チームに活力が感じられず、士気を高めるにはどうすれば良いか悩んでいる管理職の方もいらっしゃるでしょう。
従業員の士気を向上させるには、フィードバックの方法を工夫したりコミュニケーションを円滑にしたりするなど、さまざまな方法が挙げられます。
この記事では管理職の方が行うべき対策や士気が下がる原因などを解説します。
管理職が感じている士気を高めることの難しさ

チームの士気を高める方法について、悩んでいる管理職の方は少なくありません。
リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、管理職層の方にマネジメント業務で難しさを感じる点について質問した結果、回答者の42%が「仕事へのメンバーのやる気を高めること」と答えました。
周囲に求めるサポートについては「上司や人事からの具体的な助言」「外部の専門家から受けるコーチング」という意見が多いことから、士気を高める方法自体が分からず、個々の状況にあわせた助言が必要だと考えているといえます。
参考:
リクルートマネジメントソリューションズ「『マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2023年』の結果を発表」
従業員の士気が下がる原因

以下では、従業員の士気が下がる原因について解説します。
成長できる環境じゃない
ロバーツ・ウェズリアン大学の記事では、組織で士気が低下する原因について「成長できる環境ではないこと」を挙げています。
専門的に成長できず昇進もほとんどないような環境では、従業員はやりがいを感じにくく、士気の低下につな繋がりやすくなります。
優秀な社員を採用して終わりにするのではなく、彼らの能力を引き出すようにしましょう。
ハーバードビジネスレビューの記事によると、従業員の能力を最大限に発揮させるには、以下の条件が必要です。
- 期待を明確にする
- 従業員に質問を積極的に行う意志があり、る。質問しても安全な環境がある
- 業務の進め方についてのルールや非生産的な会議が多すぎない
- 従業員の創意工夫を組織が支援し、報酬を与えたり表彰したりしている
- 部下の感情を認め、自分の意思決定が与える影響を認識し、部下本人の感情管理を支援している
- 担当業務にパーパスや意味を見つけ出し、会社にコミットしている
管理職の方は職場環境や自分の意思決定の影響などについて振り返り、改善できる点を見直して直していきましょう。
従業員をただの労働力として見ている
人材育成コンサルティング組織であるアメリカン・マネジメント・アソシエーションの記事によると、従業員が「自分は管理職に評価されておらず、ただの労働力として存在している」と感じることは、士気を低下させる原因の増幅に繋がります。
「仕事があることを幸運だと思って、文句を言わずに必死に働くべきだ」という管理職の考え方は、生産性を低下させ、人員確保のため採用コストの増加にもつながると考えられるでしょう。
リーダーシップに問題がある
高等教育ITコミュニティ向けの情報を発信するエデュコーズ・レビューの記事によると、士気が低い理由の一つはリーダーシップに問題があることです。
たとえば、管理職の方が問題のある管理スタイルを取っている場合などが該当します。具体的には、えこひいきや感情的な対応、言葉と行動が一致していないといった行動が考えられるでしょう。
リーダーシップに問題があると、従業員の信頼を失う可能性もあります。信頼は士気を高めるための重要な要素なので、適切なリーダーシップについて理解を深めておきましょう。
リーダーシップを発揮するために求められるスキルについては、以下の記事もご覧ください。
職場環境が悪い
ロバーツ・ウェズリアン大学の記事では医療従事者の士気が低下する原因について、職場環境の悪さが挙げられています。具体的には、コミュニケーションの少なさや対人関係の悪さなどです。
また、「従業員の離職率が高い」「期待や企業の方向性が不明確」なども、士気を低下させる可能性があります。
職場環境が悪いと、ストレスを抱えて仕事へのモチベーションが下がる場合もあるでしょう。職場がこのような状況に該当する場合、管理職の方は環境改善に向けて努力が必要です。
職場環境を改善するアイデアについては、以下の記事もご覧ください。
会議に問題がある
ハーバードビジネスレビューの記事によると、会議に問題がある場合、その後モチベーションや集中力、生産性が下がる場合があります。
会議への不満の原因は「議論のテーマが妥当でない」「議題や目的が不明確」「時間が管理できていない」などです。参加者に意見を言う機会がない場合も、時間を無駄にしていると感じるケースがあります。
会議後の悪影響を防ぐため、会議の目的と関係の薄い人を招待するのはやめましょう。また、議題ごとにメンバーに会議のリードを担当してもらうなどして、公平に会議に参加できる工夫をすると良いでしょう。
参考:
Roberts Wesleyan University “Adult and Graduate Education at Roberts Wesleyan College The High Cost of Low Morale by Nicole Fink”
Harvard Business Review 「従業員の能力をいかなる時でも最大限引き出す方法」
American Management Association”The Root Causes of Low Employee Morale”
Educause Review”Tending Morale”
Harvard Business Review 「やる気と生産性を下げる「会議の二日酔い」の悪影響」
従業員の士気を高めるメリット

以下では、従業員の士気を高めるメリットについて解説します。
生産性が向上する
地域に根ざして雇用とトレーニングを行う非営利団体であるジョブ・スキルズの記事によると、従業員の士気が高いと生産性が向上しやすくなります。従業員は自分の仕事に満足感や価値を感じていると、熱心に業務に取り組むほか、職責に誇りを持ち企業の目標達成に貢献しようとする可能性が高いです。
生産性が向上し、業績拡大により待遇が改善すれば、さらにモチベーションにつながることも考えられるでしょう。
離職率が低下する
同記事によれば、士気が高いと離職率が下がるとされています。
株式会社ツナグバが行った調査によると、現在の職場で働き続けている最も強い理由について「人間関係が良い」「ワークライフバランスが良い」という回答があわせて50%を超えました。そのほか、「給与や待遇に満足している」「仕事にやりがいがある」などと回答した人もいます。
人間関係や待遇、やりがいなどが従業員のモチベーションにつながる場合もあるでしょう。このことからも、モチベーションを感じられる環境であれば、職場で働き続けやすいと考えられます。
職場文化が前向きになる
ジョブ・スキルズの記事によると、士気が高いと前向きな職場文化を作るのに役立ちます。
「コミュニケーションを円滑にする」「従業員を認めて感謝する」の項で後述するように、士気を高めるにはチームメンバーの意見を尊重することや、感謝が大切です。
従業員を尊重し相手に感謝することは、協調的な環境の構築に繋がります。当然のことながら従業員はそれぞれ価値観や意見が異なるため、お互いに理解し尊重し合える文化を育めば、社内の協調性が高まるでしょう。
協調性のある職場ではコミュニケーションの促進が期待できるため、スムーズで正確に意思決定ができ、生産性の向上にもつながると考えられます。
参考:
Job Skills “Importance of Staff Morale”
株式会社ツナグバ「20代転職白書Byツナグバ」
管理職が実施すべきチームの士気を高める方法

以下では、管理職が実施すべきチームの士気を高める方法について解説します。
重要な節目にポジティブな評価を行う
ハーバードビジネスレビューの記事によると、重要な節目で行うポジティブな評価は、従業員のモチベーションを向上させるのに適したタイミングです。
具体的には、重大なプロジェクトが終わったときに肯定的なフィードバックを行ったり、四半期の初めに感謝のメッセージカードを贈ったりすることなどが該当します。
ポジティブな評価を従業員に素直に受け止めてもらうために、心からの気持ちだと伝えられるよう細部にこだわりましょう。たとえば、感謝を伝える際は、一斉メールではなく直筆で手紙に署名をするなどして、真摯な姿勢を示すことが大切でしょう。
定期的にフィードバックを行う
メリービル大学の記事によると、従業員の士気を上げるためには定期的なフィードバックを行うことが重要です。管理職の方は部下の目標をそれぞれ把握したうえで、年間を通してフィードバックしましょう。
定期的に行うことで部下が自分の行動を振り返れるため、改善点を早めに修正できるメリットもあると考えられます。
東京未来大学が新卒3年目の男女を対象に行った調査によると、モチベーションが上がる上司の行動について「仕事ぶりを評価する」と答えた人は男性で59.1%、女性で60.2%でした。また、「改善点を伝える」と回答した男性は31.3%、女性は33.6%です。
このことからも、管理職からのフィードバックが従業員のモチベーションにつながることが分かります。
フィードバックの効果や手法については、以下の記事もご覧ください。
文章でフィードバックを行う
ハーバードビジネスレビューの記事によると、文章で行うフィードバックはモチベーション向上に大きな効果があります。
業績評価のフォーマットに関する実験の参加者は、フィードバックに文章が記載されているとパフォーマンスの改善方法が理解しやすくなり、パフォーマンス向上への意欲が強まると答えました。過去の業績評価だけでなく、成長するための具体的なステップが分かりやすいことが理由の一つと考えられるでしょう。
目標設定と共有を従業員ができるようにする
メリービル大学の記事によると、従業員が職業上の目標を設定し共有できるようにするのが得意な組織では、従業員の士気が高い傾向にあります。
管理職の方は従業員と向き合い、成果を認め、成長の機会を見つけるために時間を割くことが大切です。従業員の成長につながる客観的な意見を出したり、組織と個人の目標が相反していないか確認したりすると良いでしょう。
リスクテイクを奨励する
プロジェクトの成功の最大化を目的とするプロジェクトマネジメント協会の記事によると、プロジェクトマネージャーがチームの士気を高めるには新しいチャレンジやリスクを取ることを奨励しましょう。
リスクを取ることで生じる悪影響や失敗する可能性に対処することが大切です。失敗は起こるものだと認識したうえで、許容できるラインを見極めましょう。
リスク管理を行う際は、市場の動向などを分析してどんなリスクがあるか特定すると良いでしょう。そして、その影響度や起こる確率をもとに、対処すべき優先順位を立てます。リスク対策は実行するだけでなく高頻度で見直しましょう。リスク管理計画が適切かどうかの定期的なチェックや、修正も行うと良いでしょう。
チームへの帰属意識を作る
アメリカ臨床検査学会の記事によると、従業員の士気を高めるには帰属意識を作り、チームビルディングに取り組むことが大切です。チームビルディングとは、一人ひとりの能力を最大限に活かしながら目標を達成できるチーム作りを指します。
どの従業員に対しても「受け入れられ、必要とされている」と感じてもらえるよう接するほか、従業員の間で派閥ができることを防いで孤立感を感じさせないようにしたり、チームビルディングの活動としてゲームを取り入れたりしましょう。楽しい活動は従業員の士気の向上に効果的です。
たとえば、少人数のチームに分かれ、事前に決定されたキーワードを含んだプレゼンを行い、面白かったチームを決定する「条件プレゼン」や、すべてのメンバーに当てはまることを探す「共通点探しゲーム」など、チームビルディングに活用できるゲームは幅広くあります。
コミュニケーションを円滑にする
プロジェクトマネジメント協会の記事によると、プロジェクトマネージャーがチームの士気を高く保つにはコミュニケーションを円滑良好に取る必要があります。
部下の意見を尊重し、聞く姿勢を持ちましょう。また、コミュニケーションを頻繁に行い、相手に誠実に向き合うことで、情報共有や信頼関係構築の機会につな繋がります。
具体的には、管理職の方から積極的に話しかけたり、部下が声をかけてきた際は作業の手を止めて会話したりして、話しやすい関係性を築くと良いでしょう。部下の意見を遮らずに聞くことも大切です。
部下とのコミュニケーションの取り方のコツについては、以下の記事もご覧ください。
従業員を認めて感謝する
アメリカ臨床検査学会の記事によると、士気を高めるためには従業員を認めて感謝することが大切です。従業員が仕事に貢献できていることを同僚や上司が認識することは、士気を向上させる大きな影響力となるでしょう。
感謝を伝えるには、「重要な節目にポジティブな評価を行う」の項で先述したように、感謝のカードを作成するのも一つの方法です。貢献できている点を探すには、従業員の行動のなかで以前から成長した部分や努力した過程などを考慮すると良いでしょう。
参考:
Harvard Business Review “小さな感謝には、生産性や士気を高める大きな効果がある”
Maryville University “How to Boost Employee Morale”
PR TIMES「<社会人3年目対象のモチベーション調査 第2弾 >モチベーションは上司の資質に左右されると答えた社員は8割!」
Harvard Business Review “従業員のモチベーションを高める業績評価の方法”
Project Management Institute “The significant role of the project manager in establishing and maintaining team morale”
The American Society for Clinical Laboratory Science “The Workplace Morale Kit”
まとめ
従業員の士気を高めることについて、難しいと感じる管理職の方は少なくありません。しかし、士気が高まれば、生産性が向上したり離職率が低下したりといったメリットが得られるケースもあるでしょう。
士気を高めるため、フィードバックの方法を工夫するほか、チームへの帰属意識を作ることや良好なコミュニケーションなど、できることから始めていきましょう。