面接官の判断は、採用活動の成果を左右する重要なプロセスです。成果を最大化するためには、面接官が初めての人でも高い精度で判断を下すための準備が必要です。
この記事では、初めて面接官を任された方に向けて、役割や心得、面接前の準備、当日の進め方、具体的な質問例、評価の精度を上げる方法などを解説します。また、よくある質問についても回答していますので参考にしてください。
面接官の役割・心得【初めての人向け】
面接官とは、応募者との面接を通じて自社が求める人材かを見極め、選考の合否を判断する担当者です。合否の判断だけでなく、応募者の入社意欲を左右する接点でもあります。
初めて面接官を任された段階で役割と基本の心得を押さえておくと、準備や当日の進行を組み立てやすくなります。この章では、次の3点を解説します。
- 面接官の役割
- ミスマッチを生む4要因
- 面接官の心得とマナー
面接官の役割
面接官の役割は、主に「見極め」と「動機づけ」の2つです。
見極め
面接における見極めとは、応募者が自社の求める人材要件に合うかを、事実にもとづいて判断することです。
見極めにおいて大切なのは、印象や感覚ではなく、応募者の過去の行動や経験という事実から判断することです。たとえば「主体性がありそう」という印象で評価するのではなく、「自分で課題を見つけ、改善策を提案して実行した」という具体的な事実を確認します。
動機づけ
面接における動機づけとは、応募者の入社意欲を高めることを指します。
面接は企業が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が企業を選ぶ場でもあります。仕事の魅力に加えて、任される役割や求められる成果といった現実的な情報も伝えると、入社後の期待とのずれを抑えられます。
逆質問の時間は、応募者の関心に沿って自社の情報を伝える機会になります。
なお、動機づけの比重は選考段階によって変わります。一次面接では見極めが中心になり、最終面接に近づくほど、内定辞退を防ぐための動機づけが重要になります。
ミスマッチを生む4要因
面接官を担う人は、ミスマッチを生む主な4つの要因についても把握しておきましょう。
採用支援を行うレバレジーズ株式会社と採用のスペシャリスト・株式会社人材研究所代表の曽和利光氏は、ミスマッチの要因は主に「採用基準の設計のずれ」「募集内容の伝達のずれ」「面接での評価バイアス」「動機づけのミス」の4つだとしています。
| 要因 | 内容 | 現場でありがちなミス |
| 採用基準の設計のずれ | 経営者の主観や一部のハイパフォーマーに寄せた基準になり、現場の実態と合わない | 「エースと同じタイプ」を求め、母集団に合わない基準を作る |
| 募集内容の伝達のずれ | 「コミュニケーション能力」など幅広い言葉で募集し、応募者との認識がずれる | 曖昧な言葉で募集し、想定と違う応募者が集まる |
| 面接での評価バイアス | 面接担当者の無意識の偏見や思い込みが評価に入り込む | 第一印象や自分との共通点で高く評価する |
| 動機づけのミス | 会社や業務を過度に良く見せて伝え、入社後の期待とのギャップを生む | 良い面ばかり伝え、入社後にギャップで早期離職を招く |
このうち面接官が面接の場で直接関わるのは、評価バイアスと動機づけです。
採用のミスマッチが起こる4つの要因について詳しく知りたい場合は、「採用のミスマッチはなぜ起きるのか」のページより無料で資料ダウンロードが可能です。ぜひご活用ください。
面接官の心得とマナー
面接官の心得・マナーを意識することで、高品質な面接の実施につながります。
面接官の心得・マナーとして初めての面接官が意識したいのは、次の3点です。
- 応募者の話を引き出し、聞くことに徹する
- 見極めと動機づけの両方を担う立場だと理解する
- 印象ではなく、準備した基準と事実にもとづいて判断する
自社の説明に割く時間と応募者の話を聞く時間の目安をあらかじめ決めて、傾聴する時間をしっかり確保しましょう。また、自分の面接官としての役割を自覚し、公平な評価に努めることが大切です。
レバレジーズ株式会社では、AIを活用して一次面接を標準化しながら高品質な面接を実現する「NALYSYS AI面接」というサービスを提供しています。「NALYSYS AI面接」ではAIがプロの面接を再現し、ばらつきやバイアスを抑えた公正な評価を行います。
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面接官マニュアル:面接前の準備
面接官が準備から評価までを一定の基準で進めるための手引きとなる面接官マニュアルを示します。
面接前には、以下の手順で準備を進めましょう。
- 求める人物像を明確にする
- 評価基準・評価項目を決める
- 質問を設計する
- 応募書類を読み込む
- 面接官の人数と役割分担を決める
それぞれの工程について詳しく解説します。
求める人物像を明確にする
面接準備の出発点は、求める人物像の明確化です。
求める人物像があいまいだと面接官ごとに合否の判断が変わってしまうため、最初に明確にすることが重要です。
このとき、「必須の条件(Must条件)」と「あれば望ましい条件(Want条件)」に分けて整理すると、判断に迷いにくくなります。求める人物像の明確化によって募集段階での認識のずれを防ぐことも、面接前の準備に含まれます。
評価基準・評価項目を決める
求める人物像が決まったら、面接でどの項目をどう評価するかの基準を決めます。
評価項目は、スキルや経験、価値観、自社の文化との相性など、求める人物像から分解して設定しましょう。
あわせて、各項目を何段階で評価するかを決めておきます。評価段階は3〜5段階が一般的です。たとえば4段階で「基準を上回る/満たす/やや不足/満たさない」のように言葉の意味まで定義しておくと、面接官の間で判断がそろいます。
また、評価基準は評価シートにまとめると、記録と後からの見直しがしやすくなります。
質問を設計する
面接における質問は、評価したい項目から逆算して用意します。
思いつきで聞くと評価に必要な情報を集めきれない可能性が高まるため、あらかじめ用意しましょう。
たとえば「主体性」を見たいなら、「自分から動いた経験」を尋ねる質問を、「再現性」を見たいなら「その成果をどう出したか」を掘り下げる質問を用意しておきます。
なお、新卒採用ではポテンシャルや価値観を、中途採用では経験の再現性を確認するなど、対象によって質問の重点は変わります。
応募書類を読み込む
面接前に履歴書や職務経歴書に目を通し、確認したい点を整理しておきます。
書類でわかることを面接で改めて聞くと、深掘りの時間が減ってしまいます。見るポイントは、経歴の一貫性、転職の理由、実績が具体的に書かれているか、などです。
また、気になる経歴や空白期間があれば、否定的に決めつけず、事実を確認する聞き方をあらかじめ考えておきましょう。
面接官の人数と役割分担を決める
体制が整ったら、面接官の人数と役割分担を決めましょう。
面接官は2〜3名で担当するのが一般的です。1名だけで担当すると主観が入りやすく、記録も残しにくいため、質問する人と評価を記録する人に役割を分けると、進行と評価判断の両方が安定します。
選考段階によって、面接官の役割も変わります。一次面接は現場の社員が実務の適性を見極め、最終面接は役員や経営層が意欲や価値観を確認する、といった分担が一例です。
複数で担当する場合は、面接の前に評価基準と、誰がどの項目を中心に聞くかを共有しておきましょう。
面接のやり方・流れ
ここでは、面接のやり方・流れについて解説します。
全体像や具体的な面接業務のイメージを掴みましょう。
当日の流れ
一般的な面接(30〜60分)の流れは、次のとおりです。
| 場面 | 時間の目安 | 目的 |
| アイスブレイク | 5分以内 | 緊張をほぐす |
| 会社・仕事の説明 | 5分程度 | 相互理解と動機づけ |
| 経歴・自己紹介の確認 | 10分程度 | 経験の把握 |
| 深掘りの質問 | 15〜20分 | 見極め |
| 逆質問 | 5〜10分 | 関心・価値観の見極めと動機づけ |
| クロージング | 5分程度 | 次のステップの案内 |
時間配分は、面接時間や選考段階に応じて調整します。
たとえば30分の短い面接では、会社説明を資料に回し、深掘りの質問に時間を寄せるなどの対応をとるのがおすすめです。
事実を引き出す問いかけ例
面接では、応募者の意見や考えに加えて、その裏付けとなる事実を聞き出します。
代表的な質問には、次のようなものがあります。
- これまでの仕事で、最も成果を出した経験を教えてください
- その場面で、具体的にどう行動しましたか
- なぜ、その判断をしたのですか
- うまくいかなかったとき、どのように対応しましたか
質問をする際には、まず状況を確認し、次に本人がとった行動・その結果・そう判断した理由の順に掘り下げると、事実を具体的に引き出せます。
「頑張りました」「工夫しました」といった抽象的な答えが返ってきたら、「具体的には、どの部分をどう変えたのですか」と一段掘り下げましょう。
時間が押した・余ったときの対応
面接は予定どおりに進むとは限りません。面接時間が押した・余ったときの対応を前もって決めておきましょう。
時間が押した場合は、評価に必要な質問を優先し、会社説明は資料で補う方法があります。あらかじめ「これだけは聞く」という必須の質問を決めておけば、時間が限られていても評価に必要な情報を聞き出すことが可能です。
時間が余った場合は、逆質問の時間を増やして動機づけにあて、応募者の関心や価値観を確認します。
面接官が候補者の見極め精度を上げるための観点
見極めの精度は、面接官の主観に頼るほど下がる傾向があります。
ここでは面接官の評価の精度を上げる3つの観点を解説します。
先入観・バイアスを排除する
面接官が候補者の見極めの精度を上げるためには、先入観・バイアスを排除することが重要です。
面接で起こりやすい先入観・バイアスには、次のようなものが挙げられます。
- ハロー効果:一つの目立つ長所や短所に引きずられ、全体の評価が偏る
- 中心化傾向:評価に迷い、どの項目も標準の数値に寄せてしまう
- 対比効果:直前の応募者との差を基準にしてしまい、実際より高く(低く)評価する
こうした評価バイアスへの対処は、面接官がその存在を自覚するところから始まります。
評価は基準に沿って項目ごとに確認し、印象で総合的に決めないようにしましょう。項目ごとに事実を書き留めておくと、あとから根拠をたどれます。
「事実」と「評価」を区別する
面接官が評価の精度を上げるには、応募者の話を「事実」と「評価」に分けて受け取ることが必要です。
面接官は、話を聞きながら無意識に評価を先に決めてしまうことがあります。そこで、「事実を集める工程」と「基準に照らして判断する工程」を分けると、思い込みが入りにくくなります。
たとえば「リーダーシップがある」は評価であり、「10名のチームで進行役を務め、納期を守った」は事実です。面接では具体的な事実を集め、それを後から評価基準に照らして判断します。
抽象的な自己評価をそのまま受け取らず、その根拠になった事実まで確認することを意識しましょう。
評価基準を複[g]数の面接官とすり合わせる
評価がぶれる原因の一つは、面接官ごとに基準の解釈が違うことです。
準備の段階で分けておいたMust条件とWant条件を、面接官の間で同じ意味で運用することが大切です。たとえば、「Must条件を一つでも満たさなければ見送る」といった線引きを事前に共有しておきましょう。
面接後は、評価シートを持ち寄り、点数が分かれた項目について事実にもとづいて話し合います。「なぜその評価にしたか」を事実で確認し合うと、面接官ごとの基準のずれを埋められます。
株式会社人材研究所代表の曽和 利光氏は、面接を「事実を集めるインタビュー」と「基準に照らして判断するアセスメント」に分けて考えることを勧めています。
面接官はつい応募者の意見や考えを聞きたくなりますが、見極めに効くのは具体的な事実です。日本的な「察するやりとり」で事実確認を省くことが、見極めを狂わせる落とし穴になります。
詳細については、資料「採用時の人材を見極める方法と早期離職を防ぐための対策とは」に記載しています。無料でダウンロード可能ですので、ぜひご利用ください。
面接官が避けるべき行動
法令や応募者への配慮の観点から、面接官は「就職差別につながる質問する」「圧迫的な態度をとる」という2点の行動は避けるべきです。
ここでは、面接官が避けるべき行動について詳しく解説します。
就職差別につながる質問をしない
厚生労働省は、公正な採用選考の観点から、本人に責任のない事項や、本来自由であるべき事項を面接で尋ねないよう求めています。
「採用は応募者の適性と能力にもとづいて判断するもので、それ以外の事項を選考理由にしない」という考え方です。
< 尋ねてよい質問例 >
- 職務経験
- 保有資格
- 志望動機
- 自己PR
- 入社後に挑戦したいこと
- 勤務条件(勤務地・転勤の可否など)
< 避けるべき質問例 >
- 本籍地
- 出生地
- 家族の職業や収入、住宅状況
- 支持政党
- 信仰宗教
- 思想信条
- 生活信条
- 尊敬する人物
注意したいのは、雑談のつもりの一言が差別につながる場合がある点です。
たとえば「ご実家はどちら」「結婚のご予定は」といった質問は、場をなごませる意図だとしても言ってはいけません。
参考: 厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」
圧迫的な態度をとらない
面接官は、圧迫的な態度は避けるべきです。
高圧的な質問や否定的な相づちは、応募者の入社意欲を下げ、内定辞退や早期離職につながります。
ここで注意したいのは、圧迫と深掘りの違いです。
事実を掘り下げる質問は見極めに必要ですが、応募者を追い詰めたり、答えを否定したりする態度は圧迫にあたります。同じ「なぜ」でも、事実を確認する問いかけと、相手を責める問いかけでは、受け取られ方が変わります。
まとめ
面接官の役割は、応募者を事実にもとづいて見極めることと、入社意欲を高める動機づけの2つです。この2つを果たすには、面接当日の振る舞いだけでなく、面接前の準備が欠かせません。求める人物像と評価基準を明確にし、評価したい項目から逆算して質問を設計しておくと、当日の判断に迷いにくくなります。
面接で聞き出すべきは、応募者の意見や印象ではなく、どのように考え行動したのかという「事実」です。集めた事実を評価基準に照らして判断し、評価シートをもとに面接官どうしで基準をすり合わせると、評価のばらつきを抑えられます。あわせて、就職差別につながる質問や圧迫的な態度など、面接官として避けるべき行動も押さえておきましょう。
面接官による判断のばらつきは、個人の努力だけでは埋めきれません。評価の型を組織で共有し、仕組みとして面接の質を安定させることが、採用の精度向上と入社後のミスマッチ防止につながります。
初めての面接官によくある質問
初めて面接官を任されたときに迷いやすい点を、質問形式でまとめます。
面接官の業務に向けて万全の準備をして臨みたい方は、事前に確認しておきましょう。
Q. 緊張や沈黙にどう対応するか
A. 応募者が緊張している場合は、答えやすい質問から始めます。経歴の事実確認など、事実を答えるだけの質問は答えやすく、緊張がほぐれます。
沈黙が続いたときは、質問を言い換えるか、「少し考えてからで大丈夫です」と一言添えて待ちましょう。面接官が焦って話しすぎると、応募者の情報を引き出せません。沈黙は考えている時間でもあるため、焦らず、数秒は待つ姿勢を心がけましょう。
Q. 評価に迷ったときどうするか
A. 評価に迷ったら、印象ではなく評価基準に立ち返りましょう。基準のどの項目で判断がつかないのかを整理し、必要なら追加で事実を確認する質問をします。
その場で無理に結論を出さず、事実を記録に残して、面接官の間ですり合わせる方法もあります。迷った理由まで記録しておくと、後の話し合いで判断をそろえやすくなります。
Q. 回答が要領を得ない応募者にどう向き合うか
A. 回答が短すぎて情報が少ない応募者には、行動を具体的に尋ねる質問で事実を引き出します。「そのとき、まず何をしましたか」と場面を区切って聞くと、応募者が答えやすくなります。
一方、話が長すぎて何を伝えたいのか分かりづらい応募者の場合は、要点を確認しながら進めるのがおすすめです。「一言でいうと、どういうことですか」と整理を促す聞き方をすると、応募者側でも話の整理ができて、得たい情報を聞き出せるでしょう。
