「部下のせいでストレスが限界だ…」

このような悩みを持つ管理職も多いでしょう。

管理職は日々多くの「マイクロストレス」に晒される役職です。

マイクロストレスは一つひとつは小さくても、毎日積み重なれば心身の健康を脅かす大きなストレスになりかねません。そのため、マイクロストレスは放置せず、発生する都度処理することが大切です。

本記事では、マイクロストレスが発生する原因や、適切な対処法について解説します。

マイクロストレスをうまく解消し、生産的かつ健康的に働き続けたい方は、ぜひ参考にしてください。

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マイクロストレスの積み重ねが管理職を限界に追い込む

人が「ストレスの限界だ」と感じる状態は、必ずしも単一の大きな出来事のみによって引き起こされるとは限りません。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事(以下、同記事)によれば、日常の些細で自覚しにくい「マイクロストレス」が、時間とともに蓄積された結果であるケースも多く見られるといいます。

「一般的なストレス」と「マイクロストレス」の主な違いは以下の通りです。

一般的なストレスマイクロストレス
特徴大きく、目につきやすい些細で、目につきにくい
原因誰もが認識できる大きな問題(例:嫌味な上司、長時間通勤、親の介護)日常の些細な問題(例:部下の尻ぬぐい、約束のキャンセル、無駄な会議)
認識ほぼ誰もが認識できる「またか」「面倒だな」と感じる程度で、明確な認識はしにくい
発生源往々にして原因となる「敵」(上司やクライアントなど)がいる家族や同僚、友人など、身近な人に起因することが多い
対処原因が明確なため対処法を考えやすい些細なことなので無視しがち。ときには「誰かの助けになった」など、前向きな結果につながることもあるため、問題視されにくい

マイクロストレスを放置するのは危険

マイクロストレスは、一つひとつは日常の些細な問題に起因するものであり、つい軽視されがちです。

しかし、以下の理由から、マイクロストレスを放置するのは非常に危険だとされています。

  • 時間と共に積み重なり、深刻な影響を及ぼす:一つひとつは小さくても、積み重なるとやがて大きなストレスになる。また、些細な問題が二次的・三次的な影響を生み、数時間から数日尾を引くことがある(例:部下の尻ぬぐいをする→そのせいで休日出勤する羽目になる→疲労を抱えたまま週明けを迎える)
  • 精神的な負担が大きい:ストレスの原因が明確な「敵」(嫌味な上司やクライアント)ではなく、大切な人(家族や友人、同僚)であることが多いため、心理的な重荷になりやすい(「大切な人の期待を裏切った」「部下の面倒を見切れていない」といった罪悪感や挫折感が伴いやすく、人間関係の感情がストレスの影響を増幅させる)
  • 日常化しやすい:人は一日に数十個ものマイクロストレスに直面するが、「たいしたことはない」「この一週間だけ乗り切れば大丈夫」と受け入れてしまいがち

マイクロストレスを放置したまま数ヶ月、数年と続くと、気づいたときには心身が完全に疲弊し、常に燃え尽き症候群寸前で足元が揺らいでいる状態になるといいます。

しかし、原因となった個々のストレスが小さすぎるため、「なぜ自分がこんなに疲れているのか」が全くわからず、対処法を見出せない状況に陥ってしまうのです。

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マイクロストレスの原因となる部下の行動とは

同記事によると、管理職のマイクロストレスの発生原因となる部下の行動は、大きく以下の3種類に分けられるといいます。

  • 物事を遂行する力を消耗させる行動
  • 精神的な余裕を奪う行動
  • アイデンティティを脅かす行動

物事を遂行する力を消耗させる行動

管理職が本来行うべき仕事(物事を遂行する力)を奪い、組織全体の生産性を低下させる一連の行動を指します。

具体的には、以下のような状況が該当します。

状況・行動結果
【指示内容の認識ズレによる手戻り】部下が指示内容を正確に理解できていない期待と異なる結果が生じる、または同じ説明を何度も繰り返す必要があり、管理職の時間の浪費につながる
【安心して仕事を任せられない】 部下が提出する仕事の品質にムラがあり、安定しない管理職が毎回、細かなチェックや手直しをする必要が生じ、部下の尻ぬぐいに時間を取られる
【自律性の欠如による過度な依存】部下が自分で解決できるはずの問題を、すぐに管理職に持ち込む管理職が本来負うべきでない負担を過度に背負い、自身の業務が停滞する
【予測不能な行動による事後対応の発生】部下が事前の相談なく、独自の判断で業務を推し進める問題やトラブルが発生した際に、管理職が緊急の事後対応や火消しに追われる

精神的な余裕を奪う行動

管理職の精神的な安定や集中力を著しく低下させ、ストレスや疲労を増大させるような行動を指します。

具体的には、以下のような状況が当てはまります。

状況・行動結果
【過度な責任感による心理的負担】部下の失敗やメンタルヘルスの問題に直面した際、「自分の指導不足ではないか」「何とかしなければ」と強い責任感や義務感に駆られる本来の業務以外の部分で精神的な重荷を感じてしまう
【対人トラブルの仲裁によるストレス】部下同士の対立などが発生した際に、管理職が仲裁役を強いられる気が重い会話やデリケートな調整に時間を取られ、心理的な消耗が生じる
【部下との信頼関係の崩壊】部下が管理職に重要な情報を隠したり、約束を破ったりする管理職が部下に対して不信感を抱き、人間関係の基盤が揺らぐことで心の平和が乱される
【ネガティブな言動による職場の雰囲気悪化】部下がチーム内で常に不満を口にしたり、ネガティブな態度を取り続けたりするチーム全体の雰囲気が悪化し、管理職がその対応やフォローアップに時間を奪われる

アイデンティティを脅かす行動

管理職自身の核となる価値観や目的意識、自己肯定感といった「アイデンティティ」を根底から揺るがす行動を指します。

具体的には、以下のような状況が該当するでしょう。

状況・行動結果
【価値観に反する行動の容認】部下が、管理職個人の価値観に反する非倫理的または強引な業務戦術をとっていても、それを容認しなければならない 自身の価値観や職業倫理が揺らぎ、深い葛藤が生じる
【過度な批判による自信喪失】自身のマネジメント能力や決定について、部下から過度に非難されたり、公然と疑問を呈されたりする管理職の自信や自己肯定感が大きく損なわれる
【重要な人間関係の突然の崩壊】優秀な部下が突然辞職したり、深刻な対立によって重要な人間関係を失ったりする自身が築いてきた人間関係や信頼関係が否定されたと感じ、大きな精神的ショックを受ける

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限界になる前に!部下が生み出すマイクロストレスへの対処法

同記事の情報をもとに、部下が生み出すマイクロストレスへの適切な対処方法を紹介します。

ストレス源を意識的に排除する

先ほども述べたように、マイクロストレスは一つひとつが些細であっても、時間が経つにつれて蓄積して大きくなり、やがては心身の健康を損なっていきます。

マイクロストレスの蓄積を食い止めるためには、日頃からストレスの元を意識的に排除することが重要です。

マイクロストレス源を排除する具体的な方法として、同記事では以下の3点が推奨されています。

【1. 依頼を断るスキルを身につける】

自分の時間やエネルギーを奪うような小さな要求や頼みごとに対して、「No」と言えるスキルを身につけましょう。

こうすることで、「物事を遂行する力を消耗させる行動」や「精神的な余裕を奪う行動」を取る部下から身を守ることができます。

▼具体的な行動例

  • 不要なタスクを断る:自分のキャパシティを超えそうな、あるいは優先度の低い追加タスクを拒否する
  • 依存を拒否する:部下が自分で解決できる問題を安易に持ち込んできた際は、「自分で考えてみて」と突き返す
  • 断り方を磨く:相手の感情を害さないよう、明確かつ丁寧な表現で断る技術を身につける

【2. デジタル機器の通知機能を操作する】

PCやスマートフォンからの通知は集中力を途切れさせ、常に「出動体制」にある状態を作り出す主要なマイクロストレス要因です。

これらのデジタル機器の通知機能を適宜操作することで、「物事を遂行する力を消耗させる行動」を取る部下から身を守ることができます。

▼具体的な行動例

  • 通知のオフ設定:集中が必要な時間帯は、電話やメール、チャットの通知をオフにする(サイレントモードなどを活用)
  • 公私の分離:退勤後や休日は仕事関連の通知を完全に遮断し、仕事とプライベートの境界を明確にする

【3. 人間関係を整理する】

マイクロストレスの元となるような、日常的にストレスをまき散らす人や、不信感を生むような人との関わり方を見直します。

こうすることで、「精神的な余裕を奪う行動」や「アイデンティティを脅かす行動」を取る部下から身を守ることができるでしょう。

▼具体的な行動例

  • 接触頻度の削減:ネガティブな言動やストレスをまき散らす傾向のある人との接触を意識的に減らす
  • 関わりを限定:信用できない人や裏表のある面倒な人とは、仕事上必要最低限の関わりに留める

上記は生活を根本的に変えるような大掛かりなものではなく、日々の小さな行動でマイクロストレスの侵入経路を塞ぎ、心身の健康を守るための予防的なアプローチといえます。

自分自身が他者にマイクロストレスを与えない

自分の日常的な発言や行動が、知らず知らずのうちに周囲の人々(とくに部下)に小さな負担や不快感を与えていないか、管理職自身が意識的に注意を払うことが重要です。

同記事によると、他者に与えたマイクロストレスは、必ず何らかの形で「ブーメランのように自分自身に返ってくる」といいます。

たとえば、上司が部下に対して、「曖昧でわかりにくい指示」というマイクロストレスを与えたとします。その結果、部下が指示を理解できず混乱し、ミスやトラブルを起こせば、その手直しや事後対応に追われるのは、結局は上司自身なのです。

つまり、自分が与えるマイクロストレスを減らすことは、結果的に自分自身が受けるストレスを減らす最も効果的な方法の一つといえます。

さらに、自分が他者に与える影響に敏感になることは、人間関係の質そのものの改善にもつながるとされています。

具体的には、以下の2点を意識することが大切です。

  • 配慮の欠如を認識する:マイクロストレスの多くは悪意からではなく、単なる配慮の欠如や無意識の行動から生まれる(例:約束の時間に遅れる、連絡をすぐに返さないなど)。自分が意図せず周囲にストレスを与えている可能性を考える
  • 他者の「身体予算*」への影響を考慮する:自分の軽率な行動が他者の「身体予算」を削り、疲弊させている可能性を認識する

このように、自分が他者に与えるマイクロストレスに敏感になることには、「防御的な側面(自身をマイクロストレスから守る)」と「建設的な側面(より良好で協力的な人間関係を築く)」があるのです。

*身体予算(Body Budgeting):心理学者のリサ・フェルドマン・バレット氏が提唱する概念。日々のストレスや活動を「支出」、睡眠や栄養を「収入」として計算し、この予算の赤字が続くと、慢性的な疲労や燃え尽き症候群につながる

マイクロストレスを「一段高い視点」から捉える

日々のマイクロストレスから一歩距離を取り、物事を客観的に、大局的な見方で捉えることが重要です。

マイクロストレスを感じた際に、そのストレスが自分の人生においてどれほどの重みを持つのか、冷静に評価するためです。

このような視点を持つことで、脳が「この問題は人生全体で見れば大したことではない」と客観視しやすくなります。

つまり、仕事での小さな失敗や部下とのトラブルに対し、感情が極端に左右されるのを防ぐことができるのです。

同記事によると、幸福度の高い人は「些細なことを些細なこととして認識する」術を身につけており、嫌なことを受け流す能力に長けているといいます。

「一段高い視点に立つ」ために最も効果的なのは、仕事とは無関係の、自分にとって有意義な活動や人間関係を生活の中に取り入れることです。

たとえば、趣味やスポーツ、ボランティアなど、仕事とは切り離されたグループにいくつか所属すれば、視野が広がり、仕事のストレスを人生の一部として捉えることができるでしょう。

人生の焦点を仕事だけに限定せず、複数の「逃げ場」や「基盤」を持つことが、マイクロストレスの影響を軽減し、その影響が自分自身の核まで侵入するのを防ぐ「防御壁」となるのです。

参考:

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「マイクロストレス その正体と対処法」

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まとめ

管理職が「ストレスの限界」に達する原因は、多くの場合は単一の大きな出来事ではなく、日常の些細な「マイクロストレス」の無自覚な蓄積にあります。

マイクロストレスは、一つひとつは日常の些細な問題に起因するものであり、つい軽視されがちです。

しかし、マイクロストレスは積み重なるとやがて大きなストレスになり、気づいたときには心身が完全に疲弊し、常に燃え尽き症候群寸前で足元が揺らいでいる状態になりかねません。

そのため、マイクロストレスは放置することなく、日々適切に対処することが大切です。

本記事の内容を実践することで、マイクロストレスをうまく解消し、生産的かつ健康的に働き続けるのに役立ててください。

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