組織崩壊は、突如起こるものではなく、いくつかの要因が積み重なり徐々に組織を蝕んでいく現象です。

たとえば「以前は活発だった会議も最近は発言する人が少なく沈黙が続いてしまう」「社員同士の会話が減り、どこかギスギスした空気が漂っている」など、社内のコミュニケーション不足や雰囲気の悪さから組織崩壊を心配する人もいるでしょう。

本記事では、組織崩壊の兆候やプロセスについて解説します。また、立て直す方法についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

組織崩壊とは

組織崩壊について、学術出版社ラウトレッジ(Routledge)で公開されたマンチェスター大学教授キーラン・ウォルシュ氏らの論文を基に解説します。

組織崩壊とは、一般的に組織の存続を脅かすほどの業績の低下と考えられています。しかし実際には、組織崩壊の原因はさまざまで、特定が難しいため、明確な定義は困難です。

業績の低下がどの程度で崩壊と言えるのか、急激な業績悪化だけでなく、長期的に低迷している場合にも、組織崩壊とされるのかなど、明確な基準がありません。

さらに、公共サービスは民間企業と異なり、業績が悪くてもすぐに閉鎖されないため、組織の存続自体が脅かされず、崩壊の定義はより複雑になります。

組織崩壊の原因は、主に以下のような要因が積み重なって起こります。

  • リーダーシップが欠如している
  • 意思決定の失敗
  • 競争の激化が起こった
  • 技術の革新が目まぐるしい

このように、組織崩壊は複雑で多様な現象であり、単純な定義づけは難しいといえるでしょう。

参考:Kieran Walshe.Naresh Pandit.Paula Hyde.Gill Harvey.2010.Organizational Failure and Turnaround: Lessons for Public Services from the For-Profit Sector.Routledge.https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1111/j.1467-9302.2004.00421.x

組織崩壊の兆候

「組織崩壊の兆候について、ハーバードビジネスレビューで公開された、ハーバードビジネススクール教授ロザベス・モス・カンター氏の記事を参考に解説します。

コミュニケーションが活発でない

組織崩壊する会社は、社内のコミュニケーションが不足している傾向があります。社内のコミュニケーションが活発でない場合、共有すべき情報が流れず、社員は自分の殻に閉じこもり、噂や憶測が飛び交うようになります。

さらに、本来であれば相談や議論をすべき会議では、発言する人が少なくなり、形だけのものとなってしまいます。社内のコミュニケーションが不足していることは、社員同士の信頼関係が崩れ、風通しの悪さが蔓延していることを示唆します。

社内のコミュニケーション不足は、社内の連携を阻害し、部署や社員が孤立し、会社の生産性や効率を低下させるでしょう。

責任を回避する

組織崩壊の兆候として、問題が起きた際に建設的な話し合いを行わず、責任転嫁や問題を起こした人物を責める傾向があります。

問題解決を重視せず、批判や非難が飛び交い、誰かを責めることで自分を守ろうとする空気が蔓延します。ネガティブな雰囲気は、組織全体のモチベーションを低下させ、問題解決をさらに困難にするでしょう。

社員同士の尊重がない

相手への敬意が失われ、皮肉や陰口などが横行し始めることも組織崩壊につながる恐れがあります。社員同士は、お互いを尊重し、共に成長できる環境が望ましいです。しかし、崩壊する組織では、他の社員の能力や努力を認めず、軽視する傾向が強まります。

特に、優秀な人材は疎まれ、社内で孤立しかねない状況に陥ってしまいます。社員同士の尊重がないと、社員のモチベーションは低下し、組織全体の生産性が低下するでしょう。

向上心が低下する

組織が崩壊に向かう時、社員は組織の将来に希望を見いだせなくなり、向上心が低下します。社員は、組織の成長が望めないと感じ、チャレンジ精神や大きな改善をする意欲はなくなり、リスク回避に注力するようになります。

社員は業務パフォーマンスを最大限に活かすことができず、生産性が低下するでしょう。

参考:

Rosabeth Moss Kanter.(2012).Fight the Nine Symptoms of Corporate Decline.Harvardbusinessreview.https://hbr.org/2012/12/fight-the-nine-symptoms-of-cor

組織崩壊のプロセス

組織崩壊は突如起こるものではなく、気づかないうちに徐々に崩壊へと向かうことが多いです。組織崩壊のプロセスを知り、組織の危機をいち早く認識し、状況を変化させることが大切です。

「組織崩壊については、『組織崩壊とは』で紹介した論文を参考に解説します。

慢性的な衰退が始まる

組織崩壊は、徐々に業績が悪化し、組織の衰退が慢性的になることから始まります。組織全体としては、市場シェアの低下や製品開発の停滞、顧客満足度の低下など、様々な小さな問題が蓄積していきます。一方、社内では、以下が衰退の要因として挙げられます。

  • リーダーシップが欠如している
  • 意思決定が遅い、または失敗する
  • 業務においてのプロセスが非効率である
  • 従業員のモチベーションが低下している

この段階では長期にわたり、慢性的な問題が組織を蝕んでいく期間であり、危険な状況であると認識していない場合も少なくありません。衰退の兆候を見逃したり、軽視したりすると、組織は深刻な危機に陥る可能性があります。

衰退が加速する

組織の衰退が加速し、危機的状況に陥ります。衰退が加速する要因は、主に以下のとおりです。

  • 利益が減少する
  • 債務が増加する
  • 市場シェアが大幅に低下する
  • 主要顧客を喪失する
  • 重大な事故や不祥事が起こる
  • 従業員が大量に離職する

上記の要因は、組織の内外ともに危機感を高め、抜本的な改革の必要性を浮き彫りにすると考えられます。この段階に至って初めて、経営陣や従業員は現状維持の危険性を認識し、変革への取り組みを開始する場合があります。

崩壊へのきっかけが起こる

衰退が加速する中で、組織崩壊の決定的な要因となる出来事が発生します。これは、深刻な財務危機や大規模な事故、主要顧客の喪失など、組織の存続を脅かすような重大な出来事であることが多いです。

大規模な事故とは、業種によりさまざまですが、以下の例のような事故が考えられます。

  • 大規模な不正融資があった
  • システム障害によりサービスの停止を余儀なくされた
  • 個人情報の漏洩が発生した

これらの出来事により、組織内外の関係者は現状維持が不可能であることを認識し、抜本的な改革の必要性に迫られます。

危機的状況を認識する

崩壊の要因となる出来事の後、組織は危機的状況にあることを正式に認識します。組織は、直面する問題の深刻さを理解し、行動を起こす必要性を痛感します。

この段階では、組織の将来に対する不安や混乱が生じる可能性がありますが、同時に、問題解決への取り組みが始まる転換点でもあります。

組織崩壊が起こる

危機的状況への対応が失敗した場合、組織は崩壊に至ります。これは、倒産や事業閉鎖、合併・買収など、様々な形で現れます。

組織崩壊は、組織内外の関係者に深刻な影響を与えるため、崩壊を回避するための迅速かつ効果的な対応が不可欠です。

組織崩壊を立て直す方法

組織崩壊を立て直す方法については、『組織崩壊の兆候』で紹介した記事を参考に解説します。

風通しの良い環境をつくる

組織崩壊を防ぐには、風通しの良い環境づくりが重要です。オープンなコミュニケーションを心掛けたり、個人の責任を重視する姿勢を持ったり、成果を出した者への敬意を示したりといったことを強化する必要があります。

風通しの良い環境をつくるためには、双方コミュニケーションの場を設けたり、口述する責任感を身に付けたり、小さな成功も社内で共有し称賛したりすることが大切です。風通しの良い環境をつくり、組織に活気を与え、成長を促すことが、崩壊を防ぐ鍵となります。

責任感を身に付けさせる

社員一人ひとりの責任感を強化することで、主体的に業務に取り組む姿勢を育てることができます。とくに、問題が発生した際には、隠蔽するのではなく、事実を明らかにし、責任の所在を明確にすることが重要です。

責任感を身に付けるためには、主に以下のような方法があげられます。

  • 役割や目標を明確に伝える
  • 組織への帰属意識を高める
  • 組織全体の目標を伝える
  • 適切な人事評価を下す

組織崩壊を防ぐために、問題が起きたときに他責にするのではなく、問題解決に主体的に取り組む姿勢を育成しましょう。

お互いを尊重する

組織崩壊を防ぐには、社員がお互いを尊重する姿勢が必要です。社員同士が尊重していない組織では、批判が蔓延したり、相手に対しての期待値が低かったり、問題が発生したときに責任転嫁したりといった組織崩壊の兆候と結びつく恐れがあります。

このような状況を打破し、尊重の文化を育むには、以下の3つの方法が効果的と考えられます。

  • 才能と成果を認める
  • 称賛する
  • 能力が低い人をサポートする

まず、才能と成果を認めるためには、リーダーが率先して、成果だけでなく、努力や小さな成長も認め、感謝を伝えることが重要です。また、高い基準を満たした人を社内や部署の朝礼などで称賛することで、優秀な社員としての模範を示し、本人とその他の社員のモチベーションを高めます。

能力が低い人に関しては、批判するのではなく、改善のための支援や指導を行い、成長を促しサポートすることが大切です。これらの行動を通して、個人が尊重され、価値を認められていると実感できる組織文化を築くことが、組織の崩壊を防ぐ鍵となります。

前向きな姿勢を持つ

前向きな姿勢を持つことは、組織の未来に対して希望を見出すことができ、モチベーションの向上に役立ちます。前向きな姿勢がない場合、以下のようなことが起きると考えられます。

  • 組織の未来への希望が失われる
  • 積極性が低くなる
  • ネガティブな考えが組織内に蔓延する

上記のような組織に対してのネガティブな考え方は、組織の活力を奪い、崩壊へと導く可能性があります。前向きな姿勢を育むには、まず小さな成功体験を積み重ね、徐々に高い目標を設定し、上司は目標を達成するために部下をサポートしましょう。

また、上司は、組織の未来のビジョンを明確に示し、変化の必要性を伝え、組織全体を前向きに導きます。これらの方法を実践することで、組織に活力が生まれ、衰退の悪循環を断ち切り、持続的な成長へとつなげることが可能になります。

参考:Rosabeth Moss Kanter.2012.Fight the Nine Symptoms of Corporate Decline.Harvardbusinessreview.https://hbr.org/2012/12/fight-the-nine-symptoms-of-cor

まとめ

組織崩壊は、業績悪化だけでなく、コミュニケーション不足やモチベーション低下など、様々な兆候から始まります。

本記事では、組織崩壊の兆候やプロセス、そして具体的な立て直し方法を紹介しました。組織崩壊の危機を早期に察知し、適切な対策を講じることで、組織の持続的な成長を実現できるでしょう。

ぜひ、本記事を参考に、活力ある組織づくりに役立ててください。