「ラインケア研修を受けるメリットとは?」

「そもそも、ラインケア研修って何をするの?」

このような疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。ラインケア研修とは、管理監督者(ライン)向けに、部下のメンタルヘルスを維持するための基礎知識や兆候、対応の仕方など、ラインケアについて学べる研修のことです。

管理監督者(ライン)が、ラインケア研修で学んだことを活かすことで、部下にとって働きやすい職場環境となり、離職率の低下や職場改善に役立つでしょう。本記事では、ラインケア研修の概要やメリット、必要性について、詳しく解説します。

ラインケア研修とは

ラインケア研修について、厚生労働省が公開する労働者の心の健康の保持増進のための指針を参考に解説します。まず、ラインケアとは、職場で管理監督者(ライン)が日常的に部下とコミュニケーションを取り、メンタルヘルスに気を配ることで、不調の予防や早期発見、復職者のサポートを行うことです。

ラインケア研修とは、管理監督者(ライン)向けに、ラインケアについて理解を深める研修のことです。ラインケア研修では、メンタルヘルス不調の基礎知識や兆候、対応の仕方、職場環境の整備方法などを学びます。

厚生労働省は、メンタルヘルスケアを以下4つのケアで推進することを推奨しています。

  • セルフケア
  • ラインによるケア
  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
  • 事業場外資源によるケア

ラインケアはこの4つのケアの1つとして位置付けられており、職場のメンタルヘルス対策において重要な役割を担っています。管理監督者(ライン)がラインケア研修を受けることで、直接的なラインケアに加えて、会社全体でメンタルヘルスの維持や向上に積極的に向き合うことができるでしょう。

ラインケア研修の必要性

ハーバードビジネスレビューが公開する、経営コンサルタントであるエリック・ガートン氏による記事を参考に解説します。管理監督者(ライン)がラインケア研修を受けることで、部下のメンタルヘルスの不調にいち早く気づき、心身の不調による離職の防止が期待できます。

上司が、ラインケアに関する知識を持たない場合、部下の抱える長期間のストレスを見過ごしてしまう可能性があり、結果としてメンタルヘルス不調を招きかねません。メンタルヘルスの不調は、仕事への意欲やモチベーションを低下させ、生産性の低下や休職、退職のきっかけとなってしまう恐れがあります。

また、厚生労働省の令和5年「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス不調による1ヶ月以上の休業または退職者が発生した事業所の割合は、13.5%に上るとされています。

ラインケア研修を通じて、管理監督者(ライン)はメンタルヘルスケアへの理解を深め、部下の心の健康を守ることが重要です。

参考:

Eric Garton.(2017).Employee Burnout Is a Problem with the Company, Not the Person.Harvard Business Review.https://hbr.org/2017/04/employee-burnout-is-a-problem-with-the-company-not-the-person

ラインケア研修のメリット

ラインケア研修のメリットについて、同記事を参考に解説します。

問題の早期発見・対応が可能になる

ラインケア研修によって、ラインケアの知識を得た管理監督者(ライン)は、部下のメンタルヘルス不調の兆候を、早期に発見できるようになります。ラインケア研修を受けると、部下の普段の言動や行動の変化と言った小さなサインも見逃さず、適切なタイミングで声掛けや相談に乗ることができます。

メンタルヘルスの不調の早期発見は、問題の深刻化を防ぎ、早期の対応につながるため、結果として、休職や離職のリスクを下げることにつながります。

相談しやすい雰囲気づくりができる

ラインケア研修では、部下にとって相談しやすい雰囲気づくりについても学びます。研修をとおして、部下の話に耳を傾ける重要さや、共感力の高いコミュニケーション方法を習得できます。

管理監督者(ライン)が、部下にとって相談しやすい雰囲気をつくることで、部下は安心して悩みや不安を打ち明けられるようになります。相談しやすい職場の雰囲気は、部下が一人で問題を抱え込まず、早期に解決を図る助けとなります。

復職者の職場復帰がスムーズになる

ラインケア研修は、復職者のスムーズな職場復帰をサポートすることができます。ラインケア研修では、復職者への適切なサポート方法や段階的な業務復帰の進め方などを学びます。

管理監督者(ライン)が、適切な配慮を行うことで、復職者は職場に安心して復帰し、メンタルヘルスを保ちながら、長期的に働くことができるでしょう。

職場環境の改善ができる

ラインケア研修では、職場環境のストレス要因を特定し、改善策を検討する方法も学びます。部下が、職場環境において感じるストレスの要因は、主に以下になります。

  • 仕事の失敗や責任…失敗してしまったり、責任を負わなければいけない状況
  • 業務の量や質…仕事の量が多い、または高い質が求められている
  • 対人関係…上司や同僚との関係やパワハラ、セクハラなど
  • 身体的な負担…重労働や立ち仕事など

部下にとってストレスが大きい場合、管理監督者(ライン)が、ラインケアに沿った改善策を実行することで、職場全体のストレスを軽減できるでしょう。

安全配慮義務を遵守できる

ラインケア研修は、企業の安全配慮義務の遵守にも役立ちます。労働契約法では、企業は労働者の安全に配慮する義務を負っています。

ラインケア研修を通して、管理監督者(ライン)はメンタルヘルス不調の兆候を把握し、適切な対応をすることで、安全配慮義務を果たすことにつながります。

まとめ

管理監督者(ライン)向けのラインケア研修について、解説しました。管理監督者(ライン)向けのラインケア研修は、部下のメンタルヘルスを維持するために、重要な役割を果たします。

ラインケア研修では、メンタルヘルスの基礎知識や対応方法だけでなく、部下が相談しやすい管理監督者(ライン)のあり方についても学ぶことができます。

部下のメンタルヘルスの維持は、働きやすい職場環境を意味し、離職率低下や職場改善に役立ちます。管理監督者(ライン)は、ラインケア研修で学んだことを活かし、部下のメンタルヘルスを維持しましょう。