エンゲージメントサーベイとは、「従業員が会社や仕事に対してどれだけ熱意を持ち、積極的に関与しているか」を定量的に測るための調査です。

もし、エンゲージメントサーベイの数値が低い場合は、結果を受け止めたうえで課題を分析し、適切な改善策を講じる必要があります。

本記事では、エンゲージメントサーベイの数値が低い企業にありがちな問題や、その際にとるべき対処法について解説します。

従業員のエンゲージメントを高めることで、組織全体の生産性や人材の定着率を向上させたい方は、ぜひ参考にしてください。

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エンゲージメントサーベイの数値が低い状況とは

以下は、ミイダス株式会社が企業の経営者・役員を対象に行った調査結果をまとめたものです。

▼Q. エンゲージメントサーベイを通じて可視化された会社の課題とは?

回答問題点
組織への満足度が低い(33.8%)組織への帰属意識が低い
経営陣への満足感が低い(25.5%)
組織からの承認実感が低い(22.5%)
評価や報酬に対する納得感が低い(21.6%)
個人の成長実感が低い(25.0%)自己成長への満足度が低い
仕事に対する意欲や満足感が低い(23.5%)
能力開発支援・研修などへの満足度が低い(10.3%)
社内コミュニケーションに課題がある(24.5%)人間関係の満足度が低い
上司と部下の間の関係性がよくない(19.1%)

上記をもとに、「エンゲージメントサーベイの数値が低い」組織は具体的にどのような問題を抱えているのか、詳しく解説します。

組織への帰属意識が低い

エンゲージメントサーベイの数値が低い企業では、従業員の「組織への帰属意識」が低い傾向にあります。

ここでいう帰属意識とは、「自分は会社の一員である」という一体感や、「会社に貢献したい」という愛着および忠誠心を指します。

帰属意識の低さは、従業員個人だけでなく、組織全体に以下のような深刻な悪影響を及ぼしかねません。

  • 離職率の増加:会社への愛着がないため、従業員は少しでも不満があれば転職や離職という選択を取りやすくなる
  • 生産性の低下:「会社に貢献したい」という意欲が薄いため、業務への自主性や積極性が失われがち。その結果、仕事の質や効率が低下し、組織全体の生産性が停滞する
  • チームワークの希薄化:「組織の一員」という意識が薄いため、チーム内や部署間での情報共有や協力が円滑に進まない。また、トラブル発生時などに「自分事」として助け合う姿勢が生まれず、組織力の弱体化を招く
  • 組織の停滞:従業員が会社に期待していないため、職場環境や業務改善に関する建設的な意見や提言が出にくくなる。組織の課題が放置され、イノベーションが生まれず、結果として成長が停滞する

従業員の帰属意識が低い原因は組織によってさまざまであり、一概に特定できるものではありません。

しかし、多くの場合、「組織が目指す方向性や目標が社内に浸透していない」ことが大きな問題点として考えられます。

組織の目指す方向性が明確に共有されていないと、従業員は自分の仕事が組織全体の目標とどう関連しているか分からず、仕事の意義を実感しづらくなるのです。

したがって、従業員の帰属意識を高めるためには、まず組織の方向性や目標を全メンバーへ共有し、浸透させることが必要不可欠です。

自己成長への満足度が低い

従業員の「自己成長への満足度」が低い場合、エンゲージメントサーベイの数値も低くなる可能性が高いです。

自己成長への満足度が低い状態とは、以下のように、仕事を通じて自分のスキルや能力が向上している実感や、将来のキャリアに対する期待感が持てていない状態を指します。

  • キャリアの停滞感:「今の仕事を続けても、目標とするキャリアには近づけない」「新しい知識やスキルが身についていない」と感じている
  • 業務のマンネリ化:ルーティンワークばかりで挑戦的な業務がなく、仕事に対する意欲や満足度が低下している
  • 学習機会の不足:会社が提供する能力開発支援(セミナーや研修など)が不十分で、自分で学び成長する機会を与えられていないと感じている

上記のような状態を放置すると、組織の生産性低下や、優秀な人材の流出といった深刻な問題を引き起こしかねません。

このような状態に陥る主な原因としては、やはり「個人と組織のベクトルが合っていない」ことが挙げられます。

自分が何を求められているのか、成長した先に何があるのかというキャリアパスが不明確なため、努力の方向を見失いやすくなります。

したがって、組織として目指す方向性と、各メンバーの役割や具体的な業務内容を明確に対応させることが重要です。さらに、従業員の成長を促すために、必要に応じて能力開発の機会を提供することも求められます。

人間関係の満足度が低い

仕事上の関係者同士の関係性が良好でなく、心理的な安心感が得られていない、いわゆる「人間関係の満足度」が低い企業では、エンゲージメントサーベイの数値が低くなりがちです。

具体的には、以下のような状態を指します。

  • コミュニケーションの壁:社内コミュニケーションに課題があり、関係者間で業務に必要な情報共有や相談ができていない(例:他部署との連携がスムーズでなく、書類の承認作業で頻繁に業務が滞る)
  • 信頼関係の欠如とストレス:上司と部下、同僚同士など、メンバー間の関係性が悪く、従業員がストレスや孤独感を感じている(例:上司が高圧的な態度をとるため、部下が自分の意見を述べるのを躊躇してしまう)

このような状態では、コミュニケーション不足によって必要な情報が伝達されず、業務の停滞が起きやすくなります。

さらに、人間関係のストレスは、従業員の離職やメンタルヘルス不調にもつながりかねない深刻な問題です。

人間関係はさまざまな要素が複雑に絡み合うため、「これをすれば完璧に改善する」という特効薬はありません。

しかし、会社や上司が従業員一人ひとりを大切に扱う姿勢を見せることは、お互いに尊重し合う文化を組織内に根付かせ、結果として良好な人間関係を構築する手助けとなるでしょう。

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エンゲージメントサーベイの数値が低いこと自体は問題ない

エンゲージメントサーベイの数値は高いに越したことはありませんが、低いからといって、それ自体がすぐに大きな問題となるわけではありません。

大切なのは、サーベイの結果を受け止め、そこから課題を分析し、適切な改善アクションを起こすことです。

以下は、先ほど紹介したミイダス株式会社の調査の中で、エンゲージメントサーベイ実施後にアクションを「起こした企業」と「起こしていない企業」で、業績がどのように変化したかを尋ねた結果です。

起こした企業起こしていない企業
向上/やや向上した75.0%35.0%
変わらない15.4%39.0%
やや低下/低下した5.8%16.0%

このデータは、サーベイを実施して現状を把握するだけでなく、その結果に基づいて具体的な改善策を実行に移すことが、最終的な企業業績の向上に直結していることを強く示しています。

つまり、エンゲージメントサーベイの「結果」は現状を知るためのスタート地点に過ぎず、その後の「アクション」こそが、組織に成果を生み出す鍵であるといえます。

参考:

ミイダス「【エンゲージメントサーベイを使いきれてない?】比較調査の結果、サーベイ後にアクションを起こした企業の方が「生産性」が高く、「業績が向上」していることが明らかに!」

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エンゲージメントサーベイの数値が低いときの対処法

ハーバード・ビジネス・レビューの記事(以下、同記事)をもとに、エンゲージメントサーベイの数値が低いときに、会社や上司がとるべき対処法を紹介します。

組織の目標や方向性を浸透させる

先ほども述べたように、組織に対する従業員の帰属意識を高めるためには、組織の目標や方向性を浸透させることが必要不可欠です。

そのためのアプローチとして、同記事では以下の3つを提唱しています。

アプローチ具体例
【組織のミッションと個人の価値観を一致させる】会社のミッションに社会的な意義を持たせることで、従業員が「社会変革の一翼を担っている」と感じ、組織に適合していると実感できるようにする「環境に優しい技術を通じて、持続可能な未来を実現する」というミッションを通じて、開発担当者に「自分が開発している省エネ家電は、地球の環境問題解決に貢献している」と実感させる
【組織の目標と業務の関係を示す】「自分の日々の業務が組織の目標にどう貢献しているか」を従業員が理解できるようにする経理・会計担当者の業務を単なる数字の管理ではなく、「会社の財政状態を正確に把握し、持続的な成長のための戦略的な意思決定を可能にしている」仕事と認識させる
【職務記述書を改善する】職務記述書(ジョブディスクリプション)に、各々の仕事が組織の目指す方向性にどう直結し、どのような意義を生み出すのかを明記する【業務内容】 既存システムの保守・管理。障害発生時の対応【組織への貢献】 当社の「24時間365日の安心提供」という目標を支える核心的な役割です。システムの安定稼働を維持することで、全国数百万人のユーザーへのサービス中断を防ぎ、顧客の信頼獲得に貢献します

これらのアプローチを通して、従業員は「自分の仕事は会社だけでなく、社会全体にとって意味がある」と感じられるようになり、結果として組織への帰属意識も高まるのです。

「挑戦の機会」を提供する

従業員の自己成長への満足度を高めるには、「挑戦の機会」を提供することが必要不可欠です。

人は自信の持てない仕事を避ける傾向があり、成長の実感を得るには、まず難しい課題や問題に挑戦し、それを乗り越える経験が必要だからです。

具体的には、以下のようなアプローチが効果的とされています。

【1. 「内発的な興味」と「挑戦の機会」を提供する】

従業員自身が「面白い」と感じる分野を自ら見つけ、新しいスキルを身につけることができる機会を与えます。

▼具体的なアプローチ

アプローチ具体例
【ジョブローテーション】従業員が社内の複数ポジションを経験する機会を提供し、自分の内発的興味(本当にやりたいこと)を見極められるようにする(ビールメーカー・ハイネケン社の事例)新卒が梱包や開発、醸造など複数の部署を経験した後、最も興味を感じた部署を選択できるようにする
【新たな挑戦を奨励】従業員に対して失敗を恐れず、難しい課題や問題にチャレンジすることを促す業務時間の20%(週に1日など)を、本来の業務外で自身の興味や成長につながる新しいアイデアや技術研究に費やすことを公式に認める

【2. 自主性を高め、能力発揮を促す】

従業員に大きな裁量(自主性)と責任を与えることで、自分の能力を最大限に発揮し、その結果として成長を実感しやすくなります。。

アプローチ具体例
【権限の付与】戦略的な決定を下す自由と、その結果に対する責任を従業員に与える文化を醸成する(ネットフリックス社の事例)「会社の利益になる」と判断した場合、経営陣や上司の事前承認なしで、一定額以下の経費を従業員自身が決済できるようにする
【自由度の向上】日々の業務の進め方を、従業員が臨機応変に変えることを認める個人のタスク管理や資料作成に使用するソフトウェア、ハードウェア(マウスやキーボードなど)を従業員自身が選べるようにする

尊重と称賛の文化を育む

前述したように、エンゲージメントサーベイの数値と人間関係の質には強い相関関係があります。

同記事によれば、従業員の人間関係への満足度を高めるには、「安心して意見を言える環境」と「相互に認め合う仕組み」を構築することが効果的とされています。

以下は、そのための具体的なアプローチです。

【1. 心理的安全性の確保】

心理的安全性とは、『組織内で恐怖や不安を感じることなく自分の意見を言える状態』を指します。

人間関係の不満の多くは、この「何を言っても大丈夫」という信頼関係(心理的安全性)の欠如から生じます。

▼アプローチ例

  • 上司の「質問」と「傾聴」:上司が一方的に指示を出すのではなく、部下に対して「あなたはどう思う?」「助けが必要なことはある?」と積極的に問いかけ、発言を促す場(1on1ミーティングなど)を設ける
  • 失敗の共有:挑戦の結果として起きた失敗を責めるのではなく、教訓を学ぶための機会として扱い、それをチーム内で共有する
  • 匿名での意見収集:チーム内で話しにくいテーマや人間関係の課題について、匿名アンケートなどを活用して意見を収集し、改善につなげる

【2. 承認・称賛の文化の構築】

お互いの貢献を認め合う職場文化は、組織内のポジティブな感情と絆を強める効果が期待できます。

▼アプローチ例

  • 感謝の見える化:部署や役職に関係なく、日々の「ありがとう」や貢献をメッセージカードや社内SNSツールで送り合い、誰もが貢献を評価される機会を作る
  • 公的な称賛の機会:週次・月次のミーティングで、従業員の目立った成果だけでなく、「影の努力」や「チームへのサポート」といった行動にも焦点を当てて、公式に称賛する時間を設ける

これらのアプローチを組み合わせることで、従業員のエンゲージメントの土台となる「安心感」と「相互尊重」のある職場環境が醸成されるのです。

参考:

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「従業員エンゲージメントをいますぐ高める3つの方法」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「職場のストレスを減らし、従業員エンゲージメントを高める方法」

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まとめ

エンゲージメントサーベイの数値が低い場合、従業員の「組織への帰属意識」や「人間関係」に何かしら問題が潜んでいる可能性が高いです。

ただし、サーベイの数値が低いからといって、それ自体がすぐに深刻な事態へと発展するわけではありません。

大切なのは、結果から課題を特定し、改善行動につなげることです。

本記事の内容を実践し、従業員のエンゲージメントを高めることで、組織全体の生産性や人材の定着率の向上に役立ててください。

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