「エンゲージメントサーベイの回答率が悪い…」
「エンゲージメントサーベイに積極的に参加してもらうにはどうすればいい?」
このような悩みや疑問を持つ方も多いでしょう。
エンゲージメントサーベイを通じて組織全体の実態を正確に知るためには、回答率は高い方がいいことは言うまでもありません。
本記事では、エンゲージメントサーベイの回答率が悪い原因や、回答率を上げるコツについて解説します。
サーベイの回答率をアップさせ、自社の業績や文化の改善につながる質の高い意見を得たい方は、ぜひ参考にしてください。
エンゲージメントサーベイの回答率が悪い原因

以下は、バヅクリ株式会社が社会人男女を対象に実施した調査の中で、「エンゲージメントサーベイに関する不満」として挙げられた主な意見です。
▼Q. 働きやすさや組織への満足度等に関する社内アンケートに対して、どのような不満を感じたことがありますか?
| 不満 | 回答割合 |
|---|---|
| 回答した結果が何に活かされているかわからない | 60.6% |
| 回答するのに時間がかかる | 49.4% |
| 回答した課題や不満に対する解決策が実施されていない | 44.8% |
| アンケートの回答依頼頻度が多い | 33.3% |
| 回答した課題や不満に対し実施された解決策が効果的とは思えない | 28.2% |
| 実施目的が不明確である | 22.1% |
この結果から、エンゲージメントサーベイの回答率が上がらないのは、大きく分けて以下の2つが原因といえます。
- 回答するのが面倒
- 回答する必要性を感じない
回答するのが面倒
従業員にとって、回答するのが面倒だと感じるエンゲージメントサーベイの特徴として、以下のような点が挙げられます。
- 質問数が多い:回答に要する時間が長くなり、時間的・心理的な負担が増加する。その結果、回答が後回しになったり、途中で中断されたりするリスクが高まる
- 同じような質問を繰り返す:「なぜ同じことを何度も聞かれるのか」という心理的なストレスを感じさせ、回答へのモチベーションを低下させる
- 自由記述の質問が多い:選択式に比べて回答に数倍の時間がかかるうえ、自分の考えを文章にまとめるという心理的な負荷が高いため、回答を避ける大きな理由になり得る
- 調査の実施頻度が高い:とくに、以前の調査結果に基づく改善活動が目に見えない場合は、「また同じことをやるのか」という不満やストレスにつながり、回答への協力意識が薄れてしまう
多くの従業員は通常業務で忙しく、その合間を縫ってサーベイに回答しなければなりません。
サーベイに回答しても自身の評価に直接つながるわけではないため、ただでさえモチベーションが上がりにくい中で、調査内容が上記のような時間的、心理的負荷の大きいものであれば、回答しない従業員が多くなるのは当然といえます。
したがって、エンゲージメントサーベイを実施する際には、回答者側の視点を常に意識し、最小限の負担で回答できるように質問数や形式を工夫することが重要です。
回答する必要性を感じない
従業員がエンゲージメントサーベイに「回答する必要性を感じない」と考えるのは、以下のような情報の不透明さと改善行動の欠如が原因と考えられます。
- 実施目的が明確でない:自分が提供した情報が、組織内でどのように分析され、最終的にどのような意思決定やアクションにつながるのかというプロセスが不透明な場合、従業員は「忙しい時間を使ってまで回答する必要はない」と感じてしまう
- 回答に対する改善行動が伴わない:課題や不満を指摘しても、会社や上層部が具体的な改善行動を実行しなければ、従業員は「回答してもどうせ何も変わらない」と諦めの感情を抱き、以後のサーベイへの参加意欲を失ってしまう
上記の要素は、従業員がサーベイを「会社側の一方的な情報収集」と捉えており、自分自身や職場の状況を改善するための「対話」や「機会」であると感じていないことを示しています。
したがって、サーベイの回答率を向上させるためには、
- 実施目的を明確にする
- 結果を共有する
- 改善案を策定し、実行に移す
といった流れで、サーベイが「有意義な変化を生み出すツール」であることを従業員に実感させることが重要です。
参考:
PR TIMES「社員の約70%がエンゲージメントサーベイに不満、施策なきサーベイはエンゲージメントを低下させる」
エンゲージメントサーベイの回答率の重要性

エンゲージメントサーベイの回答率は、一般的には高い方が望ましいとされています。
回答率が高いほど、より多くの従業員の意見が反映されるため、サーベイの結果が組織全体の実態を正確に表しているとみなせるためです。
また、回答率が高いことは、「会社が自分たちの意見を求めている」と従業員が認識し、サーベイに高い信頼を寄せている証でもあります。
逆に回答率が低い場合、回答がとくにエンゲージメントが高い人、あるいは強い不満を持つ人など、特定の層の意見に偏ってしまうリスクが高まるのです。
これまで数多くの従業員調査に関わってきた株式会社リクルートマネジメントソリューションズによると、回答率は80%を超えれば良好、60%を下回ると悪いというのが一般的な目安だといいます。
もちろん、エンゲージメントサーベイはただ回答率が高いだけでは不十分であり、組織の業績や文化の改善につながる質の高い意見が得られなければ意味がありません。
したがって、企業としては単に回答率を上げることよりも、従業員が安心して本音を伝えられる環境を作り、サーベイの結果を必ず次のアクションにつなげることが何よりも大切だといえます。
参考:
リクルートマネジメントソリューションズ「データから社内の現実を見る」
エンゲージメントサーベイの回答率を上げるコツ

ハーバード・ビジネス・レビューの記事をもとに、エンゲージメントサーベイの回答率を上げるコツを紹介します。
サーベイの目的を明確に示す
エンゲージメントサーベイの回答率を上げるためには、サーベイを実施する目的を従業員へ明確に示すことが重要です。
先ほど紹介したバヅクリ株式会社の調査結果が示すように、自分が提供した情報が組織内でどのように分析され、最終的にどのような意思決定やアクションにつながるのかというプロセスが不透明だと、従業員は「回答する意欲」を失う可能性が高いからです。
目的を説明する際は、以下の3つのポイントをわかりやすく伝える必要があります。
- サーベイの最重要目的:サーベイを実施する根本的な理由と、それが会社と従業員双方にもたらす最大のメリットを明確に伝える。単に現状を把握するだけでなく、より良い未来を築くための手段であることを強調する(例:「今回エンゲージメントサーベイを実施するのは、皆さんから集めた意見をもとに、より働きがいのある職場環境を創り上げるためです。」)
- 回答の機密性と匿名性:誰が、どこまで、どのように回答データを見るのか、そして個人が特定されることは絶対にないことを明確に保証する(詳細は後述)
- 回答結果の活用方法:サーベイの結果がどのように具体的なアクションや改善策につながるのか、その後のプロセスを説明する。「回答してもどうせ何も変わらない」という懸念を払拭し、回答する意義を示す(例:「サーベイの結果は各部署の管理職から皆さんに共有し、1ヶ月以内に改善アクションプランを策定・実行してもらいます」)
これらの情報を、サーベイ実施前に上層部からのメッセージなどを通じて全従業員に丁寧に伝えることが、回答率アップの鍵となるでしょう。
回答者の負担を軽減する
バヅクリ株式会社の調査結果からも明らかなように、多くの従業員は通常業務で忙しく、エンゲージメントサーベイに回答するのを面倒だと感じています。
そのため、サーベイの回答率を上げるためには、回答者の時間的・心理的な負担を軽減する工夫を施すことが必要不可欠です。
具体的には、以下のようなポイントを意識するとよいでしょう。
- 質問数の絞り込み:本当に測定したい核となる項目に絞り込み、設問数は最小限にする(回答時間は長くても20分以内に収まるよう設計するのが理想)
- シンプルな表現の使用:専門用語や曖昧な表現を避け、誰にでもすぐに意味が理解できる質問文を作成する
- 回答形式の統一:極力、選択式(5段階評価など)を採用し、自由記述欄を減らす。自由記述は負荷が大きいため、最も重要な項目だけに留める
- モバイル対応:移動中など、ちょっとした隙間時間にもスマートフォンで回答できるようにする
- 進捗バーの表示:現在、何問中何問まで回答したかを示す進捗バーを表示することで、終わりが見えるようにする
- 保存機能の実装:途中で中断しても回答内容が保存される機能(一時保存機能)を搭載し、都合の良いときに再開できるようにする
- 所要時間の明記:すべての回答にかかる目安時間を明記し、回答時間を確保しやすくする
これらの工夫により、従業員はストレスなくサーベイに取り組めるようになり、結果的に回答率の向上につながることが期待できます。
機密性・匿名性を確保する
エンゲージメントサーベイの回答率を上げるには、サーベイの機密性や匿名性を確保することが必要不可欠です。
従業員の多くは、「自分の回答が特定されれば、人事評価や人間関係に悪影響を及ぼすのではないか」という不安を抱えています。
そのため、機密性・匿名性が確保されていないサーベイには、従業員は積極的に参加しようとしないでしょう。仮に参加してくれたとしても、本音での回答を避ける傾向にあり、有意義な意見が得られない可能性が高いです。
実際に、株式会社識学が社会人男女を対象に行った調査では、「社員満足度調査の回答に本音以外を書いた経験がある」と答えた人のうち、45.9%がその理由として「人に見られていそう」と述べているほどです。
このような従業員の不安を払拭するためには、以下の2つの方向性から対策を講じ、「サーベイの回答者が特定されないこと」を確実に保証する必要があります。
【1. 従業員への事前説明(言葉による約束)】
- 調査目的と約束の明確化:調査の目的を明らかにし、「調査結果が特定の個人に結びつくことは絶対にない」ことを会社として約束する
- 懸念の払拭:回答が人事評価や処遇に不当に利用されないことを強調し、従業員が抱くであろう不安や懸念を事前に解消する
【2. 特定が難しいことの実証(仕組みによる証明)】
- 外部サービスの活用:外部企業が運用するサーベイサービスを利用するなど、社内の人がデータに直接アクセスして個人を特定することが困難であることを示す
- 複数の回答方法の提供:「Web上での回答」と「紙での回答」など複数の回答方法を用意し、従業員がより安心できる方法を自由に選べるようにする
結果の共有と改善策の実施
先ほども述べたように、エンゲージメントサーベイの回答率が悪い大きな要因の一つは、「回答に対する具体的な改善行動が伴わない」点にあります。
逆に、自分の声が「真剣に検討されている」「組織を変える力になり得る」と確信できれば、従業員は積極的にサーベイに協力してくれるようになります。
実際に、米国で行われた研究によれば、「自分たちの不満や意見に対処してもらえている」と従業員が感じている企業では、そうでない企業と比べてサーベイの回答率が24%高いという結果が出ているほどです。
したがって、サーベイの回答率を上げるには、ただサーベイを実施するだけでなく、結果を共有したうえで、改善策を策定・実行することが必要不可欠です。
サーベイ結果の共有から改善策実施までの具体的な流れとして、以下の4つのステップが有効とされています。
- 結果を共有する:良い結果も悪い結果も隠さず、従業員に透明性をもって結果を共有する
- フィードバックを収集し分析する:サーベイの結果について、なぜそのような結果になったのか、従業員のフィードバックを収集する。収集した意見を整理して問題の根本原因を特定し、実現可能性やインパクトを考慮して取り組むべき課題の優先順位をつける
- アクションプランを作成する:分析で明らかになった課題から、最も重要で影響の大きいものを1〜3つに絞り込む。取り組む課題に対し、「具体的な行動(何をやるか)」「担当者(誰が責任を持つか)」「完了予定日(いつまでに終えるか)」を明確に設定する。作成したアクションプランは従業員に共有し、意見が行動につながっていることを実感させる
- アクションプランを実行する:立てた計画通りに責任を持って行動し、進捗状況を正直にチームへ定期的に共有する。改善行動が「サーベイの結果に基づいている」ことをくり返し伝え、従業員の意見が活かされていることを強調する
参考:
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「従業員の声を組織にうまく反映させる方法」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「従業員の真の姿を見極める調査技法」
PR TIMES「「社員満足度調査」へのホンネ。7割以上の人が「本音以外を書いたことがある」と回答」
まとめ
エンゲージメントサーベイの回答率が悪い原因や、回答率を上げるコツについて解説しました。
エンゲージメントサーベイは一般的に、回答率が高いほどより多くの従業員の意見が反映されるため、組織全体の実態を正確に知ることができます。
自社の業績や文化の改善につながる質の高い意見を得るためには、サーベイの回答率が高いことは必要不可欠な条件といえます。
エンゲージメントサーベイの回答率低迷に悩んでいる方は、本記事の内容を実践し、回答率アップに役立ててください。

