AIが目覚ましい進化を遂げている昨今、採用活動に「AI面接」の導入を検討している企業も多いでしょう。
しかし、AI面接の最適な運用方法は、企業が抱える課題や状況によって異なります。
具体的な戦略を立てずにAI面接を導入してしまうと、期待するような効果が得られず、導入にかかるコストや労力を無駄にすることにつながりかねません。
本記事では、AI面接を導入するまでの流れや、導入にあたっての注意点を解説します。
AI面接の導入を成功させ、採用活動の効率および質の向上を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
日本国内におけるAI面接の導入状況

日本国内において、AI面接を導入している企業はまだまだ少ないのが現状です。
実際に、米国のフォーチュン500企業*の99%が採用活動にAIを活用しているのに対し、日本の大企業*ではわずか1%に留まっているという調査結果もあるほどです(*いずれも従業員数5,000人以上の企業が対象)。
とはいえ、日本でもAI面接の普及が徐々に進んでいるのは間違いありません。
たとえば、AI面接サービス「SHaiN」の導入企業数は、2019年10月時点の100社から、2023年1月時点では400社と、約3年間で4倍に増加したといいます。
もちろん、AI面接の導入企業数が増加傾向にあるのはSHaiNに限った話ではなく、将来的には日本でも米国と同様に、AI面接がどの企業でも当たり前のように実施される可能性が高いと考えられます。
このような来るべき時代に向けて、今のうちからAI面接への準備を進めておくことが重要だといえます。
参考:
PR TIMES「大手企業が導入続々「AI面接官」開発のVARIETAS、シリーズA 6億円資金調達を実施」
PR TIMES「AI面接サービスSHaiN 導入企業 400社を突破」
AI面接導入の流れ

AI面接を導入するまでの大まかな流れについて解説します。
1. 導入目的の明確化
AI面接を導入する前に、まずは導入目的を明確にすることが必要不可欠です。
採用面接に関する課題は企業によってさまざまであり、その課題によって最適なAI面接サービスや活用方法も当然違ってきます。
たとえば、「面接にかかるコストを最優先で減らしたい」企業と、「より質の高い人材を確実に獲得したい」企業とでは、選ぶべきAI面接サービスが大きく異なるはずです。
導入目的が曖昧なままだと、自社に合ったサービスや活用方法が選択できず、結果として、導入にかかるコストや労力を無駄にすることにつながりかねません。
したがって、現在の採用面接における具体的な課題を特定したうえで、AIにその課題の解決をどこまで担わせるかを事前に決めておくことが重要なのです。
その際、後々AI面接導入の成否を測るために、具体的な数値目標を設定しておくとよいでしょう(例:選考にかかるコストを20%削減する)。
2. AI面接サービスの選定
導入目的が明確になったら、続いてAI面接サービスの選定に移ります。
AI面接サービスを選ぶにあたって、確認すべきポイントは以下の通りです。
| 【利用料金】自社の採用規模等に基づき、最も費用対効果の高い体系を選ぶ | ・初期費用はどれだけ発生するか・対応数に応じた従量課金制か・期間内の利用が無制限の定額制か |
| 【機能】採用面接プロセスのどこをAIに任せたいかによって選定する | ・「分析型(面接での振る舞いや回答をもとに、AIがデータ分析を行う)」か・フルAI型(AIが面接も含むプロセスの全行程を代行する)か |
| 【操作性】企業側・応募者側双方にとって使いやすいサービスを選ぶ(操作が複雑だと現場の負担が増え、応募者が使いにくいと志望度が低下するリスクがある) | ・企業側(採用担当者)にとって、設定作業やレポート確認が直感的か・応募者側にとって、デバイスや通信環境に依存せず簡単に面接を受けられるか |
| 【セキュリティ対策】強固なセキュリティ対策を行っているサービスを選定する | ・システムへのアクセス権限が厳密に管理されているか・取得したデータをどのように利用するか、利用目的が透明化されているか・ISMSやプライバシーマークなど、第三者による認証を取得しているか |
| 【倫理的配慮】採用の公平性を担保し、差別的な評価を避けられるサービスを選ぶ | ・性別や年齢など、特定の属性に対する偏り(バイアス)を排除するための調整や監視プロセスが組み込まれているか |
たとえば、採用面接プロセスにおいて「毎年一次面接に人手やコストがかかり過ぎている」という課題を抱えている企業であれば、
- 定額制:コストが一定のまま大量の応募者に対応できる
- フルAI型:日程調整から面接の実施、データ分析までをすべてAIが代行してくれる
などの要件を満たすAI面接サービスを選ぶとよいでしょう。
3. 社内トレーニングの実施
AI面接サービスを適切かつ効果的に運用できるよう、社内トレーニングを実施します。
社内トレーニングで教育すべきポイントは以下の通りです。
| 【システム操作と応募者対応】システムを滞りなく動かし、トラブル時に迅速に対応できるようにする | ・システム管理:評価基準の設定・変更や応募者データの管理方法などを習得する・応募者対応:応募者からの関する問い合わせやトラブル発生時の対応フローを共有する |
| 【AI評価レポートの活用】AIの分析データを活用し、効率的かつ質の高い採用につなげる | ・レポートの解読:AIが出す各評価項目が、自社の設定基準とどう対応しているかを理解する・面接への応用:レポート内容を参考に、今後の面接で深掘りすべきポイントや質問を特定するスキルを身につける |
| 【AIの限界と倫理的責任】AIの限界を理解することで、倫理的なトラブルを防ぎ、公平な採用を維持する | ・バイアスの理解:AI評価には偏り(バイアス)が潜む可能性があることを理解し、特定の属性に注意を払う・ 最終判断の責任:AIは補助ツールであり、最終的な合否判断は必ず人間が行うことを徹底する |
なお、社内トレーニングは座学だけでなく、実際のシステムを試験運用する形で実施すれば、より実践的なスキルが身につくでしょう。
4. 導入効果の測定
AI面接は導入したからといって、必ずしも効果的に作用するとは限りません。そのため、導入後は定期的に効果測定を行う必要があります。
効果測定で着目すべき主なポイントは以下の3点です。
| 【業務効率化】採用活動にかかる工数がどれだけ削減されたかを測定する | ・応募から内定までの平均期間が短くなったか ・採用担当者の面接やスクリーニングにかかる時間がどれだけ減ったか |
| 【評価の質】AIが「求める人材」を正しく選別できているか、また、評価に偏りがないかを検証する | ・AIの評価スコアと、人による面接評価との間に大きなズレがないか・AI評価の結果が、特定の属性に偏っていないか |
| 【費用対効果】導入した費用に見合う成果が出ているかを判断する | ・AI面接の運用コストに対して、工数削減や採用人材の質向上、離職率の低下などによるコスト効果が上回っているか |
効果測定の結果をもとに、AI面接を今後も継続していくか、もしくは廃止するか、あるいは運用方法を変えるかなどといった戦略を立てます。
AI面接導入にあたっての注意点

ハーバード・ビジネス・レビューの記事をもとに、AI面接を導入するにあたって注意すべきポイントを紹介します。
「AIは完璧ではない」ことを心得る
AI面接を導入する際は、「まだまだAIは完璧ではない」ことを心得て、過信しすぎないことが重要です。
AI面接サービスの多くは、応募者の面接データを記録し、社内の「優秀な社員(ハイパフォーマー)」のデータと比較することで、応募者をスコアリング・順位付けします。
このような仕組みは一見公平的に見えても、実は大きな「偏り(バイアス)」を生む原因になり得ます。話し方や身振り、表情などは、その人の育った環境や背景が強く影響しているためです。
AIは、すでに社内にいるハイパフォーマー、つまり「特定の属性や背景を持つ人」のデータだけをもとに学習すると、自然と「その人たちに似たタイプ」ばかりを選びやすくなります。
その結果、採用される人材が偏ってしまい、組織の多様性が失われてしまう危険性があるのです。
また、AIが評価できるのは言葉や身振りなど、プログラムで簡単に数値化できる要素に限られるとされています。
裏を返せば、人を評価する上で不可欠な、以下のような「人間的な要素」は評価から漏れてしまうことになります。
- 人柄・信念:誠実さ、粘り強さ、責任感など
- 信頼性・評判:同僚や上司からの評価、企業文化への適合性など
- 潜在能力:未知の課題に対する適応力、将来的なポテンシャルなど
- 人間的魅力:他者への気配り、チームを鼓舞する力など
数字には表れない応募者の人間的な価値を見逃して、本当に優秀な人材を不採用にしてしまう事態を避けるためにも、AIの評価スコアを鵜呑みにしないよう注意が必要です。
応募者の印象に影響を与える
採用プロセスにAI面接を組み込む際は、応募者の印象や選考への参加意欲に影響を与える可能性を考慮する必要があります。
実際に、米国で行われた研究によると、採用プロセスにAIを活用している企業において、応募者には以下のような傾向が見られたといいます。
- AIに対して良い印象を持っている応募者:最後まで選考に参加する割合が高かった
- AIに不安や不信感を持っている応募者:AIとのやり取りが必須になると選考を辞退する割合が高かった
つまり、AI面接を導入すると、企業が意図せずAIに抵抗のない人だけを選考に残し、AIに懸念を抱く優秀な人材をふるい落としてしまう危険性があるのです。
参考:
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「AIのポテンシャルを生かすも殺すも人間次第」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「AIは職場と従業員にどのような変化をもたらしているか」
まとめ
AI面接を導入するまでの流れや、導入にあたっての注意点を解説しました。
採用面接に関する課題は企業によってさまざまであり、その課題によって最適なAI面接サービスや活用方法も当然違ってきます。
具体的な戦略を立てずにAI面接を導入してしまうと、期待するような効果が得られず、導入にかかるコストや労力を無駄にすることにつながりかねません。
本記事の内容をもとに、AI面接の導入を成功させ、採用活動の効率および質の向上を目指してください。

