「リファラル採用の報酬は違法にならないか」「いくらが妥当か」とお悩みの人事・労務担当者も多いのではないでしょうか。
リファラル採用の報酬は、正しく設計・運用すれば違法になりません。
本記事では、リファラル採用の報酬相場の考え方や金額の決め方、設計時に確認すべき論点を整理します。リファラル採用の制度の導入・見直しを検討中の方はぜひ参考にしてください。
リファラル採用の報酬とは
リファラル採用の報酬とは、自社の従業員が知人・友人を紹介し採用に至った場合に、その従業員へ支払う金銭または金銭以外の給付などのインセンティブのことです。
リファラル採用において社内の従業員に支払う紹介報酬は、就業規則や賃金規程に基づく賃金として支給するのが一般的です。なお 法令上の扱いは支給の設計で変わるため、自社の制度が適法かどうかの判断は社労士・弁護士への確認が前提になります。
リファラル採用の報酬の支給対象者
リファラル採用の報酬の支給対象者は、「現役の従業員(雇用関係のあるメンバー)」に限定するのが原則的な設計です。
退職者(アルムナイ)や業務委託を対象に含める場合、報酬を賃金として支払えないため、有料職業紹介事業に該当して違法とみなされるリスクがあります。
リファラル採用の報酬内容
職業安定法の例外規定を適用させて適法化を図るため、リファラル採用の報酬は就業規則や賃金規程に明記したうえで「賃金(手当)」として支給することが前提となります。
リファラル採用の報酬の支給方法としては、毎月の給与に上乗せして支給するほか、社会保険上の実務や割増賃金計算の煩雑さを避けるために、夏・冬の賞与支給月に合わせて支給する形態も多く選ばれています。
金額の妥当性は、賃金としての相当性の問題として検討します。紹介する人数や頻度といった運用の態様は、金額とは別の論点になるため、後述する報酬の決め方の章で扱います。
また、金銭に限らず、デジタルギフトやギフトカード、旅行券、スポーツ観戦チケットなどの現物や体験型報酬を取り入れるケースも存在します。ただし、これら非金銭・現物による支給であっても、社員への報酬として支払う以上は原則として給与所得に該当し、源泉徴収や課税処理の対象になります。
リファラル制度のメリット、他の手法との違い、設計手順は、以下の記事で解説しています。
リファラル採用の報酬の相場
リファラル採用における紹介報酬そのものの公的な平均額は公表されていません。 そのため、相場を横並びで探すよりも、自社の採用単価から逆算してリファラル採用の報酬金額を検討するのが実務に沿っています。
公的な統計で確認できるのは、採用手段ごとの1件あたり平均採用コストまでです。
厚生労働省「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 調査結果(令和4年)」によると、リファラル採用にあたる「知り合い・社員等からの紹介(縁故)」経由で発生した正社員の1件あたり平均採用コストは、4.4万円です。また、非正社員(パート・アルバイト等)の1件あたり平均採用コストは 3.4万円でした。
この採用コストの水準は、リファラル採用の報酬金額を検討する際の参照値の一つになります。
参考:厚生労働省「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 調査結果(令和4年)」
リファラル採用の報酬の決め方
リファラル採用の紹介報酬の決め方は、自社の採用単価からの逆算、採用課題に合わせた金額と支給要件の配分、上限の判断という3つの手順で進めます。
自社の採用単価から逆算する
リファラル採用の報酬を決める際は、自社の採用単価から逆算して計算します。自社の採用実績を起点に金額を組み立てる進め方です。
- 採用手段ごとに現行の採用単価を算出する
- 紹介経由で置き換えられる見込みの枠を確定する
- 残したい削減分と制度の運営コスト(ツール利用料や運用にかかる工数)を出す
- 紹介経由で置き換えられる単価から、残したい削減分と制度の運営コストを差し引く
- 紹介報酬に振り向けられる額が出たら、置き換え見込みの件数を掛けて年間予算の見積もりを算出する
起点となる採用単価は、自社の採用実績から算出します。前章で示した手段別の採用コストの水準は、算出した単価が極端に外れていないかを確かめる参照値として使います。
たとえば、紹介会社経由の正社員採用の単価が1件50万円だとします。採用単価の削減分と運営コストで仮に25万円を残すと決めれば、リファラル採用の紹介報酬に振り向けられるのは1件あたり最大25万円という計算になります。
年間予算の見積もりでは、リファラル採用の紹介報酬は賃金として支給するため、支給額に社会保険料の事業主負担が上乗せされる点も織り込みましょう。稟議では、この上乗せ分と、紹介経由への置き換えで削減できる採用単価の両方を数字で示すと説明しやすくなります。
自社の採用課題に合わせて金額と支給要件を配分する
リファラル採用の報酬を決めるときは、自社の採用課題に合わせて金額と支給要件を配分しましょう。
| 目的 | 具体的な方法 |
| 「段階制」と「在籍要件」による定着・プロセスの推進 | カジュアル面談の実施、面接、入社後3〜6ヶ月の継続在籍など、選考・在籍ステップに合わせた「段階制インセンティブ」を設けます。 |
| 職種やスキルに応じた傾斜配分 | リファラル採用で紹介される候補者の実務経験・年齢・保有資格・即戦力性の見込みといった要素を考慮し、支給手当の金額に「10万円、7万円、5万円」といった傾斜を設ける規程例が推奨されます。 |
| 雇用形態による金額の配分 | 正社員(数万〜数十万円程度)と、パート・アルバイト(数千〜数万円程度)のように、対象の雇用形態に応じてリファラル採用の報酬支給額を適切に抑えて設計・配分します。 |
自社の採用課題に合わせて適切な金額および支給要件の設定を行うことで、リファラル採用の紹介に対する従業員の心理的ハードルを下げられます。
上限を3つの視点で判断する
リファラル採用の紹介報酬の上限は、自社の合理性から判断します。
自社の判断に必要な3つの視点は以下のとおりです。
一つ目は、賃金としての相当性です。自社の賃金水準や既存の手当の最高額と比べて、その金額を説明できるかを確認します。
二つ目は、運用の態様です。特定の社員に紹介が集中する、紹介活動が常態化する、人数に上限がないといった運用は、金額の高さとは別に法令上の論点になり得るため、制度設計の段階で運用ルールとあわせて専門家に確認します。
着目するのは紹介の回数と態様であり、報酬額が高いこと自体が問題になるわけではありません。
三つ目は、社内の公平性と納得性です。紹介できる職種や部署に偏りがあると不公平感が生じやすく、紹介者が管理職や人事・採用担当を兼ねる場合は職務との重複を整理しておきます。
| 判断する際の視点 | 具体的な内容 |
| 賃金としての相当性 | 自社の賃金水準や既存の手当の最高額と比べて、リファラル採用の報酬金額の相当性を説明できるかを確認します。 |
| 運用の態様 | 「特定の社員に紹介が集中する」「紹介活動が常態化する」「人数に上限がない」といった運用は、金額の高さとは別に法令上の論点になり得るため、制度設計の段階で運用ルールとあわせて専門家に確認します。※着目するのはリファラル採用の紹介の回数と態様であり、報酬額が高いこと自体が問題になるわけではありません |
| 社内の公平性と納得性 | リファラル採用で紹介できる職種や部署に偏りがあると不公平感が生じやすいです。紹介者が管理職や人事・採用担当を兼ねる場合は、職務との重複を整理しておきます。 |
また、リファラル採用の報酬額を社内に公開するかどうかは、動機づけを高める効果と、報酬目的の紹介を誘発するリスクの両面から判断します。
上限額の判断は自社の賃金制度との関係で決まるため、規程化の前に社労士や弁護士に確認しておきましょう。
リファラル採用の報酬制度を設計するときの注意点
リファラル採用の紹介報酬の決め方が固まったら、制度を運用に乗せる前に、規程・支給時期・社会保険と税務の確認と、報酬目的の紹介への対策を進めます。 いずれも規程の文言や個別の判定によって結論が変わるため、専門家への確認を前提に説明します。
就業規則・賃金規程に明記する
リファラル採用の紹介報酬の制度は、就業規則または賃金規程に根拠を定めて運用するのが基本です。 規程に定める項目は次のとおりです。
| 記載項目 | 決めるべき事項 |
| 支給対象者の範囲 | 対象の雇用形態・職位 |
| 支給要件 | 成立段階、同一候補者を複数社員が紹介した場合の扱い |
| 金額・算定方法 | 一律か成果連動か |
| 支給時期 | 内定時/入社時/在籍期間経過後 |
| 支給しない場合 | 別ルート・紹介会社経由の重複応募(紹介手数料との二重払いを避ける)、選考途中の辞退 |
| 手続 | 申請者・承認者 |
| 上限 | 1人・年間あたりの上限額 |
規程の新設・変更には、法令上の手続き(作成・届出・意見聴取・周知)が必要になる場合があります。手続きの要否と進め方は社労士に確認するようにしましょう。
また、リファラル採用の紹介を業務命令として運用すると労働時間の議論に入り得るため、賃金としての位置づけは明確にしつつ、募集業務そのものを担わせる形は避けるのが望ましいでしょう。
支給時期と返還の扱いを設計する
リファラル採用の報酬の支給時期の選択肢は、内定時・入社時・試用期間終了後・入社後6ヶ月時点での在籍確認の4つです。このうち基本線として採るのは、試用期間終了後や入社後6ヶ月時点のように、在籍期間を支給要件とする時点です。
支給済みの紹介報酬を早期離職時に返還させる条項は、労働基準法上の論点(賃金の全額払い、違約金の定めの禁止)に触れる可能性があります。そのため実務では、返還条項を置くのではなく、在籍期間をリファラル採用の報酬の支給要件として支給時期そのものを後ろに倒す設計が用いられます。
ただし、支給時期を後ろに倒すほど紹介から支給までの期間は延び、紹介への動機づけは弱まります。在籍要件の期間と支給月の組み合わせで最長どれだけ遅れるかを確認し、許容できる範囲に収める設計が現実的です。
なお、支給時期をどう条項に書くかは、次に説明する社会保険上の扱いにも影響します。返還条項を置けるかどうかと支給時期の条項の書き方は、社労士や弁護士への確認が必要です。
リファラル採用で生じるデメリットについては、 以下の記事で解説しています。
社会保険と税務の扱いを確認する
リファラル採用の紹介報酬の社会保険上の扱いは、支給の間隔や回数、規程での定め方によって変わります。 報酬として標準報酬月額に算入されるのか、賞与として標準賞与額で扱われるのか、そのいずれでもないのかは、支給設計によって分かれます。
日本年金機構の「従業員に賞与を支給したときの手続き」のページで公表されている運用基準としては、被保険者賞与支払届の対象になるのが年3回以下の支給とされています。支給回数は給与規程で明確に定められた支給月数で判断されるため、支給月を規程に書くかどうかで判断の前提が変わります。
年4回以上の支給になる設計では、毎月の保険料と事業主負担に影響するため、支給月を賞与の支給月に合わせる設計が採られることがあります。
割増賃金の算定基礎に紹介報酬が入るかどうかも、支給の設計によって変わります。毎月の支給に近い形にするか、四半期や半期に一度の支給にするかで扱いが分かれるため、支給間隔を決める段階で確認しておきましょう。
税務上は、リファラル採用の紹介報酬を賃金として支給する場合、給与所得として源泉徴収の対象になります。
区分の判定は、支給設計を示して所轄の年金事務所・社労士・税理士に確認するのが確実です。
参考:日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」
報酬目的の紹介を防ぐ
リファラル採用の紹介報酬の金額に魅力を感じ、報酬を得ること自体を目的とした紹介をする従業員が出てくる可能性があります。
リファラル採用の報酬を主目的とした紹介を防ぐために、安易に金額を上げるのではなく、制度を整えてから募集を始めましょう。
前述したように、在籍期間の要件を組み込むことが有効です。また、紹介経路にかかわらず通常の選考プロセスと同じ「厳格かつ公正な基準で候補者を評価する」という体制を整えることも重要なポイントです。
当社の「NALYSYSのAI面接」は、AI面接官が候補者の回答に応じて適切な深掘り質問を行い、思考力や適性を多角的に引き出します。 感情や紹介者との関係性といった「人間特有の評価のブレ」を排除し、あらかじめ設定した統一基準で客観的に評価するため、リファラル採用でも他の応募経路と変わらない公平な選考を実現できます。NALYSYS AI面接の詳しい機能や導入の流れは、資料『3分でわかるNALYSYS AI面接』で紹介していますのでご興味のある方はご覧ください。
AI面接の仕組みや導入のメリットは、次の記事で解説しています。
まとめ
リファラル採用の報酬は、社員からの紹介経由で採用が決まった際に発生するインセンティブです。
リファラル採用の報酬は賃金(手当)として支給するのが一般的ですが、非金銭や現物を支給するケースもあります。いずれの場合においても、法令上の該当性の判断は専門家への確認が前提です。
リファラル採用の報酬金額は、公的な平均額が公表されていないため、相場ではなく自社の採用単価からの逆算で決めます。金額と支給要件の配分は自社の採用課題に、上限は自社の賃金制度との整合に、それぞれ判断の軸を置きます。
制度化の段階では、規程・支給時期・社会保険と税務の確認と、報酬目的の紹介への対策をあわせて設計します。法令上の論点は内容ごとに確認先が分かれるため、社労士・弁護士・所轄の年金事務所・税理士へ確認しながら進めましょう。
よくある質問
Q. リファラル採用の報酬は違法ですか?
A. 社員にリファラル採用の紹介報酬を支払うこと自体が、ただちに違法になるわけではありません。
職業安定法には、労働者の募集に協力した人へ報酬を支払うことを制限する定めがあります。しかし、賃金や給料など、これらに準ずる形でリファラル採用の報酬を支払う場合は例外とされており、違法になりません。実務で就業規則や賃金規程に定めた賃金として支給する形が一般的なのは、この例外に沿わせるためです。自社の設計がこの形に当てはまるかは、社労士や弁護士に確認しましょう。
Q. リファラル採用の報酬の相場はいくらですか?
A. リファラル採用の紹介報酬の公的な平均額は公表されておらず、金額は自社の採用単価から逆算して決めるのが基本です。
公的統計で確認できるのは採用手段ごとの平均採用コストの水準までで、報酬額の目安には使えません。また、職業安定法との関係では金額そのものより支払いの形が論点になり、賃金として規程に位置づけて支給することが前提になります。設計の段階で社労士に確認しておきましょう。
Q. 就業規則に定めずにリファラル採用の報酬を支給できますか?
A. リファラル採用の報酬は、就業規則や賃金規程に定めてから支給するのが原則です。
職業安定法上、リファラル採用の紹介報酬は賃金として支払う場合に認められるという整理であり、賃金として扱うには規程上の根拠が必要になるためです。規程に定めないまま支給すると、賃金ではなく募集への報酬とみられる余地が生じるうえ、支給の可否をめぐる社内の争いにもつながります。導入の前に規程を整え、社労士の確認を受けてください。
