このページのまとめ

  • 内示とは、辞令を交付する前に本人とその関係者のみに辞令内容を知らせること
  • 内示は、対象の従業員やその関係者が心の準備をするために行われることが多い
  • 内示によって情報漏洩が発生する可能性があるため、運用ルールを定めることが大切

辞令を交付する際には、事前に内示を出すことが一般的です。内示とは、辞令の内容を対象の従業員とその関係者のみに事前に伝えることを指します。内示を行うことで、辞令に対する心の準備をしてもらうことが目的です。内示を出す際には、情報漏洩などのトラブルが生じないように注意しましょう。今回は、内示を出す際の手順や注意点について解説します。

内示とは

内示とは、部署異動や転勤などの辞令を交付する前に、従業員とその関係者のみに辞令の内容を通達することを指します。

辞令を交付する前に内示を行う目的には、「従業員の混乱を防ぐ」「社内戦略が社外に漏れるのを防ぐ」などがあります。
引っ越しをともなう転勤や出向が発生する場合、今後の生活について家族と話し合う必要がある従業員もいるでしょう。役員の交代が発生する場合は、情報が社外に漏れないように関係者のみで内密に対応を進めるケースもあります。

辞令を受ける本人はもちろん、社内全体の混乱を避けるためにも、内示は重要な役割を果たします。

内示の種類

内示で通達される内容には、次のような種類があります。

人事異動に関する内示

人事異動に関する内示には、転勤・出向・部署異動などが含まれます。
人事異動の対象となる従業員だけでなく、上司などの関係者にも情報を事前に通達します。
人事異動の場合、業務の引き継ぎや新居探しなどの準備期間が必要です。
従業員とその関係者が準備に十分な時間をかけられるように、辞令交付までの期間にゆとりをもって内示を行いましょう。

昇給の内示

昇給の内示は、本人のほかに従業員の給与計算を担当する部署(総務・労務・経理部など)に内示することが一般的です。

昇進の内示

昇進の内示によって対象の従業員の業務内容が変わる場合は、本人のほかに業務関係者にも情報を通達します。人事異動のケースと同様に、ゆとりをもって内示を行うようにしましょう。

内示を出すタイミング

内示を出すタイミングは、辞令交付の1ヶ月〜3ヶ月前が一般的です。
昇給の内示であれば1ヶ月前の通達でもトラブルは起こりにくいかもしれませんが、転勤や出向の内示の場合は、引っ越しの準備や業務の引き継ぎなどの期間を考慮し、2~3ヶ月は余裕を持たせたほうが安心でしょう。
内示から辞令交付までの期間があまりにも短いと、従業員に不信感をもたれてしまう可能性があります。不要なトラブルを避けるために、期間にゆとりをもって通達しましょう。

内示の伝え方

内示の伝え方は、口頭・書類・メールなどがあります。
「面談で伝えたあとに書類やメールを送る」のように、口頭と文書の両方で伝えると伝達ミスが起こりにくくなります。
いずれの方法で通達する場合も、辞令が出るまでは周囲に情報を漏らさないようにしてほしい旨を伝えましょう。

内示を出す際の手順

ここでは、内示を出す際の主な手順について解説します。

1. 内示のルールを決めておく

まずは、内示を行う際のルールを明確に定めましょう。
「面談で伝えたあとにメールで内示書を送る」「辞令の2ヶ月前までに内示する」「必要に応じて、本人のほかに業務に関わる従業員にも通達する」など、ルールを明文化しておくことが重要です。

2. 辞令の内容が適切かを確認する

辞令の内容が決まったら、内容が適切かどうかを確認しましょう。
たとえば、「勤務地の変更なし」の雇用契約を結んでいる従業員を転勤の候補に入れていないか、子どもが産まれたばかりの従業員に転勤を命じても問題ないか、などを確認します。
従業員の上司に事前に確認しておくと安心でしょう。

3. 内示を行う

辞令の内容に問題がなければ、実際に内示を行いましょう。
「直属の上司から面談で伝えてもらう」「面談で本人の承諾を得てからメールで文書を送る」など、事前に決めたルールに基づいて行うことが重要です。

4. 従業員の業務関係者にも情報を共有する

内示の内容に応じて、従業員の上司や総務の責任者などにも情報を共有しましょう。
業務の引き継ぎや給与の変更などが発生する場合、関係者を巻き込んで準備を進める必要があります。
情報を共有する人物はできるだけ少なくするとともに、情報を共有する人物には「辞令が出るまでほかの従業員に情報を漏らさない」という旨をしっかり伝えておくことが重要です。

内示を出す際の注意点

内示を出す際には、以下の点に注意することが大切です。

内示の漏洩は処罰が与えられることを伝える

内示を漏洩してしまった場合、コンプライアンス違反により処罰の対象になることを伝えましょう。
一度でも情報漏洩が発生したら、「初回だから」と大目に見ることなく、社内規定に従って処罰を行うことが必要です。漏洩した本人だけでなく、周りの従業員に危機感を持たせるためにも処罰を行いましょう。

従業員のモチベーションに配慮する

内示を行う場合、内示を受けた従業員のモチベーションに配慮する必要があります。
従業員のなかには、望まない内示を受けてモチベーションが大きく下がってしまう人もいるでしょう。場合によっては、転職を考えるケースもあるかもしれません。
一方的に内示を伝えるのではなく、内示を受け入れる意思があるかを従業員に確認するようにしましょう。

従業員に内示の内容を拒否される可能性がある

内示はあくまでも辞令を承諾するかどうかを従業員が考える期間であるため、従業員に内示の内容を拒否される可能性があることを押さえておきましょう。
従業員から承諾を拒否された場合は、「従業員と時間をかけて話し合いを重ねる」「従業員の希望を汲んだ譲歩案を提示する」などの対応を行います。
あらゆる手を尽くしても従業員の拒否の姿勢が変わらない場合は、代わりの人物を選定する必要があるでしょう。

まとめ

今回は、内示の手順や注意点について解説しました。
内示を行う際に注意すべきなのが、辞令を交付する前に情報が洩れてしまうことです。
情報が漏洩すると、社内の従業員はもちろん、場合によっては社外の関係者を巻き込んだトラブルに発展するケースがあります。情報の取り扱いを慎重に行うとともに、内示を行う従業員には辞令が出るまで情報を漏らさないように念を押して伝えましょう。