上司として、部下との関係に悩むのはよくあることです。特に、「苦手だな」と感じる部下への接し方に迷うことは、多くの方が経験しているのではないでしょうか。苦手意識を放置すると、コミュニケーションが円滑に進まず、業務効率やチーム全体の士気に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、苦手な部下との関係を改善するための具体的な方法を解説します。

「苦手な部下」に悩むのは自然なこと

職場では、性格や価値観が異なる人と関わることが避けられず、複雑な人間関係が生まれるのは当然のことです。「この部下とは少し合わないかも」と感じることは、多くの上司が一度は経験するものです。

性格や価値観、仕事の進め方が異なると、違和感を覚えるのは自然なことです。こうした感情は誰にでも起こりうるものであり、自分を責めたり、「悪いこと」と考えたりする必要はありません。

ただ、職場では多様な人々が集まる中で、チーム全体として成果を出すことが求められます。そのため、苦手意識を抱えたまま感情に振り回されるのではなく、少しずつ向き合っていくことが大切です。

例えば、1on1ミーティングで業務への考えを聞いたり、これまでの成果を振り返ることで、その人の強みや役割を再評価できるかもしれません。

人間関係に悩むことは、相手ときちんと向き合おうとしているからこそ起きること。自分のペースで少しずつコミュニケーションを工夫してみることで、きっと良い変化を感じられるようになるでしょう。

苦手な部下に感じる上司のよくある悩み

株式会社ライズ・スクウェアが行ったアンケート調査によると、上司が部下に対してストレスを感じる理由として最も多かったのが「態度やマナーの悪さ」でした。

たとえば、挨拶をしない、会議中にスマホを触るといった行動が挙げられます。こうした行為は職場の基本的なルールや礼儀を欠いていると見られ、結果として職場全体の雰囲気を悪化させる原因になることがあります。

また、部下の「やる気が感じられない」「責任感が乏しい」といった姿勢も、多くの上司にとって頭を悩ませるポイントです。仕事に対して積極性が見られない、指示されたことを最低限こなすだけで主体性が感じられないと、チーム全体の士気やパフォーマンスに影響を与える可能性があります。

さらに、指示や指摘に対して素直に応じない態度も、上司のストレスの大きな要因のひとつです。「自分のやり方に固執してアドバイスを受け入れない」「ミスを指摘されても反発する」といった行動が続けば、上司と部下の信頼関係を損なう結果にもつながりかねません。

こうした悩みは、多くの上司が一度は経験するものです。これらの課題をどう解決し、より良い関係を築いていくかが重要なポイントとなります。

参考:

株式会社ライズ・スクウェア「【部下や後輩にストレスを感じる理由ランキング】男女500人アンケート調査」

苦手な部下を持った時の対処法

「苦手だな」と感じる相手がいる場合も、そうした状況を放置せずに向き合うことで、関係性を改善し、チームのパフォーマンスを高めるきっかけが生まれることがあります。

以下では、ノースウェスタン大学の記事を参考に、その具体的な方法をご紹介します。

意見を交わす場を意識的に作る

苦手な部下に対しては、つい衝突を避けたいという気持ちになるものです。しかし、あえて意見を交換する場をつくることで、思いがけない解決策が見つかることがあります。

お互いの考えを率直に話し合える場を設ければ、誤解やわだかまりが解消され、新しい協力の形が見えてくるかもしれません。

たとえば、定期的な1on1の時間を設けたり、小さなテーマでも良いので具体的な課題について意見を交わしてみることが効果的です。「話すこと自体が難しい」と感じる場合は、事前にテーマを共有し、準備を促すとスムーズに進むでしょう。

部下の役割や仕事を再検討する

「この仕事は向いていないのでは」と感じる部下がいる場合は、その人の役割や仕事内容を見直してみましょう。

誰にでも得意・不得意があります。上司の視点で、その部下が力を発揮しやすい環境を整えることも重要なサポートの一環です。

たとえば、成果が出ていない業務を別のメンバーに引き継ぎ、本人には新しいタスクや役割を与えてみることで、意外な一面を発見することもあります。柔軟な役割の再割り当ては、チーム全体にとってもプラスの効果をもたらす可能性があります。

コミュニケーションの取り方を工夫する

部下一人ひとりに同じ接し方をするのではなく、相手の性格や価値観に合わせてコミュニケーション方法を調整することが、関係改善の大きな鍵になります。

たとえば、口頭での指示が伝わりづらい部下には、簡潔なメモや資料を添えてみる。会議の場で意見を言うのが苦手な部下には、個別の時間を設けて意見を聞くようにするといった工夫が有効です。

「伝わらない」「響かない」と感じたときこそ、自分の伝え方を見直す機会だと捉えることで、少しずつ関係が変わっていくはずです。

参考:

Northwestern University“What to do with your problem team member”

苦手な部下に接する際に意識したいこと

苦手な部下との接し方に悩んだときは、まず自分の対応や考え方を振り返ることが重要です。感情的な反応はかえって関係を悪化させる可能性がありますが、冷静で建設的な姿勢を持つだけで、状況が少しずつ改善していくことがあります。

以下では、ウォルデン大学の記事を参考に、苦手な部下に接するときに意識したいポイントをご紹介します。

多様な性格を受け入れる

職場には、さまざまな性格や価値観を持つ人が集まります。その中には、自分とは合わないと感じる部下がいるのも当然のことです。ただし、全員が同じ考え方や行動をするわけではないと理解することが、関係を前向きに変える第一歩になります。

相手の性格や働き方を否定せず、職場に多様な人がいることを前提として捉えると、少し気持ちが軽くなることもあるでしょう。

丁寧に対応する姿勢を保つ

部下が無礼な態度を取ったとき、つい感情的に反応してしまいそうになることもあります。しかし、上司としては常に丁寧で落ち着いた対応を心がけることが大切です。相手の態度に影響されず、礼儀正しく接することで、関係が改善するきっかけが生まれることがあります。

たとえば、挨拶をしてくれない部下にも、あなたから積極的に声をかけ続けることで、相手の態度が少しずつ変わるかもしれません。

ほどよく距離を置くことを検討する

どうしても関係が深まらない場合には、適度な距離感を保つことも一つの方法です。相手との関わりを無理に増やそうとせず、接触の頻度を調整することでストレスを減らせる場合があります。

たとえば、席替えや業務の分担を工夫することで、自然と物理的な距離を取ることが可能です。このように直接の接触を減らすことで、関係が落ち着く場合もあるでしょう。

問題には冷静に向き合う

避けて通れない問題がある場合は、正面から話し合いの場を設けることが必要です。相手との誤解や問題の原因を特定し、一緒に解決策を考えることで、より良い関係を築くことができます。

その際、感情的にならず、事実に基づいて冷静に伝えることを意識しましょう。たとえば、「○○の件について少し話したいのですが、どう考えていますか?」といった形で、相手の意見に耳を傾けながら進めると良いでしょう。

参考:

Walden University “5 Ways to Handle Working With Someone You Can’t Stand”

苦手な部下の行動別の具体的対処法

部下の行動に問題がある場合、適切な対応を取ることで関係を改善し、職場の雰囲気を良くすることができます。

ここでは、特に勤務態度や信頼性の問題がある場合の対処法について、ノースウェスタン大学の記事を参考に具体的に解説します。

勤務態度に問題がある場合

勤務態度に問題が見られる場合は、感情的に非難するのではなく、具体的で建設的なフィードバックを心がけることが大切です。人格や能力を否定するのではなく、行動そのものとその影響に焦点を当てましょう。

たとえば、「会議の時間を守らないのはだらしない」という表現ではなく、「会議の開始時間を守ることで、チーム全体の効率が良くなります」と伝えると、相手も受け入れやすくなります。相手を攻撃するのではなく、行動の改善を促す姿勢が信頼関係の構築につながります。

よく嘘や失敗、言い訳をする場合

嘘や言い訳が目立つ部下には、感情的な対応を避け、状況を慎重に見極めることが重要です。この問題を効果的に対処するために、以下のポイントを押さえて対応しましょう。

嘘や言い訳の背景を探る

嘘や失敗が発覚した場合、まずは行動の背景や状況を確認し、それが意図的なものか、それとも単なる誤解や過失なのかを慎重に見極めることが重要です。状況を正確に把握することで、適切な対応が可能になります。

職場全体への影響を評価する

部下の嘘や言い訳がチーム全体の信頼を損なっていないかを慎重に評価し、必要に応じて行動改善を求めることが大切です。

初めてのミスであれば、改善のチャンスを与えることができますが、同じ行動が何度も繰り返される場合は、はっきりと問題を指摘し、改めるよう求める必要があります。

問題を放置すると、他のメンバーの信頼やチーム全体の士気に悪影響を及ぼす可能性があるため、タイミングを見てしっかりと対応することが大切です。

職場環境や文化を見直す

嘘や言い訳が頻発する背景には、職場の環境や文化が影響していることもあります。たとえば、過剰なプレッシャーや失敗を許さない雰囲気が部下を追い詰め、嘘に頼らざるを得ない状況を生む場合があります。

このような場合、個人の行動を改善するだけでは不十分で、職場全体の環境を見直すことが必要になるかもしれません。

参考:

Northwestern University“Right Way to Deal With an Employee Accused of Lying”

仕事と割り切る視点も大切

苦手な部下がいると、どうしても「好き」「嫌い」といった感情が湧いてしまうものです。しかし、職場で最も大切なのは、チームとして成果を上げること。上司としては、感情に流されず、冷静に部下と向き合う意識が求められます。

「この人とは合わない」と感じるのは自然なことですが、その感情を基準に判断してしまうと、チーム全体に悪影響を与えることもあります。

そうしたときは、「この部下の強みをどう活かすか」という視点に切り替えてみてください。苦手意識があっても、公平に接し、役割を見直すだけで状況が変わることもあります。

苦手な部下にも感情的にならず、チームへの貢献度や成果に目を向けることで、冷静に対処できるようになります。感情に左右されないマネジメントを意識することが、上司としての信頼を高め、チームの成果向上にもつながるはずです。

まとめ

苦手な部下との関係に悩むのは、それだけ真剣に部下と向き合っている証拠でもあります。すべてが一朝一夕に変わるわけではありませんが、小さな工夫を積み重ねることで、少しずつ状況が改善していくこともあります。まずはできる範囲で取り組んでみてはいかがでしょうか。