このページのまとめ
- 無断欠勤とは従業員が勤務先に連絡せず欠勤する状況
- 無断欠勤だからといって解雇できるわけではない
- 無断欠勤の場合には従業員とのコミュニケーションが重要
出勤予定の従業員が連絡もなしに欠勤する、いわゆる無断欠勤が発生する場合があります。企業としては処分を行いたい場面ですが、まずは従業員の状況を正しく把握する必要があります。たとえば、寝坊での無断欠勤と事故での無断欠勤では、状況が大きく異なります。まずは本人に連絡を取り、状況を慎重に判断することが必要です。このコラムでは無断欠勤への対応や、無断欠勤を理由にした解雇の注意点を解説します。
無断欠勤とは
無断欠勤とは、従業員が勤務先に対して連絡を行わずに、会社を休んでしまう状態のことです。通常であれば、欠勤する理由や状況を企業側に伝え、手続きを行わなければなりません。しかし、無断欠勤では、手続きも連絡もなく欠勤しているので、企業側は休むことを知らずに当日を迎えることになります。
また、欠勤時の連絡に関しては、さまざまな方法があります。現代ではSNSも普及しており、社内SNSで必要事項を連絡する場合もあるでしょう。無断欠勤は、いかなる連絡手段においても、連絡がなく欠勤している状況を指します。そのため、電話での連絡はなかったが、あらかじめ社内SNSで連絡が来ていた場合は、無断欠勤ではありません。連絡が一切きていない状況が、無断欠勤に該当します。
無断欠勤による減給対応について
従業員が無断欠勤をした場合、企業は不就労分に関しては賃金を支払う必要はありません。また、無断欠勤を繰り返した場合は、処分を科すという意味で減給をすることもできます。ただし、1ヶ月以内に減給できる金額は決まっているため、過剰に減給することはできません。
無断欠勤によくあるケース
従業員が無断欠勤する理由には、主に以下のようなケースがあります。
急病や事故
従業員に出社する意思があったにもかかわらず、急病や事故で出勤できなくなる場合もあります。たとえば、突然意識を失ってしまった、事故で病院に運ばれたなどの事態が想定できます。この場合、連絡もできない状況であるため、従業員は深刻な状況に陥っていると考えられます。緊急を要する事態の可能性もあるため、複数の対応を想定しておきましょう。また、従業員本人だけではなく、家族が緊急で倒れてしまうなどの理由で、連絡できないケースもあります。
社内トラブル
社内の従業員との人間関係が原因で、無断欠勤になる場合もあります。たとえば、パワハラが原因で、出社が難しくなるケースが該当します。このような状況では、欠勤の連絡をすると上司から責められると思い、連絡ができなくなってしまっているケースが考えられます。
会社への連絡が恐くてできない、原因を従業員に知られることを恐れている状況が予測されます。つまり、社内の環境や、トラブルを相談できる体制が整っていないことでもあるため、環境を見直す必要があります。
精神疾患
精神疾患が理由で、企業に連絡できない、出勤できないケースもあります。精神疾患の理由はさまざまで、企業内の環境や人間関係、上司が原因、プライベートの問題などがあります。連絡できないほどの状況の場合、相当状況が深刻だと想定できます。また、精神疾患の場合には、事前に兆候が見られる場合もあります。従業員にいつもと違った様子がなかったか、悩みを知っている人物がいないかなども確認しておきましょう。
自己管理能力の欠如
寝坊や時間の間違いなど、自己管理ができておらず無断欠勤になるケースもあります。このような状況では、従業員の自己管理能力を改善させる必要があります。たとえば、朝に起きられない体質なのか、夜ふかしをして寝坊してしまったかによっても、企業の対応は変わります。自己管理に関しては、従業員によって対処法はさまざまなので、原因に応じて改善策を考えましょう。
逮捕
事件の容疑者になり、逮捕されてしまったケースも想定できます。拘束されている状況で、連絡が取れないこともあるでしょう。また、連絡が可能であっても、逮捕されているとは言いづらく、連絡しないケースもあります。この場合、状況がはっきり分からないことには対処ができません。具体的な経緯や処分内容が分かるまで、企業としては待つべきです。
無断欠勤の従業員への対応
無断欠勤の従業員に対しては、以下のような慎重な対応が求められます。
本人に連絡
無断欠勤が発覚した場合、まずは本人に連絡を取りましょう。無断欠勤の理由はさまざまで、本人が重大な危機に陥っている場合もあります。まずは、安否確認含めて、本人と連絡をとることを優先します。連絡方法としては、電話やメール、社内SNSが一般的です。電話に関しては、携帯電話と自宅の電話の両方に連絡しましょう。
また、本人が会社との連絡を拒み、着信拒否などを行っている場合もあります。連絡がつかない場合には、該当の従業員と親しい従業員に連絡をお願いする、緊急連絡先に連絡するなども行いましょう。それでも連絡がつかない場合には、自宅へ直接訪問を行うことも検討します。あらゆる手段を用いて、従業員と連絡をとるようにしましょう。
指導
無断欠勤が複数回続いてしまった場合には、企業は適切な指導を行う必要があります。加えて、無断欠勤の原因を知り、対応を行うことも求められます。たとえば、寝坊が原因であれば、生活環境の改善を指導する必要があります。また、産業医などのサポートも含めて、改善を図る必要もあるでしょう。
病院の紹介や産業医への報告
無断欠勤の原因によっては、病院や産業医の紹介も検討しましょう。精神的な問題が原因の場合、従業員自身が原因に気づいていない場合もあるためです。もし、うつ病など精神疾患の症状が見られる場合、医師や産業医のサポートが必要です。慎重に従業員と向き合いながらも、医療機関の受診を薦めましょう。
解雇の検討
無断欠勤の原因に対して指導などを行ったにもかかわらず改善されない場合は、解雇などの懲戒処分の検討も視野に入れましょう。企業として、従業員の雇用が損害にあたる可能性もあるためです。しかし、従業員に下される処分のなかでも、解雇は最も重い処分です。簡単に行える処分ではないので、実施には十分に検討を重ね、慎重に行いましょう。
行方不明の場合
行方不明の場合、本人に連絡をとることができません。そのため、通常の無断欠勤とは異なる対応が必要です。行方不明の場合は従業員に連絡がつかないため、裁判所に公示する形式をとります。公示では、公示を行ったことが官報に示され、2週間経っても反応がない場合、解雇が可能になります。
公示を行う場合は、裁判所への手続きや、行方不明であることの証明、公示費用などの負担がかかります。そのため、公示以外にも、就業規則に「30日以上無断欠勤を行った場合、退職扱いにする」のような規定を設けることも有効です。従業員が行方不明の場合には、裁判所への公示を行うか、就業規則に明記しておくと覚えておきましょう。
無断欠勤で解雇にできる可能性がある
結論から言えば、懲戒解雇にできる可能性があります。しかし、懲戒解雇相当と判断するには難しい面もあるので、慎重に検討しましょう。
懲戒解雇にできる可能性がある
無断欠勤が続いた場合、懲戒解雇にできる可能性があります。その際、就業規則に、無断欠勤は懲戒解雇に該当すると記載してあることが条件です。ただし、懲戒解雇は懲戒処分のなかでも最も重く、簡単に実行できる処分ではありません。客観的に合理的な処分であるか、社会通念上の相当性があるかなどの基準を満たす必要があります。
無断欠勤の証拠をそろえる
懲戒解雇を行うためには、従業員が無断欠勤を行っている証拠を集めましょう。無断欠勤であることを客観的に判断できる証拠が必要です。たとえば、出勤簿やタイムカード、従業員に連絡を取ったメールやメッセージが該当します。企業によっては、無断欠勤が行われた際の状況を詳しく記した書類を準備する場合もあります。電話やメールを行った時刻、従業員の欠勤理由、連絡が取れたかどうかなどを記載します。このように、無断欠勤の証拠を残しておけば、従業員が異議を唱えた場合の反論材料になります。懲戒解雇が不当として裁判になるケースもあるので、無断欠勤の証拠は必ず揃えましょう。
懲戒処分体制の整備が必要
解雇は懲戒処分に該当します。懲戒処分を行うためには、懲戒処分体制の整備が必要です。たとえば、守るべきルールや、懲戒処分に該当する行為を明確に示し、就業規則に記載しましょう。また、就業規則を監督署に提出し、従業員への内容周知も求められます。懲戒解雇を行うには、懲戒処分の体制を整える必要があることを押さえておきましょう。体制が不十分であれば、懲戒解雇が無効にされる可能性もあります。
無断欠勤時の解雇手順
無断欠勤で解雇を行う際は、以下の手順を踏みましょう。
本人と話し合う
まずは、無断欠勤を行った従業員と話し合いましょう。欠勤理由だけではなく、安否確認の観点からも話すことが重要です。たとえば、突然の病気や事故にあってしまったケースも想定しておく必要があります。また、従業員に連絡を行った場合には、連絡が取れたか取れていないかにかかわらず、記録を残しておきましょう。解雇を行うとなった場合に、連絡を行った証拠を示す必要があるためです。
状況に応じて処分を検討
従業員と連絡が取れたら、処分を下すか検討しましょう。社内規定に従い、判断を行うことが重要です。一般的には、いきなり解雇を行うのではなく、指導や厳重注意、反省文を提出させます。また、従業員に対して、無断欠勤の理由を確認し、指導や注意を行ったことが、解雇の合理的理由の1つになります。
出社命令を出す
従業員に連絡は着くものの出勤が認められない場合、連絡がつかずに無断欠勤が続く場合には、出社命令を出します。就業規則で無断欠勤に関して定められている場合には、「無断欠勤が続くと就業規則に従って退職になる可能性もある」と明示しましょう。
解雇予告を行う
従業員が出社命令に従わない場合、解雇予告を行います。場合によっては、休職や退職の選択肢も視野に入れましょう。解雇は処分のなかでも最も重いため、実行には慎重に検討する必要があります。
無断欠勤の社員を解雇できる場合
無断欠勤の社員を解雇できるケースとして、次の2通りがあります。個別のケースによって異なりはしますが、次の2つのケースは裁判所の判例事例にもあるため、解雇できる可能性が高いと判断できます。
無断欠勤が2週間以上継続している
過去の判例では、正当な理由のない無断欠勤が2週間以上続いている場合、解雇が認められたケースがあります。また、就業規則で無断欠勤を行った場合には懲戒解雇を行うと規定されていた場合、解雇が認められるケースもあります。
何度も指導を行ったが、改善されない
労働契約法第16条によると、社会通念上相当を満たさない場合、解雇が認められています。社会通念上相当とは、「社会常識に従った際に妥当」の意味を持ちます。従って、無断欠勤を繰り返して改善の見込みがない、1ヶ月間連絡が一切取れないなどの場合は、社会通念上相当を満たさないとして解雇が認められる可能性があります。この場合、就業規則に無断欠勤による解雇が規定されていない企業でも、解雇の妥当性が認められる傾向にあります。
まとめ
無断欠勤を行った従業員に対しては、慎重な対応が必要です。単なる寝坊などではなく、事故や病気、精神的な不調などの可能性も考えられるためです。まずは、従業員とコミュニケーションをとることを優先して動きましょう。また、無断欠勤の場合でも、簡単に解雇できるわけではありません。行方不明の場合や、何度も指導を行ったが改善されない場合など条件があります。不当解雇と異議を唱えられ、トラブルを引き起こさないためにも、適切な対応を行いましょう。