このページのまとめ
- 辞令とは異動や昇格などの内容を従業員に伝えること
- 辞令の交付は法律で定められておらず、義務ではない
- 辞令を出す際には、情報漏洩を防ぎ、従業員の混乱やトラブルが発生しないようにする
異動や転勤など、人事に関する事柄を発表するために交付されるものが辞令です。辞令の交付は法律で定められていないため、交付しなくても問題はありません。辞令を出す場合は、情報漏洩などのトラブルが発生しないように注意が必要です。そこで今回は、辞令の交付方法や辞令を出す際の注意点について解説します。これから辞令を出す予定の企業はもちろん、すでに辞令を出している企業の方も参考にしてみてください。
辞令とは
辞令とは、人事に関する事柄を従業員に伝えるための文書のことです。
従業員の異動や転勤、昇格などの内容が辞令に該当します。
辞令の文書には、主に「交付日」「辞令の対象者」「辞令が適用される日付」「辞令の内容」「責任者の氏名」などを記載します。
辞令の交付に法的な拘束力はありませんが、従業員との人事関連のトラブルを防ぐために発行しておくと安心です。
辞令を出すタイミングについては企業によって異なりますが、7月・10月前後が多い傾向にあります。4月前後は新入社員の受け入れで多忙になりやすい時期のため、下半期に向けて体制を整える企業が多いといえます。
辞令の種類
辞令には、次のような種類があります。
採用辞令
採用辞令は、自社で採用することが決まった求職者に交付する書類です。
採用辞令には「採用日」「試用期間」「基本給」「労働条件」などを記載します。
また、採用条件の明示は労働基準法で定められているため、「辞令」という形式ではなくても、採用者には採用条件を記載した書類を送りましょう。
配置転換辞令
ジョブローテーションのように、配置転換を行う場合にも辞令を発令します。
配置転換辞令を出す際には、転換日に空白が出ないように注意しましょう。
基本的には、「現在の部署の解任日」と「新しい部署への配置転換日」を同じ日付にして記載します。解任日と配置転換日の間に空白期間が生じるとトラブルにつながる可能性があるため、辞令の適用日には十分に注意しましょう。
退職辞令
退職に関する辞令を出すケースもあります。
退職辞令は、従業員の退職後に再雇用を行う場合に出すことが多いです。
通常の退職の場合は、退職辞令を出すことは基本的にありません。
転籍辞令
転籍を行う場合にも、辞令が必要です。ただし、転籍辞令の場合には、従業員の同意が必要となるため、覚えておきましょう。転籍の場合、従業員の勤務する企業が契約から変わります。転勤や異動のように、自社内で配置転換されるケースとは違います。契約が変わる場合は、辞令の発令時に、従業員の許可が必要になるため注意しましょう。
転勤辞令
転勤辞令を出す場合は、就業規則を事前に確認しましょう。
たとえば、就業規則に「居住地の変更をともなう転勤は発生しない」と記載されているにもかかわらず同様の辞令を出してしまうと、従業員との間でトラブルになる可能性があります。
就業規則には記載されていない出向の辞令を出したい場合は、従業員に出向の同意を得てから発令するようにしましょう。
昇進辞令
昇進辞令は、従業員が昇進する場合に発令します。
この場合、昇進に至った理由は記載しなくても問題ありませんが、昇進によって従業員の立場がどのように変わるのかは明記しておきましょう。
辞令の交付方法
辞令の交付方法に関しても、確認しておきましょう。基本的には、内示を行い、その後に辞令が交付されます。
辞令の内示
内示とは、正式な辞令を出す前に、関係者に周知を行うことです。辞令を出される従業員の上司に、辞令の内容を伝えておきます。内示を受けた上司は、該当の従業員に対し、辞令が出される予定であることを伝えます。本格的に辞令が出される前に、転勤や異動の準備を整えるためです。いきなり辞令を出されると、従業員側も準備ができず、負担になる可能性もあります。内示を先に行い、従業員とその上司に、準備と心構えをする時間を用意しておきましょう。
辞令の交付
内示後、特に問題がなければ、辞令の交付を行います。辞令の交付では、「辞令書の授与」「辞令内容の確認」「ほかの従業員に対する辞令内容の周知」などが行われることを覚えておきましょう。辞令の交付に関しては、法律で定められていません。ただし、従業員に対して辞令内容を正しく伝えるためにも、辞令書を準備し、交付したほうが良いでしょう。辞令に関するトラブルを防ぐことにもつながります。
辞令は書面でなくても良い
辞令の交付は、書面以外の方法でも問題ありません。法律で決められていないため、自社のルールに従って実施しましょう。たとえば、「辞令書の交付」「社内報への記載」「メールでの通知」などの手段があります。分かりやすく、従業員に伝わる方法で、辞令の交付を行いましょう。
辞令を出す際の注意点
辞令を出す際には、トラブルを防ぐために以下の点に注意しましょう。
情報漏洩がないようにする
辞令発令時には、情報漏洩がないようにしましょう。
辞令が出る前に従業員の転勤が社内に漏れた場合、本人だけでなく周囲も業務に集中できなくなってしまう可能性があります。役員の交代辞令が漏れてしまった場合は、社外の関係者を巻き込んだトラブルに発展するリスクもあるでしょう。
辞令を出す際には、情報漏洩が起こらないように情報の管理を徹底することが重要です。
辞令のルールを定めておく
辞令に関するトラブルを防ぐために、辞令のルールを定めておきましょう。
たとえば、「転勤や出張辞令を出す場合は就業規則を必ず確認する」「正式な辞令を出す前に本人の同意を得る」などのルールを定めておけば、大きなトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
従業員が納得した状態で辞令を受け止められるように、決められたルールを遵守することが大切です。
従業員の生活環境を確認する
出向・転勤の辞令を出す際には、従業員の生活環境を把握することも重要です。
子どもがいる従業員の場合、「家族と一緒に引っ越すか、単身赴任をするか」などの問題があり、二つ返事で辞令を受け入れられない状況があるかもしれません。そのようなことから、出向や転勤をしたがらない従業員もいるでしょう。
「子どもがいる」「同居中の家族を介護している」などの事情がある場合は、出向や転勤の有無にできるかぎり配慮することが大切です。
まとめ
今回は辞令の種類や辞令の交付方法について解説しました。
辞令の交付は法律で定められていないため、出さなくても問題ありません。
ただし、辞令を出す場合は、従業員とのトラブルや情報漏洩などが発生しないように気を配る必要があります。辞令を出す際のルールを定め、ルールに基づいた発令を行いましょう。