採用活動は企業の未来を左右する重要な仕事です。労働人口が減り続ける日本では、採用の失敗が企業に大きなダメージを与えるようになっています。

リクルートワークス研究所の調査によれば、中小・中堅企業の約3割が「求人に応募がない」と答えており、人材不足が慢性的なリスクになっています。

また、マイナビの中途採用実態調査によると、企業が「早期離職」と捉える勤続期間は平均9.5か月以内とされ、苦労して採用した人が1年も経たずに辞める現実が浮かび上がっています。

応募が集まらないという量の問題だけでなく、採用した人が期待した成果を発揮できない「質のミスマッチ」も大きな課題です。

本記事では、採用で起こりがちな失敗を心理学と組織の両面から整理し、その背景にある理由をわかりやすく説明します。そのうえで、採用プロセスを科学的・データドリブンな方法へと改善するためのヒントをご紹介します。

参考:

リクルートワークス研究所「中小・中堅企業の事業課題・人材課題に関する調査「人手不足・採用編」」 

株式会社マイナビ「中途採用実態調査(2024年)」 

「AI面接」で面接の工数を大幅に削減

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採用現場で起こりやすいミスとは

採用におけるミスは、単なる担当者の不注意だけで起こる訳ではありません。人の思い込みや癖、そして選考の仕組みそのものに潜む問題が重なって起こります。

ここでは特に起きやすい3つのミスと、その背景にある理由を見ていきます。

認知バイアスによる直感の落とし穴

ハーバード・ビジネス・スクールなどの行動経済学の研究によれば、人間の脳は膨大な情報を短時間で処理するために思考の近道(ヒューリスティック)を使います 。採用面接のように時間と情報が限られた場面では、面接官の直感が無意識に候補者評価を左右してしまいます。

具体的には以下のようなバイアスが知られています。

バイアス発生の仕組み面接で見られる兆候
ハロー効果一つの肯定的な特徴が人物全体の評価に影響する有名大学出身だから他の能力も高いと思い込む
ホーン効果一つの否定的な特徴が全体評価を下げる服装が乱れているだけで仕事も雑だと決めつける
類似性バイアス自分と共通点のある相手を好意的に評価する出身地や趣味が同じ候補者を無批判に高評価する
確証バイアス最初の印象を補強する情報だけを集め、反証を無視する好印象を持った候補者に肯定的な質問ばかり投げる
ステレオタイプ・バイアス性別や年齢など属性に基づいて判断する「女性だからサポート業務が得意だろう」と決めつける

採用支援ソフトを提供するHarverやエグゼクティブサーチ企業Insight Executive Searchの資料によると、これらのバイアスはどんなに経験豊かな面接官でも完全に避けることが難しく、意識して対策を取らないと無意識に発動してしまうと説明されています。

期待と現実のギャップが生む問題

次に起こりやすいミスは、求人票や面接で企業の良い面ばかりをアピールし、実際の仕事の厳しさや課題を伝えきれないことです。心理学ではこれを「RJP(Realistic Job Preview)の欠如」と呼びます。

魅力を強調したいあまり、ネガティブな部分を隠してしまうと、入社後に「思っていたのと違う」と感じるギャップが生じます。

面接では良い点と大変な点の両方を正直に伝えることが大切です。

自由な面接が評価をばらつかせる

3つ目は、面接の質問や評価が人によってバラバラなケースです。会社によっては面接官ごとに質問が違い、評価の基準も「あの人が良さそう」などあいまいな言葉に頼っていることがあります。

SHRMやハーバード・ビジネス・レビューの記事では、こうした自由な面接(非構造化面接)は将来の活躍を予測する精度が低く、運任せに近いと指摘されています 。評価の基準があいまいだと、面接官の好みや直感に左右されやすくなります。

参考:

Harver“Overview of common hiring biases”
Insight Executive Search“Psychology of Hiring: Overcoming Cognitive Biases” 

SHRM“The Definitive Guide to Structured Interviewing” 

Harvard Business Review“Improve Decision Making & Avoid Pitfalls in Hiring” 

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採用ミスが会社全体に与える影響とは

採用ミスは広告費用や紹介料が無駄になるだけではなく、会社全体の業績や雰囲気にも大きな影響を与えます。ここでは、コスト面、職場の雰囲気、そして仕事の進み具合という3つの観点でその影響を考えます。

採用ミスによって生じる多額のコスト

米国の求人サイトCareerBuilder が実施した雇用調査によると、雇用主の75% が「過去に採用ミスを経験した」と回答し、その影響を受けた企業では1件あたりの平均コストがほぼ17,000ドルに達したと報告されています 。

SHRM(米国人材マネジメント協会)の試算では、役職によっては悪い採用のコストが年収の数倍に膨らみ、管理職以上では10倍を超えることもあるとされています。

例えば年収 1,000 万円の部長を誤って採用すると、総損失が 1 億円規模になる可能性があるというわけです。この金額には、再採用の広告費や紹介料だけでなく、成果を出せなかった期間の給与や、退職を促すための費用も含まれています。

職場の雰囲気への悪影響

お金だけでなく、職場の雰囲気にも悪い影響が出ます。チームに合わない人がいると、仕事のできる人のやる気が落ちてしまったり、管理職の負担が増えたりします。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事でも、個人を批判するとチーム全体の士気が下がることが紹介されており、不適切な人材の存在自体が職場を弱体化させる要因になります。悪い影響が広がると、優秀な社員が辞めてしまう連鎖が起こることもあります。

本当は得られたはずの成果が得られない

ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、仕事に適した従業員は適していない従業員に比べて生産性が2倍以上高いと報告されています 。

そうした人材を採用できない場合、本来得られたはずの売上やイノベーションが失われる「機会損失」が発生します。目に見える費用よりも、こうした見えない損失の方が、競争の激しい環境では大きな痛手になるのです。

参考:

Behavioral Essentials“The Costs of a Bad Hire” 

Millman Search“Effects and Costs of a Bad Hire Compound Over Time” 

Dice“The Cost of Bad Hiring Decisions” 

Harvard Business Review“The Real Way to Quiet Hire” 

Manager Tools“HBR: How Criticizing in Private Undermines Your Team” PXT Select“

The Cost of a Bad Hire and How to Avoid It” 

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採用ミスを減らすための方法

採用の失敗を完全に無くすことはできませんが、工夫次第でその確率を大きく減らすことはできます。ここでは実践しやすい3つの方法をご紹介します。

構造化面接を取り入れる

「構造化面接」はあらかじめ決めた質問を同じ順序で聞き、統一した基準で採点する方法です。

SHRMのガイドラインによると、構造化面接の方が自由な面接よりも将来のパフォーマンスを予測する精度が2倍高いといわれています。

構造化面接を導入する際は、求める能力を具体的な行動で定義し、その行動を引き出す質問と評価基準を用意します。

評価基準は5段階などに分け、具体的な行動例と結び付けることで面接官ごとのばらつきを抑えられます。

仕事内容の良い面も大変な面も伝えて、応募者自身に判断してもらう

合うかどうかは候補者自身にも判断してもらう必要があります。RJP(Realistic Job Preview)はそのための手法で、入社前に仕事の魅力だけでなく、残業や泥臭い調整業務などの現実も包み隠さず伝えます。

先に大変な点を伝えると辞退者が増えそうに思えますが、実際は後からすぐ辞める人を減らし、結果的に定着率を高める効果が期待できます。

参考:

SHRM“Transform Interviewing Into Strategic Talent Selection” 

SHRM“The Definitive Guide to Structured Interviewing” 

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採用ミスが起きたときの対処とは

どんなに気をつけていても、採用ミスが起きることはあります。大切なのは放置せず、早めに公正な対応を取ることです。ここでは問題が見つかった後にできることを紹介します。

早めのフィードバックと改善計画

まずは本人に期待と現実の差を具体的に伝え、改善のチャンスをつくることが第一歩です。PIP(パフォーマンス改善計画)は「Performance Improvement Plan」の略で、課題や目標、期限、サポート内容を書き出し、本人と共有して改善に取り組む仕組みです。

人事評価や目標管理ツールを提供する米国企業Latticeによると、このPIP用のテンプレートでは明確な目標、定期的な振り返り、公正な評価をセットで行うことが大事だとされています。

日本では解雇規制が厳しいため、会社が十分な指導と支援をした記録を残すことも重要です。

別の部署への配置転換や静かな採用

一つの仕事でうまくいかなくても、別の部署で力を発揮できる場合があります。ハーバード・ビジネス・レビューでは、自社のスタッフのスキルを見直して新しいポジションに当てはめる「クワイエット・ハイアリング」が注目されています。

適切な配置転換は採用にかかったコストを無駄にせず、人材の活躍の場を広げることにつながります。日本の労働法でも、解雇を避けるための努力として配置転換の検討が求められているので、人事と現場が連携して柔軟に対応することが重要です。

参考:

Lattice“Performance Improvement Plan Template” 

Employment Hero“Performance Improvement Plan Template” 

Harvard Business Review“The Real Way to Quiet Hire” 

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テクノロジーを使って採用の質を上げる

テクノロジーは採用担当者をサポートし、公平性と効率を高めるための強力な味方です。ここでは代表的なツールを紹介します。

適性検査や性格診断ツール

ツール名特徴提供企業
SPI3日本で広く使われている適性検査で、基礎能力と性格特性を測定します。カオナビなどのシステムと連携し、入社後の配置にも活用できます。リクルートマネジメントソリューションズ
CUBIC個人の資質だけでなく組織全体の分析にも強みがあります。現有社員からハイパフォーマーモデルを作成し、候補者との適合度を判定します。CUBIC 提携会社各社
ミキワメ性格検査に特化し、自社のカルチャーとのフィット感をAIで分析してA〜E判定を提示します。使いやすい UI で現場マネージャーも利用しやすい点が特徴です。リーディングマーク

リファレンスチェックのサービス

サービス名特徴活用ポイント
back check候補者の同意のもと、過去の上司や同僚にオンラインでアンケートを送り、コンプライアンスリスクや入社後のオンボーディングに役立つ情報を集めます。業界最大規模のシェアを持ち、第三者評価を簡単に取得できる
ASHIATOエン・ジャパンが提供するサービスで、候補者の「活躍の足跡」を確認することを重視しています。ポジティブな要素や入社後のマネジメント方法のヒントを得るのに役立ちます。チケットプランや月額プランがあり、柔軟に導入可能
アールナインプロによるインタビューを行い、全体のまとめや各質問への回答、入社後の活躍可能性まで詳しくレポートします。定性情報を深く掘り下げたい場合に適している

AIを活用した面接ツール

最近はAIを活用した面接や分析ツールも増えています。たとえば、NALYSYS AI面接では、プロの面接スキルを備えたAIが、書類選考から一次面接を代行し、録画・文字起こしや評価レポートを通じて確認できるため、スクリーニングの工数を大幅に削減します。

また、AIが候補者の回答に応じて質問を掘り下げ、公平で客観的な評価を行うのが特徴です。

候補者は夜間や土日も含めて 24 時間面接を受けることができ、日程調整の手間による辞退を防ぎ、詳細な評価レポートから人事が会うべき候補者かどうかを判断できます。

参考:

NALYSYS「AI面接」

「AI面接」で面接の工数を大幅に削減

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採用は「点」ではなく「線」で考える

採用を成功させるには、面接のコツやツールだけに頼るのではなく、全体の流れを見直すことが大切です。求める人物像の設定から応募者集め、選考、内定、入社後のフォローまで、一つの流れとして整え、ミスやバイアスが入りにくいようにしましょう。

ツールやデータはあくまで意思決定を助ける補助役です。最終的には、採用担当者が自社にとっての「優秀さ」を理解し、候補者一人ひとりに誠実に向き合う姿勢が必要です。

科学的な手法と人間らしさを両立させることで、採用は「イチかバチかの賭け」から「戦略的な投資」へと進化していきます。

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多くの企業がエンゲージメントサーベイで組織を「可視化」しても、具体的な改善アクションに繋がらない課題を抱えています。NALYSYSは、この「可視化の次」を示すAI搭載マネジメントサポートツールです。

サーベイ結果や適性検査、過去の面談記録などをAIが複合的に分析し、個々の従業員に最適なアクションプラン(1on1での具体的な質問内容や声かけの方法など)を提案します。

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