「部下の進捗を確認するのが大変…」

部下一人ひとりの仕事の進捗を把握するのは決して簡単なことではなく、このような悩みを持つ管理職も少なくないでしょう。

本記事では、部下の進捗確認を行う重要性や、進捗確認を行ううえで意識すべきポイントについて解説します。

部下の進捗確認を効率的かつ効果的に行い、組織の業績向上に役立てたい方は、ぜひ参考にしてください。

部下の進捗を確認する重要性

なぜ上司は部下の仕事の進捗確認を行う必要があるのか、その理由について解説します。

具体的な指示やアドバイスがしやすい

部下の進捗をこまめに確認することで、上司として具体的な指示やアドバイスがしやすくなります。

たとえば、部下が任された業務で苦戦している場合、上司が定期的に進捗を確認していれば、その異変にすぐに気づくことができます。そして、部下が苦戦している仕事内容に精通した同僚をサポートにつけるなどして、スムーズに問題解決へ導くことが可能になるでしょう。

もちろん、仕事上で悩みや困りごとがある際は、部下の方から上司へ自主的に相談してくれるのが理想的です。

しかし、部下にとって上司は目上の存在であり、気軽に相談しにくいと感じる人も少なくありません。

実際に、エン・ジャパン株式会社が社会人男女を対象に実施した調査でも、72%が「上司とのコミュニケーションに課題を感じている」と回答しており、そのうち46%は「質問や相談をしづらい」と述べているほどです。

したがって、上司は部下からの報告や相談をただ待つのではなく、自ら積極的に部下の状況を確認しにいくことが大切だといえます。

業務量の偏りを防げる

部下の進捗を確認しておけば、職場内で現在誰が忙しく、誰に余裕があるかが明確になります。そのため、忙しい部下の業務の一部を手が空いている者に割り振ることで、従業員間で業務量の偏りが生じるのを防ぐことが可能です。

従業員間で業務量の差が生まれると、多くの仕事を抱えているメンバーは不満を感じる可能性が高いです。

実際に、株式会社ビズヒッツが行った調査でも、「仕事で理不尽さを感じる瞬間」として、約9.7%が「仕事量に偏りがある」と回答しています。

また、仕事量の偏りによって大きな負担を強いられた部下は、モチベーションやパフォーマンスが低下する恐れもあります。

同社の別の調査によれば、82.6%が「仕事量の多さで仕事の質に影響が出たことがある」と、86.0%が「仕事量の多さで心身に悪影響がある」と述べているほどです。

これらの結果から、業務量の偏りは部下が離職する原因にもなり得るため、上司はこまめに進捗確認を行い、偏りが極力生じないように努めることが重要です。

部下との関係性を築きやすい

上司が部下と良好な関係を築くためには、密なコミュニケーションが不可欠なのは言うまでもありません。

上司が部下の進捗を確認する際には、自然とコミュニケーションが生まれるため、部下との関係構築に役立つと期待できます。

職場における上司との関係性は、部下のモチベーションを大きく左右する要素の一つです。もし上司との関係性が悪ければ、最悪の場合、部下が離職する原因にもなりかねません。

株式会社ビズヒッツが行った調査でも、「職場の人間関係を理由に転職した経験がある人」のうち、約24.8%は「上司と合わない」という理由で転職したと回答しています。

もちろん、ただコミュニケーションを取るだけで、部下と必ず良好な関係を築くことができるとは限りません。

しかし、コミュニケーションの頻度が高い方が、全く取らないよりも良い関係を築きやすいのは間違いないでしょう。

参考:

エン・ジャパン「1800人のビジネスパーソンに聞いた「上司・部下間のコミュニケーション」調査」

PR TIMES「【仕事で理不尽と感じる瞬間ランキング】男女500人アンケート調査」

PR TIMES「【仕事量が多い理由と解決策ランキング】男女500人アンケート調査」

ビズヒッツ「【職場の人間関係を理由に転職した人への意識調査】男女501人アンケート」

部下の進捗確認は上司にとって負担が大きい

部下の進捗確認は、上司にとって非常に負担が大きい業務だといわれています。

ワークアシストツールの開発・提供を手がけるTONOME株式会社が、管理職を対象に実施した調査でも、59.6%が「メンバーの業務状況や進捗状況の把握が心理的もしくは時間的負担になっている」と回答したほどです。

さらに同調査では、管理職の業務全体にかかる時間を100%とした場合に、「メンバーの業務状況や進捗状況の確認」には平均で31.1%もの時間を費やしていることが明らかになっています。

部下一人ひとりに進捗を確認し、その都度指示やアドバイスをするとなれば、時間が多くかかるのも無理はありません。とくに、部下の数が多い大規模な組織であれば、この傾向はさらに顕著でしょう。

上司の時間は有限であり、部下の進捗確認以外の業務に割く時間を増やすためには、ポイントを押さえて効率的に進捗確認を行うことが重要です。

参考:

PR TIMES「管理職300名、メンバー200名に聞いた「マネジメントに対する管理職とメンバーの意識調査」」

テレワーク中の部下の進捗確認はさらに難しい

上司と部下が同じ空間で働いている場合は、直接コミュニケーションが取りやすい分、進捗確認にかかる手間はそこまで大きくないかもしれません。

しかし、近年ではテレワークが普及したことで部下とのコミュニケーションが取りづらくなり、進捗確認がより一層難しくなったと感じる人も多いでしょう。

株式会社日立ソリューションズ・クリエイトが管理職や経営者を対象に行った調査でも、テレワーク実施時の不満点として、最も多く挙げられた意見が「メンバーの業務進捗状況/作業状況が把握しづらい(56.4%)」でした。

なお、オフィス出社であれテレワークであれ、部下の進捗確認方法に大きな違いはなく、どちらの場合も部下とコミュニケーションを取ることが必要不可欠です。

ただし、テレワーク環境下では部下と上司が同じ空間にいないため、オフィス出社時のような「自然発生的なコミュニケーション」が生まれにくいという違いがあります。そのため、テレワーク時は上司がより意識的にコミュニケーションを取りにいくことが重要です。

部下の進捗確認を行う際のポイント

部下の進捗を効率的かつ効果的に確認するために、上司が意識するべきポイントを解説します。

細かく管理し過ぎない

部下の進捗確認が重要なのはすでに述べたとおりですが、過剰に細かく管理しようとするのは避けるべきです。

部下の状況を常に一から十まですべて把握しようとすれば、いくら時間があっても足りません。

また、部下の立場からすると、「上司が細かく進捗確認してくる=自分のことを信用していない」と考えられ、上司に対してネガティブな感情を抱く可能性が高いです。

実際に、マイクロマネジャー(部下を過剰に管理しようとする上司)のもとでは、部下のモチベーションが低下し、成長が妨げられる傾向にあることが、過去の研究からも明らかになっています。

したがって、上司は部下を信頼し、ある程度は部下の裁量に任せて仕事を進めさせることが大切です。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によれば、マイクロマネジャーには以下の6つの兆候がよく見られるといいます。

自身の進捗管理のやり方に問題がないか不安な場合は、これらの兆候に当てはまるものがないか確認してみるとよいでしょう。

  • 部下の成果に十分満足できたことがない
  • 部下の仕事の進め方について、つい口出ししたくなる
  • 部下の仕事の細部に目がいき、修正・改善を加えることに尽力する
  • 部下がどこで何をしているかを常に把握していたい
  • 部下に対して頻繁に進捗報告をさせる
  • メールのCCに自分が含まれていないと気が済まない

確認作業を効率化する

部下の人数が少なければ、一人ひとりの進捗確認に多少時間がかかったとしても、さほど大きな問題ではないかもしれません。

しかし、組織の規模が大きい場合は、必然的に部下の人数も多くなります。部下一人あたりにかけられる進捗確認の時間も限られるため、効率的に進捗管理を行う必要があります。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、限られた時間の中で効率的に部下を管理するコツとして、以下の4点を挙げています。

コツ具体例
【意思決定の委任】リスクの高い決断は上司が行い、それ以外は部下に委ねる。上司はより高度で戦略的な業務に集中でき、部下は問題解決力が向上する部下に権限を付与することで空いた時間を、新規プロジェクトの予算を設定する時間に充てる
【チームの活用】組織内に複数のチームを設け、各チームにリーダーを立てる。チームメンバーの進捗確認をリーダーに任せることで、上司の負担を大幅に軽減できる進捗報告会を毎週末開催し、チームリーダーからチーム全体の進捗報告を受ける形式をとる
【適切な距離感】部下を信頼し、必要以上に干渉しない。仮に部下が間違いを犯しても、それは成長するためのステップとして許容する部下が仕事の納期に間に合わない可能性がある場合でも、「何か手伝えることはありますか」と尋ねるにとどめ、自ら改善策を考える機会を与える
【つながりとサポート】忙しい中でも、部下一人ひとりに意識を向け、サポートする姿勢を示す。部下は「自分は大事にされている」と感じれば、モチベーションが高まり成長も促進される2ヶ月に一度、部下と1on1ミーティングの時間を設け、業務の進捗確認だけでなく、悩みやキャリアに関する相談にも乗る

問題が起きてもすぐに手助けしない

部下の進捗確認を行った際に、相手が何らかの問題を抱えていると知ると、つい手助けしたくなる人は多いでしょう。

しかし、ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、人は自らが求めていない支援に対して、ネガティブな反応を示す傾向にあるといいます。

つまり、上司がよかれと思って行った手助けが、部下の役に立たないばかりか、相手との関係性を悪化させてしまう恐れもあるのです。

したがって、部下に対するアドバイスやサポートは、問題が起きてすぐではなく、適切なタイミングで提供することが重要です。

同記事では、上司が部下にサポートを提供する際のポイントとして、以下の2点を挙げています。

ポイント具体例
【介入のタイミングを図る】問題が明らかになってもすぐに介入せず、まずは部下の話を聞き、状況を確認するにとどめる。部下が上司のサポートを必要とし、受け入れる準備ができてはじめて手助けする(事前にアドバイスするよりも、部下が自ら問題に直面してからの方が、アドバイスの効果が高いという研究結果もある)プロジェクトのスケジュールに遅れが出ている部下に対して、その原因に気づいたとしてもあえてすぐに伝えることはせず、「もし何か問題があれば、私はいつでも手を貸せますよ」とだけ伝え、部下が自ら助けを求めるまで待つ
【役割がサポートであることを強調する】部下は「上司=自分を評価する立場」と認識している。部下は上司からの評価を下げないために、自らが抱える問題を軽視したり隠蔽したりする傾向がある。上司の役割が評価ではなく、あくまでサポートであることを理解させれば、部下が上司のサポートを受け入れる可能性が高まるプロジェクトで苦戦している部下を呼び出し、「あなたを担当から外すために呼び出したのではありません。ただあなたの手助けになれるよう、話し合いがしたいのです」と伝えてから、アドバイスをする

参考:

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「あなたはマイクロマネジャー?6つの兆候から明らかになる。」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「部下が多すぎて限界を感じたら、どうすべきか」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「マイクロマネジメントに陥らず部下に手を差し伸べる方法」

まとめ

部下の進捗を確認する重要性や、進捗確認を行う上で意識すべきポイントについて解説しました。

組織全体のパフォーマンスを最大化させるためには、部下の進捗を確認することが必要不可欠です。

しかし、上司が部下一人ひとりの進捗を把握するのは決して簡単なことではなく、進捗確認が大きな負担になっているケースも少なくありません。

本記事で紹介した内容を実践し、部下の進捗確認を効率的かつ効果的に進めることで、組織の業績向上に役立ててください。