「部下がイエスマンばかりで、組織の将来が不安」と感じている管理職の方もいるでしょう。イエスマンが増えると、組織の判断力は低下し、リスク管理の甘さから、やがて組織崩壊へとつながる可能性があります。
イエスマンが優遇されることにより、本来、評価されるべき優秀な人材の流出も避けられません。本記事では、イエスマンが組織を崩壊させる理由や具体的な対策を解説します。
イエスマンによる組織崩壊の実態

イエスマンによる組織崩壊の末路について、プリズレン大学講師であるジクシェル・スパヒ氏らによる論文を参考に解説します。
イエスマンのいる職場では、部下は上司の顔色を伺い、反対意見や問題点を指摘しなくなります。これは、上司の意に反する発言をすることで評価を下げられたり、職場での立場が悪くなったりすることを恐れているからです。
一見スムーズに仕事が進んでいるように見えても、実際には建設的な意見交換が行われず、組織の成長のために必要な変化や改善の機会が失われています。たとえば、新製品開発の会議で、上司のアイデアに欠陥があったとしても、イエスマンはそれを指摘せず、賛同してしまうでしょう。
結果として、欠陥のある製品が市場に出回り、顧客からのクレームや売上低迷といった問題が発生する可能性があります。意見交換が活発に行われない組織では、新しいアイデアが生まれにくくなり、組織の成長が停滞します。
組織の成長に不可欠な変革は、異なる意見のぶつかり合いから生まれることが多いため、イエスマンばかりの環境では、組織は新しいものを生み出すことができず、競争力を失ってしまうでしょう。
また、自分の発言が軽視され、アイデアが却下される職場では、社員は仕事への情熱を失い、生産性や組織への忠誠心も低下します。
さらに、イエスマンが優遇される組織では、本来評価されるべき優秀な人材が離職し、組織全体の士気が低下する可能性があります。組織にとって、優秀な人材の流出は大きな損失となります。
このように、イエスマンの存在は、組織の停滞、そして崩壊へとつながる負のスパイラルを生み出します。健全な組織運営のためには、社員一人ひとりが安心して発言できる風通しの良い環境を整備し、多様な意見を積極的に取り入れることが不可欠といえるでしょう。
参考:
イエスマンが組織崩壊させる理由

イエスマンが組織崩壊させる理由について、フォーブスに掲載されているエグゼクティブコーチのテレサ・アレン氏の記事を参考に解説します。
現状維持に固執する
上司が現状に固執すると、無意識のうちに自分の周りをイエスマンばかりで固め、組織の成長を阻害する恐れがあります。具体的には、自分の意見に同意する部下ばかりを評価し、異なる意見を持つ部下を排除する傾向があります。
上司がイエスマンばかりを優遇した結果、組織内に反対意見を言ってはいけないという暗黙のルールが生まれ、イエスマンが蔓延します。問題点や改善点が指摘されなくなり、組織は変化や改善といった成長機会を失います。
たとえ優れた戦略やビジョンを持っていても、現状に固執する上司の下では、組織は変化に対応できず、競争力を失い、衰退していく可能性が高いといえます。上司は、現状に満足せず、常に変化を追求し、多様な意見を取り入れる姿勢を持つことが大切です。
意見を聞こうとしない
上司がイエスマンに囲まれると、周囲の意見を聞かなくなる傾向があります。周囲がイエスマンばかりになると、上司は常に肯定的な意見しか聞かなくなり、次第に自分の判断が正しいと思い込むようになります。
反対意見や批判的な意見は、上司にとって耳障りでしかなくなり、最終的には無視するようになります。結果として、組織は多様な視点や客観的な意見を失い、誤った意思決定を下すリスクが高まります。
また、イエスマンは上司の顔色を伺い、都合の良い情報しか伝えないため、上司は現状を把握できなくなり、問題点に気づかず、対応が遅れる可能性があります。イエスマンは上司の視野を狭め、組織の成長を阻害する大きな要因となるでしょう。
リスク管理を怠る
上司がイエスマンばかりを周囲に置くことで、組織には多様な意見や反対意見が入り込みにくくなります。その結果、上司は潜在的なリスクや問題点を見過ごしたり、過小評価したりする可能性が高まります。
イエスマンは、上司の判断に異議を唱えるどころか、むしろ肯定的な意見を述べることで、上司の自信を過剰に高めてしまうかもしれません。また、リスクや問題点が指摘されたとしても、上司はそれを軽視したり、無視したりする可能性があります。
イエスマンは、上司の立場を守るために、都合の悪い情報を隠蔽したり、歪曲したりする可能性があるでしょう。このように、イエスマンの存在は、上司の視野を狭め、客観的な判断を阻害し、適切なリスク管理を妨げる要因となります。
組織を健全に運営していくためには、多様な意見を取り入れ、批判的な意見にも耳を傾けることが重要です。
参考:
イエスマンを生まない組織を作るための対策

イエスマンを生まない組織を作るための対策について、ヒューマンリサーチリハビリテーションが公開するプリズレン大学教授ジクシェル・スパヒ氏らによる論文を参考に解説します。イエスマンを生まない組織を作るためには、信頼関係の構築や組織の活性化が効果的です。
イエスマンの発生には、キャリアへの悪影響や職場での孤立を恐れる心理、上司の独裁的な態度や過剰なコントロール、コミュニケーション不足、ミスを認めない風潮などが背景にあります。
イエスマンがいる組織が崩壊を防ぐために、効果的な職場活性化の方法は以下のとおりです。
- 意見しやすい職場づくり…社員が意見できる風通しの良い環境を作る
- オープンなコミュニケーション…部下が組織の問題について発言できるようにする
- 敬意と信頼の表明…部下を尊重し信頼していることを態度で示す
- 部下の意見を尊重…部下からのフィードバックを真摯に受け止める姿勢を持つ
- 意思決定に部下を参加させる…意見表明を促し組織へのコミットメントを高める
具体的な対策としては主に以下のような方法があります。
- 定期的に1on1ミーティングを実施する
- 匿名の意見箱を設置する
- 情報共有ツールを導入する
上司と部下が1対1で定期的に面談を行い、日ごろのコミュニケーション不足を解消し、部下が安心して相談できる環境を作ります。これにより、部下は問題意識や意見を隠すことなく伝えられるようになります。
1on1ミーティングについて、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
また、直接の上司には言いづらい意見や提案も、匿名で伝えられる場を用意することで、組織内の問題点を把握しやすくなります。さらに、組織内の情報伝達をスムーズにし、透明性を高めることで、情報格差による不信感を解消し、風通しの良い組織風土をつくることができるでしょう。
これらの対策を、組織の状況に合わせて優先順位をつけながら実施していくことで、イエスマンの発生を防ぎ、組織の活性化、ひいては崩壊の防止につながるでしょう。重要なのは、上司と部下の信頼関係を築き、安心して意見を言える環境を構築することです。
参考:
まとめ
イエスマンと組織崩壊の関係について解説しました。イエスマンの蔓延は、組織の衰退、ひいては崩壊へとつながる深刻な問題といえます。部下からの反対意見や問題提起がない状態は、一見平和に見えても、実際には組織内の情報共有や改善の機会を奪い、新しいアイデアや変化の機会を失っています。
組織崩壊を防ぐためには、管理職が意識的に行動を変え、組織風土を改革していく必要があります。部下が安心して意見を言える風通しの良い職場づくりやオープンなコミュニケーション、部下の意見を尊重する姿勢などが、組織の活性化につながります。
日頃から部下との信頼関係を築き、心理的安全性を確保することで、イエスマンの発生を防ぎ、組織を健全な状態へと導くことができるでしょう。