このページのまとめ

  • ウェルビーイングは、心身ともに健康で経済面の不安もない状態を指す
  • ウェルビーイングの向上は、業務の生産性向上につながる
  • 従業員のウェルビーイング向上のために、職場環境の改善と健康推進が重要

従業員の健康を測る指標として、ウェルビーイングが注目を集めています。ウェルビーイングとは、心身ともに健康な状態のことを指します。今回は、名前は知っているけど詳しいことは分からないという方のために、ウェルビーイングのメリットや企業の取り組み事例について解説します。従業員のウェルビーイングを高めることは企業全体の生産性向上につながるため、参考にしてみてください。

ウェルビーイング(well-being)とは 

ウェルビーイングとは、「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」を指します。つまり、精神面や経済面を含めて不安がなく、健康的に生活している状態です。ウェルビーイングの向上により、一人ひとりの能力が発揮され、生産性の向上に効果があるとされています。

参照元:厚生労働省「雇用政策研究会報告書 概要(案)

ウェルビーイングの種類

ウェルビーイングには、細かく分けると次のような種類があります。

キャリアウェルビーイング(Career well-being)

キャリアウェルビーイングは、人生のキャリアに関する幸福です。仕事とプライベートの両方のキャリアが充実していると、キャリアウェルビーイングが満たされた状態といえます。

コミュニティウェルビーイング(Community well-being)

コミュニティウェルビーイングは、生きていくうえでのコミュニティ形成に関する幸福です。
コミュニティとは、家族や学校、職場のような組織のことです。これらのコミュニティと関わりをもち、コミュニティのなかで役割を持っていることが求められます。

フィナンシャルウェルビーイング(Financial well-being)

フィナンシャルウェルビーイングは、経済的な幸福です。満足のいく給与や報酬が得られているかどうかが基準になります。また、自分の資産が十分にあり、その資産を管理できていることも指標の一つです。

フィジカルウェルビーイング(Physical well-being)

フィジカルウェルビーイングは、身体的な健康です。肉体面はもちろん、精神的にも健康であることが求められます。精神面の健康を維持するためには、普段からポジティブ思考でいることが大切です。

ソーシャルウェルビーイング(Social well-being)

ソーシャルウェルビーイングは、人間関係に関する幸福のことです。自分の心を豊かにし、信頼できる存在がどれだけいるかで判断されます。

ウェルビーイングが注目される背景

ウェルビーイングが注目される背景には、次のようなものがあります。

労働人口の不足

ウェルビーイングは労働人口不足への対策として注目を集めています。
厚生労働省によると、少子高齢化の影響で15〜64歳の労働人口がさらに減少するとされています。2011年度に6,011万人だった労働人口は、2021年には5,931人にまで減少しています。
このような状況で経済活動を維持するためには、65歳以上の高齢者や女性の活躍が不可欠です。
ウェルビーイングが向上すると労働寿命が伸びると予測されており、労働人口を増やす目的で重要度が高まっています。

参照元:厚生労働省「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)

従業員の働きやすさ改善につながる

働き方改革の一環として、ウェルビーイングが注目を集めています。
従業員が心身のストレスを抱え込まずに働ける環境を整えることで、業務の生産性向上が期待できます。また、従業員の離職率の低下にも効果を発揮するでしょう。

SDGsの一部に挙げられている

ウェルビーイングは、SDGsの一部に含まれています。SDGsとは「持続可能でより良い世界を目指す国際目標」のことで、環境や経済を維持するための目標です。SDGsの一つに「すべての人に健康と福祉を」の項目が挙げられていることから、ウェルビーイングが国際的に注目を集めるようになりました。

参照元:外務省「SDGsとは?

ウェルビーイングの向上で期待できる効果

ウェルビーイングの向上により、次のような効果が期待できます。

定着率上昇

ウェルビーイングが向上すると従業員満足度が向上します。従業員満足度の向上によって離職率が低下すれば、新しい人材を採用するコストや新人育成のコストを削減できるでしょう。浮いたコストを福利厚生に充てたり、従業員の給与に還元したりすることで、さらなる定着率の向上につながるかもしれません。

優秀な人材の増加

ウェルビーイングの取り組みが評価されると、優秀な人材が増加します。企業イメージは、求職者が企業を選ぶうえで重要なポイントです。企業イメージが向上すると求職者の応募が増え、優秀な人材が集まりやすくなるという効果があります。

ウェルビーイングに取り組む日本企業の事例

ウェルビーイングに取り組む日本企業の事例をいくつか紹介します。

食品メーカーA社の事例

食品メーカーのA社では、「健康宣言」を自社で掲げてウェルビーイングの向上を目指しています。具体的には、従業員の健康維持が推進できる企業環境の実現です。たとえば、従業員全員に産業医を交えた健康面談を実施し、健康状況の確認を行っています。さらに、従業員が健康状態を自分で可視化できるようにするためのセルフケア研修も実施しています。その結果、A社は経済産業省から「従業員の健康増進に経営視点で取り組む企業」に認定されています。

参照元:経済産業省「第23回健康投資WG事務局説明資料①(健康経営顕彰制度の報告及び令和2年度の見直し方針について)

事務用品会社B社の事例

B社では、従業員が自分で働き方を決める制度を導入しました。従業員が自分に合った働き方を選ぶことで、ウェルビーイング向上に効果を発揮しています。また、健康経営宣言も掲げており、従業員への運動の推奨や禁煙サポートなどに取り組んでいます。

精密機器メーカーC社の事例

精密機器メーカーのC社は、創業当初から「健康第一主義」を掲げています。2004年には禁煙対策を、2007年からは睡眠対策を始めました。睡眠対策では従業員一人ひとりに睡眠指導を行い、睡眠計を取り入れました。その結果、十分な休養を取れている従業員が10%以上も増加しました。
A社と同じく、C社も経済産業省から「従業員の健康増進に経営視点で取り組む企業」の認定を受けています。

参照元:経済産業省「健康経営優良法人認定制度

IT企業D社の事例

従業員のもつ能力が発揮できる環境づくりを目指して、ウェルビーイング向上に励むIT企業もあります。D社では、「仲間・時間・空間」の3つの観点からウェルビーイング向上を目指しています。具体的な取り組みとしては、在宅勤務制度の充実や、チーム内でのミーティング増加が挙げられます。また、従業員の健康維持を目的に、毎日の瞑想やラジオ体操を習慣にしています。

まとめ

ウェルビーイングの向上は、企業の生産性を向上させるだけでなく、従業員の離職率低下にも効果があります。ウェルビーイングの向上のために、従業員が心身ともに健康で働ける職場環境を整えましょう。