部下が相談してくれない理由や解決策が分からず、お困りの管理職の方もいらっしゃるでしょう。
職場で安心して発言できる心理的安全性が低いと、部下はサポートを求めにくくなります。心理的安全性を高めるには、部下からの意見を積極的に聞いたうえで、共有してくれたことに感謝を伝えることが大切です。
この記事では、部下が相談しないことで生じるデメリットや、相談しやすい環境を作る方法について解説します。
部下からの報連相が不十分だと感じる管理職は多い

部下からの報連相が不十分だと感じる管理職の方は多く存在します。
産業能率大学総合研究所が上場企業の課長を対象として2019年に行った調査によると、部下の課題について「報連相が不十分」だと回答した人は37.5%と最も多い結果となりました。
管理職の方にとって、業務の進め方についての質問やミスしてしまった際の報告など、部下から相談してほしいタイミングは多々あるでしょう。
参考:
産業能率大学総合研究所「上場企業の課長に関する実態調査(第5回)」
部下が相談してくれない理由

部下が相談してくれない理由は主に以下の2点です。
- 心理的安全性が低い
- 適切な対応が受けられないと感じている
それぞれについて詳しく解説します。
心理的安全性が低い
カリフォルニア大学バークレー校のグレーター・グッド・サイエンス・センターが発行するグレーター・グッド・マガジンの記事によると、職場で人が助けを求められない理由について「心理的安全性が低い」ことが挙げられています。
職場の心理的安全性は、批判や嘲笑といった否定的な対応を恐れずに、ミスを認めたり質問したりする行動を促します。そのため、心理的安全性があれば、部下が安心して相談しやすくなるでしょう。心理的安全性を高める方法については後ほど解説します。
適切な対応が受けられないと感じている
業務についての報告や質問だけでなく、部下が不正行為について相談してくれないことも避けたいケースです。
消費者庁が行った内部通報制度に関する意識調査によると、勤務先で法令違反を知った際に「通報・相談する」「おそらく通報・相談する」と答えた人のなかで、最初に通報する場所として「上司を含む勤務先」と答えた人の割合は64.5%でした。つまり、勤務先に相談しない回答者は35.5%に上ります。
勤務先以外の場所を最初の通報先に選んだ理由として、「勤務先に通報・相談しても、適切な対応が期待できない」と答えた人は48.9%でした。このことから、不正行為を見つけても、「適切に対応してもらえない」と考えて部下が相談しないケースも起こり得ると考えられます。
不正行為に気づいた部下が声を上げやすくするには、従業員の意見を積極的に聞くことが大切です。小さいことでも良いと伝えたうえで、定期的に懸念事項や意見を募りましょう。そうすれば、懸念を抱いていることに対し、声を上げることが自然な職場環境につながるでしょう。
部下が本音を言わない原因については、以下の記事もご覧ください。
参考:
Greater Good Magazine “How to Overcome Your Reluctance to Ask for Help at Work”
消費者庁「内部通報に関する意識調査(就労者1万人アンケート) 結果全体版」
部下が相談しないことで生じるデメリット

部下が相談しないことで生じるデメリットは主に以下の3点が挙げられます。
- 部下のモチベーションが下がる
- サービスの質が下がる
- 業務の進捗が遅れる
それぞれについて解説します。
部下のモチベーションが下がる
VOICHAT株式会社が行った調査によると、新入社員時代に聞きたいタイミングで質問や相談ができなかった影響を質問したところ、「モチベーションが下がった」という回答が39%と最も多い結果となりました。
業務内容や仕事の進め方について部下が分からないことがある場合、相談ができないと曖昧な状態で進めることになります。疑問の解消ができず不安になったり、作業に迷いが生じたりして、モチベーションが下がると考えられるでしょう。
サービスの質が下がる
同調査によると、36.6%と2番目に多いのが「サービスの質が下がった」という回答です。
不明点を解消できず曖昧なまま業務を続けることで、業務の質が下がるケースもあるでしょう。たとえば、不明点を解消できないまま顧客に自社の商品について説明する際、不明確な点について質問されても、その場で十分に回答できません。または、曖昧な理解で回答し、間違った情報を伝えてしまうことも考えられます。そのため、質問や相談ができないことでサービスの質が下がるといえます。
業務の進捗が遅れる
同調査によると、「業務の進捗が遅れる」という回答が14.6%と5番目に多い結果となりました。
不明点の解消を行わないと先の業務を進められない場合、部下はマニュアルを見返したり悩んだりするでしょう。早めに相談ができないことで停滞する時間が発生し、業務の進捗が遅れると考えられます。
参考:
PR TIMES「新入社員の約4割が、聞きたいときに質問・相談できないことで、モチベーションの低下を実感」
部下が相談しやすい環境を作る方法

部下が相談しやすい環境を作る方法は主に以下の4点が挙げられます。
- 心理的安全性を高める
- 管理職自身がサポートを求める
- サポートの求め方を教える
- 問題解決のための会議を行う
それぞれについて詳しく解説します。
心理的安全性を高める
ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、職場で安心して発言できる心理的安全性を高めるためには、部下からの意見を積極的に聞くことが大切です。たとえば、プロジェクトの計画立案や新しいアイデアについて話し合う際は、部下がどのように考えているか質問すると良いでしょう。
なお、ハーバード・ビジネス・スクール・オンラインの記事によると、心理的安全性のある職場を作るには、部下の意見に賛同できない場合も、意見を共有してくれたことに対して感謝を伝えることが大切です。
心理的安全性を高める方法については以下の記事でも解説しているので、あわせてご覧ください。
管理職自身がサポートを求める
グレーター・グッド・マガジンの記事によると、チームがお互いに助け合うためには管理職自身がサポートを求めることが大切です。
部下に「相談してほしい」「サポートを求めてほしい」と思うなら、自分がロールモデルとなり、人に相談したりサポートをお願いしたりする姿勢を見せましょう。そうすれば、弱みを安心して見せられる心理的安全性が生まれるため、部下も相談しやすくなると考えられます。
たとえば、さまざまな業務に関わるため、プロジェクトの状況が把握しきれないケースがあります。その際は、メンバーにどういう状況か素直に尋ね、教えてもらうと良いでしょう。
サポートの求め方を教える
グレーター・グッド・マガジンの記事によると、人がサポートを求めない理由の一つは、その方法が分からないことです。そのため、管理職は相談してくれない部下に、サポートを求める方法を教えると良いでしょう。
効果的に依頼を行うには、SMARTという基準の活用が推奨されています。SMARTとは、「具体的(Specific)」「意義がある(Meaningful)」「行動(Action)」「現実的(Realistic)」「時間(Time)」を指します。
たとえば、「具体的」という基準では、「この業務について教えてください」と言うのではなく、「顧客に説明する際に使用できる資料と、具体的なフローを教えてください」などと詳細に伝えることが大切でしょう。
「意義がある」では、何を達成しようとしてサポートを求めるのか説明します。顧客説明に必要な情報を求める際は、「顧客に納得感を持たせ、効果的に契約に繋げるために必要」などと説明すると良いでしょう。
「行動」では、「過去の利用者満足度アンケートのデータを送ってほしい」などと、実際にしてもらいたいことを説明します。
「現実的」では、依頼する内容が実現可能かどうか確認しましょう。
「時間」では、具体的な期限や、緊急の場合はその旨もあわせて伝えます。
このSMARTの基準を使うことで、効果的にサポートを依頼する方法を部下に教えると良いでしょう。
問題解決のための会議を行う
グレーター・グッド・マガジンの記事によると、従業員がお互いに助け合うためには問題解決のための会議を行うことが大切です。
定例の場合、たとえば毎週火曜日の11時に会議室に集まり、業務について悩んでいることを話したあと、サポートし合う時間を作ります。決められた日時に相談やサポートを受けられるため、普段相談しにくいと感じる部下も、安心して話せると考えられるでしょう。
そのほか、「昨日行った業務」「今日行っている業務」「必要なサポート」の3点について話す活動を毎日行うのも方法の一つです。話題を3点に絞るため、時間がかからないという利点があるでしょう。
若手社員とのコミュニケーションの注意点については、以下の記事もご覧ください。
参考:
Harvard Business Review「心理的安全性とは何か、生みの親エイミー C. エドモンドソンに聞く」
Harvard Business School Online “How to Build Psychological Safety in the Workplace”
Greater Good Magazine “How to Build a Culture of Generosity at Work”
Greater Good Magazine “How to Overcome Your Reluctance to Ask for Help at Work”
まとめ
部下からの報連相が不十分だと感じる管理職の方は少なくありません。相談してくれない理由としては、職場の心理的安全性が低かったり、適切な対応が受けられないと部下が感じたりしていることが挙げられます。
管理職の方は心理的安全性を高めることや、サポートの求め方を教えることを意識すると良いでしょう。