悩みを話してくれなくなるかもしれません。
この対話の目的は、「誰が悪いか」を特定することではなく、「何が起きているか」を理解し、上司がサポートすることです。
「私は心からあなたを助けたい」という姿勢を示すことで、上司が処罰者ではなく、支援者であることを明確にできるのです。
部下と信頼関係を築きながら、本音を引き出すためには、以下のポイントを意識しながら対話を進めることが効果的とされています。
【1.「人として」の関心を示す】
仕事のパフォーマンスや態度を責める前に、部下の心身の状態を心から気遣う姿勢を見せます。
| 良い例 | 「最近、顔色が優れないように見えるけど、何かあった?あなたのことが心配なんだ」 |
| 悪い例 | 「最近、仕事のミスが多いけど、どうしたの?プロ意識が足りないんじゃないか」 |
【2.「理解のための質問」に徹する】
対話の目的は相手の状況を理解することであり、非難ではないことを明確にします。共感を示しながら、相手が何に苦しんでいるかを尋ねます。
| 意識すべきポイント | 具体例 |
|---|---|
| 相手の話に耳を傾け、遮らない | 「何が起きているかを理解したいんだけど、よかったら話してくれるかな?」 |
| 共感を示す | 「それは大変だったね」「それはつらかったでしょう」 |
【3. 信頼関係を築くための「最善策」を探す】
上司が独断で解決策を押しつけるのではなく、「部下にとっての最善策」を一緒に探す姿勢を見せることが、信頼関係構築につながります。
| 意識すべきポイント | 具体例 |
|---|---|
| 解決策を押しつけない | 「この状況を改善するために、私ができることは何だろう?」 |
| 約束をする | 「話してくれてありがとう。一緒に解決策を見つけることを約束するよ」 |
個々の状況に合った支援を行う
先ほども述べたように、元気がない原因は人それぞれ異なり、万能な解決策は存在しません。
仮に部下が元気を失くしている理由を正直に話してくれたとしても、上司が的外れな対応をしてしまうと問題が解決しないばかりか、かえって状況が悪化してしまう恐れもあります。
したがって、上司は部下に元気がない原因を特定したうえで、以下のような状況に応じたサポートを行うことが重要です。
【1. プライベートな悩みが原因の場合】
- 柔軟な対応を提案:一時的な在宅勤務や時短勤務、あるいは業務量の削減など、仕事とプライベートのバランスが取れるような対策を期間を決めて実施する
- チームへの共有:チームメンバーには本人の同意を得たうえで状況を共有し、協力体制を築く
▼具体例
| 育児と仕事の両立に苦戦している部下に対して、「仕事をしながらの育児に慣れるため、3ヶ月間は在宅勤務に切り替えてはどうでしょう?他のメンバーには、私から説明しておきますよ」と提案する |
【2. 仕事上の悩みが原因の場合】
- 共感と影響の明言:部下の悩みに共感しつつも、「あなたの態度が他のメンバーの士気や生産性に悪影響を与えている」という事実を明確に伝える
- 改善の約束と期待:悩みの原因について、上司として改善に取り組むことを約束し、同時に部下にも社会人としての責務の全うを求める
▼具体例
| 先輩社員(Aさん)に理不尽に怒られ落ち込んでいる部下に対して、「それはひどいですね。後で私からAさんに話をします。ただ、いくらショックなことがあっても、プロとしてパフォーマンスは維持する必要があるので、感情と仕事の線を引くよう協力してほしいです」と伝える |
【3. 仕事の負荷が原因の場合】
- 期待の再考:現在の業務量や内容が部下のレベルに合っているかを検討し、本人への仕事の期待値を改めて設定し直す
- 貢献の適切な認知:これまでの功績を再評価し、新たな肩書きや昇進の仕組みを通して、努力が正しく報われていると感じられるようにする
▼具体例
| チームリーダーの責任が重く、疲れ果てている部下に対して、「チームリーダーを務めるにはまだ早すぎたかもしれませんね。申し訳ありません。現在抱えている業務は一旦他のメンバーに割り振り、あなたの役割をもう一度考え直しますね」と労う |
【4. 仕事に対する士気の低下が原因の場合】
- 新しい目標の設定:部下のモチベーションを再燃させるような、達成感が得られる新しいプロジェクトや、責任の大きい仕事を与える
- プロフェッショナルな視野の拡大:スキル開発や外部交流の機会(セミナー参加など)を提供し、仕事に新鮮な視点を持つよう促す
▼具体例
| 現在の業務内容がマンネリ化し、モチベーションが低下している部下に対して、「今の仕事に飽きているのなら、新しい市場のリサーチプロジェクトの立ち上げを任せたいです。あなたの分析力を活かせるはずです」と新しいチャレンジを提案する |
このような個別の状況に応じた対応を通じて、部下は「自分は大切にされている」「上司は自分のために動いてくれている」と感じ、元気を取り戻すための土台が作られると期待できます。
解決に向けて辛抱強く寄り添う
一度失われた部下の元気は、一朝一夕で回復できるものではありません。
ここまでに紹介した対処法は効果が出るまでに時間がかかるため、上司には「継続的な努力」と「忍耐強さ」が求められます。
また、上司がいくら真剣に部下と向き合ったとしても、部下が元気を取り戻せない可能性も当然あります。
考えられるすべての手を尽くしても状況が改善しない場合は、その仕事や環境が「そもそも部下に合っていない」というサインかもしれません。
このような状況に至った場合は、部下との関係を断ち切るのではなく、将来のキャリアをサポートする姿勢を示すことが、円満な解決につながります。
- 進むべき道の探索:部下と率直な話し合いを行い、今後進むべき道を一緒に探す
- サポートの提供:社内の異動先を探し、推薦状を書くなど、部下の次のステップを積極的に支援する
たとえ現在の仕事から離れることになったとしても、上司として部下の将来を気遣い、サポートする姿勢を見せることで、良好な関係を保ったまま前向きな解決を図ることができるのです。
参考:
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「部下が完全にやる気を失っている時、どう対処すべきか」
部下が元気をなくさないための予防も大切

ここまで、部下の元気が失われた後の「対処法」について説明してきましたが、そもそも部下が元気をなくさないよう、日頃から「予防」することが最も重要です。
予防のためには、普段から部下一人ひとりをよく観察し、以下のような些細な変化も見逃さないようにチェックする必要があります。
- 行動の変化:遅刻や欠勤が増える、ミスが多くなる、身だしなみが乱れるなど
- 感情の変化:イライラしている、笑わなくなる、口数が減る、落ち込んでいるなど
そして、どれだけ些細であっても異変を感じたら「気のせいだろう」と流さずに、「いつもと違うように見えるけど、何かあった?」といった形で、部下と積極的にコミュニケーションを取りましょう。
その際、部下の発言を否定したり批判したりせず、共感(傾聴)の姿勢で最後まで耳を傾けることが大切です。
これらの予防策を日頃から講じ、部下が長く活き活きと働ける職場環境を作ることも、上司としての重要な責務であるといえます。
まとめ
元気をなくす原因は人それぞれ異なります。
もし、部下に元気がないように見える場合は、まずは対話を通じてその原因を特定することが不可欠です。そのうえで、個々の状況に応じた適切な対処法を取る必要があります。
また、そもそも部下が元気をなくさないよう、日頃から「予防」することも大切です。
部下が長く活き活きと働ける職場環境を作りたい方は、本記事で紹介した内容を実践し、チームの活性化に役立ててください。

