1on1で取り上げる話題が尽き、その選定にお悩みの管理職の方もいらっしゃるのではないでしょうか。多くの管理職が直面するこの「1on1のネタ切れ問題」。

しかし、適切なテーマ設定のコツさえ掴めば、1on1は部下のエンゲージメントを高め、組織全体の活性化にも繋がる貴重な機会となります。

 本記事では、なぜ1on1の話題が枯渇してしまうのか、その根本的な原因を分析し、さらに、明日からすぐに実践できる具体的なテーマ例や、1on1ミーティングを形骸化させず、より効果的で有意義な時間にするための実践的なポイントを詳しく解説します。

1on1ミーティングでネタ切れに悩む管理職は多い

1on1ミーティングでネタ切れに悩む管理職は多くいます。アジャイルHRの調査によると、1on1ミーティングを続けるうえでの課題について「話題が尽きてくる」と回答した管理職の方は15%を超える結果となりました。

このことから、1on1ミーティングで何を話せば良いか分からず、ネタ切れを解消したいと考えている方もいると予測できるでしょう。

また、同じ調査では、1on1ミーティングをもっと良くするために何が必要か、という質問に対して、多くの上司が「上司向けの研修や教育」と答えています。

つまり、1on1ミーティングの進め方や目的について、もっと研修などで教えてほしい、効果的なやり方を知りたい、と考えている上司も多いと言えそうです。

1on1については以下の記事もご覧ください。

参考:
Agile HR「【調査レポート】ビジネスパーソン1,000人アンケートから紐解く企業におけるコミュニケーションの実態 ~ 上司と部下の1on1コミュニケーションの実態と課題 ~」

1on1ミーティングの話題がネタ切れになる理由

1on1ミーティングの話題がネタ切れになる理由は、主に以下の2点が挙げられます。

  • 内容が業務の進捗確認になっている
  • 部下と良好な関係を築けていない

それぞれについて詳しく解説します。

内容が業務の進捗確認になっている

アジャイルHR社の同調査によると、1on1ミーティングを継続する上での課題として「進捗確認や課題の指摘に偏っている」と回答した管理職も一定数いることが示されています。このため、部下の担当業務に関する話題に終始してしまっている管理職も少なくないと推察されます。

1on1ミーティングの目的は主に、人材育成やコミュニケーションの改善、モチベーションの向上などです。そのため、担当業務に関する内容だけでなく目的に沿った話題を考えることで、ネタ切れを防げると考えられるでしょう。

部下と良好な関係を築けていない

同調査では、1on1ミーティングを継続する上での課題として「相手との関係性が良好でない」と回答した管理職もいることが明らかになっています。

気軽に話ができる間柄ではない場合、部下が緊張して会話が続かなくなったり、何を話して良いか分からなかったりすることもあるでしょう。

EDHECビジネススクールの記事では、強固な信頼関係の構築には、気兼ねない雑談などが不可欠であると指摘されています。日常的に趣味や休日の過ごし方といった雑談を交わす習慣があれば、1on1ミーティングにおける部下の過度な緊張を和らげることができると考えられます。

同記事では、リモートワークの場合、Slackなどのチャットツールに仕事以外の会話専用チャンネルを作成し、利用を促すことを推奨しています。

参考:
Agile HR「【調査レポート】ビジネスパーソン1,000人アンケートから紐解く企業におけるコミュニケーションの実態 ~ 上司と部下の1on1コミュニケーションの実態と課題 ~」
EDHEC BUSINESS SCHOOL“How to Build Team Relationships – Even Remotely”

1on1ミーティングに使えるテーマと具体例

1on1ミーティングに使えるテーマと具体例について、以下の5点を紹介します。

  • 他の従業員の優れた点や好事例
  • 業務遂行上の課題や生産性阻害要因
  • 個別の状況や必要なサポート
  • 業務における成功体験とその要因
  • キャリア

それぞれについて詳しく解説します。

他の従業員の優れた点や好事例

人材育成に関連するサービスを提供するデブリーワークスでは、1on1ミーティングで聞くべき質問について「ほかの従業員がうまく仕事をしていた点」を挙げています。この質問の目的は、部下の観察眼や意見を尊重する姿勢を示すと共に、部下自身のリーダーシップの素養を評価することにあると述べています。

管理職として、他の従業員の優れた点に気づき、それを言語化できる能力は、部下の適性に応じた業務配分や効果的なポジティブフィードバックを行う上で重要になると考えられます。

実際の質問例としては、「この数ヶ月間で、他のメンバーの仕事ぶりで『素晴らしい』と感じた点や、見習いたいと思った具体的事例があれば教えていただけますか?」などが考えられます。

業務遂行上の課題や生産性阻害要因

同記事では、1on1ミーティングで聞くべき質問について「高パフォーマンスの仕事をするうえで直面している課題と、成功につなげるために改善できること」が挙げられています。

職場にはコピー機の頻繁な故障やコミュニケーションに支障が出ている状態など、生産性を妨げている要因が多くあるとし、解決策は比較的コストがかからないものが多く、生産性を大幅に引き上げる可能性があるとしています。

具体的な質問例としては、「現在の職場環境で、業務を進める上でやりにくさを感じている点や、改善を望む点はありますか?もしあれば、具体的に教えていただけますか?」などが効果的です。

個別の状況や必要なサポート

同記事によると、1on1ミーティングで聞くべき質問について「より良いサポートをするための、個人的なこと」が挙げられています。健康上の懸念や両親の介護、朝型人間でないことなど、メンバー独自の状況を知れば、本人のパフォーマンス向上をサポートする方法が見えてくるとしています。

たとえば、企業で勤務時間の調整が認められているなら、朝の出勤にこだわらず本人のパフォーマンスが上がる時間帯に変更することも可能だと伝えられるでしょう。

実際に質問する際は、「管理職として、より良いサポートができたら良いと思っています。『朝型でない』ということでも良いので、○○さん自身について教えてくれますか」と聞くと良いでしょう。

1on1でプライベートを話したくない部下への対応については、以下の記事もご覧ください。

業務における成功体験とその要因

ハーバードビジネスレビューの記事では、1on1ミーティングで部下を会話に引き込みにくい場合、有意義に話し合いができる質問として「仕事で得た成功体験」を挙げています。「はい」「いいえ」で終わってしまわず、内気な部下の心も開けるとしています。

実際に質問する際は「今年、仕事であった成功体験について教えてください」と尋ねると良いでしょう。

キャリア

同記事によると、月初めの1on1ミーティングは部下の目標を確認するのに適しています。

毎週1on1ミーティングを行っている場合は、月に一度、キャリアをテーマにすることで、毎回同じ内容の繰り返しになることを防止できるとしています。また、「管理職として長期的目標を進められるよう力を入れている」と改めて部下に認識してもらえるだろうとしています。

実際に質問する際は、「○○さんの短期的な目標と長期的な目標を確認させてください。」「今担当している業務で長期的な目標に最も合っていることは何ですか」などと聞くと良いでしょう。

参考:
DeVryWorks “The 8 Questions You Should Ask in Every 1:1”
Harvard Business Review「1on1ミーティングが機能していない時に表れる5つの兆候」

1on1ミーティングを効果的に行うポイント

1on1ミーティングで活用できる主なテーマと質問の具体例として、以下の5つを紹介します。

  • 事前に話したい内容を伝えておく
  • 話題を話す順序を工夫する
  • 話した内容をミーティング後に共有する
  • 実施頻度を見直す
  • 部下より長く話さない

それぞれについて詳しく解説します。

事前に話したい内容を伝えておく

ハーバードビジネススクールの記事によると、1on1ミーティングを実施する24時間前に話したい内容をリスト化してメールで送っておくことを推奨しています。業務についてだけでなく休暇がどうだったかなどの個人的なことも含めると良いでしょう。

同記事によると、部下が話したい内容も必ず聞くことが重要とされています。そのほか、ミーティングの前に準備が必要なことがあれば、事前に伝えておくことを推奨しています。たとえば、「今担当してもらっている資料について確認したいので、本日中に最新のデータを送ってほしい」などと連絡しておくと良いでしょう。

1on1ミーティングでは、テーマシートを活用するのもおすすめです。詳しくは、以下の記事もご覧ください。

話題を話す順序を工夫する

1on1ミーティングでは、話題を話す順序を工夫することも大切です。

同記事では、1on1ミーティングの際は話し合いが難しい話題の前後に、前向きな話題を選ぶことを推奨しています。話し合いが難しい話題とは厳しいフィードバックなどです。前向きな話題は、部下に対する肯定的なフィードバックなどが考えられるでしょう。

前向きな話題で挟めば、会話が終わったときに部下を落ち込ませることなく、フィードバックを伝えられるとしています。

話した内容をミーティング後に共有する

同記事によると、1on1ミーティング後には話した内容や決まったことなどをメモしておくことが大切です。そして、簡潔にまとめたものをフォローアップメールとして送っておくと良いでしょう。

たとえば、「資料作成の進捗はとても良さそうでした。チームの未確定事項を資料に盛り込む場合は、確定したらすぐに共有してもらえるよう関係者に事前に連絡を取っておいてください」などと記載することが考えられます。

実施頻度を見直す

ハーバードビジネスレビューの記事によると、1on1の実施頻度は以下の3つから選ぶべきだとしています。

  • 週1回、30分前後
  • 隔週、45分から1時間
  • ハイブリッドな方法:一部の部下は毎週、ほかの部下は隔週

同記事では、どの方法を選んだとしても部下全員が管理職からのサポートを均等に受けられるよう、その月のミーティング時間の合計にあまり差が出ないようにすることを推奨しています。同記事の筆者の調査によると、従業員は「週1回、30分前後」が最も望ましいと評価しました。

実施頻度は、在職期間やチーム規模、就業場所、部下の意向などをもとに判断しましょう。同記事では、若手の部下に1on1ミーティングを行う場合、自身が管理職に着任してから日が経っていない場合、リモートワークの場合などは毎週行うことが挙げられています。

部下より長く話さない

同記事によると、部下が話す時間の割合は50~90%が理想的です。管理職の方は、部下より長く話してしまわないよう注意すべきだとしています。

また、同記事によると、部下を歓迎していると分かってもらい、安心できる雰囲気を作るため、管理職である自分の言動に注意する必要があります。具体的には、部下の話を積極的に聞くことや、発言に感謝するほか、意見を受け止めたり関心のある態度を見せたりすると良いと考えられるでしょう。

参考:
Harvard Business School “Master the One-on-One Meeting”
Harvard Business Review「1on1ミーティングの効果を最大化する方法」

まとめ

1on1ミーティングに使えるテーマについては、「ほかの従業員がうまく仕事をしていた点」「生産性を阻害している要因」「今年仕事で得た成功体験」などが挙げられます。

また、1on1ミーティングを行う際は「事前に話したい内容を伝えておく」「話題を話す順序を工夫する」「話した内容をミーティング後に共有する」などについて意識しておくと良いでしょう。