若手社員が「突然辞めてしまう」「辞める際に本音を話してくれない」そのような状況に悩む方も少なくありません。
レバレジーズ株式会社が実施した最新調査『Z世代の離職についての調査レポート(2025年版)』では、22〜29歳のZ世代と、30代・40代のX・Y世代を比較しながら、離職の背景にある「価値観の違い」や「企業側との認識ギャップ」が浮き彫りになりました。
本記事では、調査のデータをもとに、Z世代が重視する働き方や転職に対する考え方、人事・管理職とのズレを整理します。
エグゼクティブサマリ
Z世代とX~Y世代の働き方の特徴
- Z世代のうち5割程度が現状の働き方に対して「満足している」と回答したが、X~Y世代の回答は4割程度。
- 満足している理由としては、「残業時間の短さ」や「仕事にやりがいがあること」、「上司との関係性」がX~Y世代と比べても特に多く挙げられている。
- 一方で満足していない理由としては、「年収の低さ」が顕著に高く、この点はX~Y世代と同様の回答傾向。
- 「年収の高さ」と「ワークライフバランス」は全世代で特に重視されている様子が窺えるが、Z世代はX~Y世代と比べると、とりわけ「福利厚生の充実度」や「残業時間の短さ」を重視している点が特徴的。
- 一方で、「勤め先の安定性」に関してはX~Y世代の方が重視ポイントとして多く挙げている。
Z世代とX~Y世代の転職に対する姿勢
- Z世代は6割以上が転職に対してポジティブな印象を持っていると回答しており、X~Y世代と比べるとZ世代の方が転職を肯定的に捉えている。
- 転職意向がある人の割合もZ世代はX~Y世代と比べるとやや高めで、「転職を考えたことがある」という人が4割を占めている。
- より詳しく転職に対するイメージをみると、Z世代は「給与アップ」や「新しい可能性が開けると思う」、「やりたいことを見つける」といった前向きな項目がX~Y世代と比べても高い。
- 一方で、転職理由として「ワークライフバランス」や「ノルマやプレッシャーが強すぎる」がX~Y世代と比べてもとりわけ多く挙げられている点はZ世代の特徴だと言える。
- また、Z世代が転職を思いとどまった理由として「心情的な寄り添い」の他に「異動の提案」を多く挙げている点は今回注視したいポイント。
事業責任者よりコメント
レバレジーズ株式会社HRテック事業部
事業責任者 大滝圭修
近年、多くの企業が「期待していた若手社員が辞めてしまった」「これまでのマネジメント手法が通用しなくなった」といった問題を抱えるようになりました。若手世代の価値観は急速に変化しており、その実態を捉えきれていないことが、こうした問題の一因と考えられます。
働き方改革やリモートワークの普及でワークライフバランスは向上し、「ホワイト」な環境が整備されつつあるにも関わらず、なぜ若手の離職やエンゲージメント低下は続くのでしょうか。
本調査では、この問いに答えるため、若手社員の仕事への価値観や退職理由について、以下の2つの「ギャップ」に焦点を当てました。
- 世代間ギャップ: Z世代とX世代・Y世代との価値観の違い
- 認識ギャップ: 人事・管理職が把握している若手の姿と、その実態とのズレ
本レポートでは、定量調査データに基づきこれらのギャップを明らかにするとともに、これからの時代に求められる組織制度やマネジメントの具体的なヒントを提供することを目指します。
調査の結果:世代間比較
現在の働き方の満足度
Q. あなたの働き方の満足度として、最も近しいものを1つだけお選びください。
Z世代の働き方満足度(51.5%)はX・Y世代(43.0%)を上回り、特に「やや満足している」が多い。一方、X・Y世代は「あまり満足していない」層が多く、世代間で働き方への納得感に差がある。価値観の違いに応じた対応が重要といえる。
現在の働き方の満足理由
Q. あなたが現在のお勤め先で働く上で、満足している点は何ですか。1~5位合算
Z世代は「残業時間が短い」「ワークライフバランス」への満足度が高く、柔軟な働き方を重視。一方、X・Y世代は「安定性」を重視。Z世代の満足度向上には、安定性よりも柔軟な働き方の浸透に向けた動きが有効と考えられる。
現在の働き方の不満理由
Q. あなたが現在のお勤め先で働く上で、満足していない点は何ですか。1~5位合算
Z世代・X・Y世代ともに「年収が低い」ことへの不満が最多。Z世代は「仕事にやりがいを感じない」「昇進・昇給が遅い」も上位で、成長実感や評価への不満が目立つ。Z世代の不満解消には、やりがい創出やキャリア形成を目的とした、挑戦できる環境の整備が重要といえる。
希望する働き方の重視点
Q. あなたが希望している(していた)働き方として、重視点は何ですか。1~5位合算
Z世代は「年収の高さ」「ワークライフバランス」「福利厚生」「残業時間」など労働環境に加え、「仕事のやりがい」も重視。柔軟な働き方に加え、キャリアの見通しや仕事の意義づけが不可欠といえる。一方、Z世代とX・Y世代の間で大きく差が開いたのは「勤め先の安定性」。
転職に対する姿勢
Q. 転職について、あなたはどのような印象をお持ちですか。最も近しいものを1つだけお選びください。
Z世代の60.5%が転職にポジティブな印象を持っており、X・Y世代(45.9%)を大きく上回る。Z世代は転職を前向きな選択肢と捉える傾向が強いとうかがえる。
転職意向
Q. あなたは転職について、どのようにお考えですか。最も近しいものを1つだけお選びください。
Z世代は42.4%が転職意向ありと回答し、X・Y世代(36.5%)を上回った。Z世代は将来を見据えて転職を選択肢とする傾向が強く、変化や成長を重視していると考えられる。
転職に対するイメージ
Q. あなたは転職に対してどのようにお考えですか。それぞれについて、あてはまるものを1つだけお選びください。
Z世代・X・Y世代ともに「転職は面倒」「不安」といったネガティブな印象が強い一方で、Z世代は「給与アップ」「新しい可能性の発掘」「経験値アップ」「スキルアップ」への期待がX・Y世代より約8ポイント以上高い。Z世代の定着の観点では、キャリア形成や自己成長の支援が鍵となる。
離職理由の伝達
Q. あなたが転職した際、お勤め先に退職理由を伝えましたか。最も近しいものを1つだけお選びください。
退職時にその理由を伝えた割合はZ世代で84.6%、X・Y世代で69.6%となった。一方で、そのうち「本音での理由を伝えていない」と答えた割合はZ世代とX・Y世代いずれも6割にのぼる。Z世代の退職理由はX・Y世代よりも回収しやすいものの、退職者の増加を防ぐためにも安心して本音を語れる退職面談環境の整備が必要といえる。
転職理由
Q. あなたが転職した(しようと思った)理由は何ですか。
Z世代が転職を考える際には、「年収」だけでなく、「ワークライフバランス」や「やりがい」、「上司との関係」など、働き方の質や職場での人間関係を重視する傾向が強い。なかでも、X・Y世代と比べて違いが見られたのが「業務のノルマやプレッシャー」への意識であり、Z世代はこれらを敬遠する傾向が表れている。
転職決断理由
Q. あなたが転職を決断した理由は何ですか。
Z世代が転職を決断した主な理由は「この会社では理想のキャリアを描けないと感じたから」で44.0%と最多。X・Y世代よりも高く、将来への展望を重視する姿勢が強い。Z世代の定着には、キャリアパスの提示や成長実感を得られる仕組みづくりが求められる。
転職を思いとどまった理由
Q. あなたが転職を思いとどまった理由は何ですか。1~5位合算
Z世代が転職を思いとどまった理由の上位は「寄り添う姿勢が見られた」となり、信頼関係や心情面への働きかけの影響が大きいことがわかる。また福利厚生に関する回答割合はX・Y世代と比較してZ世代の割合が約2倍と顕著な差が開いており、Z世代にとって福利厚生も転職を左右する重要な要素になっていることがうかがえる。
転職の際あれば良かった働きかけ
Q. あなたが転職した(検討した)際、お勤め先からあれば良かった(あって良かった)と思う働きかけは何ですか。
Z世代が転職時に「あれば良かった」と感じる働きかけは「給与アップの提案」が最多だが、「寄り添う姿勢」も上位に。特にZ世代はX・Y世代よりも「労働時間」を重視しており、働きやすさを求める傾向が強い。
働くことに対する価値観
Q.以下の働くことに関する考え方について、あなたはどの程度あてはまりますか。
Z世代は「ワークライフバランスの重視」や「福利厚生の重視」でX・Y世代とほぼ同じ。一方でZ世代とX・Y世代の間には、「プライベート」の優先度、「社員の人の良さ」への関心、そして「自分自身の成長」を重視する度合いに他項目よりも開きが見られる。
調査の結果:役職比較
現在の働き方の満足度(人事・管理職とのギャップ)
Q あなたの働き方の満足度として、最も近しいものを1つだけお選びください。(Z世代の一般社員)
Q あなたのお勤め先の社員は、現在の働き方に満足していると思いますか。(人事・管理職)
Z世代一般社員の満足度は51.5%にとどまる一方、人事・管理職は68.0%と認識しており、約17ポイントの差が存在。若手と管理層で満足度ギャップが顕在化している。
現在の働き方の満足理由(一般社員 vs 人事・管理職)
Q. あなたが現在のお勤め先で働く上で、満足している点は何ですか。1~5位合算 (Z世代の一般社員)
Q. あなたのお勤め先の社員が働く上で、満足している点は何だと思いますか。 1~5位合算(下段:人事・管理職)
Z世代が満足している点は「残業時間が短い」「ワークライフバランスが取れている」など生活との両立が中心。一方、人事・管理職は「福利厚生」や「やりがい」「安定性」などを高く評価しており、満足ポイントに大きなズレが見られる。
現在の働き方の不満理由(一般社員 vs 人事・管理職)
Q. あなたが現在のお勤め先で働く上で、満足していない点は何ですか。1~5位合算(Z世代の一般社員)
Q. あなたのお勤め先の社員が働く上で、満足していない点は何だと思いますか。 1~5位合算(人事・管理職)
Z世代が職場に不満を感じている点は「年収の低さ」や「やりがいの欠如」が上位。対して人事・管理職は「年収の低さ」 に加え「適切な評価がされていない」ことを不満に感じると認識。
希望する働き方の重視点(一般社員 vs 人事・管理職)
Q. あなたが希望している(していた)働き方として、重視点は何ですか。1~5位合算(Z世代の一般社員)
Q8 あなたのお勤め先の社員が働くときに重視するポイントは何だと思いますか。 1~5位合算(人事・管理職)
Z世代・X・Y世代ともに重視するのは「年収」や「ワークライフバランス」。一方で「残業時間」への意識には役職間で大きな差が存在している。人事・管理職側の視点では、「やりがい」や「仕事内容の充実」に対するZ世代の重視傾向が強く、より実感ベースの充足を求める姿勢。
離職理由の把握(一般社員 vs 人事・管理職)
Q. あなたが転職した際、お勤め先に退職理由を伝えましたか。(Z世代の一般社員)
Q あなたは離職者の離職理由を把握していますか。(人事・管理職)
Z世代の34.3%が「本音の退職理由を伝えた」と回答する一方、人事・管理職で「本音を把握している」と認識しているのは実態を約10ポイント上回る44.8%。また、「退職理由は伝えた(把握した)ものの本音ではない」ことについての認識には大きなズレはなかった。
離職の際にあれば良かった働きかけ(一般社員 vs 人事・管理職)
Q. あなたが転職した(検討した)際、お勤め先からあれば良かった(あって良かった)と思う働きかけは何ですか。(Z世代の一般社員)
Q あなたのお勤め先(部署)から離職者に対してあれば良かった(あって良かった)と思う働きかけは何ですか。(人事・管理職)
Z世代一般社員が転職時に「あれば良かった」と感じたのは「給与アップの提案」「寄り添う姿勢」など、個別対応や配慮。人事・管理職側も「給与アップの提案」や「昇進・昇格の提案」、「評価制度の見直し」を重視しており、「個別対応か」「組織としての対応か」で差はあるものの根本的な認識に大きな差はない様子。
調査概要
調査目的:Z世代とX・Y世代の離職・転職に対する意識や価値観の違い、さらに一般社員と人事・管理職との間にある認識のズレを明らかにし、定着施策や社内コミュニケーション改善の方向性を探ることを目的とする。
調査対象:マクロミルモニタ 22~49歳の男女
調査地域:全国
調査方法:インターネットリサーチ
調査時期:
【事前調査】 2025年2月20日(木)~2月28日(金)
【本調査(一般社員向け) 】 2025年2月28日(金)~3月2日(日)
【本調査(人事・管理職向け) 】 2025年2月28日(金)~3月3日(月)
有効回答数:
【事前調査】 31,010サンプル
【本調査(一般社員向け) 】 2,060サンプル
【本調査(人事・管理職向け) 】 206サンプル
調査実施機関:株式会社マクロミル
回答者属性(一般社員向け調査):
区分 | Z世代 | X・Y世代 |
性別 | 男性 31.5%女性 68.5% | 男性 62.9%女性 37.1% |
年代別 | 20代 100.0% | 30代 43.5%40代 56.5% |
職業別(会社員内訳) | 事務系 38.5%技術系 27.0%その他 34.5% | 事務系 31.9%技術系 33.7%その他 34.4% |
勤務先地域 | 関東 41.9%近畿 17.5%中部 16.8%北海道 3.1%東北 5.7%中国 5.9%四国 2.2%九州 6.8% | 関東 36.4%近畿 18.0%中部 19.2%北海道 3.7%東北 4.3%中国 7.3%四国 2.4%九州 8.7% |
回答者属性(人事・管理職向け調査)
区分 | 人事職 | 管理職 |
性別 | 男性 65.0%/女性 35.0% | 男性 83.0%/女性 17.0% |
年代別 | 20代 12%/30代 28%/40代 60% | 20代 2%/30代 17%/40代 81% |
職業別内訳(※複数選択ではなく最大1カテゴリ) | 事務系 71%技術系 11%その他 18%経営層 0% | 経営層 4%事務系 32%技術系 30%その他 34% |
勤務先地域 | 関東 52%/近畿 25%/中部 9%/北海道 2%/東北 5%/中国 2%/九州 5%/四国 0%/海外 0% | 関東 41%/近畿 17%/中部 12%/九州 12%/北海道 6%/東北 3%/中国 3%/四国 6%/海外 0% |
レポート資料は、PDFでもご覧いただけます。