「エンゲージメント」という重要な指標を可視化し、組織改善の羅針盤とするための強力なツールが「エンゲージメントサーベイ」です。

しかし、単にアンケートを実施するだけでは、宝の持ち腐れどころか、かえって従業員の不信感を招くことにもなりかねません。

この記事では、エンゲージメントサーベイで成果を出すための「質問設計・運用のポイント」、そして「分析・活用方法」まで解説します。

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Z世代にとって転職は当たり前の時代に

レバレジーズ株式会社が運営するHR系SaaSプロダクト「NALYSYS」が実施した調査によると、Z世代の約60.5%が転職にポジティブな印象を持っており、X・Y世代の45.9%を大きく上回ります。これは、Z世代が転職をキャリアの選択肢の一つとして、より積極的に捉えていることを示しています。

Q. あなたは転職について、どのようにお考えですか。最も近しいものを1つだけお選びください。

Z世代が転職を決断する主な理由は「この会社では理想のキャリアを描けないと感じたから」で、44.0%と最も高い割合を占めています。この数値はX・Y世代よりも高く、Z世代が将来の展望や理想のキャリアパスを非常に重視していることがわかります。

Q. あなたが転職を決断した理由は何ですか。

Z世代にとって、一つの会社に留まることだけがキャリアの成功ではなく、理想を実現するための手段として転職が当たり前の選択肢となっている時代が訪れています。

Z世代はキャリアを自分自身で築き上げる意識が強く、理想とする働き方ができないと感じた際の転職にためらいません。

だからこそ、企業は従業員のエンゲージメントを定期的に把握し、職場環境やキャリアパスに対するニーズを可視化することが不可欠です。

参考:

レバレジーズ株式会社「データで読むZ世代の転職志向―世代・役職比較から見えたギャップとは」

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エンゲージメントサーベイの重要な役割とは

企業がエンゲージメントサーベイに取り組むべき具体的な役割を深く掘り下げていきましょう。

社員と組織のつながり・仕事への熱意を可視化する調査

エンゲージメントサーベイは、単なる「従業員満足度調査」とは違います。満足度調査が、給与や福利厚生、労働環境といった「待遇」に対する満足度を測るのに対し、エンゲージメントサーベイは、社員と組織の精神的なつながりや、仕事に対するポジティブで充実した心理状態を測定することに主眼を置きます。

いわば、組織の「健康診断」のようなものです。定期的に体温や血圧を測ることで健康状態を把握するように、サーベイを通じて組織のエンゲージメントレベルを定点観測し、目に見えない課題の兆候を早期に発見します。

これにより、企業は勘や経験則に頼るのではなく、データに基づいた客観的な視点で組織の状態を把握し、的確な打ち手を講じることが可能になるのです。

組織課題の把握から定着率向上まで

エンゲージメントサーベイを実施する目的は、大きく以下の3つに集約されます。

組織課題の客観的な把握

多くの組織では、「若手のモチベーションが低い気がする」「部署間の連携がうまくいっていないようだ」といった、漠然とした問題意識が存在します。エンゲージメントサーベイは、こうした感覚的な課題を具体的なデータとして可視化します。

例えば、「経営陣への信頼」に関するスコアが全体的に低いことが分かれば、経営メッセージの発信方法に問題がある可能性が示唆されます。

また、特定の部署だけ「上司からの支援」のスコアが突出して低い場合、その部署のマネジメントに課題があることが明確になります。このように、これまで個人の主観で語られがちだった組織の問題を、全社共通の客観的な事実として認識することが、全ての改善活動の第一歩となります。

データに基づいた改善施策の立案

課題が明確になれば、次はその解決策を考えるフェーズです。サーベイの結果は、施策の優先順位付けに大いに役立ちます。

例えば、分析の結果、「キャリアの展望」と総合的なエンゲージメントスコアとの間に強い相関関係が見られたとします。

この場合、福利厚生の拡充よりも、キャリアパスの明確化や研修制度の充実にリソースを投下する方が、エンゲージメント向上に対してより高い効果が期待できると判断できます。データという客観的な根拠があるため、施策に対する関係者の合意形成もスムーズに進み、より効果的な人事戦略を立案・実行することが可能になります。

従業員のモチベーション向上と定着率の改善

エンゲージメントサーベイを実施し、その結果を真摯に受け止めて改善に取り組む姿勢を会社が示すことは、従業員に対して「私たちはあなたの声を大切にしています」という強力なメッセージになります。

自分の意見が組織運営に反映されるという実感は、従業員の当事者意識を高め、モチベーションを大きく向上させます。

エンゲージメントの高い社員は、自らの仕事に誇りを持ち、自律的に業務改善に取り組み、周囲にも良い影響を与えます。その結果、個人のパフォーマンスだけでなく、チームや組織全体の生産性も向上します。

さらに、エンゲージメントと離職率には明確な負の相関関係があることが知られています。エンゲージメントの高い社員は、現在の職場に留まりたいと考える傾向が強く、結果として人材の定着率向上(リテンション)に直結します。

優秀な人材の流出を防ぐことは、採用コストや再教育コストの削減だけでなく、組織の競争力維持・向上において極めて重要な要素です。

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エンゲージメントサーベイで設定すべき質問項目とは

エンゲージメントサーベイの成否は、その「質問設計」にかかっていると言っても過言ではありません。的確な質問は組織の真の姿を映し出し、的外れな質問は無意味なデータしか生み出しません。

ここでは、効果的なサーベイを構成する基本的なカテゴリーと、具体的な質問例について解説します。

基本構成:「5~7カテゴリー+自由回答」で網羅する

一般的に、エンゲージメントサーベイは網羅性と回答しやすさのバランスから、5〜7程度のカテゴリーに分類された質問群と、自由回答欄で構成されます。これにより、組織の状態を多角的に捉えつつ、定量データだけでは拾いきれない従業員の生の声も収集することができます。

以下に、代表的なカテゴリーとその質問例を具体的に見ていきましょう。

経営・組織との関わり

このカテゴリーでは、従業員が会社の向かうべき方向性を理解し、経営陣を信頼しているか、といった組織と個人の一体感を測ります。エンゲージメントの土台となる重要な要素です。

具体例:

  • 「会社のビジョンやミッションに共感していますか?」
  • 「経営陣は、会社の将来について明確で説得力のある方針を示していますか?」
  • 「経営陣は、従業員のことを気にかけていると感じますか?」
  • 「会社で行われる意思決定は、適切かつ迅速だと思いますか?」

人事評価・キャリア形成

公平な評価や成長機会は、従業員のモチベーションに直結します。自身のキャリアパスをこの会社で描けるかどうかが、長期的なエンゲージメントを左右します。

具体例:

  • 「人事評価の基準は明確で、公平に運用されていると感じますか?」
  • 「評価結果に対する上司からのフィードバックは、自身の成長につながるものですか?」
  • 「この会社には、自分の能力や実績に応じて昇進・昇格する機会があると思いますか?」
  • 「この会社で、自身のキャリア目標を実現できると感じますか?」

労働条件・待遇

給与や福利厚生といった基本的な労働条件は、エンゲージメントの「衛生要因」とも言われます。これが満たされていないと他の要素が良くても不満につながりやすい一方、これだけが良くても高いエンゲージメントには結びつきにくいという特徴があります。

具体例:

  • 「自身の仕事内容や責任に見合った給与・賞与を得られていると思いますか?」
  • 「福利厚生制度(休暇制度、各種手当など)に満足していますか?」
  • 「心身の健康を保ちながら、安全に働ける職場環境だと思いますか?」
  • 「業務量や労働時間は適切であり、仕事と私生活の両立ができていますか?」

仕事への熱意・誇り

従業員が自らの仕事そのものにやりがいや誇りを感じているかを問う、エンゲージメントの中核的な項目です。eNPS(EmployeeNetPromoterScore)という指標もこのカテゴリーに含まれます。

具体例:

  • 「現在の仕事にやりがいや達成感を感じていますか?」
  • 「自分の仕事は、会社の成功に貢献していると実感できますか?」
  • 「朝、仕事に行くのが楽しみだと感じますか?」
  • (eNPS的視点)「あなたの親しい友人や家族に、この会社を働く場所としてどの程度勧めたいと思いますか?(0〜10点で評価)」

人間関係・コミュニケーション

職場の人間関係、特に直属の上司との関係性は、エンゲージメントに最も大きな影響を与える要素の一つです。心理的安全性が保たれ、円滑なコミュニケーションが取れる環境かどうかが問われます。

具体例:

  • 「上司は、私の意見や提案に真剣に耳を傾けてくれますか?」
  • 「上司は、私の成長を支援し、適切な指導をしてくれますか?」
  • 「チームのメンバーは互いに信頼し、助け合いながら仕事を進めていますか?」
  • 「部署間やチーム間の連携はスムーズに行われていますか?」

6.設備・サポート環境

(任意項目ですが、特にIT企業やリモートワーク主体の企業では重要度が高い)

業務を効率的に進めるために必要なツールや情報、物理的な環境が整っているかを確認します。生産性に直結する項目です。

  • 具体例:
    • 「業務を遂行するために必要なツール(PC、ソフトウェア、情報システムなど)は十分に提供されていますか?」
    • 「業務に必要な情報へは、いつでも簡単にアクセスできますか?」
    • 「成果を出す上で、現在のオフィス環境(または在宅勤務環境)は適切だと思いますか?」

7.能力開発・成長機会

(任意項目ですが、若手社員のエンゲージメントに大きく影響)

会社が従業員の成長を支援し、挑戦する機会を提供しているかを測ります。成長実感は、仕事への熱意につながります。

  • 具体例:
    • 「この会社での仕事を通じて、自分自身のスキルや能力が向上していると感じますか?」
    • 「会社は、従業員のスキルアップを支援する研修や学習の機会を提供していますか?」
    • 「新しいことや困難な課題に挑戦する機会が与えられていると感じますか?」

自由回答

定量的な質問だけでは捉えきれない、従業員の具体的な意見や感情を吸い上げるための重要な項目です。ポジティブな点とネガティブな点の両方を聞くことで、バランスの取れた洞察が得られます。

  • 具体例:
    • 「この会社の最も良いと思う点(強み)は何ですか?具体的に教えてください。」
    • 「この会社がもっと良くなるために、改善すべき点(弱み)は何だと思いますか?具体的な提案があれば教えてください。」
    • 「その他、会社に対して伝えたいことがあれば、自由にお書きください。」

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エンゲージメントサーベイの「NG質問」とは

世論調査の世界的権威である米国「Pew Research Center」が公開する情報をもとに、「NG質問」とその改善ポイントを、具体的な事例と共に解説します。

会社の「期待」が透ける誘導質問

質問に特定の意図や前提が含まれていると、従業員は「こう答えてほしいんだろうな」と忖度してしまい、本音を隠します。これでは、会社の現状を正しく把握することはできません。

NG設問例

「会社が推奨している新しいコミュニケーションツールは、チームの連携を強化したと思いますか?」

この質問では、会社がツールをポジティブに評価していることが見え見えで、「いいえ」とは答えにくいですよね。これではツールの本当の課題は見えてきません。

質問は常に中立的に、「新しいコミュニケーションツールは、チームの連携にどのような影響がありましたか?」のように、ポジティブ・ネガティブどちらの回答も可能な聞き方を心がけましょう。

論点が曖昧なダブルバーレル質問

一つの質問で、二つ以上のことを同時に尋ねてしまうケースがよくあります。これは「ダブルバーレル質問」と呼ばれ、データの価値をゼロにしてしまうリスクのある罠です。

たとえば、以下のような質問が該当します。

NG設問例

「あなたは現在の給与と福利厚生に満足していますか?」

これでは、「給与には不満だけど、福利厚生は充実している」という従業員がどう答えればいいか分かりません。結果として、漠然とした「どちらとも言えない」という回答ばかりが集まり、具体的なアクションに繋がりません。

「給与の満足度」と「福利厚生の満足度」のように、論点は一つずつ、別の質問として設計するのが鉄則です。面倒でも、この一手間が分析の精度を格段に高めます。

無意識に回答を操作する選択肢の罠

選択式の質問は回答しやすく便利ですが、その「選択肢」が回答を歪めている可能性があります。

従業員が本当に感じていることが選択肢にないと、本音とは違う、最も近い選択肢を仕方なく選ぶことになります。

NG設問例 :

「現在の業務で最も課題だと感じる点は何ですか?」
A:給与が低い
B:人間関係
C:会社の将来性

もし従業員が「業務量が多すぎること」や「自己成長を感じられないこと」を一番の課題だと感じていた場合、この選択肢では本音を回答できません。

重要な質問では、「その他」の自由回答欄を設けたり、そもそも自由記述形式にしたりする工夫が、運営側が想定もしていなかった本音(=真のエンゲージメント向上要因)を見つける上で非常に有効です。

安易な同意を求める質問形式

文章に「そう思う・そう思わない」で答える形式は、一見すると分かりやすいですが、人は無意識に肯定的な回答を選びやすい(黙従バイアス)という罠が潜んでいます。

これでは、全員が高いスコアをつけ、潜在的な課題を見過ごしてしまうかもしれません。

NG設問例

「私は、会社が提供する研修プログラムに満足している」
1.全くそう思わない〜5.非常にそう思う

この聞き方では、多くの人が「3.どちらとも言えない」や「4.そう思う」を選びがちで、研修内容の何が良くて、何が足りないのかが見えてきません。

より深くインサイトを探るには、二つの異なる意見を提示し、どちらに近いかを選んでもらう形式が有効です。

例えば、「研修プログラムについて、A:実践的で役立ったB:内容が自分の業務と合っていなかったのどちらの意見に近いですか?」と聞くことで、より具体的な評価が得られます。

誰もが「良い社員」でいたい社会的望ましさバイアス

人は誰でも、社会的に「良い」「模範的」だと思われたいもの。特にコンプライアンスや企業理念に関する質問では、この「社会的望ましさバイアス」が働き、建前の回答が集まりがちです。

NG設問例

「あなたは会社の行動規範を常に遵守していますか?」

この質問に「いいえ」と正直に答える人は、まずいないでしょう。しかし、規範が形骸化している現場では、正直な実態を把握する必要があります。

正直に答えやすくするための「聞き方の工夫」が鍵です。「違反を許容する」ような前置きをすることで、心理的なハードルを下げることができます。「多忙な業務の中では、時にルール通りに進めるのが難しい場面があることも理解しています。過去1年で…」といった前置きが有効です。

前の質問に引っ張られる質問順序のマジック

質問は、アンケート全体の文脈や流れの中で回答されます。そのため、前の質問が後の回答に影響を与えてしまう「オーダー効果」を意識することが重要です。

NG設問例

「現在の給与額に満足していますか?」
「長時間労働は常態化していますか?」
「職場での人間関係にストレスを感じますか?」
「総合的に見て、あなたは現在の仕事に満足していますか?」

このように、給与や労働時間といったネガティブになりやすい質問が続いた直後に「総合的な満足度」を尋ねると、そのスコアは単独で聞くよりも低くなる傾向があります。ネガティブな感情が引きずられてしまうためです。

サーベイ全体のストーリーを設計しましょう。冒頭では回答しやすいポジティブな質問から始め、デリケートな質問は中盤以降に配置するなど、回答者の感情の流れを意識することが、より正確なデータを引き出すコツです。

参考:

PewResearchCenter.(n.d.).Writingsurveyquestions.PewResearchCenter.RetrievedAugust19,2025,fromhttps://www.pewresearch.org/our-methods/u-s-surveys/writing-survey-questions/

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エンゲージメントサーベイの分析方法とは

以下では、ライプツィヒ大学 ヴィルヘルム・ヴント心理学研究所レナ=アリエスカ・ヒュブナー氏らの論文をもとに、エンゲージメントサーベイ分析方法について紹介します。

キー・ドライバー分析:「どのスイッチを押せば一番組織が変わるか?」を見つける分析

これは、たくさんのサーベイ項目の中から「従業員エンゲージメント(総合満足度や働きがい)に最も強く影響している項目」をデータに基づいて特定する分析です。

例えば、あるIT企業のサーベイで、エンゲージメントスコアが停滞しているとします。個別の項目を見ると、「給与への不満」「キャリアパスの不透明さ」「上司とのコミュニケーション不足」「仕事量の多さ」など、複数の課題が見つかりました。

すべてに一度に取り組むのは現実的ではありません。そこでキー・ドライバー分析を行うと、次のような結果が出ることがあります。

【分析結果】

この会社では「キャリアパスの不透明さ」が、エンゲージメントスコアの低下に最も強く影響していることが判明した。

この結果から、会社は「まずは全社的にキャリアパスの明確化と、それに基づいた1on1の仕組みを導入しよう」という、最もインパクトの大きい施策にリソースを集中させることができます。給与や仕事量の問題も重要ですが、まずは一番の「スイッチ」であるキャリアパスから改善に着手するのが最も効果的だと判断できるわけです。

パーセンテージの比較分析:「自分たちの部署の現在地」を知る分析

これは、サーベイ結果の数値を「何かと比べる」ことで、そのスコアが良いのか悪いのか、組織内での立ち位置を明確にする分析です。

例えば、あなたが営業部のマネージャーだとします。あなたの部署のサーベイ結果で、「仕事の裁量権がある」という項目の肯定的な回答率が70%でした。この数字だけを見ても、これが良い状態なのかどうかは分かりません。

しかし、比較対象があれば、その意味が具体的になります。

  • 過去の自部署と比較する→「去年の同じ項目は80%だった。今年は10%も下がっている。マイクロマネジメント気味になっていないか、チームで話し合おう」
  • 会社全体の平均と比較する→「会社全体の平均は60%だ。うちは平均より高いので、強みとして維持・強化していこう」
  • 他の部署(例:開発部)と比較する→「開発部は85%と非常に高い。彼らがどんな工夫をしているのか、マネージャー同士で情報交換してみよう」

このように、数値を比較することで初めて「自分たちの強みや弱み」「課題の深刻度」が明らかになります。現場のマネージャーでも簡単にでき、自分たちのチームの「現在地」を客観的に把握するのに最適な方法です。

分析結果の応用:離職防止から生産性改善まで

これらの分析から得られた洞察は、様々な人事施策に応用できます。

  • 離職防止・定着率向上:エンゲージメントスコアが著しく低い部署や、離職予備軍となりやすい勤続年数の層を特定し、彼らに対して個別の面談や集中的なケアを実施することで、離職の連鎖を未然に防ぎます。
  • 生産性改善:業務の障害となっている要因(例:ツールの不足、部署間の連携不備)を自由回答などから特定し、解消することで、従業員がより本業に集中できる環境を整え、組織全体の生産性を向上させます。
  • マネジメント品質の向上:スコアの低い管理職に対して、1on1ミーティングのスキル研修やコーチングを提供することで、チーム全体のエンゲージメント向上を図ります。

参考:

Huebner, L.-A., & Zacher, H. (2021). Following up on employee surveys: A conceptual framework and systematic review. Frontiers in Psychology, 12, Article 801073.

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まとめ

この記事では、エンゲージメントサーベイを成功させるための要点を、目的から設計、分析、活用まで一気通貫で解説してきました。

エンゲージメントサーベイは、単にアンケートを取って分析する「調査」ではなく、従業員との対話を通じて組織を継続的に改善していくための「経営ツール」です。

サーベイは「質問設計」だけでなく、その後の「活用」が肝です。従業員の声に真摯に耳を傾け、たとえ小さなことからでも改善のアクションを起こし、そのプロセスを共有する。この誠実なサイクルこそが、従業員との信頼関係を築き、エンゲージメントを高める王道です。

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多くの企業がエンゲージメントサーベイで組織を「可視化」しても、具体的な改善アクションに繋がらない課題を抱えています。NALYSYSは、この「可視化の次」を示すAI搭載マネジメントサポートツールです。

NALYSYSの3つの特徴でマネジメントを変革します。

1. 「働く動機」を深掘り。本質的なモチベーションを可視化

福利厚生や労働環境への「満足度」だけでなく、従業員が「なぜこの仕事を続けるのか」という内発的な動機に焦点を当てて深く分析します。

組織の未来を創る、意欲ある従業員の状態を明確にすることで、一人ひとりに寄り添ったフォローアップを可能にします。

2. AIが「次の一手」を具体的に提示。マネジメントの属人化を解消

サーベイ結果や適性検査、過去の面談記録などをAIが複合的に分析し、個々の従業員に最適なアクションプラン(1on1での具体的な質問内容や声かけの方法など)を提案します。

これにより、「何をすればいいか分からない」という管理職の悩みを解消し、経験や勘に頼らないデータに基づいたマネジメントを実現します。

3. 人とAIの協働で成果を最大化。手厚いサポート体制

AIによる具体的な打ち手の提示に加え、カスタマーサクセス(CS)担当者による手厚いサポートを標準提供。

月次定例ミーティングを通じて、AIの提案を実践する上での悩みや課題に寄り添い、効果的なマネジメントサイクルが回るよう支援します。最新テクノロジーと人のサポートで、組織全体のマネジメント品質を底上げします。

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