「管理職の仕事がうまくいかない…」このような悩みを抱える人は多いでしょう。

管理職は自分の仕事をこなすだけでなく、部下の育成やチームの運営など、多岐にわたる能力が求められる役割です。管理職としてうまく力を発揮できず、悩む人が多いのも無理はありません。

管理職によくある「うまくいかない」から脱却したい方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。

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管理職によくある4つの「うまくいかない」

ALL DIFFERENT株式会社(以下、同社)が管理職を対象に実施した調査によると、97.3%は仕事上で何かしらの悩みを抱えているといいます。

ここでは同社の調査結果をもとに、管理職が直面しがちな4つの「うまくいかない」を紹介します。

「部下の育成」がうまくいかない

部下を育成することは、管理職の重要な責務の一つです。しかし、多くの管理職が「部下の育成がうまくいかない」という悩みを抱えているといわれています。

同社の調査でも、管理職の悩みとして、断トツで多く挙げられた意見が「部下の育成(55.2%)」でした。

おそらく、多くの管理職は部下育成の重要性について理解しているでしょう。

しかし、「(管理職としての)自分の評価に直結するから」などといった理由で、仕方なく部下の育成に取り組んでいる人は、注意が必要です。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、管理職が打算的な目的で部下育成を行うと、どうしても表面的な指導・教育になってしまい、効果が薄い傾向にあるとされています。

部下育成を成功させるためには、部下の成長を心から支援しようとする意思を持ち、メンバー一人ひとりに合った指導・教育を行うことが必要不可欠です。

「部下とのコミュニケーション」がうまくいかない

「部下とのコミュニケーションがうまくいかない」と悩む管理職は非常に多いとされています。

同社の調査でも、管理職の悩みとして、二番目に多く挙げられた意見が「部下とのコミュニケーション(30.4%)」でした。

部下とのコミュニケーションは、業務を円滑に進めるうえで欠かせないものです。

たとえば、部下が仕事上で何かしら問題に直面した際に、すぐに管理職に相談してくれれば、適切なアドバイスやサポートを提供することで、問題が大きくなるのを防ぐことができます。

逆に、十分なコミュニケーションが取れていないと、部下が抱える問題に気づくのが遅れ、結果的に組織全体が大きな損害を被る恐れがあります。

部下の属性(性別、年齢など)や性格は人それぞれであり、中にはコミュニケーションが取りづらいと感じる相手もいるでしょう。

それでも、管理職である以上は、部下一人ひとりと向き合い、コミュニケーションを取ることは重要な責務といえます。

「チームの運営」がうまくいかない

「チームの運営がうまくいかない」という問題も、管理職が抱えがちな悩みの一つです。

管理職はただ自分の仕事をこなし、成果を出せばいいわけではありません。チームや組織として目指す方向性を明確にし、その実現のためにチームを効果的に運営していくことが求められます。

たとえば、営業部であれば「顧客満足度を10%向上させる」といった具体的な目標を設定し、その達成に向けた戦略を管理職が策定する必要があるのです。

同社の調査で、管理職の悩みとして「部門・チームの方針や戦略の浸透・伝達(23.4%)」「部門・チームの成果達成(23.4%)」といった意見が多く挙げられている結果から、チーム運営の難しさが見て取れます。

チーム運営がうまくいかない原因の一つとして、管理職の目標設定の方法に問題がある可能性が考えられます。

チームの目標は、ただ漠然と設定するだけではほとんど効果が得られません。チームメンバー全員が納得し、高いモチベーションを持って挑戦できるような目標を設定することが、チームのパフォーマンス向上には必要不可欠です。

「時間管理」がうまくいかない

「時間管理がうまくいかない」という悩みを抱える管理職も多いといわれています。ここでいう時間管理の悩みとは、「仕事が多く残業ばかりで終わらない」「部下の育成に十分な時間を割けない」といった状況を指します。

同社の調査でも、管理職の悩みとして、「業務量に対する時間の不足(19.7%)」といった意見が多く挙げられています。

もちろん、中には本当に人手が不足しており、物理的に時間が足りないケースもあるでしょう。

しかし、実際には管理職の時間管理方法に問題があり、うまく業務が回っていないケースも少なくありません。

そのため、管理職は限られた時間の中で仕事を効率的に処理するスキルを身につけることが重要です。

参考:

ALL DIFFERENT「管理職意識調査(2024年 悩み・課題編)」

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管理職が「うまくいかない」から脱却するには

「管理職の仕事がうまくいかない」という状況から脱却するために、心がけるべきポイントを紹介します。

部下の成長を心から支援する

先ほども述べたように、「自身の管理職としての評価を上げたい」という打算的な目的だけで部下を指導・教育しても、期待する効果は得られにくいでしょう。

部下を効果的に育成するには、日頃から部下の成長を心から支援する「アドボカシー」と呼ばれる取り組みが必要不可欠です。

管理職によるアドボカシーを通じて、部下は「自分は会社から大切にされている」と自覚できます。その結果、部下のモチベーションは向上し、成長スピードの促進につながります。

さらに、部下が成長すれば組織全体の生産性も向上し、結果的に管理職自身の評価も高まるという好循環を生み出すと期待できます。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、効果的なアドボカシーには以下の3つの要素が不可欠とされています。

  • 可視性:部下の実績や能力を多くの人に知ってもらう
  • 関連性:部下の仕事が会社の目標にどう貢献しているかを示す
  • 承認と称賛:部下の努力や成果を認め、積極的に褒める

これらの要素を満たすために、同記事では以下のポイントを意識した行動をとることを推奨しています。

ポイント具体例
【価値や可能性に着目】部下が組織の重要な課題にどう貢献できるか、将来的にどのようなインパクトを与えられるかに焦点を当てる上層部との会議で、部下の業績を積極的にアピールする。また、チームの定例会議で、部下に自身の成果を発表するよう促す
【思想的リーダーシップを奨励】部下が専門知識を発信できる場を提供し、特定の分野における権威として評価されるよう後押しする社内会議での発表や業界誌への寄稿など、部下が知見を共有できる場を提供する
【パーソナルブランドの形成】部下が自分自身の強みを明確にし、それを組織内外に広められるよう手助けする社外のネットワークを活かし、部下にとって有益となる人脈を紹介する
【レベルの引き上げ】部下の現状の能力を上回る、影響力の大きいプロジェクトに参加させ、成長の機会を提供する若手の部下を他部署との連携が必要なプロジェクトに参加させ、さまざまな関係者の目に触れる機会を増やす

闇雲にコミュニケーションを取らない

管理職が部下とコミュニケーションを取る重要性はすでに述べたとおりですが、コミュニケーションは闇雲に量を増やせばいいわけではありません。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、管理職が部下と必要以上にコミュニケーションを取ろうとすると、部下の時間を奪うことになり、かえって部下の不満を高めてしまう恐れがあるとされています。

したがって、部下とのコミュニケーションは適切なタイミングで、必要な量だけ取ることが重要です。

同記事では、部下と効果的なコミュニケーションを取るためのポイントとして、以下の4点を挙げています。

  • 双方向のコミュニケーションを意識する:管理職が一方的に話し、部下が聞き役に徹する構図になることが多い。自分が話すのと同じくらい、あるいはそれ以上に、部下の話に耳を傾けることが大切
  • 集中しているときに邪魔しない:部下が集中して仕事に取り組んでいるときは、緊急時以外は話しかけない。一日の始まりもしくは終わりが、話しかける理想的なタイミング
  • 一対一でミーティングを行う:部下全員とできれば月に一度、一対一でミーティングの機会を設ける。ミーティングでは、部下が自分の意見を自由に話せるような雰囲気を作る。悩み・困りごと(仕事の進め方や人間関係に関する問題など)を最低1つ持ち出すように促せば、本音を引き出しやすくなる
  • 話すだけで終わらせない:部下が問題点を共有してくれたら、その解決に向けて実際に行動する姿を見せる。そうすることで、部下は「話すことに意味がある」と感じ、今後も安心して意見を言えるようになる

効果的な戦略目標を立てる

管理職が自チームの業績を向上させるためには、目標を設定したうえで戦略を立て、実行に移すことが不可欠です。ただし、目標はただ立てればいいものではありません。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、目標設定についてよくある落とし穴として、以下の3つを挙げています。

  • 具体的な行動が不明瞭: 従業員や顧客など、関係者(ステークホルダー)のニーズを満たすために、組織として具体的に何をすべきかがわかりにくい
  • 進捗が測定できない: 設定した目標をどれだけ達成したのか、自分たちがどれだけ進歩したのかがわかりにくい
  • 会社の戦略とのつながりが見えない: 自チームの目標と、会社として立てている戦略との関連性が薄く、目標の意図がわかりにくい

上記のような問題のある目標では、部下の納得感を得られず、チームが一丸となって目標達成に向かうことが困難です。

同記事では、管理職が効果的な目標を立てるために、以下の3ステップを踏むことを推奨しています。

ステップ具体例
【1:ステークホルダーに「期待する行動」を特定】部下や他部署の従業員、顧客など、主要なステークホルダーをリストアップする。各ステークホルダーに「どのような行動をとってほしいか」を具体的に考える仕事の納期を守るために、部下には進捗報告をスムーズに行ってほしい
【2:行動を「組織目標」に変換】ステークホルダーに期待する行動が特定できたら、それを組織としての目標に変換する(「増やす」「減らす」といった表現になることが多い)プロジェクト完了までに発生する問題点を早期に発見し、解決することで、納期厳守率を向上させる
【3:「測定方法」を決める(KPIの設定)】目標の達成度を測るための具体的な指標「KPI(重要業績評価指標)」を決める。KPIは、その成果が数値で表せるように、「金額」「数値」「割合(%)」のいずれかで測定できるものが理想的・課題解決率:報告された課題のうち、1週間以内に解決した割合を80%以上にする・納期遵守率:プロジェクトの納期を遵守する割合を95%以上にする

仕事に優先順位をつける

限られた時間の中ですべての仕事を完璧にこなそうとすると、どうしても無理が生じます。

したがって、組織にとって本当に重要な仕事には労力をかけ、そうでない仕事はほどほどのクオリティに抑えるといったメリハリが必要になります。

そのためには、管理職が仕事に優先順位をつけ、部下に適切に割り振ることが重要です。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、仕事の優先順位をつける際に、「重要度」と「緊急度」の二軸でタスクを分類することを提唱しています。

たとえば、「取引先へのプレゼン資料作成」という業務であれば、「重要度が高く、緊急度も高い」に該当します。また、「備品の発注」「コピー用紙の補充」といった日常の細かなタスクは、「重要度は低いが、緊急度は高い」と分類できるでしょう。

二軸による分類が完了したら、それぞれ以下の進め方でタスクに取り掛かります。

  • 「重要度が高い」かつ「緊急度が高い」:今すぐに取り掛かる
  • 「重要度が高い」が「緊急度が低い」:具体的な日時を設定する
  • 「重要度が低い」が「緊急度が高い」:誰かに任せる、もしくは複数人で行う
  • 「重要度が低い」かつ「緊急度が低い」:タスクを簡略化する、もしくは廃止する

このように、仕事の進め方にメリハリをつけることで、限られた時間の中で効率的に、より高い成果が得られると期待できます。

参考:

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「部下を成長させるリーダーは何をしているのか」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「話しすぎる上司にならないための4つのルール」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「正しく戦略目標を立てるための3つのステップ」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「やることリストをやり遂げるためのシンプルな解決策」

従業員の離職に悩む管理職の方へ

「ただの可視化」で終わらないAI搭載のエンゲージメントサーベイで
離職防止につなげませんか?

NALYSYSモチベーション
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まとめ

管理職はただ自分の仕事をこなせばよいだけではなく、部下の育成やチームの運営など、幅広い能力が求められるポジションです。

そのため、管理職としてうまく力を発揮できず、苦戦している人は少なくありません。

とくに、管理職になりたての場合、一般社員時代との役割のギャップにとまどい、悩む人は多いのではないでしょうか。

管理職によくある「うまくいかない」からの脱却を目指す方は、ぜひ本記事の内容を意識し、実践してみてください。