「部下が何かと反発してきて困っている…」
「反発が多い部下はどうやって指導すればいい?」
このような悩みや疑問を持つ管理職も多いでしょう。部下が頻繁に反発してくる場合は、その背景に潜む要因を分析したうえで、状況に応じて適切に対処することが重要です。
本記事では、部下が反発を示す理由や、反発が多い部下を指導する際のポイントについて解説します。部下と良好な関係を築き、職場全体の生産性や士気を向上させたい方は、ぜひ参考にしてください。
反発しがちな部下の扱いに悩む上司は多い

人材派遣業を営む株式会社R&Gが、部下を持つ人を対象に実施した調査によると、「苦手と感じる部下の特徴」として、12.2%が「反抗的な態度をとる」と回答しています(全体で二番目に多い意見)。
この結果から、何かと反発してくる部下の扱いに頭を悩ませている上司が多い現状がうかがえます。
▼反発が多い部下のエピソード例(同調査より)
- 強い口調で突っかかってくる
- 指示に従わない
- 注意しても言い訳ばかりする
上記のような言動を放置すると、部下本人の成長が阻害されるだけでなく、職場の雰囲気を悪化させる恐れがあります。さらに、上司にとっても、部下からの度重なる反発は大きなストレスとなり、自身のメンタルヘルスに悪影響をおよぼしかねません。
したがって、職場に反発しがちな部下がいる場合は、その背景にある原因をしっかりと分析したうえで、上司が適切な対応をとることが重要です。
参考:
PR TIMES「【苦手な部下の特徴ランキング】上司418人にアンケート調査」
部下が反発してくる原因

部下が上司に対して何かと反発してくる場合に、考えられる要因を紹介します。
元々反抗的な性格をしている
言うまでもなく、人の性格には個人差がありますが、何かと反発しがちな部下は、元々持っている性格に問題があるかもしれません。
たとえば、上司から注意を受けた際に、素直に自分の非を認めず言い訳に終始するような部下は、元々他責思考が強い性格をしていると考えられます。
このような反抗的な言動をとりがちな部下は、後々上司だけでなく周囲の関係者にも迷惑をかける可能性が高いため、その都度上司が厳しく注意する必要があるでしょう。
ただし、人の性格を大人になってから大きく変えることは難しく、上司が注意・指導を重ねても、部下の言動に改善が見られるとは限りません。
そのため、社会人としての基本的な振る舞いに問題が見られる従業員については、採用プロセスの段階で見極め、そもそも入社させないことも重要です。
仕事内容に不満を抱えている
上司に対して頻繁に反発してくる部下は、自身の仕事内容に不満を抱えているのかもしれません。
たとえば、部下が入社後数年間経過しているにもかかわらず、いまだに簡単な定型業務しか任せてもらえなければ、仕事にやりがいや面白さを見出すのは難しいでしょう。
このような状況下では、部下は常に不満やストレスを感じながら働くことになり、鬱積した感情が上司への反発という形で表れるのも無理はありません。
また、仕事内容のミスマッチは、従業員の離職を招く要因にもなり得ます。
実際に、厚生労働省が実施した「令和5年雇用動向調査」によれば、転職経験者が前職を辞めた理由として、7.4%が「仕事の内容に興味が持てなかった」と回答しています。
以上のことから、部下の能力や強み、キャリアプランなどを十分に考慮したうえで、一人ひとりに最適な業務を割り振ることが、部下のモチベーションを高く維持し、反抗的な言動を防ぐために重要といえます。
職場環境にストレスを感じている
ハーバード・ビジネス・レビューの記事によれば、職場環境の変化が引き金となり、反抗的な言動をとってしまう人は少なくないといいます。環境の変化に対する不安や恐怖を、虚勢を張ることで隠そうとする心理が働くのでしょう。
たとえば、これまでは若手として指示された業務をこなすだけでよかった部下を、突如プロジェクトリーダーに任命したケースを想定します。
この場合、部下は急に責任の重い役職を担うことになったプレッシャーを隠そうとするあまり、周囲に対してつい反発したり攻撃的な言動をとったりしてしまうのも無理はありません。
なお、その部下が環境の変化以前には攻撃的な言動をとるタイプではなかった場合、周囲への反発は一時的なものと考えられるため、過剰に心配する必要はありません。新しい環境に徐々に慣れるにつれて、そうした反発も自然に収まると期待できます。
上司の言動に問題がある
部下の反発が多いと感じる場合、上司自身の言動に問題がある可能性も考えられます。
以下は、Job総研が社会人男女を対象に実施した調査において、「嫌いな上司の特徴」として挙げられた主な意見です。
- 高圧的で偉そう(50.4%)
- 責任転嫁をしてくる(24.1%)
- 部下の粗探しばかりしている(23.0%)
上記のような言動を日常的に繰り返す上司に対して、部下が反発したくなるのも無理はありません。
さらに、上司による部下への無礼な言動は、職場全体の生産性や士気を著しく低下させる危険性があります。
実際に、米国企業を対象に実施された研究結果によれば、職場で無礼な扱いを受けた従業員には、以下のような傾向が見られたといいます(括弧内は該当する人の割合)。
- 組織への愛着や忠誠心が弱まる(78%)
- 仕事のパフォーマンスが低下する(66%)
- 仕事に注ぐ労力を意図的に減らす(48%)
- イライラやストレスを顧客にぶつける(25%)
以上のことから、もし部下からの反発が多いと感じた場合は、まず上司である自分自身の日頃の言動を客観的に振り返り、改善すべき点がないかを見つめ直すことが重要です。
参考:
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「反抗的な部下をどのようにマネジメントすべきか」
JobQ Town「嫌いな上司の特徴とは?アンケートを元にランキング形式でご紹介!」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「「無礼」が利益を蝕む」
反発の多い部下の対処法

反発が多い部下を指導・教育するにあたって、上司が心がけるべきポイントを解説します。
攻撃的な場合はやめさせる
ここまで述べてきたように、部下が反発を示す背景にはさまざまな要因が潜んでおり、ときにはその意見を受け止めることも重要です。
しかし、部下が相手を傷つけたり、不快な思いをさせたりするような攻撃的な言動(大声で怒鳴る、机を叩くなど)をしている場合は、すぐに止めさせるべきです。
部下の攻撃的な言動によって被害を受けるのは、直接的なターゲットとなった人だけに留まりません。周囲でその様子を目にする従業員にも、悪影響がおよぶ可能性があります。
カリフォルニア大学の研究結果によれば、自分のネガティブな感情を激しい言葉や態度で表現している人を目にするだけで、観察者自身も同様の感情を抱きやすくなり、脳のパフォーマンスに悪影響が及ぶ可能性が高まるといいます。
つまり、攻撃的な言動をする部下が一人でも職場にいれば、その負の感情が徐々に周囲へと伝染し、最終的には職場全体を蝕んでしまう危険性があるのです。
ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、従業員の攻撃的な言動を抑制するためのポイントとして、以下の3点を挙げています。
- すぐに止める必要はない:感情的に対応してしまうと、かえって相手を刺激させかねない。自分の気持ちを落ち着ける時間を設ける
- 無理に叱らない:叱ることで相手の感情が刺激されれば、さらに攻撃が強まる危険性がある。相手の話に耳を傾け、共感を示すことが有効な場合もある
- 規則を整備しておく:攻撃的な言動を制限する規則を設けることで、抑止力になると期待できる
部下の主張に耳を傾ける
部下から反発を受けた際に、頭ごなしに突っぱねてしまうと、かえって反発を強めてしまう恐れがあります。
そのため、まずは相手の主張に耳を傾けることが大切です。ただ話を聞くだけでも、相手の感情が落ち着き、事態を解決するきっかけとなることがあります。
実際に、エルサレム・ヘブライ大学が行った研究によれば、自分の話をしっかりと聞いてもらえた従業員は、それだけで心理的な緊張が和らぎ、攻撃的な言動が減少するという結果が出ています。
また、部下が持つ不満の中には、現在職場が抱えている根本的な問題が潜んでいる可能性もあります。部下の声に真摯に向き合うことで、そうした問題が特定できれば、職場環境の改善につなげられるかもしれません。
ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、部下の話を効果的に傾聴するためのポイントとして、以下の4点を紹介しています。
コツ | 具体例 |
---|---|
【話を聞くことに100%集中する】相手の話を真剣に聞く姿勢を見せることが重要。もし話を聞ける状況にない場合は、後で時間を設ける | 作業中に部下から相談を受けたため、一旦作業を中断し、会議室に異動して話を聞いた |
【話を途中で遮らない】相手が言いたいことを話し終えるまでは、口をはさみたい衝動をグッとこらえる | 「今日はこちらから一切意見を言わないので、あなたが感じている不満を思う存分話してください」と伝える |
【質問を投げかける】自分の意見を押しつけるのではなく、質問を投げかけることで、相手が解決策を導けるよう支援する | 現在の業務内容に不満を持っている部下に対して、「たとえばどのような仕事であれば、あなたはモチベーション高く取り組むことができると思いますか?」と質問する |
【振り返りを行う】自分の話の聞き方に問題はなかったか、改善すべき点はなかったかを振り返る | 「今日は部下の口調が強く、こちらもついカッとなって言い返してしまった。次はグッとこらえて、ひたすら聞くことに徹しよう」 |
部下への敬意を忘れない
先ほども説明したように、部下からの反発を防ぐためには、まず上司自身が部下への敬意を常に忘れないことが必要不可欠です。
上司が率先して部下に対して敬意を示すことで、部下もまた周囲の人に対して同様に敬意を払うようになると期待できます。
さらに、米国で行われた研究によれば、上司が周囲に敬意を払っている職場では、従業員に以下のようなプラスの影響がもたらされることが明らかになっています。
- 仕事のパフォーマンスや創造性が向上する
- ミスを早期に発見できる可能性が高まる
- 自発的な行動が促される
- ストレスを感じにくくなる
部下に敬意を示す具体的な方法の一つとして、日頃から感謝の気持ちを伝えておくことが効果的です。
ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、部下に対して感謝の気持ちを伝える際に意識すべきポイントとして、以下の4点を挙げています。
ポイント | 具体例 |
---|---|
【すぐに伝える】感謝を伝えるタイミングが早いほど、相手はより高く評価されたと受け止める | 率先して会議の準備をしてくれた部下に対し、会議後すぐに感謝を伝える |
【具体的に伝える】ただ「ありがとう」と伝えるよりも、具体的なエピソードに言及した方が、より感謝の気持ちが伝わりやすい | 「先週のプロジェクト進捗報告会にて、あなたがデータを分析しわかりやすくまとめてくれたおかげで、クライアントも満足してくれました」 |
【行動を評価する】結果は個人の努力だけではどうしようもないケースがあるが、努力や工夫は誰でもコントロールできる | 「業務フローの改善案を提案してくれたおかげで、作業時間の大幅な短縮につながったと思います」 |
【伝え方を工夫する】大人数の前で称えられることを好む人もいれば、個別でひっそりと言葉をかけてもらうことを望む人もいる | 恥ずかしがり屋の部下に感謝の気持ちを伝える際は、メモに言葉を記し、机に貼るようにする |
参考:
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「攻撃的な同僚の暴走を止め、被害を抑える介入方法」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「上司が部下の話に耳を傾けるだけで、自発的な改善がうながされる」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「無礼な振る舞いを見過ごすとチームのパフォーマンスは低下する」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「部下に感謝の気持ちを伝える効果を軽視していないか」
まとめ
何かと反発しがちな部下を指導・教育するにあたって、上司が意識すべきポイントについて解説しました。
部下が頻繁に反発を示す場合、その背景にはさまざまな要因が潜んでいます。上司は部下がなぜ反発してくるのか、その根本的な原因を分析したうえで、状況に応じて適切に対処することが重要です。
本記事で紹介した内容を実践し、部下と良好な関係を築き、職場全体の生産性や士気の向上に役立ててください。