「職場の雰囲気が悪くて働きづらい」「人間関係がギクシャクしている」など、職場環境がギスギスしていると、居心地の悪さから従業員の離職や生産性の低下につながります。こうした問題を放置すると、状況がさらに悪化し、業績の低下を招く可能性も高まるため早めの対策が必要です。

この記事では、ギスギスした職場を生み出す原因と放置するリスク、解消するための具体的な取り組みを解説します。職場の雰囲気を改善したい方は、ぜひ参考にしてください。

ギスギスした職場を生み出す原因とは?

ここでは、アイゼンバーグ経営大学院とスタンフォード大学の記事を参考に、ギスギスした職場を生み出す原因を2つ解説します。

社内政治による職場の不信感

過度な社内政治は、従業員同士の対立を招き、職場環境を悪化させます。社内政治とは、出世や昇進など「自分の利益」や「組織の目的」などを達成するために、組織内の立場や影響力を利用することです。

例えば、特定の従業員がリーダーに気に入られるために同僚のミスを過度に指摘するような行動です。こうした言動は同僚からの信頼を失わせ、職場内の対立を引き起こします。また、事実に基づかない噂話を広めて他人の評判を落とし、自分の地位を有利にしようとするケースも、社内政治と言えるでしょう。

社内政治が繰り返される職場では、従業員同士が疑心暗鬼になります。すると、組織内の連携が難しくなり、個人プレーが増えます。結果として職場内の協力体制が損なわれてしまい、敵対的な競争や業務効率の低下につながるのです。

従業員間の過度な競争意識

従業員間の競争意識が過度に高まると、協力し合う雰囲気が損なわれ、ギスギスした職場環境を生む原因となります。

例えば、個人の成果を重視する職場では、同僚に助けを求めても拒否されることがあります。助けを求めた従業員は「恥をかかされた」「冷たい」と感じてしまい、次第に他の従業員との交流を避けるようになってしまうのです。

こうした職場の場合、従業員間の信頼関係が築けず、互いに助け合う気持ちや機会が減ります。自分の成果を優先するため、戦略的に振る舞うようになりがちです。

さらに、従業員間のつながりが希薄になることで、情報や知識が共有されず、新しいアイデアが生まれにくくなります。その結果、組織全体の生産性低下や事業の成長にも悪影響を与えてしまいます。

参考:

6 Ways to Deal With Workplace Politics as a New Executive

Competition or cooperation? Fostering a collaborative workplace | Institute for Research in the Social Sciences

ギスギスした職場を放置するリスク

ギスギスした職場環境を放置することは、従業員の心身の健康や事業にさまざまな悪影響を与える可能性が高まります。ここでは、コーネル大学の記事を参考に、雰囲気の悪い職場を放置する具体的なリスクを5つ解説します。

従業員のストレスが増え、パフォーマンスが低下する

ギスギスした職場環境は、従業員の不満やストレスを増加させ、心身の健康を損ねる原因となります。すると、従業員のパフォーマンスが低下したり、休職者が増加したりするなど、業務に悪影響を与えます。

例えば、イライラした態度の従業員が多く、厳しい言葉が飛び交う職場の場合、従業員は萎縮し、発言を控えるようになるでしょう。業務上のコミュニケーションがスムーズに取れず、意見の食い違いや対立を頻発させることが考えられます。

結果として、社内の協力体制が崩れ、過度なプレッシャーやストレスによる集中力の低下から、業務効率が下がり、ミスを引き起こす可能性が高まります。

離職率が高まる

ギスギスした職場環境を放置すると、従業員の士気が下がり、高い離職率を引き起こす可能性があります。

2021年に日本労働調査組合が実施した「仕事の退職動機に関するアンケート調査」によると、仕事を辞めたいと感じている理由の1位は「職場の人間関係(38.6%)」でした。

例えば、日常的に従業員同士が責任を押し付け合う職場では、「また自分が全部責任を背負わされるのか」「こんな非効率な状況では働きたくない」と不満を感じる従業員が増えるでしょう。こうした状況が続くと、従業員は転職を考えるきっかけになるのです。

また、従業員が次々と退職してしまうと、残された従業員の負担が増え、さらに雰囲気が悪化するという悪循環に陥ります。加えて、離職者の多い会社は外部からネガティブな印象を持たれ、採用活動や事業に悪影響を与えることも考えられます。

信頼関係が欠如し、チームワークが低下する

不機嫌な従業員が多く、ピリピリした雰囲気の職場では、従業員間の信頼関係が弱くなり、チームワークやコミュニケーションが損なわれます。

例えば、営業部門の中で派閥が生じ、他チームの失敗を指摘し合ったり、協力を拒んだりする状況が発生しているとします。「営業部門のAチームは他のチームにノウハウや情報を共有しようとしない」といった不満が広がると、従業員同士の信頼関係はさらに低下し、チーム全体の成果を得るのは難しくなるでしょう。

また、過度な競争意識から対抗意識やねたみを生み出し、職場内の人間関係をさらに悪化させる原因にもつながります。

こうした職場環境では、スムーズなコミュニケーションや協力ができず、職場の生産性が低下してしまうのです。

職場内での人間関係の負担が増える

職場内の人間関係が不安定だと、従業員は精神的なストレスが増えます。

例えば、部署内で「Aさんは、Cさんとは仲が良いけど、Bさんとは口もきかないから、私が間に入って調整するしかない」といった状況は、調整役となる従業員に大きな負担を与えます。

その結果、従業員は本来の業務に集中できない状態に陥るかもしれません。また、職場の人間関係を気にし過ぎて精神的な負担が増えると、休職や離職につながる可能性もあります。

組織の生産性と士気が低下し、事業に悪影響を与える

ギスギスした職場は従業員の心身のストレスが増えるため、業務の生産性と士気を低下させるリスクが高まります。

例えば、職場の人間関係が悪い店舗の接客では「店員の対応が冷たい」と顧客に悪印象を与え、悪評につながる可能性があります。また、従業員も仕事へのモチベーションや会社への貢献意欲が低下してしまい、企業の業績にも悪影響を与えるでしょう。

したがって、雰囲気の悪い職場環境の放置は大きなリスクがあると言えます。

参考:
Negative Workplace Relationships in Healthcare Companies

PR TIMES|「仕事辞めたい!会社員は35.8%という結果に。『仕事の退職動機に関するアンケート調査』結果発表」|日本労働調査組合

ギスギスした職場を改善するための対策

職場環境を改善するためには、従業員一人ひとりの意識と行動を変えて、組織全体で取り組むことが欠かせません。

ここでは、先述したアイゼンバーグ経営大学院とスタンフォード大学、コーネル大学の記事を参考に、企業が取り組むべき具体的な方法を解説します。

従業員に勤務態度を振り返る機会を設ける

職場環境の改善には、従業員それぞれが自分の行動を振り返り、改善点を見つけることが重要です。

職場がギスギスする要因には、従業員間の不満や嫉妬、非協力的な態度といった行動が挙げられます。こうした行動は不注意や意識不足によるものですが、仕事を円滑に進めるためには避けるべき行動です。

例えば、毎月各部署で業務目標に加えて、勤務態度に関する目標を設定するのも効果的です。また、定期的に1on1ミーティングを実施し、上司から業務に関するフィードバックを受けることで、部下は自身の行動や役割を客観的に見直すきっかけになります。

振り返りの時間を設けることで、従業員それぞれが普段の言動を意識するようになるため、良好な人間関係につながることが期待できます。

前向きなコミュニケーションを促進する

職場内で前向きなコミュニケーションを取ることは、職場環境を良好にし、従業員同士の信頼関係を深めることにつながります。前向きなコミュニケーションとは、「この資料、わかりやすいね」「助かりました」といったポジティブな言葉をお互いに伝え合うことです。

例えば、上司が部下に対して「今日の企画書、とても説得力があって助かったよ」と具体的に伝えることで、部下は自分の努力が評価されていると感じ、さらに意欲的に業務に取り組むでしょう。また、その部下は「自分も他の人の良い点も伝えてみよう」と考え、同僚に「資料作成が丁寧で助かったよ」と前向きな声をかけるかもしれません。

こうしたやり取りが職場に広がることで、周囲に対してもポジティブな影響を与えることにつながり、協力し合う文化や良好な人間関係を築くことが期待できます。

若手社員とのコミュニケーションのポイントや注意点については、以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

職場内の対立を解消し、調整する取り組みを進める

ギスギスした職場を解消するには、従業員同士の対立を解消し、調整を進める取り組みが欠かせません。ここでは、その具体的な方法を3つ紹介します。

  • 従業員やチーム全体の成果として、公平に評価する
  • 従業員同士が交流できるイベントを企画する
  • 感謝を伝え、サポートし合う風土づくりを行う

従業員やチーム全体の成果として、公平に評価する

従業員やチーム全員の貢献を公正に評価し、全員への感謝を示すことで、不満や嫉妬といったネガティブな感情による対立を避けられます。

例えば、チームで進めるプロジェクトでは、特定のリーダーだけを評価するのではなく、企業はチーム全員の努力に感謝する姿勢が大切です。特定の従業員やチームに対する嫉妬や評価されないことに対する不満を防ぎ、会社への信頼感やエンゲージメントを高められます。

納得感を高める人事評価のポイントに関しては、以下の記事をご覧ください。

従業員同士が交流できるイベントを企画する

従業員同士が交流できるイベントを開催することで、従業員間の信頼感や連携を深められます。

例えば、ランチ会やバーベキューなどの社内イベント開催をすることで、従業員間の信頼感や相互理解を深められます。仕事とは異なる環境で交流することで、共通の課題や目標についても自然に話しやすくなり、連帯感を育むことが期待できるでしょう。

感謝を伝え、サポートし合う風土づくりを行う

職場の人間関係において、感謝の気持ちを伝え合う文化は、従業員間の信頼を深め、職場全体の雰囲気を良くします。日ごろの仕事ぶりへの感謝の言葉や、困っている同僚へのサポートなど、従業員同士で認め合い、助け合う風土づくりを行いましょう。

例えば、上司や同僚への感謝を書いたサンクスカードを贈り合うのも一案です。お互いを尊重し合う環境を作ることで、職場の一体感を高める効果が期待できます。

参考:

6 Ways to Deal With Workplace Politics as a New Executive

Competition or cooperation? Fostering a collaborative workplace | Institute for Research in the Social Sciences

Negative Workplace Relationships in Healthcare Companies

まとめ

不機嫌な従業員が多く、緊張感が漂うギスギスした職場環境では、離職率の上昇や業績の低下など、多くのリスクを引き起こします。

こうした職場環境を改善するには、前向きなコミュニケーションを促進し、職場内の対立を解消する取り組みが欠かせません。また、組織全体の成果を公平に評価したり、従業員同士が交流できるイベントを企画したりするなど、相互理解や感謝を深める機会を設けることも効果的です。

職場環境の改善には時間と努力が求められますが、組織全体で継続的に取り組むことで、良い職場環境を築けるでしょう。