このページのまとめ

  • KPIとは、目標達成までの過程を数値化し、評価するシステムのこと
  • KPIを設定することで目標が明確になり、生産性が向上するメリットがある
  • KPIの運用を成功させるためには、シンプルな設計と定期的な見直しが大切

目標達成までの進捗度合いを評価する方法に、KPIというものがあります。KPIとは、目標の達成度合いを評価するために設定する評価指標のことです。チームや企業全体の目標を達成させるために、KPIを設定している企業も多いことでしょう。今回は、「KPIを正しく設定できているか自信がない」「効果的なKPIの設定について知りたい」という企業担当者のために、KPIの設定方法や設定のコツについて解説します。

KPIとは 

KPIとは、目標達成のために必要な行動を設定し、設定した行動の達成度合いを数値化して評価する方法のことです。「Key-Performance-Indicator」の頭文字を取ってKPIと呼ばれています。
ビジネスの場面では、「年間売上●●円を達成する」という目標に対して、営業件数・受注件数・商品の解約件数などをKPIに設定することで目標の達成度合いを評価します。
KPIが具体的に設定できていれば、目標達成のために必要な行動が明確になるでしょう。

KPIと混同しやすい言葉

KPIと混同しやすい言葉に、「KGI」「KSF」「OKR」があります。それぞれの言葉の定義について詳しく説明します。

KGI

KGIは「Key-Goal-Indicator」を略した言葉で、重要目標達成指標という意味です。
「月の売上を1000万円にする」などの最終的な目標がKGIです。
最終的なゴールであるKGIに対して、「営業件数を50件」「受注件数を30件」などの過程の目標を設定するのがKPIです。
このように、KGIとKPIはセットになり、KGIは最終目標に該当します。

KSF

KSFとは、事業目標を成功させるための要因のことです。「Key-Factor-for-Success」の略であり、「成功の鍵となる要素」とも訳されます。
KPIはKGIを達成するための目標を指しますが、KSFは「KGIの達成に必要な要因や行動」を指します。

OKR

OKRとは、「Objectives-and-Key-Results」の略であり、「企業全体で達成すべき目標と成果」を指します。「企業全体の目標は売上の向上で、そのために出すべき成果は売上300万円増加」のように、企業全体の目標と具体的な成果をセットで設定します。
KPIとの違いは、規模感です。KPIは部署や個人の目標達成のプロセスを設定するのに対し、OKRは企業全体の目標をもとに成果やプロセスを決定します。

KPI設定のメリット 

KPI設定により、目標達成に必要な行動が分かったり、現状の課題を発見できたりするメリットがあります。KPIを設定する前に、どのようなメリットがあるか確認しましょう。

評価基準が一定になる

KPIは数値目標のため、評価基準を一定にできます。公正な評価として利用できるでしょう。たとえば、新規営業件数30件とKPIを設定すれば、評価基準が明確になります。30件に到達すれば達成、到達しなければ未達成と評価できるでしょう。また、数値的な評価は客観的なため、従業員にとっても納得できる評価になります。KPIの設定により、評価基準を一定にできるでしょう。

従業員の行動目標が明確化される

KPIの設定により、従業員の行動目標が明確化されます。数字で表すことで、従業員も納得できる目標になるでしょう。また、KPIの目標に足りていなければ、力を入れるべき業務や、改善すべき業務も明らかになるでしょう。KPIの設定により、従業員が何をすべきか明確に示すことができます。

目標達成へのプロセスが明確になる

KPIを設定すると、目標達成に向けたプロセスを明確にできます。全体像を把握しやすくなり、業務のイメージも湧きやすくなるでしょう。KPIは目標達成に向けて、1つずつプロセスを設定します。進捗状況も簡単に分かるため、現状の把握もしやすいメリットがあります。KPIの設定により、従業員は具体的な目標をもとに、業務を行うことができるでしょう。

生産性向上につながる

KPIの設定は、生産性向上につながります。プロセスを明らかにし、業務の優先度を明確にできるためです。KPIは進捗状況が分かるため、問題なく進んでいる業務と、課題のある業務が明確になります。優先度が分かるため、無駄を減らし、生産性向上につなげることができるでしょう。

KPI設定に欠かせない「SMART」 

KPI設定に欠かせない要素が、「SMART」です。SMARTは5つの要素の頭文字を取っており、SMARTに従うことで、より効果的なKPIが設定できます。

Specific(明確性)

KPIでは、明確な目標を設定しましょう。誰が見ても理解できる、客観的な目標が求められます。ビジネスの場面では、複数の従業員が集まって業務を行っています。人によって捉え方が変わる目標になると、目標設定がバラバラになってしまうでしょう。KPIには、誰が見ても同じように判断できる、明確な目標が必要です。

Measurable(測定可能)

KPIの目標は、測定できる目標を設定しましょう。KPIは、プロセスを数値で表すことが目的だからです。もし、数値化できない目標の場合、目標が達成できているか判断できなくなってしまいます。その結果、業務の改善も難しく、次に活かすことも難しいでしょう。KPIでは、「営業件数」「新規顧客数」のように、具体的に数値で表せる、測定可能な目標を設定しましょう。

Achievable(達成可能)

KPIでは、達成可能な目標を設定しましょう。達成が難しい目標を設定してしまうと、従業員のモチベーションが下がってしまいます。KPIは従業員もプロセスを確認でき、KPIに基づいて業務を行います。その際、難しい目標が設定されていては、達成しようとするやる気が起きません。一方で、目標が低過ぎる場合も、簡単に達成できてしまうため、問題になるでしょう。KPIの目標は、頑張れば達成できるレベルの目標設定が重要です。

Related(関連がある)

KPIの目標は、KGIと関連がある目標にしましょう。KGIと関係ないKPIを設定してしまうと、KPIを達成しても成果につながらないからです。たとえば、売上増加を目標としている状態では、商談数や新規顧客数などの、売上につながるKPIが求められます。関連があるKPIを達成すると、KGIの達成につながります。KPIとKGのつながりを意識して、目標を決めましょう。

Time-bounded(期限がある)

KPIの設定では、目標達成の期限も決めましょう。たとえば、「新規顧客を300人増加させること」を目標にする場合、1ヶ月で行うのと1年で行うのとでは取り組み方が変わります。
過程の目標を設定するだけでなく、いつまでに達成するかの期限も決めましょう。

KPIの設定方法 

ここからは、KPI設定の具体的な手順を解説します。KGIから順番にKPI設定を行いましょう。

KGIを決める

はじめに、最終目標であるKGIを設定しましょう。KGIもKPI同様、数値で示せる目標設定が重要です。たとえば、売上増加を最終目標に設定したいのであれば、「合計売上500万増加」「新規売上200万増加」などのように設定します。
KGIを設定したら、従業員に周知しましょう。従業員が納得して業務を遂行できる、具体的なKGIを決めることが大切です。

KGIの細分化

KGIが決まったらKGIを細分化しましょう。KGIの細分化には、KSFを使用します。
KSFとは、KGIを達成するために重要な役割や行動のことです。たとえば、売上増加が目的であれば、新規営業数や成約件数の増加がKSFになります。KSFで定めた行動がKPIにつながるため、多くのKSFを見つけ出しましょう。

KPIの作成

KSFで明らかにした行動から、KPIを設定します。重要な役割や行動を、数値で表しましょう。たとえば、「新規営業数30件」「成約件数20件」などの具体的な数値がKPIです。

KPIツリーの作成

作成したKPIをもとに、KPIツリーを作成しましょう。KGIとKPIをつなげることで、目標達成に必要な行動が、具体的に理解できます。基本的には、KGIとKPIをつなげた図を作成しましょう。目標達成に必要なプロセスが明確になり、現状把握や改善点の発見も簡単になります。

KPIの設定例 

KPIを設定するために、具体的にどのような設定例があるのかを学びましょう。

マーケティングの場合

マーケティングの場合、オンラインとオフラインでKPIが変わる傾向にあります。
たとえば、オフラインでは展示会などに出品した際の名刺獲得数や商談決定数がKPIになります。
オンラインでは、新規フォロワー数やリンクのクリック率などがKPIに設定されることが多いでしょう。

 【オフラインのKPI設定例】

  • 名刺獲得数
  • 商談決定数
  • 新規顧客数
  • 受注数
  • 受注率
  • 案件化率

 【オンラインのKPI設定例】

  • Webサイトの訪問数
  • WebサイトのPV数
  • Webサイトの回遊率
  • CV率
  • CTR
  • CPA
  • 新規フォロワー数
  • リンククリック率

セールスの場合

セールスの場合、売上につながるKPIが設定されます。
設定内容は、外勤営業と内勤営業でそれぞれ変わる場合があります。
セールスの場合で使用されるKPIには、次のような種類があります。

  • 新規顧客数
  • 新規売上額
  • 新規見込み客数
  • 新規リード数
  • 顧客単価
  • 商談数
  • 新規営業数
  • 受注率
  • 架電数
  • メール送信数

採用の場合

人材採用の場合、求人から面接、採用までの一連の流れでKPIを設定します。応募数を重視する企業と、人材の質を重視する企業とではKPIの設定も変わるため、注意しましょう。
採用の場合のKPIは、次のような内容を設定します。

  • 応募数
  • 面接数
  • 面接設定率
  • 最終面接の人数
  • 内定率
  • 内定承諾率
  • 採用者の定着率
  • 採用目標人数の達成率

KPIを運用するコツ 

KPIの運用を成功させるためのコツを知りましょう。KPIは設定したら終わりではなく、進捗確認が重要です。すぐに状況を把握できるように、運用方法を知っておきましょう。

シンプルな設計にする

KPIは確認しやすいように、シンプルな設計にしましょう。継続して運用を行うためには、シンプルで分かりやすい設計が重要です。もし、項目が多過ぎたり、確認が難しい内容を設定したりしてしまうと、管理が面倒になってしまいます。KPIをきちんと確認しない担当者が発生する可能性もあるでしょう。KPIは従業員も確認し、業務に活用します。誰でも分かるように、簡単な設計にしましょう。

評価基準は明確にする

KPIで設定する評価基準は明確にしましょう。誰が見ても判断できる、客観的な基準が求められます。KPIを設定しても、評価基準が曖昧であれば、目標が達成できているかどうか判断できません。従業員も自分の業務が正しいか、成果が出ているか迷ってしまうでしょう。KPIの評価基準は明確に、分かりやすく決めましょう。

定期的に修正を行う

KPIは、定期的に修正を行いましょう。目標達成に届かない場合、改善案や目標の修正を行う必要があります。KPIを設定しても、進捗が悪く、目標を達成できていないケースもあるでしょう。その場合、改善策の実行によって、目標達成を実現する対応が必要です。KPIは設定したら終了ではなく、達成が目的です。定期的に修正を行い、KPIを達成できるようにしましょう。

まとめ

KPIを設定する際には、シンプルで分かりやすい目標を立て、評価基準を明確にすることが重要です。設定したKPIを達成できない従業員が多い場合は、KPIの見直しを行いましょう。KPIは一度設定したら終わりではなく、従業員の達成状況に応じて柔軟に修正することが大切です。