部下からの報連相がなく、状況判断が困難であったり業務に支障が出たりしてお困りの管理職の方もいらっしゃるでしょう。
職場の心理的安全性を高めるほか、コミュニケーション手段を整えるなどの対策を取り、部下が発言しやすい環境を作りましょう。
本記事では、部下が報連相できない理由や管理職が取り組むべき対策を紹介します。
部下の報連相が不十分だと考える上司は多い

部下の報連相が不十分だと考える上司は多くいます。
産業能率大学総合研究所が、部下を持つ課長を対象に行ったアンケート調査によると、部下の業務遂行における課題について「報連相が不十分」だと回答した人は37.5%と最も多い結果となりました。
部下の報連相が不十分だと、問題が発生するまで部下の状況に気づけない場合もあるでしょう。適切に業務を進められているか判断しづらいため、上司がカバーできないほど進捗に遅れが出たり取引先に迷惑がかかったりするなど、仕事に大きな支障が出ることも考えられます。
参考:
産業能率大学総合研究所「上場企業の課長に関する実態調査(第5回)」
部下が報連相できない理由

部下が報連相できない理由として、主に以下の3点が挙げられます。
- 報連相の意味がない
- 職場の心理的安全性がない
- タイミングが合わない
それぞれについて詳しく解説します。
報連相の意味がない
報連相しにくい理由の一つに、報連相にあまり意味を感じられないことが挙げられます。
株式会社識学が行った調査によると、上司または管理者に報連相しにくいと答えた人の意見として「相談相手が業務について理解していない」「何をすべきかお互いに分かっていない」などが挙げられました。
相手が業務を理解していなければ、質問や相談をしても期待する回答が得られないと考え、意味がないと感じる部下もいるでしょう。そのほか、相談しても何も改善につながらないと感じている場合、「無駄だ」と諦めて発言しない場合もあると考えられます。
職場の心理的安全性がない
ハーバードビジネスレビューの記事によると、職場に心理的安全性がない場合、新入社員は自分の考えや心配を周りに伝えず、目立たないように行動するとしています。
心理的安全性がある職場とは、助けを求めたり、自分の失敗やミスを認めたりしても、安全だと感じられる職場であることを指します。そのため、部下が職場に心理的安全性を感じられていなければ、非難されることなどを恐れ、相談を避ける場合もあると考えられるでしょう。心理的安全性を高める方法については後ほど解説します。
タイミングが合わない
株式会社識学が実施した調査結果によると、上司または管理者に報連相しにくい理由として「基本的にいないことが多い」「ミーティングなどでタイミングが合わない」といった意見が挙げられています。
特にプレイングマネージャーとして働いている場合など、業務に追われ、部下が相談しやすい環境をなかなか作れないこともあるでしょう。物理的に相談できない場合もあれば、忙しそうな上司に部下が遠慮して相談できないケースもあると考えられます。
限られた時間で仕事を教えるために必要な能力については、以下の記事もご覧ください。
「従業員に仕事を教える時間がない!忙しい中で効率的に指導するコツを解説」
参考:
PR TIMES「報・連・相(報告・連絡・相談)に関する調査」
Harvard Business Review「新入社員の心理的安全性は、入社直後から急速に低下する」
報連相できない部下に管理職が取るべき対策

報連相できない部下に管理職が取るべき対策は、主に以下の4点が挙げられます。
- 情報やサポートを求めるメリットを伝える
- 成長と学習の機会として職場環境を捉えてもらう
- コミュニケーション手段を整える
- 職場の心理的安全性を高める
それぞれについて詳しく解説します。
アドバイスやサポートを求めるメリットを伝える
相談してくれない部下には、相談することのメリットを伝えると良いでしょう。
ケナン民間企業研究所の記事によると、アドバイスやサポートを求める行動を促進するためには、そのメリットを理解してもらうことが一つの方法です。
従業員のなかで、アドバイスやサポートを求めることによって難しい問題を解決した成功事例があれば共有しましょう。また、管理職の方自身が、そういった行動をキャリアにおいてどう役立てられたか経験を話すと良いでしょう。
成長と学習の機会として職場環境を捉えてもらう
同記事によると、アドバイスやサポートを求める行動を促進するための方法として、仕事の不確実性や厳しい要求がされる状況を脅威ではなく挑戦と解釈することが挙げられています。
ここでいう仕事の不確実性とは、「プロジェクトを成功させるために何をすべきか」といった、目標達成への道筋が明確でない状況を指します。
同記事によると、従業員が職場環境を成長と学習の機会と捉えていれば、状況の改善をただ待つのではなく、ほかの人にアドバイスやサポートを求める可能性が高くなるとしています。
管理職の方は、従業員に不足しているリソースがないか定期的に確認しましょう。リソースとは、時間やお金、サポートや本人の自信など多岐にわたります。
同記事では、要求の厳しい状況を「脅威」「挑戦」のどちらで解釈するかは、対処に十分なリソースがあると感じているかどうかにかかっているとしています。そのため、管理職の方が定期的に従業員のリソースを確認し、足りない部分についてサポートを行うことで、不確実性を「挑戦」と解釈しやすくなると考えられます。
コミュニケーション手段を整える
報連相する際に「こんなことで声をかけて無知だと思われないか」「迷惑にならないか」と恐怖を感じる部下の場合は、恐怖が克服できるようにコミュニケーション手段を整えると良いでしょう。
企業に学習支援を提供するアミティ・インスティテュート・オブ・トレーニング&デベロップメント(AITD)の記事によると、質問する際に感じる恐怖を克服してもらうためには、質問を奨励する支援的な環境が役立つとしており、コミュニケーション手段を効果的に整えるのがその方法の一つです。
同記事では、会議や研修などの際に質問できる時間を作ることを推奨しています。そのほか、匿名で質問できる方法も整えましょう。
部下が自分から質問や相談しにくいと感じている場合、会議などで上司がそのための時間を設けたり匿名で質問できる環境を作ったりすれば、質問や相談のハードルは低くなります。これらは比較的手軽に実行可能な施策であるため、明日から実行してみてもよいかもしれません。
職場の心理的安全性を高める
ハーバードビジネスレビューの記事によると、心理的安全性とはネガティブな結果を恐れずに、自分の考えや懸念、疑問などを口に出したり間違いを認めたりできることです。
心理的安全性があれば、業務の進捗の遅れや生じた問題などについて非難されることを恐れずに発言できると考えられるため、部下が報連相を行う抵抗感も薄れるでしょう。
心理的安全性を高めるには、「このことについてどう思うか」などと管理職の方から積極的に意見を尋ねるようにしましょう。また、部下が発言した際には、「伝えてくれてありがとう」と感謝を伝え、その意見を肯定的に受け止める姿勢を示すことが重要です。
心理的安全性について、詳しくは以下の記事もご覧ください。
「心理的安全性とは?組織に与えるメリットや活用事例を解説」
「職場の心理的安全性を高める方法とは?」
参考:
Kenan Institute of Private Enterprise “Seeking Information at Work: How Employers Can Promote Worker Proactivity”
Amity Institute of Training & Development “How to Overcome the Fear of Asking Questions”
Harvard Business Review「心理的安全性とは何か、生みの親エイミー C. エドモンドソンに聞く」
まとめ
部下の報連相を課題と感じる上司は多くいます。
管理職の方は、報連相できない部下への対策として、コミュニケーション手段を整えたり職場の心理的安全性を高めたりすると良いでしょう。そのほか、相談することで成功した事例があれば、共有するのもおすすめです。