書類選考とは、応募者を面接に進めるかどうかを判断する、採用の最初の関門です。応募が多いほど、限られた時間で公平に、見落としなく候補者を絞り込む力が問われます。
本記事では、書類選考で見極めるべきチェック項目や評価基準を標準化する方法などを解説します。また、公正採用の注意点や書類選考の効率化方法、AI活用の動向も解説しているので、人事・採用担当者の方は参考にしてください。
書類選考とは
書類選考とは、応募書類をもとに、面接へ進む候補者を絞り込む選考工程のことです。
採用する側にとって書類選考は、面接という時間のかかる工程の前に、要件に合う応募者を絞り込むための工程にあたります。
ここでは、書類選考の目的と採用プロセス全体での役割を整理します。
書類選考の目的
書類選考の目的は、面接に進める候補者を絞り込み、採用のミスマッチを早い段階で防ぐことです。
面接は一人あたりの採用担当者の負荷が大きいため、すべての応募者と面接するのは現実的ではありません。そこで書類選考の段階で、募集要件を満たす応募者を見極めます。
また、書類選考は入社後のミスマッチを未然に防ぐことにもつながります。書類選考の内容から、「自社で活躍できそうか」「長く働いてもらえそうか」などを事前に確認します。
書類選考は単なる足切りではなく、その後の採用の質を左右する工程だといえるでしょう。
採用プロセスにおける書類選考の役割
書類選考は、母集団形成と面接をつなぐ、選考プロセスの入り口にあたります。 求人に集まった母集団から、面接に進む候補者を選び出す役割を担うものです。
書類選考と面接では、チェック観点が異なります。書類選考では募集要件を満たしているかという事実の確認が中心になり、面接では人柄や意欲といった、書類では読み取りにくい部分を深掘りします。
両者の役割を分けて設計することで、選考全体の精度を上げることが可能です。
書類選考で見るべきチェック項目
書類選考では、主に次の4つの観点から応募者を確認します。
- 募集の必須条件を満たしているか
- 経歴・実績に業務での再現性があるか
- 志望動機・転職理由に一貫性があるか
- 書類の体裁・ビジネスマナーは整っているか
それぞれ解説します。
募集の必須条件を満たしているか
書類選考においてまず確認するのは、募集要件に定めた必須条件を満たしているかどうかです。 必須の資格や経験年数など、これを満たさなければ業務が務まらないという条件が該当します。
必須条件は、書類選考のなかでも判断がぶれにくい項目です。あらかじめ必須条件と歓迎条件を分けておくと、確認の順序が整理され、選考のスピードも上がります。
経歴・実績に業務での再現性があるか
書類選考では、職務経歴書からこれまでの経歴や実績が自社の業務でも再現できそうかを読み取ります。
書類選考で経歴や実績の再現性を見極めるには、成果に至る「プロセス」と「環境の共通項」に着目します。
まず、職務経歴書に記載された実績が、本人の具体的な行動や工夫によって生み出されたものかを確認しましょう。市場の好況や会社の知名度による「たまたまの成果」ではなく、課題に対してどのような仮説を立て、どう行動したかという論理的な一貫性があるかをチェックします。
次に、前職での成功要因が自社のポジションや扱う商品特性でも応用可能かを検証します。異業界からの応募であっても、課題の特定力やステークホルダーとの調整力といった「ポータブルスキル」が言語化されており、自社の業務課題と結びついている場合は再現性が高いと判断できます。成功の背景にある、汎用的な行動特性を読み解くことが肝要です。
志望動機・転職理由に一貫性があるか
応募書類に記載されている志望動機と転職理由に一貫性があるかは、入社後の定着性を見極めるうえで重要な観点です。 志望動機と転職理由がかみ合っていない場合、入社後に同じ理由で早期離職につながる懸念があります。
ただし、書類の文面だけで意欲を断定するのは難しいものです。気になる点は面接で確認することを前提とし、書類選考の段階では一貫性の有無を大まかに押さえるにとどめます。
書類の体裁・ビジネスマナーは守られているか
書類選考では、応募書類の体裁やビジネスマナーが守られているかを確認しましょう。
応募書類の体裁や記載のていねいさからは、基本的なビジネスマナーがうかがえます。 誤字脱字の多さや、指定した提出形式が守られているかどうかも判断材料の一つです。
一方で、体裁だけを重視しすぎると、内容は優れているにもかかわらず形式面で候補者を落としてしまう事態も起こります。体裁は補助的な観点と位置づけ、経歴や実績とあわせて総合的に判断しましょう。
書類選考の評価基準を標準化するには
書類選考の評価は担当者によって割れやすく、評価基準の標準化が課題になります。
レバレジーズの「新卒・中途採用におけるAI面接導入に関する実態調査」においても、採用活動の課題として「面接官ごとの評価基準のバラつき」を挙げた企業が34.2%と、上位に入りました。

引用:レバレジーズ株式会社「新卒・中途採用におけるAI面接導入に関する実態調査」
書類選考の精度を上げるためには、評価基準を標準化する施策を講じることが重要です。
ここでは、書類選考の評価を標準化する方法について解説します。
採用ペルソナをもとに評価観点を定義する
書類選考の評価基準をそろえる第一歩は、採用ペルソナ(求める人物像)をもとにして評価観点を定義することです。
誰を採りたいのかを言葉にしないまま書類を読むと、担当者ごとに見る場所が変わり、評価がぶれます。
必要な経験・スキル・価値観などをペルソナとして整理し、そこから「どの観点で見るか」を先に決めておきましょう。観点をそろえておくと、複数の担当者が同じ土台で応募書類の内容を判断できます。
合格ラインを言語化する
書類選考の評価基準を標準化するために、どこまでを通過とするのか、合格ラインを言語化します。
観点があっても、その線引きが人によって違えば評価はそろいません。「必須要件は満たすが実績がやや弱い応募者を通すかどうか」といった判断の基準を、あらかじめ言葉にしておきます。
たとえば各観点をA〜Cの3段階で評価し、「必須観点にCが一つでもあれば見送る」といった形でルール化すると、ボーダー層の判断が速くなります。
ただし、評価基準を厳しくしすぎると育成すれば活躍しうる人材を取りこぼす場合もあるため、絞り込みの度合いは採用計画と照らして調整しましょう。
採用管理システムを活用して属人的な業務にしない
書類選考の評価基準やスコアを採用管理システム上で共有して属人化させないようにすれば、複数の担当者が同じ基準で評価できるようになります。
システム上で評価項目やスコアをそろえておけば、担当者が変わっても書類選考の評価基準を保てます。複数名で評価する運用にすれば、一人の主観に偏らず、見落としも減らせるでしょう。
評価基準の設計は、採用のミスマッチ対策とも地続きです。あわせて次の記事も参考にしてください。
参考:レバレジーズ株式会社「新卒・中途採用におけるAI面接導入に関する実態調査」
書類選考で注意すべき公正採用の観点
公正な採用選考は法令や行政の指針で求められており、違反することは企業にとって重大なリスクになります。
ここでは、書類選考においてとくに注意したい観点について解説します。
本人に責任のない事項・思想信条は評価しない
本籍地や家庭環境など、本人に責任のない事項は、採用選考の評価に用いてはいけません。
厚生労働省の「公正な採用選考の基本」においても、本人に責任のない事項や、思想・信条にかかわる事項を採否の判断に持ち込まないよう示されています。
応募書類に記載があっても、これらを評価の材料にしないという認識を、担当者間で共有しておく必要があります。評価観点を定義する段階で、見てはいけない項目もあわせて明確にしておきましょう。
なお、応募用紙に記載させたり面接で尋ねたりすること自体が就職差別につながるおそれがあります。自社でオリジナルのエントリーシートを使用する場合、本人に責任のない事項や思想信条に関して記載を求める記述は避けてください。
参考:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
空白期間・年齢などの先入観を持ち込まない
経歴の空白期間や年齢だけを理由に評価を下げると、公正な選考を損ないます。
空白期間には、育児や介護、療養などさまざまな事情があり、その一点だけで能力を判断することはできません。
先入観を避けるには、評価観点にもとづいて事実を確認する姿勢が欠かせません。気になる点があれば、書類選考での印象で決めつけず、面接で背景を確認する前提で進めましょう。
AI・自動化を使うときは説明責任を果たす
書類選考にAIや自動化を取り入れる場合は、評価の公平性と説明責任を確保する必要があります。
過去の採用データをそのまま学習させると、そこに含まれる偏りを引き継ぐ懸念があり、要配慮情報の扱いにも注意が求められます。
不採用の理由をあとから説明できる状態にしておくことも重要です。AIをどのような評価軸で使っているのかを整理し、判断の根拠を残す運用にします。
書類選考を効率化する方法
人材獲得競争が激化する昨今、書類選考を効率化することは、優秀な人材を確保するために重要な施策です。
ここでは、書類選考を効率化する方法を2つ紹介します。
連絡・進捗管理を自動化して候補者を待たせない
書類選考の合否連絡や進捗管理を自動化すると、候補者を待たせずに済み、選考途中の辞退を防げます。
連絡が遅れると、候補者が他社に流れる原因になります。応募の受付・結果の通知・次の案内といった定型のやり取りは、システムによる自動化を積極的に進めましょう。候補者を待たせる時間を削減することで候補者体験が向上し、モチベーションの維持・向上につながります。
応募が多い場合は選考そのものを仕組みで効率化する
応募数が多いケースにおいては、選考の仕組みを整備することで効率化を目指しましょう。
応募数が多い大量採用では、書類を一件ずつ確認する作業そのものが多大な工数が発生する要因です。
まずは必須条件による一次的な絞り込みをルール化し、詳しく読む対象を先に見極めることで確認の総量を減らします。また、返信テンプレートや評価テンプレートを用意しておくことも、担当者の負担軽減に役立ちます。
さらに踏み込んだ効率化として、応募直後の選考自体をAIで支援する動きも広がっています。
レバレジーズ株式会社の「NALYSYS AI面接」にもAI書類選考の機能が搭載されており、選考工数の削減や見極め精度・公平性の向上を実現します。NALYSYS AI面接のAI書類選考の詳細については「書類選考・スクリーニングをAIで自動化」のページをご覧ください。
AI時代における書類選考の課題と、注目されている採用フロー
生成AIの普及によって、書類だけで人物を見極めることが難しくなっています。 この変化を受けて、スクリーニングへのAI導入が注目されています。
ここでは、レバレジーズ株式会社が実施した調査「新卒・中途採用におけるAI面接導入に関する実態調査」をもとに、新たな採用フローの動向について解説します。
生成AI時代は「書類だけ」では見極めきれなくなっている

引用:レバレジーズ株式会社「新卒・中途採用におけるAI面接導入に関する実態調査」
AI面接を導入している企業を対象にしたレバレジーズ株式会社の調査では、その約7割(69.7%)が、生成AIの普及で書類選考の見極めが難しくなったと回答しています。
同じ調査では、見極めが難しくなったと回答した企業のうち13.8%がすでに書類選考を廃止しており、多くの企業が書類選考の位置づけを見直し始めていることが分かります。
書類の通過基準を広げ、面接機会を増やす動きが広がっている
こうした背景から、書類の通過基準を広げ、より多くの候補者に面接の機会を出す動きが広がっています。 厳格な基準を捨てるのではなく、書類での足切りを緩めたうえで、面接で見極める形へ重心を移す考え方です。

引用:レバレジーズ株式会社「新卒・中途採用におけるAI面接導入に関する実態調査」
レバレジーズ株式会社の同調査によると、AI面接を導入した企業の86.7%が、書類選考の通過基準の緩和や書類選考の廃止によって選考の間口を広げていました。
また、AI面接を導入したメリット・効果として、以下のグラフの項目が挙げられています。

引用:レバレジーズ株式会社「新卒・中途採用におけるAI面接導入に関する実態調査」
AI面接を導入して得られたメリット・効果の上位3位は下記のとおりです。
| AI面接導入企業が挙げた効果 | 回答率 |
| 従来の書類基準なら不合格にしていた層から優秀な人材を採用できた | 62.4% |
| 選考の時間・工数を削減できた | 52.8% |
| 面接官との相性に左右されない公平な評価ができるようになった | 37.6% |
AI面接は選考の効率化を実現することに加えて、採用の質の向上にも貢献しています。
応募直後にAI面接を挟むことで、書類だけでは判断しきれない部分を面接で補いながら、一次選考の工数を抑えられます。
AIに任せきりにせず、人が最終判断する運用が主流になっている
AIを活用する場合も、書類選考を含むスクリーニング全体を人が最終確認する運用が主流です。

引用:レバレジーズ株式会社「新卒・中途採用におけるAI面接導入に関する実態調査」
レバレジーズ株式会社の同調査では、AIのスコアだけで合否を自動で決めている企業は38.1%にとどまり、6割以上はボーダー層を人が確認するなど、人とAIを組み合わせた運用をとっていました。
AIは判断材料をそろえ、負荷の高い一次的な絞り込みを支える役割に向いています。最終的な合否は人が責任を持って決めることで、公平性と説明責任を保ちながら効率化を進められるでしょう。
レバレジーズが実施した「新卒・中途採用におけるAI面接導入に関する実態調査」では、生成AI時代の書類選考の実態や、AI面接の導入効果を数値で紹介しています。選考の見直しを検討する際にぜひご活用ください。資料は無料でダウンロードが可能です。
まとめ
書類選考は、募集要件の充足や実績・成果の再現性、志望動機の一貫性といった観点から、次の面接選考に進む候補者を絞り込む工程です。
書類選考の精度を高めるために、評価基準を標準化することが大切です。採用ペルソナから観点を定義したり、合格ラインを言語化したりしましょう。また、採用管理システムを活用して書類選考を属人化させないことも重要な施策の一つです。
近年は生成AIの普及で書類だけの見極めが難しくなり、書類の基準を保ちつつ面接の機会を広げることを目的とした採用プロセスへのAI導入が注目されています。書類選考を人の判断で支えながら、AIをうまく組み合わせて効率と精度を両立させることが、これからの採用に求められます。
書類選考に関するよくある質問
Q. 書類選考の合否連絡は何日以内に返すべきですか?
A. 採用実務では、応募から1〜2週間以内を合否連絡の目安とするケースが多いです。
応募者は複数社に同時に応募していることが多く、連絡が遅れるほど他社に決まってしまう可能性が高まります。進捗の通知を自動化し、結果をできるかぎり早く伝えられる体制を整えておくとよいでしょう。
Q. 大量採用で書類選考を軽くする・再設計する選択肢はありますか?
A. 廃止ありきではありませんが、選考フローを再設計する選択肢はあります。
レバレジーズ株式会社の調査では、「書類での見極めが難しくなった」と回答した企業のうち13.8%が書類選考を廃止し、AI面接を導入した企業の86.7%が書類基準の緩和などで選考の間口を広げていました。
応募直後のAI面接などと組み合わせ、書類選考の役割を見直す形が考えられます。
参考:レバレジーズ株式会社「新卒・中途採用におけるAI面接導入に関する実態調査」
Q. 書類選考にAIを使ってよいですか?
A. 公平性と説明責任を確保できれば、AIは有効な手段になります。
ただし、AIのスコアだけで合否を決めるのではなく、ハイブリッドな運用が主流です。AIに一次スクリーニングや要約を任せ、「最終的な合否は人間が判断する」というハイブリッドな運用を行うのがおすすめです。
