NALYSYSのAI活用が「可視化の次」を示す。現場のマネジメントを変える、具体的な一手とは

多くの企業がエンゲージメントサーベイを導入していますが、組織の状態を「可視化」しただけで、具体的な改善アクションにつながらず形骸化してしまうケースは後を絶ちません。

この「可視化の次」に横たわる深い溝を、テクノロジーの力でどのように越えていくのでしょうか。

NALYSYSが開発したAI搭載のマネジメントサポートツールは、従業員一人ひとりの「働く動機」を深く分析し、現場の管理職が取るべき「次の一手」を具体的に提示します。

本記事では、データ分析を現場のアクションへとつなげ、マネジメントに変革をもたらすNALYSYSの思想と、その具体的な仕組みに迫ります。

NALYSYSの思想とサーベイの特徴

ーNALYSYSのパルスサーベイが持つ、基本的なサービスの特徴から教えてください。

NALYSYSのサーベイは、定期的に短い設問で従業員の状態を観測するという点では、いわゆるパルスサーベイに近いものになります。しかし、その思想や設計思想には、他とは異なる明確な特徴があります。

最大の特徴は、「個人のモチベーション」、特に「その人が仕事を続けている動機」を深く問うている点です。多くのパルスサーベイが、福利厚生や労働環境といった会社への「満足度」を測るのに対し、私たちは「なぜ、あなたはこの仕事を続けているのですか?」という、より本質的な動機に着目しています。

なぜなら、組織にとって本当に重要なのは、必ずしも満足度が高い従業員ではないと考えるからです。例えば、会社に不満はないけれど成長意欲もなく、ただ漫然と働き続けている従業員と、現状に課題を感じつつも「この仕事を通じて成長したい」「社会に貢献したい」といった内発的な動機で前向きに働いている従業員。

組織の未来を創るのは、間違いなく後者です。私たちは、この後者のような従業員が、どのような状態にあるのかを可視化したいと考えています。

そのために、サーベイは「実名制」を採用しています。組織全体の平均点を見るだけでは、個別の課題は見えてきません。

「誰が、どのような動機で働き、今どういう状態にあるのか」を明確にすることで、初めて一人ひとりに寄り添った、意味のあるフォローアップが可能になる。これがNALYSYSのサーベイの根幹にある思想です。

「現状の可視化の次」へ進むためのAI搭載

ーAIはそのサーベイ自体に搭載されているのでしょうか? それとも別の機能で活用されているのですか?

AIが活用されているのは、サーベイ機能そのものではなく、「AIマネジメントサポート機能」という独立した機能の中です。サーベイや、同時に提供している適性検査で得られた従業員のデータをインプット情報として活用し、AIが分析と提案を行う、という構成になっています。

ーNALYSYSにAIを搭載した背景には、どのような目的や、解決したかった課題があったのでしょうか?

最も解決したかった課題は、多くの企業が陥ってしまう「現状を可視化して終わり」という状況からの脱却です。

サーベイを導入し、組織の状態がデータとして見えたとしても、そこから具体的なアクションにつながらないケースが非常に多いのが実情でした。例えば、「全社のエンゲージメントスコアは改善したが、実は部署Aのエース社員のモチベーションは急降下していた」とか、「部署Bに問題があることは分かったが、多忙な部署Bのマネージャーは何も対策を打てず、結局1年後も同じ課題を抱えている」といった状況です。

人事がどんなに立派な分析レポートを作成しても、現場のマネージャーからすれば「また本社が何か言っている」と他人事で、具体的な行動変容には至らない。

また、分析や読み解き自体にも時間がかかりますし、担当者のスキルによって解釈に大きなバラつきが出てしまうという課題もありました。

私たちは、この「可視化」と「次のアクション」の間にある、深くて広い溝を埋める必要性を強く感じていました。

そのための手段として、AIのようなテクノロジーの活用は必然的な選択でした。人が時間をかけて行っていた分析や打ち手の考案をAIに補助させることで、よりスムーズに、そして誰でも「実行」のフェーズまで進めるようにしたい。これがAI搭載の一番の目的です。

現場のマネジメントを変えるAIの力と、具体的なアウトプットとは

ーAIの搭載によって、具体的に何ができるようになったのでしょうか?

現場レベルでの変化は、大きく2つあったと考えています。

1つ目は、先ほどお話しした「結局、何をすればいいのか」という具体的なアクションプランを、サービスとして瞬時に提案できるようになったことです。これにより、データとにらめっこする時間が大幅に削減され、すぐに行動に移せるようになりました。

2つ目は、これが非常に本質的な変化なのですが、NALYSYSが人事や経営層だけが使うモニタリングツールから、「現場の管理職が日々のマネジメントで本当に使える」実践的なツールへと進化したことです。AIが具体的なアクションを提示してくれることで、マネジメントに苦手意識を持つ管理職の方でも、自信を持って部下と向き合えるようになる。この変化は非常に大きいと感じています。

ーAIによって、具体的にはどのようなアウトプットが得られるのですか?

はい。例えば、これが「AIマネジメントサポート機能」のサンプル画面の一部です。

ここには、サーベイ結果や性格特性、過去の面談記録などを複合的に分析した結果として、「この従業員は、こういう理由でモチベーションが低下している可能性があり、次回の1on1ではこんな質問をしてみましょう」といった、具体的な提案が表示されます。

これまでのサーベイの世界では、「スコアが75点でした」という結果を見て、現状を把握するところで終わってしまっていました。

そこから先のアクションプランを考えるのは、各企業や管理職の力量に完全に委ねられているわけです。これを私たちは、AIの力によって「この提案に沿って、1on1でこれを話せばいい」という、具体的な次の一手にまでつなげられるようにしました。

この機能がもたらす価値は、単なる効率化だけではありません。現場の管理職にとっては、以下のような多面的な価値があると考えています。

  • 時間的価値:1on1の前に「何を話そうか」と悩む時間、部下の状態を推測する時間を大幅に短縮できます。
  • 心理的価値:「何を話せばいいか分からない」というプレッシャーから解放され、部下と向き合うことへの心理的ハードルが格段に下がります。
  • 品質的価値:自分の経験や勘だけに頼る「我流」のマネジメントから脱却し、データに基づいた客観的なアプローチが可能になります。
  • 関係性的価値:AIが提案する的確な問いかけをきっかけに、これまで知らなかった部下の一面や本音を引き出すことができ、結果として信頼関係の深化につながります。

AIはいかにして「最適な一手」を導き出すのか

ーその「こんな質問をしてみましょう」という質の高い提案は、どのような仕組みで生成されているのですか?

独自の多層的なデータをインプットすることで、提案の質と精度を高めています。

まず大前提として、私たちのプロダクトの思想の根幹にある学術的理論、例えばサーベイの設問設計のベースになっている「自己決定理論」や、レバレジーズの長年の社内実践で効果的だと検証されてきたマネジメント手法などを、ベースとなる知識としてAIに学習させています。

その上で、対象者個人の情報として、主に3つのデータをインプットします。

  1. 毎月のサーベイ結果:これは「今」のモチベーションの浮き沈みや、その原因の仮説を立てるための最も重要なトリガーとなります。
  2. 性格検査の結果:これは、その人の生まれ持った「変わらない性質」を示します。例えば、同じようにモチベーションが下がったとしても、ロジカルな説明を好むタイプなのか、感情的な共感を求めるタイプなのかによって、響く言葉やアプローチは全く異なります。適性検査の結果は、この「伝え方」の最適化に大きく寄与します。
  3. 過去の1on1や面談の議事録:NALYSYSにはAIによる面談の自動文字起こし・要約機能があり、そのデータが蓄積されます。これにより、過去の対話の文脈を踏まえた提案が可能になります。たとえば「部下Aが以前『月末の報告書作成が、各部署から集めるデータの形式がバラバラで、手作業での修正に時間がかかり大変だ』と話していた。今回のサーベイで特定の項目が下がっていることからも、やはりあの業務が大きな負担になっているのではないか。」といった、より解像度の高い仮説を立てることができるのです。

ーでは、データが蓄積されればされるほど、AIの提案の精度は上がっていくのでしょうか?

おっしゃる通りです。AIは過去のデータを遡って参照するように設計されていますので、サーベイを半年、1年と継続していただくことで、個人のモチベーションの変動パターンや傾向をより正確に捉えることができます。

面談の記録などの定性的な情報も同様です。使えば使うほど、その人固有の言葉遣いや価値観、目標などがデータとして蓄積されていきます。その結果、よりその人の状況にパーソナライズされた、精度の高い具体的なフォローの提案が可能になっていくのです。

NALYSYSが解決する組織課題とは

ー特にどういった企業が、このAI機能を活用すると効果が出やすいと考えますか?

現状、特に大きな価値を感じていただきやすいのは、2つのタイプの課題を抱える企業だと考えています。

1つ目は、社員数が多く、人事の目が現場の隅々まで行き届かない大規模な企業です。こうした企業では、「人事の思いが現場の末端まで届かない」「全社で決まった施策が、現場レベルでは他人事で実行されない」といった課題が起こりがちです。

NALYSYSは現場の管理職一人ひとりに、部下に合わせた具体的なアクションプランという「武器」を直接授けることで、この課題を解決します。いわば、組織の毛細血管に直接働きかけるようなアプローチが可能になります。

2つ目は、管理職のマネジメントスキルにバラつきがある企業です。「あの部長のチームはどんどん若手が育つが、この部長のチームは離職者が後を絶たない」といった状況は、多くの企業で見られます。

特に、「名プレイヤー、必ずしも名監督にあらず」という言葉の通り、自身の業務成績は優秀でも、ピープルマネジメントに苦手意識を持つ管理職は少なくありません。AIによるサポートは、こうしたマネジメントの属人化を防ぎ、管理職個人のスキルレベルに過度に依存することなく、組織全体のマネジメント品質を標準化し、底上げする上で非常に有効です。

データ取得からアクションまでのPDCAサイクル

ー導入企業では、NALYSYSをどのように活用しているのでしょうか。活用の流れを教えてください。

私たちは、プロダクトと人のサポートを組み合わせ、お客様の組織内で効果的なマネジメントサイクルが回るよう支援しています。基本的な流れは以下の通りです。

状態把握

まず、人事や経営層が主体となり、パルスサーベイを実施します。全社、部署別、個人別のスコアを分析し、特にフォローが必要な部署や個人を特定します。

アクションプランニング

次に、フォローが必要な部署の管理職が主体となります。AIマネジメントサポート機能を使い、対象となる部下一人ひとりに対する具体的なアクションプラン(1on1での質問内容、声かけの方法など)を把握します。

アクション実行

管理職が、AIの提案を参考にしながら、部下との1on1や日々のコミュニケーションを実行します。面談内容は自動で記録・蓄積されます。

振り返りと改善

そして月末などに、カスタマーサクセス(CS)の担当者も交えて定例ミーティングを行います。実行したアクションの結果、部下のモチベーションにどのような変化があったかをデータで確認し、次月の改善点や新たな打ち手を議論します。

この①~④のサイクルを毎月繰り返していく。NALYSYSは、このサイクルを円滑に回すためのエンジンであり、ナビゲーターでもある、というイメージです。

「人とAIの協働」NALYSYSが提供する手厚いサポート体制

ーAIによるサポートだけでなく、人によるサポートも重要ということですね。

はい、極めて重要だと考えています。AIは「何をすべきか」という最適な打ち手を提示することは得意ですが、管理職が「なぜ、それができないのか」「どうすれば、うまくできるようになるのか」という実践上の悩みや壁に寄り添うことはできません。そこを埋めるのが、私たちCSの役割です。

先ほどお話しした毎月の定例ミーティングは、月額利用料の中で標準提供しており、ここでは個別具体的な課題解決のご支援をしています。

例えば、「AIの提案通りに質問してみたが、部下の反応が芳しくなかった。どうすれば良かったか」といった壁打ち相談や、「Aさんという特定の部下へのアプローチで悩んでいる」といったケーススタディなど、かなり手厚く入り込んでサポートさせていただいています。

AIという最新の「武器」と、それを使いこなすためのCSという「トレーナー」が両方いること。これこそが、NALYSYSが単なるツールで終わらず、お客様の組織に変化をもたらすことができる理由だと自負しています。

レバレジーズの組織人事ノウハウを活かしたプロダクト設計

ーNALYSYSの思想や機能の背景には、レバレジーズグループ全体の人事としての取り組みが反映されていると思いますが、その強みとは具体的にどういった点でしょうか。

私たちのプロダクトの根幹を成している強みは、大きく2つあると考えています。

1つ目は、「事業拡大に伴う積極採用」と「高い定着率・活躍」という、相反しがちな二つを両立させてきた実績と、その過程で蓄積された膨大なノウハウです。

レバレジーズでは、年間で数百名規模の新卒社員を採用していますが、その一人ひとりの適性を見極めて配置し、丁寧なマネジメントを通じて定着させ、会社の成長エンジンへと育て上げてきました。

「働きがいのある会社ランキング」で毎年上位に選出されているのも、その結果の一つです。この、何百、何千という成功と失敗の試行錯誤の末に生まれた実践的な知見が、プロダクトのロジックや思想の隅々にまで活かされています。

2つ目は、極めて多様な組織への対応力です。レバレジーズグループ内には、現在50以上の事業が存在します。それはまるで、多種多様な業種、カルチャーを持つ会社の集合体のようです。

急成長中のベンチャーのような組織もあれば、安定した事業を運営する組織もある。エンジニア中心の組織もあれば、営業中心の組織もある。その一つひとつの組織特性に合わせて、最適な人事施策を設計し、実行してきた。この多様性への対応経験があるからこそ、NALYSYSは特定の業種や規模に偏らない、汎用性の高いプロダクトになり得ているのだと考えています。

「選ばれる組織は、つくれる。」というビジョンへ

ー最後に、NALYSYSというサービス全体の今後のビジョンを教えてください。

私たちがサービスを通じて実現したい未来は、キャッチコピーである「選ばれる組織は、つくれる。」という言葉に集約されています。

「選ばれる組織」とは、単に給与や待遇が良いだけの組織ではありません。従業員が「この会社で働き続けたい」と心から思い、社外の優秀な人材が「あの会社で働きたい」と憧れる。そんな組織のことです。

そして、その魅力の中核を成すのは、日々の仕事を通じて得られる成長実感や、健全な人間関係であり、それらを生み出す鍵を握っているのが、現場のマネジメントです。

しかし、その重要な役割を担う中間管理職は、自身の業務とマネジメントの両立に苦しみ、ともすれば「罰ゲーム」とまで言われるほど、孤独で過酷な状況に置かれています。

私たちは、NALYSYSというプロダクトを通じて、そんな管理職の方々をテクノロジーと人の力でサポートしたい。彼らを孤独な存在から、組織づくりの楽しさを実感できる主役へと変えていきたい。そして、一人でも多くの従業員が、自分の会社を、自分の仕事を選んで良かったと思える。そんな組織を、お客様と一緒につくり上げていくことが、私たちの目指すビジョンです。

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