このページのまとめ

  • メタ認知のトレーニングには、コーチングやセルフモニタリングがある
  • メタ認知のトレーニングは、課題解決力やコミュニケーション力の向上に効果的
  • メタ認知のトレーニングは個人でできるものもあるため、習慣として取り入れさせる

従業員の能力を高める手法として、メタ認知トレーニングが注目を集めています。メタ認知とは、自分自身を客観的に見る力であり、判断力の向上や困難な状況での対応力の向上が期待できます。メタ認知トレーニングを会社全体で導入したいという担当者も多いことでしょう。今回は、メタ認知のトレーニング方法やメタ認知を高めるメリットを解説します。新たな人材育成の方法として、参考にしてみてください。

メタ認知とは

メタ認知とは、自分の認知活動を客観的に認知することです。認知には、考えること・感じること・記憶すること・判断することなどが含まれます。もともとは脳科学や教育学の分野で使用されていましたが、近年はビジネスの場面でも注目を集めるようになりました。特に人材育成の場面で使用されることが多く、メタ認知力の高いビジネスマンが求められています。

メタ認知的知識

メタ認知的知識とは、メタ認知を作り出す材料となる知識のことです。メタ認知的知識を持つことで、人間は自分自身を客観的に見ることができます。
メタ認知的知識は「人」「課題」「方法」の3つに分類できます。それぞれのメタ認知的知識について詳しく解説します。

人に関するメタ認知的知識

人に関するメタ認知的知識とは、人間全般や自分に関する知識のことです。たとえば、「自分はプレッシャーに強い」「人間は睡眠不足だと集中力が下がる」などの知識が該当します。一般常識のように、多くの人が知っている知識のことを指します。

課題に関するメタ認知的知識

自分自身の経験から得た課題は、課題に関するメタ認知的知識に該当します。たとえば、「端的に物事を伝えるのが苦手」「朝早く起きれない」などが課題に関するメタ認知的知識です。

方略に関するメタ認知的知識

方略とは、課題解決のための戦略や方法のことです。つまり、自分の課題を解決するための知識になります。たとえば、「イラストつきで説明すると内容が伝わりやすくなる」「22時までに寝ると翌朝6時にすっきり起きられる」などのように、自分の課題を解決するための適切な方法が該当します。

メタ認知的技能

メタ認知的技能とは、経験のない問題に直面したときに解決策を発見できる能力です。自身を客観的に見ることで、最適な対応を見つけ出します。また、メタ認知的技能にはメタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールの2種類があります。

メタ認知的モニタリング

メタ認知的モニタリングとは、自分自身の行動を監視できている状態です。客観的に見て自分の行動が正しいか、適切な判断ができているかを確認します。メタ認知的モニタリングの能力が高い人物ほど、困難な状況でも冷静な判断ができます。

メタ認知的コントロール

メタ認知的コントロールとは、メタ認知的モニタリングで得た情報をコントロールする状態です。判断した状況から、具体的にどのように行動するかを見つけ出します。メタ認知的コントロールが高ければ、困難な状況でも戦略を考え、最適解に向けて行動できます。

メタ認知のトレーニング方法

メタ認知を高めるトレーニング方法を解説します。

瞑想

瞑想とは、何も考えずにリラックスし、集中する状態のことです。マインドフルネスと呼ばれることもあります。瞑想を行うことで、今の状況に集中し、冷静かつ客観的に判断する力が向上します。瞑想を行う際には、「調身」「調息」「調心」の3つの手順を行いましょう。

まず、調身とは姿勢を正すことです。座って行うことが一般的であり、正座やあぐらで瞑想を行います。背筋をしっかりと伸ばし、目を閉じると調身の姿勢です。

続いて調息に入ります。調息とは、息を整えて集中する状態です。調息では「鼻から息を吸い、鼻から息を吐く」ことを基本とします。深呼吸のように3秒以上かけてゆっくりと息を整えましょう。呼吸が苦しくならないようにリラックスして行う点がポイントです。

最後に、調心で心を整えます。今この瞬間に意識を集中させ、心拍音や風、気温など、感じられる物に焦点を当てて自分自身を捉えましょう。
このように、瞑想は調身・調息・調心の3つの手順に沿って行います。初めて瞑想を行う場合は1分でも問題ないため、まずは実行してみましょう。

コーチング

コーチングとは、相手が本来持っている能力や考え方を引き出すサポートを行うことです。知識を教えるのではなく、「相手から引き出す」ことに焦点を当てています。

コーチングの基本的な手順は次のとおりです。

  • 現状のヒアリング
  • 相手の理想を明確にする
  • 現実と理想を比較し、理想に近づく方法を探す
  • 具体的な行動を決める
  • 振り返りを行う

コーチングで注意すべき点は、コーチングを行う側が回答を誘導しないことです。あくまでも、コーチングを受ける側が自分で考えて答えを出すことが大切です。
コーチングを成功させるポイントは、相手の話をよく聞き、質問で会話を広げてあげることです。YesやNoで答えられるクローズドクエスチョンではなく、自由に回答ができるオープンクエスチョンを心掛けましょう。

セルフモニタリング

セルフモニタリングとは、自分で自分自身を観察する方法です。自分が意識せずに行っている「行動」や「思考」を自分で客観的に捉えるトレーニングを行います。
具体的には、次の5つの観点からセルフモニタリングを行います。

  • 現状
  • 思考
  • 気分
  • 行動
  • 反応

たとえば、あなたが重要なプレゼンを前にして緊張しているとします。その場合、セルフモニタリングを通して次のように自分を客観視できます。

  • 現状:重要なプレゼンの前で緊張している
  • 思考:失敗すると評価にも影響するし、必ず成功させないといけない
  • 気分:緊張で落ち着かない
  • 行動:自分の番が来そうでソワソワしている
  • 反応:冷や汗が出て、心臓の鼓動が早くなってきた

このように、セルフモニタリングでは自分の行動を客観的に捉えます。客観的に捉えることで、対策方法を冷静に考えることができます。

ライティングセラピー

ライティングセラピーとは、自分の悩みや不安を紙に書き出す方法です。紙に書き出すことで、自分の悩みを可視化できます。ライティングセラピーの方法は、紙とペンを用意し、15分ほど悩みや不安を書き続けるだけです。準備も簡単で、すぐに始めることができるでしょう。

メタ認知力を高めるメリット

メタ認知力を高めることで、次のようなメリットが得られます。

感情のコントロールがしやすくなる

メタ認知力が高い人物は、感情のコントロールがしやすくなります。怒りの感情をもっていても、なぜ怒っているのか、どのようにすれば怒りが静まるのかを判断できます。自分の力で感情をコントロールできるため、仕事のパフィーマンスも安定しています。部下をマネジメントするリーダーに向いており、企業にとって必要な人材となるでしょう。

課題解決力の向上

メタ認知力を高めることで、課題解決力が向上します。メタ認知が高い人物は、困難に直面しても冷静に状況を判断できる能力があります。また、解決策を自ら考えて行動を起こすことが可能です。さらに、同僚やチームメンバーのことも気にかけ、チーム全体の課題解決にも力を発揮できるでしょう。

コミュニケーション力の向上

メタ認知を活用して、コミュニケーション力を成長させることもできます。メタ認知が高い人物は、自分の発言が相手に与える影響を冷静に判断できるため、相手を不快にさせないコミュニケーションがとれるようになるでしょう。

まとめ

メタ認知力を高めることは、周囲と良好な関係性を築いたり、適切な解決策を見出したりする際に役立ちます。従業員のメタ認知力を高めるために、瞑想やセルフモニタリング、コーチングなどを人材育成に取り入れてみましょう。