DX人材の採用が思うように進まないとお悩みの担当者も多いのではないでしょうか。IPAの調査では、DXに取り組む日本企業の85.1%がDX推進人材の量的な不足を感じています。

DX人材の類型の特定から確保手段の使い分け、選考での見極めまでを設計すれば、非IT企業にも打てる手はあります。

本記事では、DX人材の最新6類型と採用が難しい理由、必要な準備と確保・見極めの方法を解説するので参考にしてください。

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DX人材とは

DX人材とは、デジタル技術を活用して自社の事業やビジネスモデルの変革を推進できる人材のことです。

経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、DXを推進する人材の役割やスキルを「デジタルスキル標準(DSS)」で整理しています。

DX人材の定義

公的な資料では「DXを推進する人材」と表記され、その役割はDSSのうち「DX推進スキル標準」が示す6つの人材類型によって具体化されています。

DX人材にはビジネスアーキテクトやデータサイエンティストなど、事業側と技術側の両方にまたがる役割が含まれており、特定の職種のみを指す言葉ではありません(各類型の詳細は次の章で紹介します)。

参考:独立行政法人情報処理推進機構「デジタルスキル標準ver.2.0を公開」

DX人材に求められるスキル・資質

デジタルスキル標準の共通スキルリストでは、DXを推進する人材に必要なスキルが「ビジネス変革」「データ整備・活用」「テクノロジー」「セキュリティ」「パーソナルスキル」の5つのカテゴリーで定義されています。

DX人材の採用要件を検討する実務のうえでは、次の3つの観点に整理すると人物像を絞り込みやすくなります。

観点求められる内容
デジタル技術に関する知識データ活用・AI・クラウドなど、担当領域に応じた技術の基礎知識
事業・業務への理解自社の業務プロセスや商流を把握し、変革すべき課題を特定する力
変革を推進する行動力部門を横断した調整力や、既存のやり方を変える推進力

3つの観点のうち、どれをどの程度重視するかは人材類型によって異なります。非IT企業が候補者を評価する際は、事業理解と推進力を重視すると、自社に合う人物像を絞り込みやすくなるでしょう。

DX人材とIT人材の違い

DX人材と混同されやすい言葉に「IT人材」があります。

両者に公的な線引きがあるわけではなく、経済産業省の統計でIT人材が主にIT企業や情報システム部門の技術者として集計されているのに対し、DX人材は事業変革を推進する役割から定義されている、という整理が実態に近いといえます。

「採用DX」との違い

「採用DX」と「DX人材採用」は、対象が異なる言葉です。

採用DXは採用活動そのものをデジタル技術で効率化する取り組みを指すのに対し、DX人材採用は、事業のDX推進を担う人材を確保する活動を指します。自社が検討しているのが採用プロセスの効率化なのか、DX推進人材の確保なのかによって、参照すべき情報は変わります。

採用活動そのものをデジタル化する採用DXの進め方は、以下の記事で解説しているのであわせて参考にしてください。

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デジタルスキル標準に基づくDX人材の6類型

前章で触れたデジタルスキル標準(DSS)のうち、DXを推進する人材の役割とスキルを定義した「DX推進スキル標準」は、2026年4月にver.2.0へ改訂されました。人材類型はこれまでの5類型から6類型に再編され、データマネジメントが新たに加わり、ビジネスアーキテクト・デザイナー・データサイエンティスト・データマネジメント・ソフトウェアエンジニア・サイバーセキュリティの6類型になりました。

AI活用の進展にともない、データ整備とその仕組み化、社内でのデータ活用推進を担う役割の重要性が高まったことが、この新設の背景にあります。

自社に不足しているDX人材を特定するときは、まずこの6類型のどれが自社の課題に対応するのかを把握しておくと、求人票や職種名の設計がしやすくなります。

以下の一覧表のうち、「主な役割」はデジタルスキル標準ver.2.0の類型定義をもとにした要約です。

※「職種名の例」は求人市場で使われる名称を編集部で整理したもので、DSSが公式に定めた対応表ではありません(DSSでは各類型の下に、より詳細な「ロール」が公式に定義されています)。

類型主な役割求人市場での職種名の例
ビジネスアーキテクト変革で実現したい目的を定義し、ビジネスモデルと業務プロセスを設計して、関係者を巻き込みながら変革全体をけん引するPdM(プロダクトマネージャー)、事業企画、DX推進担当
デザイナービジネス・顧客/ユーザー・コミュニケーションの各視点から製品・サービスの方針を定め、ブランドメッセージや顧客接点を含む体験全体を設計するUX/UIデザイナー、サービスデザイナー
データサイエンティストデータ解析やAIに関する仕組みの設計・実装・運用を通じて、業務変革や新規ビジネスの実現につなげるデータアナリスト、AIエンジニア
データマネジメントデータの安全性・信頼性を確保し、継続的に流通・活用できる仕組みを整えて、組織全体のデータ活用を促進するデータエンジニア、データ基盤担当
ソフトウェアエンジニアデジタル技術を活用した製品・サービスを支えるシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う社内SE、システムエンジニア、アプリケーションエンジニア
サイバーセキュリティ業務を支えるデジタル環境のセキュリティリスクを抑える対策を担うセキュリティエンジニア

参考:経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構「デジタルスキル標準 ver.2.0」を参考にレバレジーズ作成

ビジネスアーキテクト

ビジネスアーキテクトは、DXの目的や進め方そのものが固まっていない企業ほど必要度が高くなります。経営層が「DXを進めたい」という方針だけを示し、変革の目的定義やロードマップを描けていない場合は、この類型を優先的に確保する必要があります。

一方、戦略や優先施策がすでに固まっていて、あとは実装を進める段階であれば、既存の企画部門と他の類型の組み合わせで対応できる場合もあります。

ビジネスアーキテクトの面接では、過去にどのような業務変革を構想し、部門間の合意形成まで進めた経験があるかを確認するとよいでしょう。

デザイナー

デザイナーは、DXの取り組みが顧客や従業員の使い勝手に直結する場面で必要になります。新しい業務システムや顧客向けサービスを導入しても使われない、離脱が多いといった課題を抱えている企業は、この類型の確保を検討すべきです。ver.2.0では、ブランドメッセージや顧客接点のコミュニケーション設計まで役割の範囲が広がっています。

逆に、既存システムの置き換えなど、利用者側の操作性への影響が小さい施策が中心であれば、優先度は下がります。

デザイナーの面接では、過去に手がけた画面やサービスを、利用状況のデータをもとに改善した経験があるかを確認します。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、蓄積したデータを分析し、意思決定や新しい施策に生かしたい企業に必要な類型です。データはあるものの、分析や活用の方法がわからず放置している状態であれば、確保を検討します。

一方、そもそも分析対象となるデータの蓄積が少ない場合や、後述のデータマネジメントが未整備でデータの整合性が取れていない場合は、先にデータ基盤を整えるほうが優先度は高くなります。

データサイエンティストの選考では、分析結果を実際の施策や意思決定にどう反映させたかが判断材料になります。

データマネジメント

データマネジメントは、DSS ver.2.0で新たに設けられた類型で、データの品質と安全性を保ち、社内の誰もが使える状態に整備して、組織全体のデータ活用を推進する役割を担います。AI活用が広がるほどデータを整備・管理する役割の重要性が増したことが、新設の背景です。DSSではこの類型の下に、データの品質やルールを管理するデータスチュワード、データ基盤を構築するデータエンジニア、データ全体の設計を担うデータアーキテクトの3つのロールが定義されています。章の冒頭の表に挙げた職種名例は、このうち求人市場で広く使われている名称です。

社内に散在するデータの定義や品質を統一できていない企業は、この類型の確保を検討する必要があります。すでにデータ基盤が整備され、担当者も明確な企業では優先度は下がります。

データマネジメントの面接では、データの定義や品質管理のルールを整備した経験の有無を確認します。

ソフトウェアエンジニア

ソフトウェアエンジニアは、業務システムや自社サービスの開発・改修を内製で行いたい企業に必要な類型です。外部ベンダーへの依存度が高く、仕様変更のたびに時間とコストがかかっている場合は、確保の優先度が高くなります。

逆に、既存システムの保守や軽微な改修が中心で、開発の内製化を目指していない企業では、外部委託を続けることで足りる場合もあります。

ソフトウェアエンジニアの選考時には、既存システムの制約を踏まえて設計・実装した経験の有無が、見極めの起点になります。

サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティは、DX推進にともなって外部接続やクラウド利用が増え、情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まっている企業に必要な類型です。個人情報や機密情報を扱うシステムを新たに外部公開する計画がある場合は、優先して確保を進める必要があります。

一方、社内の閉じたネットワークでの利用にとどまる施策であれば、既存の情報システム部門の体制で対応できる場合もあります。

サイバーセキュリティの選考では、過去に対応した対策設計やインシデント対応の経験を、状況と判断根拠まで具体的に語れるかが確認の軸になります。

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DX人材の採用が難しい理由

自社に必要な人材類型の見当がついても、DX人材の採用は求人を出すだけでは思うように進みません。背景には、需給・処遇・社内体制にまたがる複数の要因が重なっています。もっとも、要因を分解すれば非IT企業にも打てる手はあります。

主な要因は、人材の絶対数の不足、報酬・待遇面での候補者の期待値の高さ、要件定義と評価を担える人の不在、社内育成体制の未整備の4点です。順に見ていきます。

需要に対して人材が不足している

IPAの「DX動向2025」によると、DXに取り組む日本企業のうち、DXを推進する人材の「量」について「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した企業は85.1%にのぼります。一方の米国・ドイツでは、不足ではなく「過不足はない」「やや過剰である」と答えた企業の合計がそれぞれ73.6%、52.5%を占めており、不足感は日本に集中しています。

参考:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025」

DXに取り組む企業の大半が人材不足を感じている状況では、採用市場での競争が激しくなりやすく、知名度や開発環境の面でIT専業企業に見劣りしがちな非IT企業ほど、母集団形成の段階で苦戦する傾向があります。求人を出しても応募が集まらず、応募が来ても選考を通過する候補者が見つからないという状況は、こうした需給のギャップが背景にあると考えられます。

募集する類型によって競合の状況は異なりますが、採用市場全体として人材の確保が難しい状態が続いています。

将来的な需給ギャップを示す試算もあります。経済産業省が2019年3月に公表した「IT人材需給に関する調査」では、2030年時点でIT人材が高位シナリオで最大約79万人、中位シナリオで約45万人不足するという結果が示されました。

この試算は労働生産性の上昇率を年0.7%と置いた前提によるもので、生産性が年3.5%程度向上した場合には2030年時点の需給は均衡することも同調査は併記しています。

参考:経済産業省「IT人材需給に関する調査」

公表から年数が経過しており、現時点の需給状況をそのまま表す数値ではありませんが、中長期的に人材の供給が需要に追いつきにくい構造を示す参考値として扱えます。こうした構造が変わらない限り、採用のみでDX人材を必要数そろえるのは難しく、需給ギャップを前提にした進め方が求められます。

報酬・待遇面での候補者の期待値が高い

非IT企業では、IT人材市場の報酬水準や働き方への期待に、既存の制度が対応しきれないことが採用の壁になりやすい状況です。

報酬面では、社内の等級制度がIT人材市場の相場を想定して設計されていないケースが多く、DX人材に見合う金額を提示しようとすると、既存の等級レンジを超えてしまうことがあります。年齢や社歴に応じて等級が上がる仕組みの企業では、経験の浅い若手のDX人材にだけ高い等級・報酬を提示する理由づけが難しく、既存社員との報酬逆転が生じることもあります。

この逆転を社内でどう説明するかが決まらないまま採用を進めると、必要な水準まで提示額を上げられず、内定を出しても他社に流れてしまう事態が起こりやすくなります。

働き方の面でも、期待とのずれが生じやすい領域です。リモートワークの可否、技術選定の裁量、使用する開発環境といった点は、DX人材が転職先を選ぶ際に重視しやすい要素です。

既存の勤務制度やIT環境を前提に運用してきた非IT企業では、出社前提の働き方やレガシーなシステム環境が残っている場合が多く、候補者が期待する裁量や環境をそのまま用意できないことがあります。こうした条件面の落差は、面接で好印象を得られても内定辞退につながる要因になりやすい点です。

要件定義と評価を担える人がいない

採用したいDX人材の要件を技術面から具体化し、選考の場で見極められる人材が社内に少ないという課題は、多くの企業に共通します。

情報システム部門が採用プロセスに関与しない体制の企業では、要件定義が人事担当者と経営層だけで進みがちです。その結果、必要なスキルレベルや担ってほしい役割の粒度があいまいなまま募集が始まり、応募者と企業側の認識にずれが生じます。

経営層から採用の方針だけが伝えられ、どの人材類型のどのような経験を求めるのかが定まらないまま採用活動が進むケースも見られます。求人票の記載が幅広い業務を並べただけの内容になり、応募する側も何を期待されているのか判断しにくくなります。

選考の場面でも同様の課題が生じます。候補者が説明する過去のプロジェクト経験や技術的な成果について、その内容や難易度を裏付けとともに確認できる面接官が社内にいない場合、職務経歴書や自己申告の内容をそのまま受け止めるかたちで合否を判断せざるを得なくなります。

技術的な質問を用意していても、回答の妥当性を評価する基準を持ち合わせていなければ、選考の精度は面接官個人の感覚に左右されやすくなります。

社内育成体制が整備されていない

入社後の育成体制や成長環境が整っていないことは、採用活動における候補者からの見え方にも影響します。

DX人材、なかでも転職市場での需要が高い層は、入社後にどのようなキャリアを描けるか、スキルアップの機会が用意されているかを面接の場で確認することが多く、説明できる材料がないと比較検討で不利になりやすい状況です。研修制度や資格取得支援、社内での技術的な成長機会が整理されておらず、求人票や面接の場でも言語化されていない企業は、候補者から見て他社との比較で見劣りしやすくなります。特に、IT専業企業が技術者向けのキャリアパスや評価制度を明示している場合、それと並べて検討する候補者にとって、育成方針が見えない企業は選択肢から外れやすくなります。

非IT企業では、社内にロールモデルとなる先行人材が少なく、入社後にどのような成長を遂げられるかを具体的に示しにくいという事情もあります。過去にDX人材を採用した実績が乏しい企業ほど、こうした説明材料そのものが社内に蓄積されておらず、面接の場で候補者からの質問に答えづらいという状況も生まれます。

育成体制そのものの整備は準備段階の課題であるため、採用が難しくなる理由のひとつとして、まずこの点を押さえておく必要があります。

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DX人材の採用に必要な準備

必要な人材類型の見当がついても、そのまま募集を始めると要件があいまいなまま採用活動が進んでしまいます。

準備段階で押さえておくべきことは、自社のDX課題と必要な人材類型の特定、採用要件と人物像の定義、そして待遇・報酬水準の設計の3点です。それぞれ紹介します。

自社のDX課題と必要な人材類型の特定

採用に着手する前に、自社のDX課題を棚卸しし、対応する人材類型の候補を洗い出す手順を踏むことが有効です。課題と類型の対応づけをせずに募集を始めると、要件が定まらないまま選考が進み、評価する側も何を確認すればよいか判断できなくなります。

進め方の目安は次の3ステップです。

  1. 自社のDX課題を洗い出す:経営が掲げている方針、現場の業務プロセスで滞っている点、既存システムの制約など、複数の切り口で課題を挙げると漏れが少なくなります。
  2. 課題に対応する人材類型の候補を出す:前章で紹介した6類型の役割を参照しながら、どの課題にどの類型が関わりそうかを当てはめていきます。1つの課題に複数の類型が関わる場合もあるので、この段階では候補を広めに残しておいてかまいません。
  3. 採用する類型の優先順位を決める:複数の課題が同時に浮かび上がった場合は、経営インパクトの大きさや対応の緊急度をもとに、先に採用する類型を絞り込みます。

すべての類型を一度にそろえようとすると、要件も採用予算も分散し、どの採用も中途半端になりやすいので注意が必要です。

採用要件と人物像の定義

採用要件は、抽象的な人物像ではなく、実務でどのような経験・成果を求めるかを具体的な言葉に落とし込む必要があります。「DXに関する知識がある方」のような表現では、候補者が自身の経験を当てはめられず、応募の間口が狭くなったり、逆に要件と合わない応募が集まったりします。

抽象的な表現(悪い例)と、具体的に書き直した例(良い例)を以下に示します。

抽象的な要件(悪い例)具体的な要件(良い例)
DXに関する知識がある方販売データを用いた需要予測モデルの構築経験(使用ツールは問わない)
コミュニケーション能力が高い方部門をまたぐ会議で、技術的な内容を非エンジニアに説明し合意形成を進めた経験
最新技術に強い方クラウド環境(AWS、GCPなど)でのシステム設計・運用経験

DXの採用要件を具体化する際は、1つの求人に複数の類型の要件を詰め込まないよう注意してください。たとえば、ビジネスアーキテクトの要件とソフトウェアエンジニアの要件を同一の求人票に並べると、候補者はどちらの経験を重視すべきか判断できず、応募が集まりにくくなります。前段で優先順位をつけた類型ごとに、求人票を分けて設計することが望ましいです。

待遇・報酬水準の設計

DX人材の採用要件と人物像を定義したら、それに見合う予算と等級をセットで設計しておく必要があります。

既存の社内等級制度だけでDX人材の処遇を決めようとすると、IT市場の相場と合わず、応募が集まらなかったり、選考後半での内定辞退につながったりします。

設計の進め方は次の手順です。

  1. 市場相場を把握する:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」などの公的統計や、求人媒体・転職エージェントが公開している職種別のデータを参照し、対象となる人材類型のIT市場の相場を把握します。同調査では「ソフトウェア作成者」「その他の情報処理・通信技術者」などの職種区分ごとに賃金水準を確認できます。
  2. 自社の等級制度と突合する:把握した相場と自社の等級制度を照らし合わせ、どの程度のギャップがあるかを確認します。ギャップは等級レンジの単位で測り、レンジを超える場合にどの処遇枠で対応するかを、この段階であらかじめ決めておきます。

参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」

ギャップが大きい場合は、既存の等級の枠内で処遇を収めようとせず、等級外のポジションとして扱う、契約形態を見直すなど、既存制度の外側に処遇の枠を設ける方法も検討してください。

なお、具体的な年収額は人材類型や経験年数、勤務地によって変動幅が大きくなることに留意しましょう。

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DX人材を確保する方法

DX人材の採用要件を固めたら、次はどの方法で人材を確保するかを検討する段階です。

確保の方法には、中途採用、新卒・ポテンシャル採用、フリーランス・業務委託などの外部人材活用、社内育成(リスキリング)の4つが挙げられます。

即戦力が必要で採用要件が明確な場合は中途採用、時間をかけて人材を育てられる場合は新卒・ポテンシャル採用や社内育成、期間限定で専門性の高い課題に対応したい場合はフリーランス・業務委託などの外部人材活用が向いています。それぞれの方法を、着手までの早さやコストなどの観点で比較すると、以下のとおりです。

方法着手までの早さコスト向いているケース
中途採用比較的早い中〜高(チャネルや条件による)即戦力が必要で、要件がある程度明確な場合
新卒・ポテンシャル採用遅い(育成期間も必要)中程度(育成コストが発生)時間をかけて将来のDX推進を担う人材を育てたい場合
フリーランス・業務委託早いプロジェクト単位で変動期間限定のプロジェクトや、専門性の高い業務に絞って依頼したい場合
社内育成(リスキリング)遅い(育成に時間を要する)中程度(研修コストが中心)既存社員の事業理解を生かし、中長期で体制を整えたい場合

中途採用(転職市場・スカウト・リファラル)

中途採用でDX人材を確保する場合、求人媒体への掲載や自社サイトでの公募を待つだけでは、候補者との接点を持てないケースが多くあります。DX人材は転職市場での需要が高く、複数社から声がかかっている状態で転職活動をする人材が多いためです。

そこで有効になるのが、企業側から候補者へ働きかける攻めのチャネルです。

ダイレクトリクルーティング(スカウト)は、候補者データベースから自社の要件に合う人材を探し、直接アプローチする手法です。準備章で定義した採用要件と対応する類型・職種名をもとに、自社の課題を具体的に伝えると、候補者の関心を引きやすくなります。

リファラル採用(社員紹介)も、DX人材の確保に向いている手法の一つです。社内にいるDX推進担当やエンジニアからの紹介であれば、自社の業務内容や働き方への理解を前提とした応募につながりやすくなります。

リファラル採用の制度設計や報酬の考え方は、以下の記事で詳しく解説します。

非IT企業や中小企業がこうしたチャネルで訴求する際は、知名度や報酬額で大手IT企業と競おうとしない方針を持つことが重要です。自社が抱える業務課題を具体的に示し、候補者にとってどのような裁量や挑戦の機会があるのかを言語化して伝えると、規模や知名度に左右されにくい訴求ができます。

新卒・ポテンシャル採用

新卒・ポテンシャル採用は、将来のDX推進を見据えて、今は経験がなくても素養のある人材を確保する方法です。中途採用のように即戦力を求める採用とは異なり、入社後の育成を前提に人材を選ぶ点が特徴です。

見極めの観点としては、学習意欲とデータへの親和性が挙げられます。技術の変化が速い領域のため、入社時点の知識よりも、新しい技術やツールを自ら学び続けられるかどうかが重要になります。また、数値やデータをもとに物事を考える習慣があるかどうかも、DX推進の素養を測る手がかりのひとつになります。

ただし、新卒・ポテンシャル採用は、育成体制とセットで設計する必要があります。採用した人材にどの類型のスキルを身につけてもらうか、誰がどのように教育を担うかを事前に決めておかないと、入社後に育成が進まず、早期の戦力化につながりません。

フリーランス・業務委託などの外部人材活用

フリーランスや業務委託でDX人材を確保する方法は、必要な期間・専門領域に絞って人材を活用したい場合に適しています。正社員としての採用や育成に時間をかけられない場合でも、特定のプロジェクトやフェーズに限定して専門人材の力を借りられる点がメリットです。

たとえば、ビジネスアーキテクトによる戦略立案フェーズや、データサイエンティストによる分析基盤の構築など、期間が区切られた工程では、外部人材の専門性を短期間で取り入れられます。社内に該当スキルを持つ人材がいない場合でも、比較的早く着手できる点も特徴です。

一方で、外部人材が担当した業務のノウハウは、契約期間の終了とともに社内に残りにくいという注意点があります。継続的にDX人材が必要な業務まで外部人材への依存を続けると、いつまでも内製化が進まない状態になりかねません。

また、フリーランスや業務委託の人材を活用する際は、契約形態の確認が必要です。業務の指揮命令の実態によっては、想定していた契約形態と実態がずれるケースもあるため、契約内容は事前に確認しておきましょう。

社内育成(リスキリング)

社内育成(リスキリング)は、既存社員の業務知識を生かしながら、DX推進を担える人材へと育てる方法です。自社の業務プロセスや商慣習をすでに理解している社員であれば、外部から採用した人材よりも、事業理解に基づいた変革を進めやすいというメリットがあります。

育成対象となる社員には、準備章で特定した自社の課題に対応する類型のスキルを、研修や実務を通じて習得してもらいます。IT部門の社員に限らず、事業部門で業務課題を把握している社員をデジタルスキル標準の類型に沿って育成する進め方もあります。

一方で、社内育成には相応の時間がかかります。研修の受講から実務での活用まで数ヶ月から1年以上を要する場合もあり、短期的な人材不足の解消には向きません。中途採用や外部人材の活用と組み合わせながら、中長期的な体制として位置づけることが現実的です。

リスキリングの進め方や企業の取り組み例は、以下の記事で解説しています。

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DX人材の選考体制と見極め方

要件を固めて候補者との接点を持てても、選考の場で技術力や適性を見極められなければ、DX人材の採用の精度は上がりません。

特に非IT企業では、技術的な素養を判断できる面接官が社内に少ないという前提に立った選考設計が必要です。DX人材の見極めの体制づくりは、質問と課題の用意、評価基準の言語化、選考スピードの確保、選考データの蓄積という4つの取り組みで進めます。順に解説します。

技術がわからなくても見極められる質問と課題を用意する

技術的な知識が浅い面接官でも、質問の型と課題を用意しておけば、DX人材としての候補者の実力を一定の精度で見極められます。

有効なのが、過去のプロジェクト経験を掘り下げる質問の型です。たとえば「そのプロジェクトでは、なぜその進め方を選んだのですか。ほかに検討した選択肢はありましたか」「うまくいかなかった場面で、何を判断材料に方針を変えましたか」「その成果は、最終的に何をもってうまくいったと判断したのですか」といった問いかけであれば、技術用語の理解を問わなくても、候補者の思考のプロセスを引き出せます。判定の対象は用語の正しさではなく、経験が自社の環境で再現できそうかどうかです。

実務課題やポートフォリオでは、成果物の完成度に加えて、作る過程での意思決定を候補者自身に説明してもらうと、技術的な深さを判断しやすくなります。「この成果物で、あなた自身が書いた・作った部分はどこですか。他のメンバーの担当と分けて教えてください」という問いは、他者の成果物への関与が浅かった候補者ほど答えに詰まりやすく、実際の貢献度を見極める手がかりになります。

企業側の見極め観点としては、学習を継続できるか、自ら課題を設定できるか、周囲を巻き込みながら物事を進められるか、という3点も判断の材料です。

学習の継続力は、直近1年で新しく学んだ技術と、その学び方を具体的に語れるかどうかから確認できます。課題設定力は、指示された作業の範囲を超えて、自ら見つけた問題に着手した経験を語れるかどうかが一つの手がかりです。巻き込む力は、意見の異なる関係者を動かして合意形成に至った経験があるかどうかから判断できます。

技術知識そのものより、事業理解と推進力は非IT側の面接官でも判断できる領域です。DX人材としての技術的な妥当性の判断に確度を求める場合は、外部の技術顧問や社外の専門家に選考の一部に同席してもらう方法も選択肢の一つです。

評価基準を言語化して構造化面接に落とし込む

DX人材の見極めには、評価基準を言語化して構造化面接に落とし込むことが有効です。

DX人材の選考でこの評価基準を自社だけで育てようとすると、多くの場合、二つの壁に行き当たります。

一つは再現性です。面接官が代わると、同じ候補者に対しても評価の結論が変わってしまうことがあります。もう一つは記録性です。評価の内容が担当者の記憶にしか残らず、翌年度の採用活動に引き継がれないという問題です。

その問題を解決するのが、構造化面接の手法です。

構造化面接とは、あらかじめ質問項目と評価基準を定め、全ての候補者に同じ質問をして同じ基準で評価する面接手法です。

評価基準を構造化面接で使えるようにするには、抽象的な言葉を、行動として観察できるレベルまで言い換えることが必要です。たとえば「コミュニケーション力がある」という基準は、そのままでは面接官によって解釈が分かれます。これを「技術的な内容を非エンジニアに説明できる」という観察可能な行動に言い換えておくと、面接官が代わっても同じ基準で判断しやすくなります。こうした言い換えの工夫は、自社の運用だけでも進められる範囲です。

構造化面接の具体的な進め方や質問例は、以下の記事で解説しています。

加えて、DX人材の採用は多くの企業で年間数名にとどまり、自社のDX採用だけで評価の判断材料を積み上げるには件数が足りません。そのため、DX採用単体で評価基準を育てるのは現実的ではなく、DX人材の選考を全社の採用評価運用の一部として設計し、他職種を含む選考データで基準を磨くという発想が必要になります。

面接官が代わっても結論がぶれない基準と再利用できる記録は、評価の物差しを持つ人材が社内に少ないDX人材の選考ほど効果を発揮します。

評価基準を標準化する仕組みとして、「NALYSYS AI面接」では、自社が重視する評価項目をあらかじめ設定したうえで、AIアバターが対話形式で候補者と面接を行います。面接内容は評価レポートとして自動的にまとめられるため、面接官が代わっても同じ基準で記録を振り返ることができます。

評価を担える人材が社内に少ないDX人材の選考では、こうした記録の標準化が翌年度以降の基準の見直しにも役立ちます。

「NALYSYS AI面接」について詳しく知りたい場合は、「3分でわかるNALYSYS AI面接」の資料をご覧ください。資料は無料でダウンロード可能です。

選考スピードを上げて候補者の離脱を防ぐ

DX人材の選考では選考スピードの遅れがそのまま候補者の離脱につながりやすい傾向があるため、迅速な対応が重要です。

転職市場で需要の高いDX人材は、複数社の選考に並行して進んでいることが多く、自社の選考に時間をかけている間に他社から先に内定が出て、そちらを承諾されてしまうケースが起こります。技術力の見極めに時間をかけたい気持ちがある一方で、選考が長引くこと自体が離脱の要因になるという事情をふまえておく必要があります。

対応としては、選考回数を必要最小限に設計する、日程調整を自動化する、合否連絡の期限を決めて守る、といった選考リードタイムの短縮が基本になります。

採用業務を効率化する方法については以下の記事で解説しているので、あわせて参考にしてください。

選考データを蓄積して評価基準を改善する

選考で得た評価データは、その場限りの合否判断にとどまらず、翌年度以降の採用活動に生かせる資産になります。

面接記録や評価レポートを蓄積しておくと、実際に入社したDX人材のパフォーマンスと選考時の評価を突き合わせることができ、どの質問や評価項目が入社後の活躍を予測できていたかをあとから検証できます。この振り返りをもとに、採用要件や評価基準を毎年見直していくサイクルを作ることが、選考の精度を段階的に高めていく方法です。

1年ごとの採用数が少ないDX人材ほど、こうした記録の蓄積がなければ改善の材料が社内に残りません。

一方で、選考で見極められる範囲には限界がある点にも注意が必要です。入社後の早期離職は、選考時の見極めが不十分だったこと以外にも、任される権限の範囲、既存のレガシーなシステム環境、評価制度が入社後にどう運用されるかといった、入社後の環境要因によって生じることも多くあります。

選考の精度を高める取り組みと、こうした環境要因への対応は切り分けて考える必要があります。

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まとめ

DX人材とは、デジタル技術で事業変革を推進する人材です。最新の「デジタルスキル標準(DSS)ver.2.0」では、AI・データ活用の進展に伴い新設された「データマネジメント」を含む6類型が定義されています。

日本企業では、DX人材の深刻な量・質不足、評価基準の欠如、適切な処遇提示の難しさが採用の大きな壁となっています。これらを打破するためには、まず自社のDX課題から必要な類型を特定し、採用要件を「抽象的な表現」から「具体的な行動レベル」へ落とし込む準備が必要です。

DX人材の確保にあたっては、中途採用のみに頼らず、リファラル採用や社内育成(リスキリング)を組み合わせる多角的なアプローチが有効です。選考時は、技術に詳しくない面接官でも再現性高く見極められるよう構造化面接やAI面接を導入したり、他社に負けない選考スピードを確保したりすることが成功の鍵となります。

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よくある質問

DX人材の採用を進めるなかで、企業の採用担当者からよく挙がる疑問を取り上げて回答します。

Q. DX人材の採用で失敗しやすいパターンは?

A. DX人材の採用で失敗しやすいパターンは、候補者ではなく企業側の進め方に原因があることがほとんどです。代表的なのは、要件を詰めないまま募集を始めてしまうこと、1人の候補者にビジネス設計から技術実装まで複数の類型のスキルを求めてしまうこと、選考基準を言語化せず評価を面接官任せにしてしまうことの3点です。

いずれも、採用要件と評価基準を事前に整理しておけば防げます。

Q. DX人材の年収相場はどのくらいですか?

A. DX人材の年収相場は、人材の類型や経験年数、勤務地によって幅が大きく、一概には示せません。目安を確認する際の一次情報としては、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」などの公的な賃金統計や、複数の求人サービス・転職エージェントが公開している市場データが挙げられます。

これらを自社の等級制度と突合する具体的な手順は、本記事の「待遇・報酬水準の設計」の章で解説しているのでご覧ください。

Q. DX人材とIT人材の違いは何ですか?

A. IT人材は一般に、情報システムの開発・運用を担う技術職を広く指す言葉として使われます。DX人材は、デジタル技術を使って事業や業務の変革を推進する人材を指し、技術職に限らず事業側の役割を担う人材も含みます。両者に公的な線引きがあるわけではなく、IT人材がDX人材を兼ねる場合もある点には注意が必要です。

自社の課題がシステムの構築・保守にあるのか、事業やビジネスモデルの変革にあるのかを整理すると、どちらの人材が必要かを判断しやすくなります。

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従来の採用業務では、膨大なエントリーシートの確認や面接日程の調整に追われ、「本当に自社に合う人材を見極める時間」が奪われてしまっています。また、面接官ごとの評価のバラつきは、採用ミスマッチを引き起こす大きなリスクとなります。

こうした採用課題を根本から解決するのが、AI面接の導入です。

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