「部下に嫌われている気がする…」
「部下の尊敬や信頼を勝ち取るにはどうすればいい?」

このような悩みや疑問を抱える管理職も多いでしょう。部下に嫌われていると感じた場合は、その原因を分析し、自分自身の行動や態度を改善することが大切です。

本記事では、部下に嫌われる上司によく見られる共通点や、部下から尊敬や信頼を勝ち取るためのポイントを紹介します。部下と良好な人間関係を築き、職場環境を改善したい方は、ぜひ参考にしてください。

部下に嫌われている上司は多い

どのような職場にも、部下に嫌われている上司は一定数いるはずです。実際に、株式会社ネクストレベルが社会人男女を対象に実施した調査でも、「職場に嫌いな上司がいますか?」との問いに、92.9%が「はい」と回答しています。

人にはそれぞれ相性があるため、どんなに理想的な上司であっても、一部の部下から嫌われるのは仕方のないことだといえます。しかし、明らかに上司の人間性や振る舞いに問題があり、部下から嫌われている場合は注意が必要です。

ネクストレベル社の同調査によると、「嫌いな上司が理由で会社を辞めたいと思ったことは?」との問いに、75.4%が「ある」と回答しています。この結果から、嫌いな上司の下で働く部下はモチベーションが低下し、最悪の場合は離職につながる恐れがあることがわかります。

仕事を円滑に進めるためには部下の協力が必要不可欠であり、上司と部下の関係は良好であるに越したことはありません。部下から尊敬・信頼される上司になるためには、嫌われやすい上司にありがちな特徴を理解し、同様の態度や行動をとらないよう心がけることが大切です。

参考:

PR TIMES「280人に聞いた嫌いな上司ランキング!1位は「ひいきする・好き嫌いが激しい」。重視しているのは仕事のできよりも人間性」

部下に嫌われる上司によく見られる共通点

部下に嫌われる上司によく見られる共通点について、株式会社ネクストレベル、Job総研、および株式会社ビズヒッツの調査結果をもとに解説します。

高圧的で偉そう

高圧的で偉そうな態度をとる上司は、当然ながら部下に嫌われるリスクがあります。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、従業員が他者から無礼な扱いを受ける職場では、次のような弊害が見られるといいます。

  • 従業員の創造性が低下する
  • 従業員のモチベーションが下がり、離職者が増加する
  • 無礼な態度をとる従業員が増える

つまり、上司が高圧的な態度で部下に接すると、その悪影響が職場全体に波及する恐れがあります。

したがって、上司は部下一人ひとりを大切に扱い、敬意ある職場文化を構築することが重要です。

えこひいきをする

好き嫌いが激しく、一部の社員をえこひいきする上司は、部下から嫌われやすいでしょう。

オハイオ州立大学の研究によると、リーダーがえこひいきを行う職場では、従業員に以下のような傾向が見られるといいます。

  • 会社への愛着や忠誠心が下がる
  • 仕事の満足度やモチベーションが低下する
  • ストレスが増大する
  • 離職意思が高まる

えこひいきされていない側の社員からすると、一部の者だけが上司から大切に扱われている状況は気分の良いものではなく、上記のような反応は当然といえます。

また同研究によると、えこひいきは対象となった社員にとってもマイナスに働く可能性が高いとされています。上司からえこひいきされることで周囲の妬みを買い、良好な人間関係を築きにくいからです。

また、自分だけが上司に気に入られていることに対して、プレッシャーやストレスを感じる場合もあるようです。

上司も人である以上、多少好き嫌いがあるのは仕方がありません。しかし、部下に伝わってしまうような露骨なえこひいきは、職場全体に悪影響をおよぼす恐れがあるため避けるべきでしょう。

嫌味が多い

「こんな簡単なこともできないの?」「何回教えたらわかるの?」などといった言葉は、相手を不快にさせるだけであり、いくら投げかけても部下の行動や能力が改善される可能性は低いでしょう。このような嫌味を日常的に言う上司は、当然部下に嫌われやすいです。

また、部下に対する嫌味は度を越えるとパワハラになる恐れがあります。参考までに、厚生労働省は職場でよく見られるパワハラ行為として、以下の6種類を挙げています。

  • 精神的な攻撃(例:長時間しつこく説教する)
  • 身体的な攻撃(例:暴力をふるう)
  • 過大な要求(例:無謀なノルマを課す)
  • 過小な要求(例:雑務しかさせない)
  • 人間関係からの切り離し(例:1人だけ別室で仕事をさせる)
  • 個の侵害(例:家族の悪口を言う)

上記のうち、部下に対する執拗な嫌味は「精神的な攻撃」に該当する可能性が高いです。

もしパワハラで訴えられた場合、自分はもちろん、会社にとっても大きなダメージになりかねないため、不必要な嫌味は言わないよう注意しましょう。

仕事を押しつける

本来自分がするべき仕事を部下に押しつける上司は、嫌われる可能性が高いです。とくに、押しつけられた仕事をこなしても評価が変わらない場合には、上司に対する部下の嫌悪感はさらに増幅するでしょう。

もちろん、上司が自分の仕事を部下に任せること自体はまったく問題ありません。さまざまな仕事を経験することは、部下自身の成長にもつながるからです。

しかし、単に「自分が楽をしたいから」という理由で面倒な仕事を部下に丸投げし、何のフォローもしないのは、上司として適切な振る舞いとはいえません。

上司は部下のモチベーションを損ねることなく、適切に仕事を任せるためのコツを理解することが重要です。

感情的ですぐに怒鳴る

部下が間違いやミスを犯した際に、すぐに感情的に怒鳴る上司は嫌われやすいです。

部下が仕事上で何かしらの問題を引き起こしたときに、上司が厳しく叱責しなければならないケースもあるでしょう。しかし、いくら指導のためとはいえ、強い言葉で怒鳴りつけることは部下を萎縮させるだけであり、問題の解決にはつながらない可能性が高いです。

また、上司が部下を過剰に怒鳴るという行為は、パワハラになる恐れがあります(先に紹介した6タイプのパワハラのうち、「精神的な攻撃」に該当)。

過去には、ミスを犯した部下に対して日常的に「どうしてくれるんだ」「バカヤロー」などと怒鳴り続けた結果、部下を自殺に追い込んだことがパワハラと認められ、遺族に対して5,400万円あまりを支払うよう命じられた事例もあります(名古屋地裁平成26年1月15日判決 労働判例1096号76頁)。

以上のことから、部下を叱責する際は、まずは感情を落ち着け、冷静に相手の行動や能力が改善するよう注意・指導することが大切です。

人に厳しく自分に甘い

人に厳しく自分に甘い上司は、部下に嫌われやすいです。例として、自分のミスは棚に上げて、部下のミスばかりを厳しく追求するような上司がいれば、誰でも嫌悪感を抱くはずです。

ただし、上司が部下に対して厳しく接すること自体に問題があるとは限りません。上司から厳しく指導されることで、部下の成長スピードが促進されることもあるからです。

実際に、人材開発業を営むゼンガー・フォークマン社の創業者であるジャック・ゼンガーらが実施した調査でも、「これまで仕事をしてきた中で最も役に立った体験は何か」という問いに対して、72%が「上司からのネガティブフィードバック」と回答しています。

したがって、上司が部下に対して厳しく接するからには、部下のお手本となるよう自分自身のことも厳しく律することが大切といえます。

部下の意見を聞き入れない

自分が絶対的に正しいと思い込み、人の意見を聞き入れない上司は部下に嫌われる傾向にあります。

会社には経営層や管理職では気づきにくい、現場の最前線で働く従業員だからこそ気づける課題や問題が存在します。したがって、組織として成長し続けるためには、ときには部下の意見も柔軟に取り入れることが重要です。

また、部下の意見を積極的に聞き入れる姿勢を見せることは、彼らのモチベーションアップにもつながります。

経済雑誌のフォーブスが実施した調査によると、自分の意見が聞き入れられていると感じている従業員は、エンゲージメント(会社への愛着度)や仕事の満足度が向上し、最高のパフォーマンスを発揮する可能性が4.6倍高くなるという結果が出ています。

逆に、人の意見を受け入れない上司のもとでは、部下のモチベーションが低下し、生産性の低下や離職率の増加につながるかもしれません。

人の悪口を言う

過去の研究により、悪口が蔓延する職場は、従業員の士気や人間関係に大きな悪影響をおよぼすことがわかっています。とくに、日常的に他人の悪口を言う上司の下では、その影響はさらに深刻になるでしょう。

一方で、以下のユタ大学の研究結果からもわかるとおり、職場は悪口が蔓延しやすい場所でもあります。

  • コーヒー休憩中の会話の14%は悪口に該当する
  • 職場での一般的な会話の65~90%は悪口に該当する 
  • 従業員の96%は悪口を言っている

悪口は仲間うちの結束を強める役割を果たすこともあり、悪口を職場から完全に排除することは難しいでしょう。

とはいえ、上司が自ら積極的に悪口を発信するのは組織を破壊する行為であり、絶対に避けるべきです。上司は部下に対して模範となるべき存在であり、悪口を控えることで職場の雰囲気を改善し、より健全な人間関係を築くことが大切です。

参考:

JobQ Town「嫌いな上司の特徴とは?アンケートを元にランキング形式でご紹介!」

PR TIMES「嫌いな上司の特徴ランキング!男女500人アンケート調査」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「「無礼」が利益を蝕む」

Fisher College of Business “Playing Favorites: A Study of Perceived Workplace Favoritism”

厚生労働省「No!パワハラ」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「上司からネガティブフィードバックをうまく引き出す方法」

Forbes “10 Timely Statistics About The Connection Between Employee Engagement And Wellness”

The University of Utah “Navigating Workplace Gossip: Strategies for a Positive Environment”

部下に尊敬・信頼される上司になるためには

部下に尊敬・信頼される上司になるために、心がけるべきポイントを紹介します。

敬意ある職場文化を構築する

先ほども述べたように、部下に対し無礼な態度で接する上司は、部下から嫌われる傾向にあります。部下から尊敬・信頼される上司になるためには、まず上司が部下に対して敬意を払うことが大切です。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、従業員にとって重要な役割を果たす敬意には、「生得的敬意」と「獲得的敬意」の2種類が存在するとされています。

  • 生得的敬意:すべての従業員に対して一貫して示される、その人が持っている存在そのものへの敬意(例:地位や社歴に関わらず、全社員を「さん」付けで呼ぶ)
  • 獲得的敬意:業績や貢献度など、個々の具体的な成果や努力に対して示される敬意(例:優秀な成績を収めた社員への表彰)

なお、生得的敬意と獲得的敬意は、どちらか一方を示すだけでは不十分です。

生得的敬意が欠けている場合、従業員は自分自身の存在価値が感じられず、モチベーションや自己肯定感が低下してしまう恐れがあります。逆に、獲得的敬意が欠けている場合、従業員はいくら努力しても相応の評価が得られないと感じ、モチベーションや生産性が低下してしまうでしょう。

以上のことから、上司は部下に対して生得的敬意と獲得的敬意をバランスよく示し、敬意ある職場文化を構築することが重要です。

ネガティブな感情をコントロールする

部下がお粗末なミスをしたときなどに、つい怒りやイライラの感情が湧くこともあるでしょう。しかし、このようなネガティブな感情を抱えたまま部下と接すると、つい嫌味を言ったり大声で怒鳴ったりしてしまい、相手との関係性を悪化させてしまう恐れがあります。

そのため、部下に対してネガティブな感情が湧き上がった際は、まず感情を落ち着かせる時間をとることが大切です。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、人は自分の感情の背後にある欲求に着目することで、状況を客観的かつ冷静に観察できるようになるとされています。今回のケースであれば、以下のような質問を自分自身に投げかけてみるとよいでしょう。

  • Q. 怒りのきっかけとなった部下の行動は何か?
  • Q. 怒りの根底にある感情は何か?(恐怖?無力感?)
  • Q. 冷静になるためにはどうすればよいか?
  • Q. 最終的にどのような結果になれば、気分が晴れるか?
  • Q. その結果を実現するためには、どのような行動をとるべきか?

上記のような自問自答を行い、自分のネガティブな感情をうまくコントロールできれば、部下との関係性を悪化させることなく、効果的な指導がしやすくなるでしょう。

仕事を積極的に任せてフォローする

先ほども述べたように、部下に自分の仕事を押しつける上司は嫌われる傾向にあります。しかし、部下の成長スピードを促進させるためには、さまざまな仕事を積極的に経験させることが効果的です。

とはいえ、管理職やリーダー職に就いたばかりの人などは特に、「部下にどの仕事を任せればいいのか判断できない」と悩むケースも多いでしょう。

以下は、ハーバード・ビジネス・レビューの記事が提唱する、部下に仕事を適切に任せるためのポイントです。

ポイント概要具体例
自分が抱えている仕事をリストアップする自分にしかできない仕事以外は、極力部下に割り振る。とくに、部下の成長につながりそうな仕事は積極的に任せる将来の管理職候補である部下に、A社との重要プロジェクトのリーダーを任せる
任せる仕事について共有する時間を設ける・何を任せようとしているのか
・なぜその仕事を任せるのか
・その仕事を通じてどうなることを期待しているのか
など、任せる仕事の目的や目標を共有する
「あなたの強みは、優れたコミュニケーション能力と問題解決スキルです。A社とのプロジェクトでも、先方のニーズを的確に理解し、彼らと協力して問題を迅速に解決することで、プロジェクトを成功に導いてください。」
進捗を確認し、フィードバックを行う仕事は丸投げせずに、こまめに進捗を確認する。部下に努力や成長の跡が見られる場合は、積極的に認めて褒める。改善すべき点がある場合は、わかりやすく伝える「A社とのコミュニケーションが非常に円滑に行われており、先方からも高い評価を得ていますね。今後は思わぬトラブルが発生する可能性もあるため、事前にリスクを洗い出し、対策を講じておきましょう。」
仕事を一緒に振り返る任せた仕事が完了したら、振り返りの時間を設ける。プロセスに問題はなかったか、今回の仕事から何を学んだか、今後の仕事にどう活かすかなどを質問する「今回のA社とのプロジェクトにおいて、行き詰った点はどこでしたか?今後同じような状況になった場合、どのように対処しますか?」

部下からのフィードバックを求める

上司が部下の尊敬や信頼を勝ち取るためには、部下から自分自身に対するフィードバックも積極的に受け入れることが大切です。

先ほども述べたとおり、人に厳しく自分に甘い上司や、他者の意見を聞き入れない上司は、部下に嫌われやすいです。

一方で、「上司が部下にフィードバックを求める」という行為は、上司が自分自身への厳しさを持ち、他者の意見を受け入れようとする姿勢の表れといえます。

しかし、部下にとって上司は目上の存在であり、いくら相手から求められたとしても、率直なフィードバックを躊躇なく行える者は多くないでしょう。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、部下から本音を引き出すためには、以下のポイントを意識することが重要だとされています。

ポイント概要具体例
問いかけ方を工夫する「はい」「いいえ」「問題ない」といった一言で返答が終わる質問を避ける「あなたとのコミュニケーションをより円滑にするために、私にできる対処法を1つ教えてください」
沈黙を恐れない部下が本音を言うのをためらい、沈黙することはよくある。上司は部下が自ら発言するまでじっと待つ頭の中でゆっくり6秒間数えることに意識を集中させ、部下の方から沈黙を破りたくなる状況を作り出す
反論せず理解しようとする部下から引き出した意見には反論するのではなく、理解しようと努力する。反論されると、部下は今後本音を話さなくなる恐れがある「個別で話し合える時間をもっと用意してほしいのですね。それでは、来週から週に1度、1on1ミーティングを15分程度実施しましょう」

参考:

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「互いの敬意が組織を成長させる」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「職場でアンガーマネジメントを実践する6つのステップ」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「仕事を任せられないリーダーは、ステップアップできない」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「リーダーが部下から「徹底的なホンネ」を得るための6つのコツ」

まとめ

部下に嫌われる上司によく見られる共通点や、部下から尊敬や信頼を勝ち取るためのポイントを解説しました。

会社において仕事を円滑に進めるためには、部下の協力が必要不可欠であり、上司と部下が良好な関係を築くことが大切です。もし部下から嫌われていると感じた場合は、その原因を分析し、自分自身の行動や態度を改める必要があるでしょう。

本記事で紹介したポイントをふまえて、部下と良好な人間関係を築き、職場環境の改善を目指してください。