このページのまとめ

  • テレワークの課題は、コミュニケーションの難しさとセキュリティの脆弱性にある
  • テレワークの課題を解決するために、クラウドサービスなどの導入が効果的
  • テレワーク導入には費用がかかるため、助成金を活用するのがおすすめ

働き方改革や新型コロナウイルスの影響もあり、テレワークが一般的になりました。働き方の多様化を実現するうえで欠かせないものとなったテレワークですが、管理体制が整っていないと従業員の生産性の低下やストレスの増加につながっていまいます。今回は、テレワークで発生しやすい課題や、課題の解決方法について紹介します。テレワークをスムーズに進めるための参考にしてみてください。

テレワークの現状 

新型コロナウイルスの流行にともない、企業のテレワーク導入が増加しています。1回目の緊急事態宣言が発令された前後では、テレワークの導入率が17.6%から56.4%にまで増加しました。テレワークはさまざまな企業で導入されており、定着の兆しをみせています。

参照元:総務省「テレワークの実施状況

企業が抱えるテレワークの課題 

テレワークを導入する企業の増加にともない、次のような課題が生じています。

コミュニケーション

テレワークでは、従業員同士のコミュニケーション不足が課題になっています。社内チャットツールやビデオ通話で連絡を取り合うテレワークでは、オフィス出社に比べてコミュニケーションのハードルが高くなりがちです。オフィスに出社していれば何気なく質問できたことでも、テレワークでは腰が重くなり、質問や相談を怠ってしまうケースがあります。そのような状況が続くと、従業員同士で異なる解釈をしていることに気づけなくなり、最悪の場合は大きなトラブルにつながってしまいます。
また、雑談の機会が減少すると、従業員が孤独を感じやすくなってしまいます。定期的にリモートランチやリモート飲み会を開催するなど、従業員と楽しく交流する機会をつくることが大切です。

生産性の低下

従業員の中には、自宅だと集中できないという方もいるでしょう。「オフィスは仕事をする場所、自宅は休む場所」と切り分けている従業員は、自宅での業務に身が入らず、生産性が低下してしまうかもしれません。また、小さな子どもがいる家庭では、仕事を中断せざるを得ない状況が発生するケースがあります。テレワークでは、従業員の生産性を維持する方法を考えることが大きな課題です。

人事評価が困難

テレワークでは実際に業務を行っている様子が確認できないため、人事評価がしづらくなります。「テレワークの導入によって、プロセスよりも成果に比重を置いて評価するようになった」という企業もあるかもしれません。その場合、これまでの人事評価の基準が変わってしまったことで、従業員のモチベーションが低下してしまうこともあるでしょう。
成果に至るまでの「見えない努力」をどのように評価するかがテレワークの課題の一つです。

時間管理

テレワークは自宅で仕事を行うため、業務とプライベートを区別しづらくなったという問題が発生します。誰にも見られていないのを良いことに、こっそりサービス残業をする従業員もいるかもしれません。労働時間の不正を働く従業員が出ないように、労働時間を正確に管理する体制を整える必要があります。

セキュリティ

自宅で勤務するテレワークでは、セキュリティ面の課題を抱えています。企業のパソコンやネットワークは、ファイアウォールなどで不正アクセスへの対策をしています。しかし、一般家庭ではセキュリティ対策が十分とはいえず、情報漏洩やウイルス感染のリスクが高まります。また、カフェなどでテレワークを行い、無料Wi-Fiの利用によってウイルスに感染するケースもあります。各家庭でのセキュリティ対策にはコストがかかるため、実施が難しいことが課題となっています。

テレワークの導入コスト

テレワークの導入には、従業員分のノートパソコンや周辺機器をそろえるための費用がかかります。導入コストがかかりすぎるという点から、実施したくてもできないと悩んでいる企業も存在します。

参照元:日本労働組合総連合会「テレワークに関する調査2020

課題解決の方法

テレワークで生じる課題を解決する方法には、次のようなものがあります。

コミュニケーションツールの導入

従業員同士のコミュニケーションを活性化させるために、コミュニケーションツールの導入が有効です。社内チャットツールやWeb会議ツールを導入すると良いでしょう。
社内チャットツールを使うことで、メールよりも気軽に質問を投げられるようになります。

社内チャットツールでは、共有されたメッセージに対して従業員がスタンプをつけて返答できるため、「誰がメッセージを確認したか」が可視化しやすくなります。
Web会議ツールは、相手の顔を見ながら話せることがメリットです。従業員同士の面談やミーティングはもちろん、取引先との商談にも役立つでしょう。

テレワークできる業務を明確にする

テレワークを導入する際には、テレワークに向いている業務と向いていない業務があることを認識しておきましょう。取引先と紙の契約書を交わしている企業では、郵送対応を行う従業員はオフィスに出社したほうが業務がスムーズに進むかもしれません。すべての業務をテレワークに移行するのではなく、テレワークに対応できる業務のみを移行することも検討しましょう。

人事評価の見直し

厚生労働省は、テレワーク下での人事評価に対し、「仕事の成果に重点を置いた評価を行う場合は、評価者に対して労働者の勤務状況が見えないことのみを理由に不当な評価を行わないよう注意喚起することが望ましい」としています。テレワークの状況に合わせて人事評価を見直すことも必要になるでしょう。

参照元:厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン

セキュリティ対策

情報漏洩などが発生しないように、セキュリティ対策を整えましょう。
総務省が公表している以下の指針(テレワーク時のセキュリティ対策の指針)を参考にしてください。

  • 経営者は、テレワークの実施を考慮した情報セキュリティポリシーを定期的に監査し、その内容に応じて見直しを行う。
  • 管理者は、システム全体を管理する重要な立場であることを自覚し、情報セキュリティポリシーに従ってテレワークのセキュリティ維持に関する技術的対策を講じるとともに定期的に実施状況を監査する。
  • 勤務者は、テレワーク作業中は、利用する情報資産の管理責任を自らが負うことを自覚し、情報セキュリティポリシーに沿った業務を行い、定期的に実施状況を自己点検する。

参照元:総務省「テレワークセキュリティガイドライン第4版

クラウドサービスの利用

データの共有を簡潔にするため、クラウドサービスを利用する企業が増加しています。クラウドサービスとは、パソコン内のデータをクラウド上に保存し、簡単に共有できる仕組みです。クラウドサービスには、情報共有だけではなく、スケジュールの管理やワークフローシステムなど、業務を効率化する仕組みもあります。オンラインで業務を行うメリットを活かし、クラウドサービスを導入してみましょう。

テレワーク導入補助金の利用

テレワークを導入する企業は補助金が利用できます。「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」では、テレワーク用機器の導入に対し、支給対象となる経費のうち、30%の助成金が支給されます。ほかにも、「IT導入助成金」を使用し、ソフトウェアやシステム導入に役立てることもできるでしょう。導入コストに負担を感じている企業は、補助金の利用を検討しましょう。

参照元:厚生労働省「人材確保等支援助成金(テレワークコース)
参照元:経済産業省「IT導入助成金2002

まとめ

まだまだ課題の多いテレワークですが、コミュニケーションツールやクラウドサービスを導入することでスムーズに運用できるようになります。また、テレワークに適していない業務においては、無理にテレワークを導入せず、必要に応じてオフィスに出社できるようにすることも大切です。従業員一人ひとりの生産性向上を考慮してテレワークの導入を進めていきましょう。