内定を出したのに、学生に辞退されてしまったということはありませんか? 採用担当者はよくこのような悩みを抱えがちです。
前回は、内定辞退が起きてしまう理由と、内定を出す前に「合意形成」する必要があることをお伝えしました。今回は、合意形成のポイントについて詳しく解説していきます。

こちらから口説くのではなく、応募者に決めさせる

合意形成を成功させるコツは、「相手に決めさせる」ことです。人は、誰かに言われたり指示されたりしたことは簡単に忘れますが、自分で納得したうえで決めたことは守ろうとするからです。

内定承諾は、応募者にとって一生を左右するほどの重要な決断です。企業からいくら口説かれたところで、簡単に決められるものではありません。自分自身で「この会社がいいんだ」と納得し、決断してもらう必要があります。

決断してもらうために企業が行うべきは、「情報提供」と「サポート」です。まずは、応募者の興味を惹きそうな自社の情報をどんどん提供しましょう。決断するのはあくまで相手なので、「うちにはこんな特徴があるから入社するといいですよ」ではなく、事実情報をフラットに伝えるのがポイントです。

たとえば、「当社では今、新商品に関するビッグプロジェクトが動いているんだけれど、プロジェクトリーダーは26歳の若手なんだよ」といった情報を伝えたとします。すると、応募者は自分の頭で「20代でも責任ある立場を任せる会社なんだ」「若手にもチャンスを与える会社なんだ」と理解します。そして、応募者から「そうなんですね。私も若いうちからどんどん新しいことにチャレンジしたいと思っています」といった思いや希望を引き出し、「言質」を取りやすくなります。

相手の言葉を使って、フラットに決断を仰ぐ

応募者の意思確認ができたら、今度は相手の言葉を使って決断を促しましょう。たとえば、「さっき、若いうちからどんどんチャレンジしたいと言っていたけれど、それならばうちの会社が良いかもしれないね」という言い方です。表立って口説くのではなく、あくまでフラットに行いましょう。「若いうちからチャレンジしたい」は自分の考えであり、実際に口に出した言葉でもあるので納得感があり、決断しやすくなります。

事実を提供し、相手に解釈してもらったうえで言質を取り、相手の言葉を使って「うちの会社が合っているのではないのでは」と伝える(=暗に口説く)。これが、内定辞退を生まない合意形成の流れです。もし、上手く言質が取れなかったり、一連の流れがスムーズに進まなかったりしたら、そもそも自社とはミスマッチである可能性が高いので、無理に口説くのは止めたほうがいいでしょう。

【本記事の執筆者】

曽和 利光(そわ・としみつ)

株式会社人材研究所 代表取締役社長
新卒で株式会社リクルートに入社後、ライフネット生命保険株式会社と株式会社オープンハウスを経て、2011年に株式会社人材研究所を設立。「人と、組織の可能性の最大化」をテーマに掲げ、人事、採用にコンサルティング事業などを展開。『人事と採用のセオリー』など、これまで多くの書籍を出版し、いずれも大きな話題を集めている。