「AI採用はどのように始めればよい?」とお悩みの人事・採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
AIを採用活動に導入したい際は、自社が抱える問題の分析や目標設定からスタートします。
本記事では、AIを採用活動に導入するメリット・デメリットや活用シーンを紹介。また、AI採用を始めるときの手順や成功のポイントを解説します。さらに、数あるAI採用ツールから適切なサービスを見つけるための基準も紹介します。
AI採用とは

AI採用とは、企業がAI(Artificial Intelligence、人工知能)の技術を活用して採用活動を行うことです。
AI採用を導入することで、採用活動におけるスクリーニングの効率化やマッチング精度の向上が可能です。書類選考・面接の工数削減につながり、採用担当者は深掘りを行う面接や候補者に対するフォローに注力できるようになります。
AI採用に注目が集まる背景

AI採用に注目が集まっている背景には、最新のAI技術を導入することで、採用活動の質や効率が向上すると証明されつつあるという事実があります。
海外の研究結果においてもAI採用の有用性について記述されており、世界的に注目が集まっていることが分かります。
世界有数の経済学研究者であるブライアン・ジャバリアン氏とルカ・ヘンケル氏らの論文では、コールセンター職の採用面接に応募した約7万人を対象に自然型フィールド実験を実施しています。
実験では、人間の採用担当者による面接とAI音声エージェントによる面接を行いました。実験の結果、AI音声エージェントの採用面接のほうが内定率や入社率、定着率が高くなりました。
AI音声エージェントの採用面接は人間の面接官による採用面接と比べて内定率が+12%、入社率が+18%、4ヶ月後の定着率が+16〜18%ほど増加したという結果を示しています。
また、バイアスの減少もみられました。「性別によって差別された」と報告した求職者の人数は、人間が採用面接を担当した場合の約半分の人数でした。
また、研究結果をふまえて「THE BATCH」の同記事では、採用活動へのAI活用は雇用側と求職者の両方にメリットがあることを示唆しています。
参考:
AI採用を導入するメリット

AIを採用活動に導入すると、採用活動を効率的に進められたり、公正な評価ができたりするなどのメリットがあります。
ここでは、AI採用を導入する3つのメリットを紹介します。
採用業務を効率化できる
AI採用を導入する大きなメリットは、採用業務を効率化できることです。
企業の採用活動には多大な時間を要します。特に初期のスクリーニング段階では、人の目で一つひとつの応募書類をチェックし、一人ひとりの求職者と面接を実施することになります。採用活動において非常に骨が折れる業務であり、多くの工数を割くことになるでしょう。
AIを採用活動に導入することによって、スクリーニングをAIが代替してくれます。工数を大幅に削減することが可能です。
一定の基準で評価できる
AI採用を導入するメリットには、一定の基準で評価を行えることが挙げられます。人間が面接を行う場合、その人が持つ先入観や経験が評価に影響を及ぼすことがあります。
一方でAIは同じアルゴリズムで評価を行うため、一定の基準で評価することが可能です。アルゴリズムを適切に設計すれば、バイアスのない公正な評価ができます。
営業時間外にも採用業務が進行する
AI採用を導入するメリットの一つは、いつでも採用業務を進行させられることです。
人が面接を担当する場合、基本的に営業時間内での対応になります。応募者のスケジュールが合わない場合、選考を辞退されてしまうこともあるでしょう。
AIであれば、営業時間外でも面接を行うことが可能です。夜間や土日も面接の実施が可能になり、日程が合わず離脱してしまう応募者を最小限に抑えられます。
AI採用を導入するデメリット

AIを採用活動に導入することにはデメリットや問題点も存在します。ここでは、AI採用を導入する際に留意するべき3つのデメリットを紹介します。
AIに対して抵抗感を覚える人もいる
AI採用を導入する懸念として、AIに対して抵抗感を覚える人もいることが挙げられます。
AIは比較的新しい技術であり、一般世間のAIに対する理解はまだ十分に広まっていません。そのため、なかにはAIを活用した採用に対して不信感を覚えたり、選考を辞退したりする応募者もいます。
AI採用を導入するときは、応募者の抵抗感を和らげるための対策を講じましょう。
たとえば、AIを活用する選考段階を開示したり、最終的な合否判断には人間が介在することを示したりすることが有効です。
学習データに偏りがあると評価も偏る
AI採用を導入する際に生じうる問題点は、学習データに偏りがあると評価も偏ることです。
AIはアルゴリズムに基づいて公正な評価を行うことが可能ですが、学習させるデータが偏っている場合、評価にも偏見が生じてしまいます。
AI採用を導入する際には、学習データそのものからバイアスの原因となる要素を可能なかぎり排除しましょう。
カルチャーフィットの見極めは難しい
AI採用を導入する際に考えられるデメリットとして、カルチャーフィットの見極めが難しいことが挙げられます。社風は明確に言語化・数値化することが難しい領域であるため、データを用意することは簡単なことではありません。
AIにカルチャーフィットの判断をさせる場合は、カルチャーを詳細に解析して構造化データに変換することが必要です。
また、「AIが担う範囲をスクリーニングに限定し、カルチャーフィットは人間の採用担当者による面接でチェックする」と割り切ることも検討しましょう。
AI導入が可能な採用プロセス

採用活動においてAIを活用できる主な場面は、下記のとおりです。
| 採用プロセス | AIの活用方法 |
| 採用計画の策定 | 既存の模範社員のデータ分析の結果や蓄積された採用のプロフェッショナルのノウハウをもとに、採用計画の策定・提案を行う。 |
| 求人票の作成 | 希望条件や過去の採用データを参考に、募集要件を定義する。募集要件の内容に沿って、求人票を自動作成する。 |
| 採用ブログの執筆 | プロンプトの内容に従い、企画やターゲット設定、文章作成を自動で行う。 |
| スカウト | 設定した求人要件に基づいて、マッチする候補者を自動で選定し、スカウトメールを自動で作成・送信する。 |
| マッチング・レコメンド | データをもとに求人要件に対するマッチング率を企業に提示し、レコメンドを行う。また、候補者に対しても、登録情報や閲覧履歴を参考にマッチング率が高い求人をおすすめ表示する。 |
| 応募者への連絡 | 面接の日程調整メールやリマインドメールの文章を自動で作成・送信する。また、選考の段階ごとのフォローアップの連絡を行う。 |
| 書類選考 | 募集要項にある必須要件を満たしているかどうかを判断し、スクリーニングを行う。また、さまざまな指標に基づいてスコアリングをしたり、コンピテンシー評価を行ったりする。 |
| 適性検査 | 最適な採用基準を設計し、その基準に対してマッチ度判定を行う。 |
| 面接 | 蓄積された採用ノウハウを活かし、AIアバターがプロフェッショナルの面接を再現する。また、面接を通して得られた情報をもとに公正な評価を行う。 |
自社の採用活動においてAIで解決したい課題はどのプロセスにあるのかを明確にし、ツールの導入を検討しましょう。
採用活動にAIを導入する際の流れ

採用活動にAIを導入する際の基本的なプロセスは下記のとおりです。
- 採用の課題と目標設定
- システム要件定義
- 費用対効果の試算
- 社内体制の整備
- データの整理
- AI採用ツールの導入
- 効果測定・改善
以下で、AI採用の各プロセスにおいてやるべき内容を詳しく解説します。
1.採用の課題と目標設定
まずは、AIを導入することによって解決したい課題や達成したい採用目標を設定します。
採用活動の現状を分析し、抱えている問題点を抽出します。「採用担当者がスクリーニングに追われている」「人によって評価基準にばらつきがある」など、課題をすべて書き出してください。
目標設定を行うときは、「スクリーニング工数を50%削減する」「定着率を30%向上させる」などのように、数字を使用して具体的に設定しましょう。
2.システム要件定義
採用活動における課題の解決や目標の達成のために、AI採用ツールのシステム要件定義を行います。
AI採用ツールにはさまざまな種類があります。システム要件定義を行うことで、必要な機能が搭載されたAI採用ツールを選べるようになります。
また、既存の採用管理システム(ATS)と連携できるかどうかも、重要な要件の一つです。
3.費用対効果の試算
まずは現在の採用活動でかかっているコストを算出します。採用活動の各プロセスにかかっている工数や費用を確認しましょう。
次に、AI採用ツールの導入・運用にかかるコストを算出します。必要に応じてAI採用ツールを提供している業者に問い合わせを行い、AI採用ツールを使用した場合の工数や費用を確認してください。
また、AI採用ツールを導入することによって得られる効果を予測します。どれほど数値が向上するのか、どれほどコストカットができるのかを算出し、AI採用ツールを導入する費用対効果を確認しましょう。
4.社内体制の整備
AIを採用活動に導入するにあたって、倫理・プライバシーへの対応をしましょう。
AIによるバイアスを排除する運用ルールの策定や、個人情報保護方針の改定を行います。AIを選考に利用することやその目的、データの利用範囲などについて明記する必要があります。
また、人事や採用担当者に対してAIを使いこなすためのリテラシー教育を実施することも大切です。
5.データの整理
AI採用ツールの導入には、AIが何を正解として学習するべきかを示す「教師データ」と、実際に運用する際にAIに読み取らせる「入力データ」が必要です。
教師データは、自社で活躍している社員の特性データや過去の合否判定基準を整理することで用意します。また、内定辞退や早期離職をした候補者のデータも学習に有効です。
入力データは、AIが解析対象とするデータです。応募者の履歴書や職務経歴書、求人票の内容、適性検査の結果、過去の採用データなどが入力データにあたります。入力データはAIが解析しやすいように、可能なかぎりフォーマットを統一しましょう。
6.AI採用ツールの導入
準備が整ったら、AI採用ツールを導入します。
複数のAI採用ツールを比較し、無料トライアルで機能やサポート体制を確かめます。比較検討を行ったのち、自社の採用計画に適したサービスを選択しましょう。
AI採用ツールを導入するときは、段階的な導入が推奨されます。最初から全面移行するのではなく、特定の職種や中途採用などの分類で範囲を限定し、テスト導入することがおすすめです。
AI採用ツールの導入によって理想的な効果が得られたら、本格的に導入を進めましょう。
7.効果測定・改善
AI採用ツールの導入後は、効果測定および改善を定期的に行いましょう。
AIのスコアと人間の評価を照らし合わせて、AIの精度を検証します。また、AIが高評価をつけた候補者が実際に入社後に活躍しているかどうかを追跡します。
AIの評価と結果に乖離がある場合は、AIのアルゴリズムや判断基準をチューニングします。
そのほか、AI採用を導入した選考を受けた候補者からアンケートを採ることもおすすめです。ネガティブな意見があれば、その要因を分析して改善につなげます。
AI採用ツールを選ぶときの基準

ここでは、AI採用ツールを選ぶときの基準について解説します。
ここで紹介する内容を参考に、自社の採用活動に適したAI採用ツールを見つけましょう。
システムの透明性
システムの透明性は、AI採用ツールを選ぶときの重要な判断基準の一つです。
AI採用ツールに設定された評価基準やAIが出したスコアが確認できるかどうかをチェックしましょう。
機能
AI採用ツールを選ぶときは、自社の採用活動における課題を解決してくれる機能が備わっているかどうかをチェックします。
AI採用ツールの主な類型と機能は下記の表のとおりです。
| AI採用ツールの類型 | 機能の概要 |
| 書類選考型 | 履歴書からスキルや経験を抽出・スコアリングする。 |
| 適性検査・分析型 | コンピテンシー(行動特性)や価値観のマッチングを行う。 |
| AIアバター型 | AIアバターがリアルタイムで会話形式で面接を実施し、深掘り質問を行う。 |
| チャットボット型 | 応募者に対する一次対応や面接日程の自動調整を行う。 |
| 動画解析型 | 面接の様子を録画し、表情や話し方、内容からコミュニケーション能力を解析・評価する。 |
標準機能のほか、オプションで利用できる機能も確認しましょう。
ツールの操作性
AI採用ツールを選ぶときは、操作性を管理側、ユーザー側の両面でチェックしてください。
管理画面を確認し、AI採用ツールを使用する人事や採用担当者が問題なく操作できるかどうかを確認します。
また、ユーザーとなる求職者側の操作性を、スマートフォン・パソコンを使ってテストします。UI・UXが優れているか、エラーがないかをチェックしましょう。
料金体系・費用額
AI採用ツールを検討する際は、料金体系や費用を確認します。
AI採用ツールの主な料金体系は、固定料金制・従量課金制・併用型です。AI面接導入の費用は、採用のスケールや採用範囲、採用期間、機能などの要素で変動します。また、初期費用やサポート利用料などがかかるケースもあるため、必要となるコストを事前にチェックしましょう。
サポート体制
AI採用ツールは設定や運用に専門知識を要する場合があるため、伴走支援の質が重要です。
初期設定や社内トレーニングの導入支援の手厚さや、トラブル対応の迅速さなどをチェックします。また、導入後のカスタマーサクセスに対応しているかどうかも確認しましょう。
セキュリティ
採用活動では極めて機密性の高い個人情報を扱うため、AI採用ツールのセキュリティの高さは重要なチェック項目です。
AI採用ツールのサービスを提供している企業がISO27001(ISMS認証)を取得しているかどうかは、判断基準の一つになります。
また、アクセスコントロールやIPアドレスの制限、暗号化などについてもチェックしてください。
まとめ
AI採用を導入することで得られる主なメリットは、採用業務の効率化や公正な評価、リードタイムの短縮などができることです。
AI採用はその有用性の高さから注目が高まっており、多くの企業が採用活動に導入しています。
AIを採用活動に導入する際は、課題・目標の設定やシステム要件定義から始めます。そして費用対効果の試算や社内体制の整備、データの整理を行い、導入に向けた準備を進めてください。
準備が整ったらさまざまなAI採用ツールを比較検討し、自社の採用活動に最適なサービスを選択しましょう。

