仕事ができない年上の部下を持つ上司には以下のような悩みを持っている人もいるでしょう。
- 年上の部下はプライドが高くサポートしづらい
- 自分は仕事ができると思い込んでいるため、上司の意見を聞かない
- 年上の部下から信頼を得られていないと感じることがある
本記事では、仕事ができない年上の部下の特徴や、その扱い方について解説します。さらに、年上の部下を成長させる方法についても紹介しているので、仕事ができない年上の部下の管理に悩んでいる管理職の人は参考にしてください。
年上の部下を持つ上司の課題
年上の部下がいる上司の課題について、ハーバード・ビジネス・レビューに掲載されているリーダーシップ開発コンサルタント会社のCEOであるジャック・ゼンガー氏らによる記事を参考に解説します。
信頼されにくい
年下の上司は、経験の少なさから、年上の部下からの信頼を得るのが難しい場合があります。アイデアや意見、判断力など、経験豊富な年上の部下から疑問視される可能性があります。
信頼関係を築くためには、謙虚な姿勢で学び続け、小さな成功体験を積み重ねていくことが重要です。また、年上の部下と積極的にコミュニケーションを取り、自分の考えやビジョンを明確に伝える努力も必要です。
経験や知識が不足している
年下の上司は、最新の知識や研修を受けていることが多いですが、実務経験の不足から、専門知識や深い洞察力に欠けるという印象を与えてしまう可能性があります。
会社特有の過去の事例や稀なトラブルなどは、経験を通じてしか学ぶことができません。年上の部下から積極的に学び、過去の事例を研究するなど、知識・経験の不足を補う努力が求められます。
ロールモデルとして認識されない
年下の上司が優秀であっても、年上の部下からはロールモデルとして認識されにくい場合があります。年上の部下は、自分よりも社会経験が浅い年下の部下に対して、上司としての能力があるのか疑問を抱き、信頼されにくい傾向があります。
年下の上司は、年上の部下に比べて、人生経験が少ないため、年上の部下の苦労や不安が理解できず、配慮に欠けた言葉をかけてしまうこともあるでしょう。さらに、経験に基づく深い洞察力や長期的な視点も不足しがちだといえます。
年上の部下を持つ上司は、マネジメントやリーダーシップ、コミュニケーションといったスキルを身に付けることが必要となります。
部下への配慮が欠けている
年下の上司は、長時間労働を当然のように実施し、年上の部下の苦労に共感できないといった部下への配慮が欠けていることがあります。部下への配慮が欠けていることは、冷淡な性格であるからではなく、人生経験の少なさから、他者の状況を理解するのが難しいことが原因とされています。
部下の状況や感情に気を配り、共感的に対応することで、良好な人間関係を築き、部署や会社全体の結束力を高めることができます。
戦略的な視点が不足している
長期的なビジョンを持ち、戦略的に物事を考えるには、業界経験や過去の出来事から学ぶ洞察力が必要です。年下の上司は、経験不足から、短期的な視点に偏りがちで、戦略的な思考が不足しているという印象を与えてしまう可能性があります。
過去の事例を研究し、年上の部下から助言を求めるなど、戦略的な思考力を養う努力が求められます。
参考:
仕事ができない年上の部下の特徴
仕事ができない年上の部下の特徴について、ハーバード・ビジネス・レビューが公開する経営コンサルティング会社の創設者であるウィリアム・オンケン・ジュニア氏らによる記事を参考に解説します。
問題を上司に丸投げする
問題が起きたときに、上司へ報告するだけで解決策を提示しない受け身の姿勢は、仕事ができない部下の典型的な特徴といえます。このような部下は、問題解決能力が低いだけでなく、主体性や責任感も欠如している可能性があります。
上司としては、問題を報告された際にすぐ解決策を提示するのではなく、部下自身に考えさせるために以下のような質問を投げかけることが効果的です。
例: 「どうすれば解決できると思うか考えてみて」 「他に考えられる方法は何があると思う?」 |
上記の例のように、部下の思考力を刺激し、問題解決能力の向上を促すことができます。また、小さな問題でも、まずは自分で考えて解決策を提示するように指導することで、主体性と責任感を養うことができます。
「指示待ち人間」である
指示された業務をこなすことはできても、その結果を報告するだけで、次に何をすべきかを上司に判断してもらおうとする「指示待ち人間」である部下は、結果的に「仕事ができない」と判断されてしまいます。
上司は、部下に指示を出す際に、期待する成果物だけでなく、その後のアクションや判断基準も明確に伝える必要があります。また、業務の進捗状況を定期的に確認し、以下のように部下自身に次に取るべき行動を考えさせることで、主体的な行動を促すことができます。
例: 「この結果を受けて、次に何をすべきだと思うか?」 「どのような判断基準で行動すれば良いと思うか?」 |
上記の例のような言葉を投げかけ、部下に自主性や自律性を身に付けさせることを目指しましょう。
積極的に行動しない
仕事を進める上で、上司のサポートが当たり前と考え、自分自身で積極的に行動しようとしない部下がいます。このような部下は、依存心が強く、責任を負いたくないといった傾向があります。上司は、部下に過度に依存させないように、適切な裁量を与え、責任感を持たせる必要があります。
また、部下が自分で判断し、行動できるような環境を整備することも重要です。部下から協力を求められた際には、以下のように部下自身に考えさせる質問を投げかけ、自主性を促すようにしましょう。
例: 「まずは自分でできる範囲で試してみて」 「他に考えられる方法はないかな?」 |
仕事ができない部下に、小さな成功体験を積み重ねさせることで、自信をつけさせ、主体的に行動できるよう導くことが重要です。
参考:
仕事ができない年上の部下を成長させる方法
年上の部下の中には人生経験が豊富なために、プライドが高い人もおり、扱いにくいと感じる上司もいます。特に、自分の能力を過大評価している場合、指摘を受け入れにくく、成長を促すのが難しいでしょう。
年上の部下を成長させる方法について、ハーバード・ビジネス・レビューに掲載されているエグゼクティブ・コーチであるリズ・キスリク氏による記事を参考に解説します。
目標を具体的に伝える
仕事ができない年上の部下は、自分の仕事ぶりを過大評価している可能性があります。曖昧な指示や期待は、上司と部下の認識のズレが生じるため、部下には具体的な目標を伝えましょう。
目標は、以下のように具体的かつ測定ができるもので期限も明確に設定します。
例: 「顧客満足度を来月末までに〇%向上させる」 「新規顧客を3社獲得する」 |
上記の例のように、数値を用いて具体的に伝えましょう。また、目標を伝える際には、一方的に押し付けるのではなく、部下との対話を通して合意形成を図ることが重要です。
年上の部下の経験や知識を尊重しつつ、会社の目標と個人の目標を一致させることで、モチベーションを高め、パフォーマンス向上につなげることができます。
スキル向上のサポートをする
年上の部下は、長年の経験に基づいた仕事のやり方に固執し、新しいスキルや知識の習得に抵抗を示す場合があります。そこで、部下が成長するために必要なリソースとサポートを提供することが重要です。
たとえば、最新の業務知識やスキルを習得するための研修や個別のコーチングなどを検討しましょう。特に、ITスキルやコミュニケーションスキルなど、変化の激しい分野については、継続的な学習機会を提供することで、時代遅れにならないようにサポートしましょう。
投資を続けるべきか判断する
仕事ができない年上の部下への投資は、会社にとって大きな負担となる可能性があります。そのため、一定期間の投資の後、成長が見られない場合は、継続するか否かを慎重に判断する必要があります。
評価基準は、事前に設定した目標の達成度に基づき、客観的に行います。たとえば、3ヶ月や半年といった期間を設定し、その間に目標を達成できたか、あるいは達成に向けて着実に進捗しているかを評価します。
もし、十分な成果が出ていない場合は、なぜ目標が達成できなかったのか、その原因を部下と分析します。能力不足が原因であれば、追加の研修やサポートを提供する、あるいは担当業務の変更を検討します。
しかし、モチベーションの低さが原因である場合、あるいは成長意欲が見られない場合は、更なる投資は無駄になる可能性が高いため、配置転換といった、より厳しい選択肢も視野に入れる必要があります。
サポートを受け入れるか確認する
年上の部下の中には、プライドが高く、自分の能力不足を認めたくないために、サポートを拒否する人もいます。こうした部下は、成長の機会を逃し、会社にとっても損失につながる可能性があります。
そのため、サポートをする際には、部下がそれを受け入れる意思があるかを確認することが重要です。具体的には、面談などを通して、部下の現状の課題や将来のキャリアプランについて話し合い、部下が成長の必要性を感じているか、そしてサポートを受け入れる準備ができているかを確認します。
もし、部下がサポートを拒否する場合は、その理由を理解しようと努め、彼らの不安や懸念を解消する必要があります。
称賛する際は具体的に伝える
年上の部下を指導する際には、彼らのモチベーションを維持するために、適切な称賛を送ることが重要です。しかし、漠然とした褒め言葉は、自己認識にズレを生じさせる可能性があります。
たとえば「素晴らしい仕事ぶりですね」といった一般的な褒め言葉は、部下が自分のパフォーマンスを過大評価している場合、その認識をさらに強めてしまう可能性があります。そのため、褒める際には、以下のように具体的な行動や成果に焦点を当て、具体的に何が良かったのかを明確に伝えましょう。
例: 「今回のプレゼンテーション資料は、データ分析が的確だったので、クライアントからの信頼が高まりました。」 「この報告書、簡潔で要点を的確にまとめていて、とても読みやすかったです。特に問題点と解決策の提示が明確で助かりました。」 |
また、褒めるだけでなく、以下のように改善点を具体的に指摘することも重要です。
例: 「プレゼンテーションの内容は良かったのですが、質疑応答では少し準備不足だったように感じました。次回は、想定される質問と回答を事前に準備しておきましょう」 |
例のように、具体的な改善策を提示することで、部下は自身の現状や改善点を認識し、次のステップへと進むことができます。
参考:
年上の部下と上手く働くための3つのポイント
年上の部下を上手に扱うための3つのポイントについて、ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された実業家マイケル・ファーティック氏の記事を参考に解説します。
明確なビジョンと目標の共有
上司は、企業のビジョンや目標を明確に、そして繰り返し伝える必要があります。年上の部下は、経験豊富だからこそ、会社の進むべき方向を理解し、自身の役割をその大きな目標に結び付けて考えることを重視します。
単に部署の目標を与えるだけでなく、会社全体の目標と個々の業務の関連性を明確に示すことで、年上の部下のモチベーションと責任感を高め、主体的な行動を促すことができます。
自主性を育てる
年上の部下は、年下の部下と同様なマネジメントをされることを嫌がる傾向があります。そのため、年上の部下が能力を発揮できるよう、できる範囲で権限を委譲し、業務の細部には過度に介入しないことが重要です。
そのためには、年上の部下との信頼関係を築き、自律性を尊重する必要があります。ただし、成果が伴わない場合は、具体的な指標を用いて現状を明確に示し、改善を促す必要があります。
幅広い意見を求める
会社全体を把握し、多角的な視点を取り入れるために、部署の垣根を越えて様々な社員に意見を求めることが重要です。年上の部下は豊富な経験を持つため、意見を尊重し、積極的に取り入れることで、会社全体の活性化につながります。
また、意見を求められることで、年上の部下は自身の価値を再認識し、モチベーションを高めることができます。
参考:
まとめ
仕事ができない年上の部下の特徴と成長させる方法を解説しました。仕事ができない年上の部下は、上司に判断を丸投げし、解決法や次にするべきことを考えないといった特徴があります。
年上の部下を扱うときには、出来る範囲で裁量を与え、会社全体の目標達成のために日々の業務が必要であることを伝えることが大切です。さらに、年上の部下には、信頼していることや具体的な称賛はモチベーションの向上につながります。
仕事ができない年上の部下には、自主性や責任感を持たせて、年上の部下だからこそ持っている経験や知識を最大限に発揮できるように育成しましょう。