採用KPIを設定するよう言われたものの、何をどう追えばよいのかわからない」と悩む採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
採用KPIは、KGIから逆算してプロセスごとに指標を置くことで設定します。
本記事では、採用KPIの設定手順を5つのステップでわかりやすく解説します。また、採用KPIの指標一覧と計算式、KPIツリーの作成方法、運用を続けるためのポイントなども解説するので参考にしてください。
採用KPIとは
採用KPIとは、採用活動の最終目標(採用KGI)を達成するために、プロセスごとの進捗を測る中間指標のことです。
採用KGIが「いつまでに・何人を・どのくらいのコストで採用するか」という最終的な目標であるのに対し、採用KPIはその途中の達成度合いを示します。
採用KGIの数字だけを追いかけていると、採用活動のどの段階でつまずいているのかがわかりにくくなります。採用活動において生じた課題に対する原因の特定や対策を早めに行うために、採用KPIを設定することは重要です。
採用KPIの指標一覧
採用KPIは、母集団形成から書類選考、面接、内定、入社、定着までの各プロセスに沿って設定します。
どの段階で何を測るのかを一覧で押さえておくと、以降のKPIの設計・運用において迷いにくくなります。まずは以下の表を管理シートに転記し、プロセスの流れで数値を追う形から始めてみましょう。
| プロセス | 主な指標 | 見る頻度 |
| 母集団形成 | 応募者数(チャネル別) | 週次 |
| 書類選考 | 書類選考通過率 | 週次 |
| 面接 | 面接設定率・面接通過率 | 週次 |
| 選考全体 | 選考辞退率 | 月次 |
| 内定 | 内定承諾率 | 都度 |
| 採用活動全体 | 採用単価(採用コスト) | 月次〜四半期 |
| 採用活動全体 | 採用リードタイム | 月次 |
| 入社後 | 早期離職率・定着率 | 四半期〜半期 |
採用KPIの指標の目安は業界・職種・採用チャネルで大きく変わるため、他社の相場ではなく、自社の過去実績(前回の採用や前年同期)と比較して良し悪しを判断します。 過去実績がまだない場合は、初回の運用をデータ蓄積の期間と割り切り、まず実績を記録することから始めます。
それぞれの採用KPIの指標を、プロセスの順に見ていきます。
応募者数(チャネル別)
応募者数(チャネル別)とは、求人媒体や人材紹介、SNSなど、募集チャネルごとに集計する応募の数です。 応募者数は母集団形成の入口にあたる指標であり、この指標が減ると後続のどの指標も改善しにくくなります。
応募者数が減少したときは、募集チャネルの選定や求人内容など、母集団の入口そのものに問題がないかをチェックします。
応募者数を安定して確保するための具体的な手順を知りたい場合は、下記の関連記事をご覧ください。
書類選考通過率
書類選考通過率とは、書類選考通過者数を応募者数で割って算出する指標です。
書類選考に応募した母集団のうち、どれだけの人数が次の選考段階に進めているかを示します。書類選考通過率は、母集団の質と選考基準の妥当性を映す数値でもあります。
書類選考通過率が急落したときは、選考基準が急激に厳しくなっていないか、あるいはターゲット層と要件にズレが発生していないかなどを確認しましょう。
面接設定率・面接通過率
面接設定率とは面接設定数を書類選考通過者数で割った指標、面接通過率とは面接通過者数を面接実施者数で割った指標です。
面接設定率は候補者との日程調整までたどり着けた割合、面接通過率は面接そのものの合否の結果を表し、両者を分けて見ると課題の所在を特定しやすくなります。
面接設定率が低下したときは、 応募者への連絡スピードや日程調整の負担が選考のボトルネックになっているおそれがあります。
面接通過率が低下したときは、 ターゲット層と応募者のミスマッチや選考基準のブレ、面接官ごとの評価基準のバラつきなどが発生している可能性があります。
参考として、株式会社マイナビの「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」のデータを紹介します。
2025年の中途採用では、面接設定率の全体平均が48.3%、面接通過率の全体平均が43.7%でした。
自社の実績や市場の全体平均と比較して面接設定率や通過率がどうであるかを比較し、著しく低い場合は対策を講じるなどを行うと良いでしょう。
選考辞退率
選考辞退率とは、各選考段階の対象者数のうち辞退者数が占める割合を示す指標です。
書類選考後や面接後、内定後など段階ごとに算出すると、候補者がどの段階で離脱しやすいのかを特定しやすくなります。母集団の量に加えて、歩留まりの実態も把握できます。
選考辞退率が増加したときは、選考期間の長さや応募者への連絡の遅さが辞退の要因になっている可能性があります。
内定承諾率
内定承諾率とは、内定承諾者数を内定者数で割って算出する指標です。
内定承諾率は選考を通過した候補者のうち、実際に入社を決めた人数の割合を表します。内定を出すまでの選考プロセス全体の妥当性を映す数値でもあります。
内定承諾率が低下したときは、給与や勤務条件など条件面で他社に競り負けていないか、あるいは内定後のクロージングが弱くなっていないかを確認しましょう。
内定承諾率が低い場合、内定辞退率が高くなります。
株式会社マイナビの同調査によると、2025年の中途採用における内定辞退率の全体平均は15.0%でした。
採用単価(採用コスト)
採用単価とは、採用コスト総額を採用人数で割って算出する指標です。 媒体費や紹介手数料、人件費などを含めた採用活動全体のコストを、成果である採用人数で割って求めます。
採用単価(採用コスト)は、チャネルごとの費用対効果を比較する土台にもなります。
採用単価が上昇したときは、チャネル構成が費用対効果の低いものに偏っていないか、あるいは選考各段階の歩留まりが悪化していないかをチェックしましょう。
株式会社マイナビの同調査には採用単価は算出されていませんが、年間採用費用の平均データが掲載されています。2025年の中途採用における1社あたりの年間採用費用の合計金額は、平均609.9万円でした。
採用リードタイム
採用リードタイムとは、応募から内定、あるいは入社に至るまでにかかる日数のことです。
採用リードタイムは候補者を待たせている時間の長さを直接示す指標であり、期間が延びるほど候補者の途中離脱や他社への流出につながります。
採用リードタイムが長期化したときは、選考の工程数が多すぎないか、あるいは工程と工程の間に無駄な待ち時間が発生していないかを確認しましょう。
株式会社マイナビの同調査には、WEB面接と対面での面接の2パターンにおける採用リードタイムのデータがあります。
2025年の中途採用における、各選考フェーズごとにかかった平均日数は下記のとおりです。
【WEB面接の採用リードタイムの平均日数】
- 応募〜内定応諾(合計日数):平均 31.5日
- 応募〜面接:平均 12.1日
- 1次面接〜内定:平均 11.0日
- 内定通知〜内定応諾:平均 8.9日
【対面面接の採用リードタイムの平均日数】
- 応募〜内定応諾(合計日数):平均 30.2日
- 応募〜面接:平均 12.1日
- 1次面接〜内定:平均 10.1日
- 内定通知〜内定応諾:平均 8.4日
効率化の観点から採用業務全体を見直したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
早期離職率・定着率
早期離職率とは、早期離職者数を入社者数で割った指標です。定着率とは、一定期間後の在籍者数を入社者数で割った指標です。
採用活動のゴールは内定者の入社ではなく、入社した人が実際に活躍し続けることです。そのため、早期離職率や定着率を観測することは重要です。
早期離職率や定着率が悪化したときは、選考段階での見極めが的確だったか、あるいは入社前後の期待にギャップが生まれていないかを振り返りましょう。
株式会社マイナビの同調査には、全体の早期離職率や定着率を示す直接的なデータはありませんが、退職者に関する以下のデータがあります。
2025年の中途採用における直近1年間の退職者のうち、「勤続10ヶ月未満の早期退職者の割合」は、平均14.3%(人数にして1社あたり平均1.3人)でした。
参考:株式会社マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」
採用KPIの設定手順
採用KPIは、「KGI(採用活動の最終目標)を決める→プロセスを分解する→実績値を当てはめる→KPIツリーを作成する→運用可能性を確認する」という5つの手順で設定します。
- KGIを決める
- 採用プロセスを分解する
- 自社の実績値から各段階の必要数を計算する
- KPIツリーを作る
- 設定したKPIが現実的に運用できるかを確認する
それぞれのステップを解説します。
ステップ1:KGIを決める
KPIを設定する前に、まずKGIを「いつまでに・何人を・どのくらいのコストで採用するか」の3つの要素で具体化します。
「今期中に営業職を増やす」のようなあいまいな目標では、いつまでに何人必要なのか、そのためにいくらまでコストをかけられるのかが定まらず、各プロセスに置くべきKPIの数値も決まりません。期限や人数の一方だけを決めても、コストの制約が抜け落ちていると、採用チャネルの選び方など後続の判断がぶれやすくなります。
KPI設計の出発点は、期限・人数・コストの3つを数値で示すことです。たとえば「10月末までに/営業職を10名/1人あたりの採用コスト60万円以内で採用する」のように、具体的にKGIを決定しましょう。
KGIが具体的であるほど、あとのステップで作るKPIツリーの各段階の目標値を精度高く設定できます。
ステップ2:採用プロセスを分解する
KGIから逆算するために、自社の採用選考のプロセスを分解して順番に書き出します。
一般的な採用プロセスは以下のようなフローをたどります。
【一般的な採用プロセスの例】
- 母集団形成
- 書類選考
- 一次面接
- 最終面接
- 内定出し
- 内定承諾(KGI)
ここで洗い出した採用プロセスは、KPIツリーの骨格になります。
ステップ3:自社の実績値から各段階の必要数を計算する
自社の実績値のデータをもとに入社目標から逆算し、各採用プロセスにおける必要数を計算しましょう。
たとえば、入社10名が目標で、過去の内定承諾率が77%であれば、内定は13人必要です。
同じ考え方で書類選考通過率や応募者数まで遡り、各段階の必要数を計算しましょう。
計算の途中で、想定より通過率が低い段階が見つかった場合は、選考の工程や評価基準を見直すと改善につながります。
なお、自社の実績値がまだない場合は、直近の採用データで数値を仮置きし、運用しながら精度を上げていくことが基本です。仮置きした数値も、実績が積み上がるたびに更新しましょう。
ステップ4:KPIツリーを作る
KPIツリーとは、最終目標であるKGIを達成するために必要な要素であるKPIを、樹形図に分解して可視化したフレームワークです。
KPIツリーは、KGIである入社人数を頂点に置き、入社に至るまでのプロセスを、入社側から応募側へと逆順にたどって作ります。 採用プロセスをツリー状に整理し、必要数や数値を割り振りましょう。
以下は、KPIツリーの作成例です。

ステップ5:設定したKPIが現実的に運用できるかを確認する
採用KPIを設定したら、分かりやすく可視化したKPIツリーをチェックし、「測定できるか」「達成可能な水準か」「期限が設定されているか」の3点を確認します。
測定できるかどうかは、日々の採用管理でデータを取得できる指標かという観点です。管理シートや選考ツールで数値を追えない指標は、設定しても運用が続かないため、見直しが必要です。
達成可能な水準かどうかは、希望的観測ではなく、実績や採用市場の状況を踏まえているかで判断します。前年の実績とかけ離れた数値を置くと、達成できない状態が続くおそれがあります。
期限については、いつまでに達成するかが各KPIで明確にできているかを確認しましょう。各KPIで期限をはっきり設けることで、振り返りのタイミングも明確になります。
3つの観点を満たしているかを見直したうえで、KPIツリーを確定させましょう。
採用KPIの運用のポイント
採用KPIは設定して終わりではありません。定例で振り返り、データが残る形で運用を続けることが大切です。
採用KPIの運用がうまくいかなくなる背景には、「確認する場が決まっていない」「数字を追うことが目的化する」「選考の記録自体が残りにくい」といった共通のつまずきがあります。これらを防ぐための運用のポイントは、次の4点です。
- 定例でモニタリングし、見直しの基準を決めておく
- 数字偏重・短期偏重に注意する
- 選考プロセスをデータが残る仕組みに乗せる
- 指標別に改善の打ち手を決めておく
それぞれのポイントについて解説します。
定例でモニタリングし、見直しの基準を決めておく
採用KPIの運用は、週次や月次の定例で数値を振り返る場を決めておくことが重要です。
設定した時点では目的意識があっても、日々の業務に追われるうちに確認が後回しになってしまうことがあります。それを防ぐためにも、最初に定例会の実施頻度や見直しの基準を定めておきましょう。
振り返りの頻度は指標一覧の表で示したように、動きの早い指標は週次で、月単位で変化する指標は月次で行うのが目安です。また、頻度とあわせて、どの指標を誰が確認するかも決めておくと、担当者が変わったり繁忙期に入ったりしても、モニタリングが途切れにくくなります。
見直しの基準をあらかじめ決めておくことも欠かせません。「未達が2回続いたら、目標値かプロセスのどちらを見直すかを判断する」というように基準を先に決めておくと、数値が悪化したときの対応が早くなり、採用KPIの形骸化を防ぎやすくなります。
数字偏重・短期偏重に注意する
採用KPIを運用する際は、数字偏重・短期偏重に注意しましょう。
応募者数や内定承諾率といった短期で結果が見える指標だけを追いかけていると、選考基準を緩めてでも数合わせをする、といった判断に流れやすくなるおそれがあります。
たとえば、内定承諾率を上げるために選考基準を下げれば、その場の数値は改善しますが、入社後の早期離職率が悪化するといった形で、しわ寄せはあとから表れます。短期の数値がよくても、入社後の活躍や定着につながらなければ、採用活動全体としては成果を上げられたとはいえません。
定着率のように、成果が出るまでに時間差がある指標もあわせて見ておくと、短期の数値だけでは見えない採用の質を確認できます。
採用KPIはあくまで採用活動の状態を映す手段です。数値の達成そのものが目的にならないよう、指標一覧で紹介した複数の指標を組み合わせてチェックすることが大切です。
選考プロセスをデータが残る仕組みに乗せる
採用KPIの運用のポイントの一つは、選考プロセスをデータが残る仕組みに乗せることです。
KPIの運用が続かなくなる背景には、選考プロセス自体にデータが残りにくいという事情があります。 具体的には、次のような壁が挙げられます。
- 選考の記録がシートや担当者ごとに散在し、集計に手間がかかる
- 会議のたびに手集計が必要で、リアルタイムに状況が見えない
- 誰がいつ更新するかの運用ルールが決まっておらず、担当者に依存している
こうした問題があると、人が入れ替わるたびに集計の手順を一から確認し直すことにもなりかねません。ツールを導入することに加えて、記録の残し方や更新の役割分担といった運用ルールの整備もあわせて必要です。
このような状況下において有効な手段の一つは、、選考プロセス自体をデータが自動で残る仕組みに乗せることです。
「NALYSYS AI面接」では、AI面接を受けた採用候補者データが記録されます。また、「NALYSYS 適性検査」でも採用候補者のデータが記録されるため、選考の記録を手集計で作り直すことなく、採用KPIの振り返りに活用できます。
指標別に改善の打ち手を決めておく
採用KPIの指標が悪化したときの打ち手をあらかじめ指標ごとに決めておくと、迅速に対応できます。 採用KPIが未達になってから検討していては対応が後手に回ってしまうため、あらかじめ施策を考えておきましょう。
たとえば、書類選考の通過率や、面接での見極めの精度が安定しない場合は、求める人物像と評価基準の見直しや面接官同士のすり合わせが有効です。
書類選考の見直し、求める人物像の定め方については以下の記事でそれぞれご紹介していますので、ご確認ください。
また、辞退率の上昇やリードタイムの長期化が目立つ場合は、候補者への連絡スピードと日程調整の負担を減らすことから着手する対策法が挙げられます。そのほか、AI面接のように24時間選考を進められる仕組みも、選択肢の一つです。AI面接の詳細については下記の関連記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
「3分でわかるNALYSYS」では、人間の面接官にありがちな面接時の選考観点のブレをAI面接官によって是正し、質の高い面接を実現するNALYSYS AI面接についてをご紹介しています。採用データの管理を検討する際の参考にしてください。
まとめ
採用KPIとは、採用活動の最終目標(採用KGI)を達成するために、各採用プロセスにおける進捗を測定する中間指標のことです。
採用KPIは、採用KGIから逆算して設定します。自社の採用プロセスを分解し、KPIツリーとして整理して目標数値を割り振りましょう。採用KPIを設定して可視化することで、その後の運用もしやすくなります。
採用KPIを設定したあとは、週次や月次の定例で振り返る場を決め、複数の指標を組み合わせて見ていくことが大切です。
なお、選考プロセスにデータが残る仕組みを整えれば、こうした振り返りも続けやすくなります。
採用KPIに関するよくある質問
採用KPIの設定や運用について、現場でよく寄せられる質問をまとめました。
Q. 採用KPIの具体例には何がありますか?
A. 新卒採用と中途採用で、代表的な指標が異なります。 新卒採用は選考期間が長い前提のため、指標一覧で挙げた指標に加えて、説明会参加数やエントリー数など母集団づくりの指標を重視します。一方、中途採用はスピードが求められるため、応募数や面接設定率、採用リードタイムなどが代表的な指標です。
Q. 採用KPIはExcelやスプレッドシートで管理できますか?
A. Excelやスプレッドシートでの管理は可能です。 小規模な採用であれば、これらのツールでも問題なく運用できます。媒体別、選考段階別にシートを分けておくと、進捗を管理しやすくなります。
Q. 採用KPIが未達のときは、何から見直せばよいですか?
A. KPIツリーの上流から遡り、どの段階で計画とのずれが生じたかを特定することから始めるのがおすすめです。 応募数が足りないのか、通過率が下がっているのか、あるいは辞退が増えているのかを切り分けたうえで、講じるべき施策を検討しましょう。
