既存の採用手法では応募が集まらず、ダイレクトリクルーティングの導入を検討する採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
ダイレクトリクルーティングは企業側から候補者に直接アプローチできる採用手法で、人材獲得の活路になります。
本記事ではダイレクトリクルーティングの5つのメリットと3つのデメリット、成果を出すための3つの条件を紹介します。導入を社内で検討・説明する際の材料として参考にしてください。
ダイレクトリクルーティングの5つのメリット
ダイレクトリクルーティングとは、企業側から候補者に直接アプローチする採用手法です。スカウトサービスのデータベースやSNSなどで候補者を探し、企業が個別にスカウトを送ります。
ダイレクトリクルーティングの代表的なメリットは、以下の5点です。
| メリット | 概要 |
| 転職潜在層にアプローチできる | 求人広告では届かない、転職を積極的に考えていない層にも接点をつくれる |
| 知名度に左右されずに候補者へ届く | スカウトが1対1で届くため、母集団形成において企業規模の影響を受けにくい |
| 求人広告や人材紹介と比較して採用コストを抑えられる | 利用企業への調査でメリットの回答1位。成功報酬型とは費用構造が異なる |
| 採用ノウハウが社内に蓄積される | エージェント任せでは残らない、返信率や訴求文面のデータが自社に残る |
| マッチ度の高い候補者に絞ってアプローチできる | 応募を待たず、プロフィールを見て要件に合う人にだけ接点を作れる |
それぞれ解説します。
転職潜在層にアプローチできる
ダイレクトリクルーティングのメリットの一つは、転職潜在層にアプローチできることです。
求人広告が主に「今、転職活動をしている人」に届く構造であるのに対し、ダイレクトリクルーティングは転職を積極的に考えていない層にも企業側から接点をつくれます。
求人広告は掲載した求人に応募が来るのを待つ手法であるため、情報が届くのは求人サイトを見ている顕在層に限られます。転職サイトに登録していても閲覧頻度が低い層や、転職を意識し始めたばかりの層には、情報が届きにくい構造です。
一方、ダイレクトリクルーティングはデータベースやSNS上のプロフィールをもとに企業側から個別にアプローチするため、転職活動を始めていない層にも直接情報を届けられます。転職潜在層への接点を増やしたい場合、ダイレクトリクルーティングは有効な選択肢です。
母集団づくりの手法はダイレクトリクルーティング以外にもあります。母集団形成のほかの手法についても知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
知名度に左右されずに候補者へ届く
ダイレクトリクルーティングのメリットには、知名度に左右されずに候補者へ届けられることが挙げられます。
ダイレクトリクルーティングはスカウトが候補者に1対1で届くため、母集団形成の段階では企業の規模や知名度の影響を受けにくくなります。
求人広告では、掲載枠の大きさや露出の多さといった構造上、知名度の高い企業やブランド力のある企業に応募が集まりやすい傾向があります。知名度の低い企業や中小規模の企業は、同じ求人内容でも応募数が集まりづらいです。
ダイレクトリクルーティングでは、企業が候補者のプロフィールを確認したうえで個別にスカウトを送るため、応募を待つ手法に比べて企業規模の差が母集団形成に影響しにくくなります。候補者に自社の情報を直接伝えられる点は、知名度で劣勢に立ちやすい企業にとってメリットです。
求人広告や人材紹介と比較して採用コストを抑えられる
ダイレクトリクルーティングのメリットは、採用コストを比較的低く抑えられる点です。
レバレジーズが2023年に実施したダイレクトリクルーティングについての実態調査において、メリットとして最も多く挙げられた回答は「採用コストが安い」で、51.2%でした。この調査は、ダイレクトリクルーティングを利用中もしくは利用経験のある企業の採用担当者123名を対象にしたものです。

引用:レバレジーズ株式会社「新卒・中途採用におけるダイレクトリクルーティングについての実態調査」
採用担当者がダイレクトリクルーティングの費用が安いと感じる背景には、費用構造の違いがあります。
人材紹介サービスは採用が決まるたびに成功報酬が発生する仕組みです。2021年度に実施された厚生労働省の委託調査によると、職業紹介事業者が求人企業から徴収している手数料率は多くの職種で「30%以上40%未満」とする事業者が最も多くなっています。つまり、人材紹介の費用は採用人数と年収におおむね比例する構造です。
一方、ダイレクトリクルーティングの費用はスカウトサービスのデータベース利用料などが中心で、採用人数に応じて費用が増える料金体系ではないケースが多くなっています。
その代わり、候補者の検索やスカウト文面の作成、返信対応といった運用は自社の採用担当者が担います。外部に支払っていた費用の一部を、自社の工数で引き受ける形式です。
ただし、採用人数や運用体制、料金体系によっては、かえって割高になるケースもあるので注意が必要です。ダイレクトリクルーティングの費用の内訳や料金体系については、以下の記事で詳しく解説します。
参考:レバレジーズ株式会社「新卒・中途採用におけるダイレクトリクルーティングについての実態調査」
参考:厚生労働省「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査」
採用ノウハウが社内に蓄積される
ダイレクトリクルーティングのメリットの一つは、採用ノウハウが社内に蓄積されることです。
ダイレクトリクルーティングでは、「どのような条件の候補者が返信しやすいか」「どのようなスカウト文面が効果的か」などのデータが自社に蓄積されます。
人材紹介サービスでは、候補者への訴求やアトラクトのノウハウは主にエージェント側に蓄積され、企業側に共有されるとは限りません。ノウハウが社外にとどまるため、担当者が代わったり依頼先を変えたりすると、それまでの知見を引き継ぎにくいのが難点です。
一方、ダイレクトリクルーティングは企業自身が候補者の検索からスカウト送付、返信対応までを担うため、反応の良かった条件やアプローチ方法がそのまま社内に残ります。採用活動を継続するほど、自社に合った採用ノウハウが内製化されていくでしょう。
マッチ度の高い候補者に絞ってアプローチできる
ダイレクトリクルーティングのメリットには、マッチ度の高い候補者に絞ってアプローチできることが挙げられます。
ダイレクトリクルーティングでは、候補者のプロフィールを確認したうえで自社の要件に合う人材にだけアプローチできるため、要件と合わない応募への対応が少なくなります。
求人広告や人材紹介では、募集要項を見て候補者側が応募を判断するため、要件を満たしていない応募が発生することがあります。採用担当者は、こうした応募にも書類確認や返信対応の工数をかけることになります。
一方ダイレクトリクルーティングでは、企業側がスキルや経験などのプロフィールを見てからアプローチするかどうかを判断するため、要件との不一致による対応工数を抑えることが可能です。
前述のレバレジーズの実態調査においても、メリットの回答で2番目に多かったのは「自社の要件にぴったりあった人材を見つけられる」で43.3%でした。
ダイレクトリクルーティングの3つのデメリット
ここで紹介するダイレクトリクルーティングの3つのデメリットは、前述のメリットを生み出しているのと同じ特徴から生じています。
ダイレクトリクルーティングの代表的なデメリットは、以下の3点です。
- 候補者選定と運用に工数がかかる
- 成果が出るまでに時間がかかる
- 文面と対応の質が成果を左右する
それぞれ解説します。
候補者選定と運用に工数がかかる
ダイレクトリクルーティングのデメリットには、候補者選定と運用に工数がかかることが挙げられます。
ダイレクトリクルーティングは候補者を自社で選ぶ設計だからこそ、選定そのものに工数がかかります。
前述のレバレジーズによる実態調査でも、課題として最も多く挙げられた回答は「採用候補となる求職者を探すのに時間がかかる」で61.7%、「スカウト文面を作成するのに時間がかかる」という回答も30.0%ありました。

引用:レバレジーズ株式会社「新卒・中途採用におけるダイレクトリクルーティングについての実態調査」
応募を待つ手法や人材紹介では候補者側から接点が生まれるのに対し、ダイレクトリクルーティングでは自社で候補者を探すところから業務が始まります。
言い換えると、ダイレクトリクルーティングではエージェントに委ねていた業務を自社で担う構造です。費用構造の違い・ノウハウの蓄積・マッチ度の高さは、この工数負担と引き換えに成り立つ関係です。
ダイレクトリクルーティングの工程を分解すると、主な流れは以下のとおりです。
- データベースでの検索
- 候補者の選定
- スカウト文面の作成
- スカウト送信
- 返信対応
- 面談の日程調整
このうち特に時間がかかりやすいのが、検索条件を絞り込みながら該当者を探す工程と、候補者ごとに文面を調整する工程です。返信が来たあとの日程調整や選考連絡も、担当者の手が離せない業務として積み重なる点に注意が必要です。
これらの業務を一人の担当者がすべて抱えると、通常の採用業務と並行して回すのは難しくなります。ダイレクトリクルーティングの運用を始める前に、どの工程を誰が担うかを決めておく必要があります。
スカウト運用に限らず、採用業務全体の工数を見直したい場合は、次の記事も参考になります。
参考:レバレジーズ株式会社「新卒・中途採用におけるダイレクトリクルーティングについての実態調査」
成果が出るまでに時間がかかる
ダイレクトリクルーティングのデメリットの一つは、成果が出るまでに時間がかかることです。
転職潜在層へのアプローチが強みである一方で、成果が出るまでのリードタイムは長くなります。
転職潜在層は「今すぐ転職したい人」ではないため、スカウトを送ってすぐに応募や選考に進むとは限りません。まず接点をつくり、興味を持ってもらったうえで、時間をかけて応募・選考へとつなげる必要があります。これは、転職潜在層にアプローチできるというメリットの構造上、生じるデメリットです。
そのため、ダイレクトリクルーティングは欠員が出てすぐに人を確保したいという短期の採用ニーズには向いていません。
この特性は、社内でダイレクトリクルーティングの導入を上申する際にも影響します。成果を測る期間を短く設定すると、手法としては機能していても「効果が出ていない」と誤って判断されるおそれがあります。上申時には、どの程度の期間で成果を評価するかをあらかじめ合意しておくことが重要です。
文面と対応の質が成果を左右する
ダイレクトリクルーティングのデメリットには、文面と対応の質が成果を左右することがあります。
ダイレクトリクルーティングは知名度の看板に頼らないぶん、候補者が企業を判断する材料はスカウトの文面と対応そのものになります。
求人広告では企業名や知名度が応募判断の入り口になりますが、ダイレクトリクルーティングでは候補者が企業を事前に調べているとは限らず、最初の接点はスカウトの文面そのものです。
もちろん、入社を決める段階では企業の知名度や待遇も判断材料になります。ただし、返信するかどうかを決めるそれ以前の段階では、文面の質と対応のスピード・丁寧さが直接影響します。
これら3つのデメリットをどこまで許容できるかは、社内の採用体制や人員配置次第です。ダイレクトリクルーティングの全容や自社に向いているかどうかの詳しい判断基準は、下記の記事で解説しているので参考にしてください。
次章では、この3つのデメリットを前提に、ダイレクトリクルーティングで成果を出すための3つの条件を整理します。
ダイレクトリクルーティングで成果を出す3つの条件
前章で挙げたダイレクトリクルーティングの3つのデメリットには、それぞれ対処法があります。工数には運用の型、文面と対応の質にはルール、成果が出るまでの時間には中長期の計画で対応するのが基本です。
以下、で詳しく解説します。
運用の型をつくって工数を抑える
ダイレクトリクルーティングで成果を出す条件には、運用の型をつくって工数を抑えることが挙げられます。
ダイレクトリクルーティングにおける候補者選定と運用の工数は、運用の型を先につくっておけば一定の範囲に抑えられます。
検索から選定、文面作成、送信、返信対応、日程調整までを毎回ゼロから考えていると、工数が膨らみます。
工数を抑えるために、検索条件を保存しておき、定期的に見直すルールを決めておきましょう。文面もゼロから書くのではなく、ベースとなる基本的なテンプレートを用意し、候補者ごとに調整する箇所だけをあらかじめ決めておくと、作成にかかる時間を短縮できます。
また、返信対応や日程調整についても、誰がどの工程を担当するかという対応フローと分担を事前に決めておくと、都度の判断に時間を取られずに済みます。
スカウトの段階は、文面の言葉選びや運用の工夫といった、母集団形成の質に担当者の時間を集中させたい工程です。そこで、面接以降の採用フローについては、自動化できる工程から効率化する方法があります。
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ルールを決めて文面と対応の質を保つ
ダイレクトリクルーティングで成果を出す条件の一つは、ルールを決めて文面と対応の質を保つことです。
ダイレクトリクルーティングのスカウト文面や返信対応の質を担当者個人の力量に任せず、チームのルールとして決めておくことが大切です。
返信率は企業の知名度や募集ポジションの内容にも左右されますが、自社の工夫で改善できるのはスカウト文面と対応の部分です。
たとえば、候補者のプロフィールのどの部分を読み、文面のどこに反映させるかを決めることが、ダイレクトリクルーティングにおけるルールづくりの第一歩です。
あわせて返信までの目標時間を決めておくと、対応の遅れによる機会損失を防げます。返信率を定点で記録し、スカウト文面や送信タイミングの改善に役立てる運用も有効です。
なお、新卒採用向けのスカウト文面には学生ならではの調整点があります。新卒採用でのダイレクトリクルーティングのやり方や注意点については、 以下の記事で解説しています。
単発ではなく中長期の計画で運用する
ダイレクトリクルーティングで成果を出す条件には、中長期の計画で運用することがあります。
ダイレクトリクルーティングは成果が出るまでに時間がかかることを前提に、単発ではなく中長期の計画として運用することが重要です。
ダイレクトリクルーティングの運用を始める時点で、評価期間をあらかじめ決めておきます。あわせて送信数や返信率、面談数といった中間指標を設定しておくと、最終的な成果が出る前の時点でも運用の進捗を確認できます。
振り返りの周期も事前に決めておき、検索条件やスカウト文面を定期的に見直す運用にすると、成果につながりやすくなるでしょう。
まとめ
ダイレクトリクルーティングの大きなメリットは、転職潜在層へアプローチできる点や知名度に左右されない訴求ができる点など、企業から候補者へ直接働きかけることができる点にあります。
一方でダイレクトリクルーティングのデメリットは、候補者選定と運用に工数がかかる点、成果が出るまでに時間がかかる点、文面と対応の質が成果を左右する点などです。
これらのデメリットは、工数を抑える運用の型づくり、文面と対応の質を保つルールづくり、中長期を見据えた計画的な運用によって対処できます。
ダイレクトリクルーティングの導入を判断する際は、自社の採用体制や運用にかけられる工数と照らし合わせて検討することが望ましいでしょう。
よくある質問
Q. ダイレクトリクルーティングは求人広告や人材紹介と併用できますか?
はい。ダイレクトリクルーティングは求人広告や人材紹介と併用すると良いでしょう。
求人広告はいま求人を探している層からの応募を集める経路であり、人材紹介は紹介会社を経由して候補者と出会う経路です。ダイレクトリクルーティングは、転職を検討し始めたばかりの層など、他の経路では出会いにくい候補者へ直接アプローチする経路にあたります。
複数の経路を組み合わせることで、母集団形成の入り口を広げられます。
Q. 中小企業でもダイレクトリクルーティングを導入するメリットはありますか?
中小企業にとって大きなメリットとなるのは、企業の知名度に左右されずに、優秀な人物にアプローチできることです。
ダイレクトリクルーティングでのスカウトは候補者に1対1で届くため、母集団形成の段階では知名度の差に左右されにくいという特徴があります。大手企業でなくても、ポジションの魅力や仕事内容が候補者に伝われば、返信や応募につながります。
採用担当が他の業務と兼任している場合は、対象を職種や地域で絞り込み、少数の候補者に厚く対応する運用から始めると、工数を抑えながらダイレクトリクルーティングの効果を確かめられるでしょう。
