このページのまとめ

  • 労働生産性とは、従業員全体が1時間で生み出す成果のこと
  • 労働生産性が高いほど、業務効率が良く利益が上がる
  • 労働生産性が低い企業は業務効率が悪い可能性があるため、業務内容の見直しが必要

投資を少なく利益を上げるために、労働生産性が注目を集めています。従業員1人あたりの労働生産性が高いと、少ない人数でも多くの利益を上げられるためです。労働生産性が上がらず、悩んでいる企業も多いことでしょう。今回は、労働生産性を上げる方法や、労働生産性向上のために見直すポイントを解説します。少ない投資で利益を上げるためにも、労働生産性を向上させましょう。

労働生産性とは

労働生産性とは、「従業員1人あたりが1時間で生み出す成果」のことです。従業員全体で1時間に生み出す成果のことを指すケースもあります。労働生産性が高いほど効率的に業務を進められており、企業全体の利益も高い傾向があります。特に、人手不足の企業は1人あたりの従業員の生産性が全体の利益に与える影響が大きいため、非常に重要な要素です。

労働生産性が高い国

国単位での労働生産性は「GDP÷就業者数」で算出します。日本生産本部の調査によると、2020年時点で最も労働生産性が高い国はアイルランドでした。そして、ルクセンブルク、アメリカと続いています。この調査はOECD加盟の38ヶ国を対象に行われたもので、日本は38ヶ国中の23位に位置しています。

参照元:公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021

労働生産性の計算式 

労働生産性を確認するためには、計算が必要です。労働生産性は「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」で表せるため、それぞれの計算方法を知っておきましょう。基本的には、「産出÷投入資源」で労働生産性が算出できます。

物的労働生産性の場合

物的労働生産性は、労働の成果物が作物や商品の個数の場合に用いられる考え方です。物的労働生産性は、「生産量または販売金額÷労働者数」で求められます。
たとえば、みかんを1000個生産し、労働者が100人だったとしましょう。この場合、1000個÷100人になり、労働者1人あたりがみかんを10個生産したことになります。つまり、物的労働生産性は、みかん10個分です。このように、物的労働生産性は客観的に分かりやすい数値で証明できるため、多くの企業で使用されています。

付加価値労働生産性の場合

付加価値労働生産性の付加価値は、粗利と同じです。たとえば、みかん1個の原価が200円だった場合に、そのみかんを300円で販売したら100円の粗利が出ます。この100円が「付加価値」です。付加価値労働生産性の計算は、「付加価値÷労働投入量」で行います。労働者一人あたりの労働生産性が知りたいときには、労働者の人数で割り算しましょう。付加価値労働生産性では、従業員がどれだけ付加価値を生み出しているか、粗利を出しているかを確認できます。

労働生産性向上のメリット 

労働生産性が向上すると、次のようなメリットがあります。

少人数で利益が上がる

労働生産性の向上により、少人数でも利益を上げることができます。一人あたりの生産性が高まるためです。また、今後の日本では、労働人口の減少もあり、人材獲得が困難になる企業も増加します。労働力が足りず、事業運営に苦戦する企業も増えるでしょう。労働生産性が高ければ、少人数でも利益を出せます。今後の社会情勢を考えても、労働生産性の向上が重要です。

従業員の働きやすさ向上

労働生産性が高まることで、従業員の働きやすさが向上します。労働時間が減り、残業を少なくできるためです。たとえば、10時間必要な業務を8時間で終わらせることができれば、2時間分の余裕ができます。残業も必要なく、定時で帰ることができるでしょう。労働生産性の向上は、従業員の働きやすさにつながります。

残業代が削減できる

就業時間内で業務を終わらせる仕組みや習慣を作れば、残業代をカットできます。時給2000円の従業員が残業すると、1時間で500円の割増賃金がかかります。50時間の残業で25,000円、同じような従業員が10人いれば、25万円の残業代が発生するでしょう。従業員の多い企業ほど人件費の大幅な削減が見込めます。削減した資金でシステムツールなどに投資すれば、さらなる生産性の向上が期待できるでしょう。

補助金や助成金の優遇

厚生労働省が定める労働生産性の基準を満たすことで、補助金や助成金の優遇措置が受けられます。次のような助成金が割増の対象になるため、覚えておきましょう。

  • 労働移動支援助成金
  • 地域雇用開発助成金
  • 中途採用等支援助成金
  • 人材確保等支援助成金
  • 両立支援等助成金
  • キャリアアップ助成金
  • 人材開発支援助成金
  • 業務改善助成金

参照元:厚生労働省「労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます

国の支援を受けられる

労働生産性向上に取り組む企業は、国からの支援を受けられます。支援を受けるためには、「経営力向上計画」の申請が必要になります。経営力向上計画とは、「人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画」のことです。

経営力向上計画が受理された企業には、具体的に次のような支援が受けられます。

  • 設備投資の固定資産税が3年間半額
  • 日本政策金融公庫から融資を受ける際、金利が0.9%になる
  • 法人税と所得税に関して、取得時価額または即時償却の10%が税額控除される

参照元:中小企業庁「経営サポート『経営強化法による支援』

労働生産性が低い企業の特徴 

労働生産性を上げるためにも、労働生産性が低い企業の特徴を知りましょう。自社が該当する場合は、改善が必要です。

残業が多い

残業が多い企業は、労働生産性が低い企業です。特に、残業が評価される企業では、定時で終わる業務を無理に引きのばしたり、やらなくても良い業務を遅くまで行っていたりするケースがあります。決められた時間で業務を終わらせる習慣を作らなければ、労働生産性は下がる一方です。無駄な残業をさせない職場環境を作りましょう。

年功序列の組織形態

年功序列で評価する企業は、労働生産性が上がりません。労働生産性を向上させても評価の対象にはならないため、効率的に業務を行う従業員が減ったり、優秀な従業員が退職したりしてしまいます。労働生産性を上げるためには、従業員の生産性を人事評価の要素に加えることが重要です。

チームで働くことが多い

日本企業では、チームやプロジェクトで働く機会が多くあります。たとえば、優秀な従業員がほかの従業員の業務のサポートに回った結果、本来やるべき業務が進まなくなってしまうケースがあります。チームで協力する風土がある企業は、個々の従業員の生産性を低下させていないかに注意しましょう。

労働生産性向上の方法

労働生産性を向上させるためには、次のような対策をとることが大切です。

現状を把握する

労働生産性向上のために、まずは自社の現状を把握しましょう。現状を把握する際のポイントは、分野を複数に分けて産出を行うことです。業務全体の生産性を把握するだけでは、改善が必要なポイントが分かりにくくなります。部署ごと、部門ごと、製品ごとなど、細かく分けて計算を行うことでより効果的な分析が実施できます。

システムツールの導入

自動化ができる業務は、システムツールの導入を検討しましょう。たとえば、勤怠管理や給与計算を手作業で行っている場合、ミスが起こりやすく時間もかかります。システムツールを導入すれば、正確に早く業務を進めることが可能です。

アウトソーシングの利用

自社だけで対応が難しい場合、アウトソーシングを利用しましょう。採用活動で本来の業務が停滞してしまう場合は、採用活動をアウトソーシングすることが可能です。勤怠管理や給与計算などの業務に時間を取られているのであれば、それらの業務をアウトソーシングしてみるのも良いでしょう。

研修の実施

労働生産性を上げるためには、効率的な業務の進め方について従業員に周知することが大切です。営業研修などでアポイントや契約を獲得するためのコツをレクチャーすれば、従業員一人ひとりの生産性向上が見込めます。業務効率向上の方法がある程度確立されている業務では、研修を実施するのも有効です。

労働生産性向上で見直すポイント 

労働生産性向上のために次のポイントを見直してみましょう。

業務配分

従業員一人ひとりの業務配分が適切か見直しましょう。たとえば、特定の従業員の業務量が多すぎたり少なすぎたりする場合は、業務配分を見直してみましょう。

作業工数

作業工数に無駄がないか確認しましょう。二度手間になっていないか、不要な工程がないかの確認が必要です。日常的に行っている業務に対して、「もっと効率的なやり方はないか」を意識して考えてみましょう。

外注先の見直し

「業務をアウトソーシングしてみたけど生産性がそこまで上がらない」という場合は、外注先の変更を検討してみましょう。複数の外注先を利用している場合は、外注先を一本化できないかを考えてみることも大切です。外注先を一本化すれば、複数の企業の担当者と個別にやり取りする手間が省けます。また、同時に複数の問題が生じた際に解決までの時間を短縮できるかもしれません。

まとめ

企業の利益を上げるためにも、労働生産性の向上が重要です。日本全体でみても労働生産性は高くなく、今後の改善が求められます。労働生産性の向上は、利益はもちろんですが、従業員のモチベーションアップや、残業代削減によるコストカットの実現など、さまざまなメリットがあります。まずは自社の現状を把握し、作業工数や労働時間を見直すことで、労働生産性の向上につなげましょう。