このページのまとめ

  • エンゲージメントサーベイとは従業員が会社に対して愛着心があるかチェックする調査
  • エンゲージメントサーベイの目的は会社が抱える課題点を見つけて改善策を出すこと
  • エンゲージメントサーベイの方法は「自社で作成する」「外部に委託する」の2つ
  • エンゲージメントサーベイは必要に応じて何度か実施する必要がある

「エンゲージメントサーベイを実施したいけど方法が分からない」「行うメリットを知りたい」という方もいるでしょう。エンゲージメントサーベイとは、企業と従業員の結びつきを知るものです。調査結果は事業運営や人事管理に活かせますが、効率的な方法を把握していないと単に手間だけがかかってしまいます。このコラムでエンゲージメントサーベイの具体的なやり方やポイント、注意点を確認し、適切な形で実施しましょう。

エンゲージメントサーベイとは

エンゲージメントサーベイとは、「従業員エンゲージメント診断」とも呼ばれており、企業と従業員とのつながりや関係性を調査するものです。具体的には、従業員が会社の理念や商品、サービスに対してどれほど愛着を持っているかを調べることを指します。

従業員満足度調査と異なる点

エンゲージメントサーベイと似ているものに「従業員満足度調査」がありますが、根本的な目的が異なります。従業員満足度調査は、給与や休日数、人間関係といった会社が与える環境に対する「従業員の満足度」を調べるものです。

企業運営をするうえで、従業員の満足度を知ることは人材の定着率を上げることにプラスになるでしょう。ただし、満足度の向上によって従業員の「業務に対する意欲」が上がるとは限りません。また、会社側が従業員の納得のいく待遇や環境を用意できなくなったときに、従業員の仕事に対するモチベーションが下がるリスクもあります。

一方、エンゲージメントが良好な状態であれば、従業員が「企業の力になりたい」という思いをもって仕事にあたるため、業務のパフォーマンスも上がっていくでしょう。

エンゲージメントサーベイを実施する3つの目的

エンゲージメントサーベイを行う主な目的は、以下の3つです。

1.従業員の意見を知る

先述のとおり、エンゲージメントサーベイには、会社組織の仕組みや仕事内容、商品などに対して従業員がどのように感じているのかを把握する目的があります。調査は匿名で行う方法もあれば、個人を特定できる状態にして行う方法もあります。個人を特定できるようにする場合でも、結果開示は匿名で行うことで、日頃の会話では掴みきれない従業員の本音を探ることができます。企業に対するポジティブな意見だけでなく、ネガティブな意見も把握できるでしょう。

2.企業の課題を見つける

エンゲージメントサーベイには、会社が抱える課題を洗い出す目的があります。

具体的には、「従業員に企業理念や行動方針が浸透しているか」「良好な人間関係を築けているか」といった点に焦点を当て、企業と従業員との間にある認識の相違を見つけるものです。

3.調査結果を組織運営やチーム運営に活かす

エンゲージメントサーベイには、調査結果から課題点を見つけ出し、改善につなげる目的があります。現状を知ることで適切な改善策を考え、従業員の働きがいの向上に活かせるでしょう。

調査結果をチーム運営に活かす際に重要なポイントは、結果をもとに上司が部下と対話し、部下の抱えている問題と解決のためのアクションをすり合わせることです。調査を行っただけで満足せず、調査結果をもとに改善の動きをとることが大切です。

エンゲージメントサーベイを行う3つのメリット

エンゲージメントサーベイを実施するメリットには、主に以下の3つがあります。

1.従業員の就業意欲の向上につながる

調査結果をもとに社員が会社に期待していることを把握し、職場環境を整えていくことで、社員の働く意欲の向上が期待できます。

従業員のモチベーションが高まると、従業員が意欲的に仕事に取り組むようになり、業務の生産性アップが見込めます。一人ひとりの生産性が上がることで、ひいては会社全体の業績アップも期待できるのです。

2.離職率の低下

調査結果から従業員の抱えている不満を逃さずキャッチし、個人面談をはじめとする対策を講じることで、離職率の低下が見込めます。

人間関係のトラブルが起きにくくなるというメリットもあり、たとえ発生してもスピーディーに解決できるでしょう。厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析p22」でも、働きがいのある企業ほど従業員の定着率が高いことが分かっています。この結果は、人材不足の企業であっても同様のようです。

参照元

厚生労働省

令和元年版労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-

エンゲージメントサーベイの注意点

エンゲージメントサーベイを効果的に行うには、以下の点に注意する必要があります。

労力や費用がかかる

エンゲージメントサーベイを行うには、自社でアンケートを作るか、外部の調査会社に依頼する必要があります。

自社で作成する場合はコストがかかりませんが、質問項目の作成から集計作業、改善策の提案までをすべて行わなくてはなりません。また、調査領域のスペシャリストではないため、分析や施策が適切かどうかの判断も難しいでしょう。質問項目を自社で設定することで、社員から「項目の恣意性」を疑われる場合もあります。

一方、外部サービスに依頼する場合は、調査票の作成から分析までをトータルで委託できます。さらに、エンゲージメントサーベイを熟知した専門家によるアドバイスも受けられるようです。ただし、外部に委託するということは、そのぶんコストが発生します。

両者のメリットとデメリットを踏まえ、どちらの方法が良いのか社内で十分に検討してから決めましょう。

問題が解決しないと従業員から不満が出ることも

エンゲージメントサーベイを行っても、調査結果が活かされていないと、従業員が不満に感じることも。「せっかくアンケートに回答したのに何も変わっていない」「何のための調査だったのか」とマイナスな印象を感じる要因になるでしょう。

エンゲージメントサーベイを実施する際は、「調査後に感謝の気持ちを伝える」「改善できることはなるべく早く行動に移す」など、サーベイ実施後の活用施策・フォロー施策を並行して整備することが重要です。

エンゲージメントサーベイを行う流れ

エンゲージメントサーベイの基本的な流れを以下にまとめたので、参考にしてみてください。

1.調査対象の従業員に周知する

エンゲージメントサーベイの調査対象となる従業員を決め、該当の従業員へ調査を実施することを伝えます。調査の目的や活かし方、実施形式なども可能な限り詳しく説明すると、従業員の納得感を得やすいです。その際、実施日や期日なども知らせておくと良いでしょう。

エンゲージメントサーベイはあくまでも従業員の考えを知るのが目的なので、「調査は匿名で実施する」「情報の取り扱いには十分に注意する」「回答内容は業務の評価に影響しない」という点も説明しておくと、より率直な意見を集めやすくなります。

2.調査項目を決める

従業員に了承が得られたら、次は質問項目を決めましょう。質問内容を決める際には、事前に会社全体もしくは部署ごとの課題を整理しておくと、質問すべきポイントが明確になります。また、エンゲージメントを構成する要素がまとまっている書籍や論文を参考にしてみても良いかもしれません。

調査項目の具体例は以下のとおりです。

・あなたは会社の理念や戦略を理解できていますか

・集中して仕事に取り組める環境がありますか

・この1週間で、仕事に対する評価を得られましたか

・この1週間で仕事の進み具合について誰かと話し合いましたか

・職場に何でも話せる同僚はいますか

・自分の仕事に対して誇りを持っていますか

・仕事をするうえであなたの意見は尊重されていますか

・この半年間で仕事を通して成長したと感じますか

エンゲージメントサーベイを外部に依頼する場合は、会社が抱える課題や目標とする姿を細かく伝え、外部の担当者と適宜相談しながら調査項目を決めていきましょう。

3.アンケート表を作成

自社で作成する方法は、紙アンケートとWebアンケートの2種類があります。紙アンケートには、文章を直接記入するもののほかに、マークシートで記入するものもあります。

紙アンケートは印刷や回収、集計などに多くの時間と労力がかかってしまうので、Web上で実施するのがおすすめです。

調査を実施して結果を集計

アンケート表が完成したら、事前に周知していた日に調査を実施します。Webアンケートの場合、URLを社内メールで添付するのが一般的のようです。回答期限までに随時状況をチェックし、必要であればリマインドしましょう。すべてのアンケートが回収できたら、結果を集計します。自社で行う際はパソコン内の管理ツールを利用すると便利です。外部サービスの場合は上記の項目と同様に、必要な作業を委託できます。

調査結果から課題点を洗い出す

調査結果を集計したら、回答内容を分析します。はじめにエンゲージメントの数値を出し、現状を把握しましょう。回答の傾向を知るために、部署や年齢、性別などを絞って集計するのも一つの方法です。細かく分析していくことで、人事面での問題や事業運営上のリスクなど、会社における課題点が見つかります。

課題点は1つとは限らず、複数出てくることも。また、それぞれの課題に因果関係があることも往々にしてあります。一つひとつ整理してまとめ、課題ごとに改善案を出しましょう。

課題点をもとに解決策を考える

課題を解決するための施策が固まったら、できることから実行しましょう。エンゲージメントサーベイで浮かび上がった課題は、できれば従業員に公開しましょう。企業と従業員が問題を共有することが、エンゲージメントの向上を手助けしてくれるでしょう。

エンゲージメントサーベイを行う際のポイント

エンゲージメントサーベイを実施する際、「調査の目的を明確にする」「継続的に行う」という2つのポイントを押さえておきましょう。

実施目的を明確にする

「何のために何を調べたいのか」という点が明らかでないと、エンゲージメントサーベイの方向性にブレが生じて、必要な質問を作成できない可能性も。その結果、思うような改善策を得られない場合があります。調査を実施する際は、調査を通してどのようなことを実現させたいのかを明確にしましょう。

継続的に行う

エンゲージメントサーベイによって見つかる課題や解決策は、企業によってさまざま。「1回行えばそれで終わり」というものではなく、必要に応じて継続的に行うことが重要です。会社と従業員双方の成長のためには、常に変化する現場の状況を理解することが求められます。