このページのまとめ
- ジョブ型雇用とは、役割や業務内容を限定し、雇用する制度のこと
- ジョブ型雇用の台頭には、メンバーシップ型雇用が難しくなってきた背景がある
- ジョブ型雇用は専門性の高い人材を雇用できるメリットがある
- ジョブ型雇用の条件を変えるには再契約が必要なため、注意する
専門性の高い人材を確保するために、業務内容や勤務場所などを限定して採用する「ジョブ型雇用」が注目を集めています。ジョブ型雇用が広まっている背景には、従来のメンバーシップ型雇用が困難になったことがあげられます。今回は、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いや、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
ジョブ型雇用とは
ジョブ型雇用とは、従業員を職種や役割、スキルに応じて雇用する制度のことです。スキルをもっていることを前提に、特定の業務内容にのみ従事させます。また、業務に対して人を割り当てるため、人材が変わりやすい特徴もあります。入社後にさまざまな経験を積んでいく日本企業の採用形式とは、異なる雇用方法です。
メンバーシップ型雇用とは
ジョブ型雇用と比較されるものに、メンバーシップ型雇用があります。
メンバーシップ型雇用とは、職種を限定せずに雇用し、入社後の特性によって配属を決める方法です。終身雇用が一般的であった時代では、人材の成長を待って配属先を決められる点もメリットでした。しかし、現代では転職が当たり前になり、終身雇用から成果主義に移行する企業が増加しています。そのため、メンバーシップ型雇用の維持が難しく、能力やスキルに応じて雇用するジョブ型雇用の導入が進んでいます。
ジョブ型雇用のメリット
ジョブ型雇用を採用するにあたって、どのようなメリットがあるか知っておきましょう。ここでは、メリットを4つ紹介します。
専門性の高い従業員を雇用できる
ジョブ型雇用では、専門性の高い従業員を雇用できます。専門性を高めることで、より高い成果が期待できるでしょう。従来の雇用では、さまざまな職務を兼任しており、成果がバラつきやすいデメリットもありました。一方で、ジョブ型雇用は職務に特化させることができるため、通常よりも高い成果が期待できます。
条件に合う従業員を獲得できる
ジョブ型雇用では業務内容や勤務場所などを細かく定めているため、自社の条件に合った従業員を採用できる可能性が高くなります。
従来の採用では、新卒を一度に入社させ、入社後に配属先や勤務地を決める方法が主流でした。そのため、入社後のミスマッチが発生しやすく、離職率が高くなる傾向がありました。
ジョブ型雇用では企業が提示する雇用条件に興味を示した人が応募するため、入社後のミスマッチを防ぎやすいメリットがあります。
従業員の役割が明確になる
ジョブ型雇用により、従業員一人ひとりの役割が明確になります。ジョブ型雇用は専門職の募集であり、募集の時点で入社後の業務内容を具体的に提示できるという特徴があります。求職者も、自身の適性や希望に合った企業を探しやすくなります。
ジョブ型雇用のデメリット
ジョブ型雇用の導入でネックになりやすいポイントを4つ紹介します。
契約外の業務を命じることができない
ジョブ型雇用の場合、契約外の業務を行わせることはできません。そのため、ほかの従業員のサポートを命じたり、他部署にヘルプに行ってもらうなどはできないため注意しましょう。ジョブ型雇用で採用された従業員は、自分の業務のみを行う目的で雇用されます。企業側の都合で、ほかの業務を命じることはできないため、融通が効きづらいことを覚えておきましょう。
異動や転勤が難しい
ジョブ型雇用では業務内容や勤務場所を定めたうえで契約を結ぶため、入社後に異動や転勤を命じるのが難しいという懸念点があります。
入社後に異動や転勤を命じたい場合は、再契約が必要になる可能性があります。その際、企業が再提示した内容に従業員が拒否を示せば、契約が終了になる場合もあるでしょう。
ジョブ型雇用を導入する際には、将来的に異動や転勤を命じる可能性がないかを確認しましょう。
人材の希少性が高い
専門性の高い人材は貴重な存在であるため、自社が求める人材がなかなか採用できない可能性があります。特定の専門スキルをもった即戦力を求める分、対象となる求職者の分母が少なくなることに注意が必要です。
また、専門性が高い人物は転職市場での取り合いが発生しやすく、入社後も他社から引き抜きの声がかかるケースがあります。入社した従業員に腰を据えて活躍してもらえるように、やりがいをもって働ける環境を整えることが大切です。
メンバーシップ型雇用のメリット
ジョブ型雇用だけでなく、メンバーシップ型雇用のメリット・デメリットについても理解を深めておきましょう。メンバーシップ型雇用のメリットは次のとおりです。
新卒一括採用が可能
メンバーシップ型雇用では、新卒一括採用が可能です。一度に採用を行うことで採用コストを下げ、人事担当者の負担を減らすメリットがあります。一括採用を行わない場合、通年での採用活動が必要になります。定年退職の従業員を含め、毎年一定数の人員が不足することが予測される企業は、新卒一括採用を行うのも一つの方法です。
さまざまなスキルを持った従業員を育成可能
業務内容に決まりがないため、さまざまなスキルをもった従業員が育成できます。
業務内容に縛られず、一人ひとりの適性を見極めながら配属先を決められるのはメリットになるでしょう。
異動や転勤が行いやすい
メンバーシップ型雇用では、契約時に勤務場所や業務内容が決まっていません。そのため、異動や転勤を行いやすいメリットがあります。東京で採用を行っても、大阪支社で勤務をするケースもあるでしょう。欠員が出た部署で、一次的なサポート要員として働いてもらうことも可能です。
企業の状況に合わせた柔軟な人員配置ができるのは、メンバーシップ型雇用の大きなメリットです。
メンバーシップ型雇用のデメリット
メンバーシップ型雇用には、次のようなメリットも考えられます。
従業員のモチベーション低下
従業員のなかには、配属先の希望が通らず、あまり関心が持てない業務を任されるケースがあります。その場合、やりたい業務ができない不満が募り、仕事のモチベーションが低下してしまうことがあるでしょう。配属先については、可能なかぎり従業員の意向を汲む配慮が必要です。
人事評価が煩雑になる
メンバーシップ型雇用では従業員の業務が多岐にわたることが多く、人事評価が煩雑になりやすい傾向があります。相対評価で評価しようとすると客観性に欠けるため、従業員一人ひとりに合った目標を設定して評価することが求められます。
転勤に抵抗を示す従業員が出る
支店やグループ会社への転勤がある企業の場合、働き慣れた環境を離れることに抵抗を示す従業員もいるでしょう。募集の時点で転勤が発生する可能性を明示するのはもちろん、入社後の面談でも転勤の可否について確認を取っておくと良いでしょう。「なるべく転勤したくない」という希望を持つ従業員に転勤を命じた場合、離職につながるリスクがあります。
まとめ
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用には、それぞれメリットとデメリットがあります。どちらが良いというものではなく、自社に合った採用方法を選択することが大切です。求める人物像に合わせて、両方の採用方法を導入するのも一つの方法でしょう。