このページのまとめ

  • 女性が活躍するためには、結婚・出産後も働き続けられる職場環境の整備が大切
  • 女性が少ない職場は「ポジティブ・アクション」で女性を積極的に採用することが可能
  • 女性の活躍を促進するために、女性従業員のロールモデルを育成すると良い

女性の活躍は、現代社会での課題です。女性活躍推進法の改正もあり、企業は女性活躍に向けた施策の実施が求められています。女性が長く働ける職場環境が整備できておらず、どのような対策をとれば良いか悩んでいる企業も多いことでしょう。このコラムでは、女性が活躍できる社会を実現するための対策や政府の取り組みについて解説します。

女性活躍の現状

女性の就業率や平均勤続年数は以下のとおりです。

就業率

厚生労働省によると、2020年度における生産年齢人口(15歳から64歳)の就業率は、70.6%です。2001年度の57.0%から、上昇傾向にあります。上昇の背景には、女性の働き方に対する、考え方の変化が影響しています。従来は、「子どもが大きくなるまで、仕事をせずに子育てを行う女性」が多い状況でした。しかし、近年では、「子どもができても仕事を続ける女性」が増加傾向にあります。このことから、女性の就業率が増加しており、仕事と子育てを両立する女性の増加している状況だと考えられます。

参照元:厚生労働省「男女共同参画白書令和3年版

管理職の割合

女性の管理職割合も増加傾向にあります。厚生労働省によると、平成29年度の管理職割合は、次のとおりです。

役職割合
係長級18.4%
課長級9.6%
部長級10.9%
課長級以上6.3%

女性管理職の割合は、日本だけで見ると増加傾向にあります。しかし、世界的に見ると、管理職に占める女性の割合は低い状況にあります。たとえば、フィリピンは48.9%、アメリカは43.8%に対し、日本は13.2%です。女性の管理職は増加傾向にあるものの、今後のさらなる取り組みが重要と言えるでしょう。

勤続年数

平成29年度における女性の平均勤続年数は9.4年です。こちらも昭和60年の6.8年と比べると増加傾向にあります。しかし、平成29年度における男性の平均勤続年数が13. 5年であることを考えると、まだまだ短い状況です。女性の場合、出産や育児を理由に仕事を辞めるケースが多く、勤続年数が短くなる原因となります。仕事と育児の両立を可能にする仕組み作りがよりいっそう求められるでしょう。

賃金

賃金では、男女間の格差が見られる傾向にあります。平成29年度では、男性の給与所得を100%とした場合、女性の給与所得の平均は73.4%でした。25%以上もの差が、賃金で発生しています。賃金の差が出る理由として、管理職の割合や、勤続年数の違いが影響しています。男性よりも管理職が少なく、勤続年数が短い影響が、賃金にも反映されていると考えられるでしょう。

正社員比率

女性の正社員比率は、2018年時点で44%です。男性の78.8%と比べると低い状況と言えるでしょう。正社員にならない理由として、「正社員の仕事がないから」と回答している女性が多くいます。就職での男女格差もあるため、格差を是正し、女性が正社員として勤務できる社会も求められています。

参照元:厚生労働省「女性の活躍の推進のための対策について

女性活躍推進法

女性活躍を推進するために、2016年に「女性活躍推進法」が制定されました。女性活躍推進法とは、「自らの意思によって働くことを希望する女性が、個性と能力を十分に発揮できるような社会を目指して施行された法律」です。次の3つの考えを軸に、制定されています。

  • 女性の採用や昇進機会を増やし、性別に関係なく活躍できる社会を作る
  • 仕事と家庭の両立を可能にする
  • 女性の仕事と家庭に関して、本人の意思が尊重されるようにする

2022年4月に女性活躍推進法が改正され、労働者数が101人以上300人以内の企業が対象になりました。改正によって対象となる企業の範囲が広がったため、自社が適用されるかどうかを確認しましょう。

参照元:厚生労働省「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の概要

2022年4月の改正内容

女性活躍推進法は、2022年4月に改正が行われました。現在は、労働者数301人以上の企業が対象ですが、改正により「労働者数101人以上300人以内」の企業も対象になるため、注意しましょう。労働者の範囲には、正社員だけでなく契約社員やパート、アルバイトも含まれます。

女性活躍推進法の適用対象となる労働者は次のとおりです。

  • 期間の定めなく雇用されている者
  • 一定の期間を定めて雇用されている者であって、過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者又は雇入れの時から1年以上引き続き雇用されていると見込まれる者

参照元:厚生労働省「令和4年4月1日改正女性活躍推進法の義務化について

行動計画の策定と届出

女性活躍推進法では、行動計画の策定と届け出が必要になります。次の4つの手順で進めましょう。

  • 女性の活躍に関する状況把握と課題分析
  • 行動計画の策定と社内周知、公表
  • 行動計画を策定した旨の届出
  • 取組の実施と効果の測定

まずは、自社で女性労働者が活躍できているかどうか調査します。
その後、次の4つの項目を調査し、課題を明らかにしましょう。

  • 従業員のうち、女性の割合
  • 男女の平均継続勤務年数の差
  • 月ごとの労働時間の状況
  • 管理職のうち、女性が占める割合

課題が分かったら、改善に向けた数値目標と施策を決めます。施策は「行動計画」として作成し、社内周知と公表を行いましょう。行動計画には、期間と数値目標、施策内容、施策の実施時期を記載します。厚生労働省が行動計画の例も公表しているため、参考にしてください。

行動計画作成後は、管轄の労働局に提出しましょう。窓口に直接提出することはもちろん、郵送や電子申請での提出も可能です。
最後に、計画の実施と振り返りを行いましょう。取り組みが実施できたか、数値目標は達成できたかなどを調査します。結果をもとに計画を練り直し、目標達成を目指しましょう。

参照元:厚生労働省「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう

女性活躍の状況を公表

女性活躍推進法では、女性活躍状況の公表も義務付けられています。自社のホームページ、または、厚生労働省が運営している「女性の活躍推進企業データベース」で公表を行いましょう。公表が必要な項目は、「⼥性労働者に対する職業⽣活に関する機会の提供」と「職業⽣活と家庭⽣活との両⽴に資する雇用環境の整備」の2項目です。

参照元:厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース

女性活躍を推進するメリット

女性活躍推進の推進には、次のようなメリットがあります。

企業のイメージ向上

女性の活躍が推進できている企業は、企業イメージの向上が期待できます。女性活躍推進法が制定されてはいますが、女性が働きやすい職場環境や整備はできていない企業も多い状況です。そのようななかで、女性の活躍を実現できている企業は、柔軟な姿勢があると評価されるでしょう。求職者からはもちろん、取引先などからのイメージアップも期待できます。

政府から優良企業認定を受ける

女性の活躍を推進すると、政府から優良企業認定を受けることができます。「えるぼし認定」が有名で、求人票や商品、広告に「えるぼし認定マーク」の使用が可能です。認定を受けた企業は、自社が女性活躍を推進している企業であることをアピールできます。取引先や顧客へのイメージアップも期待できるでしょう。

えるぼし認定を受けるためには、次の5項目に取り組み、認定を受けることが必要です。

  • 採用
  • 継続就業 
  • 労働時間等の働き方
  • 管理職比率
  • 多様なキャリアコース

参照元:厚生労働省「女性活躍推進企業認定えるぼし・プラチナえるぼし認定

女性活躍を推進する方法 

女性活躍を推進するためには、具体的な施策の実行が重要です。育休などの制度改善や、評価基準の変更などを行いましょう。

産休・育休から復帰したあとのサポートを充実させる

女性の活躍を妨げてしまっている要因として、職場復帰後のサポートが不十分であることが挙げられます。社内に託児所を設けたり、リモート勤務を推奨したりするなど、小さな子どもがいても働ける環境を整えましょう。

評価制度を平等にする

性別に関係なく、評価制度を平等にしましょう。勤続年数が評価基準になれば、出産で退職してしまう女性は不利になるでしょう。勤続年数ではなく、成果を上げた従業員を評価する体制を作ることが重要です。

多様な働き方の実現

在宅勤務やフレックスタイム制度など、多様な働き方を実現しましょう。小さな子どもがいても、在宅勤務であれば働けるという従業員もいます。あるいは、フレックスタイム制度導入により、子どもを保育園や学校に送り届けてから出社できる制度を設けるのも一つの方法です。

残業を減らす

ノー残業デーを実施するなど、残業をしない日を作ることも効果的です。残業を減らすことで、仕事と家庭を両立させながら働ける従業員が増えるでしょう。

女性の採用率を増やす

女性が活躍できるように、女性の採用率を増加させましょう。女性の割合が少ない職場は、「ポジティブ・アクション」を活用するのがおすすめです。ポジティブ・アクションとは、一般職などの雇用管理区分ごと、または役職ごとの女性割合が4割以下だった場合に、女性を有利に採用できる制度です。一般的には、男女雇用機会均等法があるため、特定の性別を優遇した採用はできません。ただし、ポジティブ・アクションの場合であれば、求人に「女性募集」などと記載し、採用活動が実施できます。

女性管理職を増やす

女性管理職の割合を増やし、女性従業員が管理職を目指せる環境を整えましょう。たとえば、キャリア開発や研修を行い、管理職に対するモチベーションを上げる方法があります。あるいは、女性従業員のキャリアの見本となる女性管理職を育成することも大切です。

女性の活躍を増やすための課題 

女性の活躍を促進するためには、次のような課題を解決する必要があります。

育休・産休からの復帰が難しい

女性の活躍が進まない理由の一つが、産休や育休からの職場復帰が難しいことです。「子どもを預ける場所がない」「子どもが体調を崩しても休めない」などの状況が女性の活躍を妨げています。内閣府の調査によると、第1子の出産を機に退職を選ぶ女性従業員が、46.9%を記録しました。約半分の女性従業員が職場復帰を難しいと考え、退職を選んでいると考えられます。育休や産休の整備は、企業にとって重要な課題だと言えるでしょう。

参照元:内閣府「第1子出産前後の女性の継続就業率及び出産・育児と女性の就業状況について

ロールモデルの不足

女性のロールモデルが不足していることも要因の一つです。女性のロールモデルがいない企業では、女性従業員であっても男性従業員をロールモデルにします。すると、働き方の違いから、ロールモデルとして参考にできないケースもあるでしょう。女性のロールモデルがいれば、「結婚・出産後も社会で活躍できる」という自信と希望を与えることができます。仕事と家庭を両立させながら働ける環境を整え、女性のロールモデルを確立させることが女性の活躍を促します。

まとめ

女性が活躍できる社会を作るためには、結婚・出産後も長く働ける職場環境を整えることが急務です。社内に託児所を設置したり、リモート勤務を推奨したりすることで、女性の職場復帰率は向上するでしょう。自社で取り組めることから着実に実践していきましょう。